1、作品の概要
『オッペンハイマー』はアメリカの伝記映画。
2023年7月にアメリカで公開され、日本では2024年3月29日に公開された。
監督、脚本は『ダンケルク』『TENET』などのクリストファー・ノーラン。
主演はキリアン・マーフィー。
エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.らが出演している。
原作は、『オッペンハイマー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』
上映時間は180分。
第96回アカデミー賞、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、作曲賞、編集賞の史上最多7部門を受賞。
「原爆の父」と呼ばれた物理科学者オッペンハイマーの半生を振り返る伝記映画。
2、あらすじ
1954年、ソ連のスパイ疑惑をかけられたオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は聴聞会にかけられ尋問されていた。
1959年、オッペンハイマーを告発したアメリカ原子力委員会の委員長ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr)の公聴会が開かれていた。
尋問されながらオッペンハイマーは、過去を回想し始める。
イギリス、ドイツの留学時代、博士号を取得したのちに帰国してアメリカのカリフォルニア大学で量子力学を教えていた日々、そして原子爆弾を開発するためのマンハッタン計画・・・。
女好きのオッペンハイマーは、ジーンと恋仲になりながらも、人妻のパティ(エミリー・ブラント)に惹かれ結婚をする。
軍の将校でマンハッタン計画の責任者であるグローヴス(マット・デイモン)にスカウトされてマンハッタン計画の原爆開発のリーダーに抜擢されたオッペンハイマーはリーダーシップを発揮し、見事に原爆を作り出し、実験を成功へと導く。
アメリカ大統領のトルーマンは、日本に原爆を落とすことで戦争の早期終結を目指すことを決断。
そして、人類史上類をみない大量虐殺が行われてしまう。
自らが生み出した兵器の悪魔的な破壊力と、世界を変えてしまったことに重圧を感じたオッペンハイマーは、水爆の開発に反対し、スパイの嫌疑をかけられるが・・・。
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3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
大好きな映画監督のクリストファー・ノーラン。
SF要素が強い作品が多い彼の次回作が、原爆を作った科学者オッペンハイマーの伝記映画だと聞いて、意外に思いながらも楽しみにしていました。
しかし、「原爆の父」であるオッペンハイマーが題材であるということで日本での上映は難しくアメリカでの上映から8か月後の上映となりました。
個人的には「戦争を早期に集結させるために原爆を落とした」という考えには怒りを覚えますし、そんな奴らは『はだしのげん』『火垂るの墓』を観て、にいちゃんなんで蛍はすぐ死んでしまうん、からのサクマドロップで号泣してから同じことが言えるのか試してやりたいです。
でも被爆国である日本に住む僕たちこそこの映画を観なければいけないようにも思っていました。
実勢に被爆した広島、長崎の人たちはどう感じたのでしょうか?
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4、感想(ネタバレあり)
冒頭の宇宙の幻想に若き日のオッペンハイマーが憑りつかれる場面とかめっちゃ好きです。
クリストファー・ノーランらしいファンタジックな映像と音響でこのシーンを観られただけで幸せでした。
伝記映画ということですが、そこはノーラン監督作品。
3つの時間軸が交錯しながら
複雑に物語が展開していきます。
1954年の聴聞会で尋問されるオッペンハイマーの視点、1959年の公聴会のストローズの視点、そして過去を振り返るオッペンハイマーの視点。
ストローズの視点だけ白黒映像だったのは、オッペンハイマー自身の視点ではなかったためでしょうか?
なんか『MEMENTO』を思い出しました。
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全く予備知識なく観ましたが、とにかく登場人物が多くて時系列がバラバラで混み入っていました。
うん、予習してたほうが良かったかもです(笑)
ネタバレしてどうのこうのするタイプの映画ではないので、少し登場人物とか話の流れを軽くさらってから鑑賞することをお勧めします。
まぁ、でもこの混み入ってる感じがクリストファー・ノーラン監督の真骨頂。
『TENET』とか一回観ただけでは絶対に完全に理解することは不能な難解な作りでした。
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オッペンハイマーが女性好きなのはちょっと意外で、物理学者と性欲って結びつかないように思っていました。
ジーンとの不幸なエピソードは、オッペンハイマーの人間臭さを感じさせられましたし、キティはどこかぶっ飛んでて魅力的なヒロインでした。
オッペンハイマーは優れた科学者であると同時に、優れたリーダーでもありました。
ロスアラモスに研究施設を作らせ、集めた科学者たちを統率しながら、軍ともやりとりをする。
プレイングマネージャーの鑑ですなぁ。
しかし、原爆を作るそもそものきっかけだったはずのナチス、ヒトラーが自害し、原爆を作ることの意義自体が希薄になっていく中でそれでも彼を後押ししたものは野心だったのでしょうか?
瀕死の日本に原爆を落とす必要があるのか?
戦争を早期に終わらし、日米の多くの人命を救うために?
世界に先んじて未知の兵器を手に入れて権勢を振りかざしたかったんじゃないかと思えました。
人類に火を与えたことで、永い間拷問されることになった神。
プロメテウス。
彼の神と、自身を重ね合わせるオッペンハイマーは、アメリカに、人類に過ぎた火=力を与えてしまったのでしょうか。
彼の苦悩は原爆の実験が成功し、日本に投下されて周囲の称賛とともに深まっていきました。
罪と罰。
贖罪。
「我は死神、破壊者なり」そう自嘲したオッペンハイマーの心境はどんなものだったのでしょうか?
アインシュタインに語った彼の言葉、計算を依頼しに行った時に核の連鎖反応で世界を滅ぼしてしまうかもしれないといった懸念。
その懸念は実際的には起きずに核爆弾が完成しましたが。
ただ。
観念的には世界を変えてしまい、壊してしまった。
核爆弾の開発がある意味合いでは世界を滅ぼしてしまった。
・・・。
このやり取りをラストに持ってくるあたり、クリストファーがノーランしてます。
背筋が凍って氷点下でした。
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5、終わりに
いやー、伝記映画もノーラン監督の手にかかればどこかミステリアスに仕上がっちゃいますね。
宇宙とか、爆発の映像もめちゃくちゃ良かったし、無限音階を用いたあの独特のデケデケデケデケな音響も最高。
原爆を日本に落とした当時のアメリカの雰囲気にはだいぶ怒りを覚えましたが、まあ当時はこういう空気感だったのだなと思いました。
しかし、アメリカの歴史教育で核の使用を戦略上仕方なかったではなくて、広島と長崎がどうなったかも含めて伝えてほしいと感じました。
以前、NHKのドキュメンタリーであまり被爆地がどうなったかを伝えていないという映像を観たので・・・。
ナチスドイツが倒れてもソ連との冷戦があって、原爆の次は水爆。
争いや諍いは終わることなく続いていきます。
本来は人間を幸せにするためのはずの科学技術が、破滅へと導いていくという不幸。
そんな負の連鎖を感じさせらえた映画でした。
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