1、作品の概要
1996年に公開された岩井俊二監督・脚本の映画。
68分のショートフィルム作品。
精神病院に入れられた少年、少女たちが世界の終わりを見に旅に出る。
2、あらすじ
精神病院に入れられたココ(CHARA)はツムジ(浅野忠信)とサトルと知り合い、塀の上を伝って教会の神父と知り合い、聖書をもらう。
脱走の咎を受けたココとツムジだったが、聖書を読んだツムジがもうすぐ世界が終わることを告げて、3人で再び塀の外へと旅立つ。
3、この作品に対する思い入れ
『undo』『FRIED DRAGON FISH』などと共に大好きな初期の岩井俊二監督の作品。
大学生の時に観て衝撃を受けました。
当時、好きだった俳優が浅野忠信で、この頃が彼の全盛期なのではないかとも思います。
今のシブい感じも良いんですがね。
CHARAも好きですし、大学の頃に観たこの映画は僕にとって本当に特別な作品です。
4、感想・書評
精神病院とか虐待とか、どんだけアウシュビッツな感じで、ナースさん達もだいぶ前時代的な制服で(わざとなんだろうけど)、今観るとそこはかとなく現実離れしてチープな感じもしますが、映像の美しさ、絶妙な音楽の使い方で忘れてしまいそうです。
どことなく舞台っぽい感じもする気がしますね。
3人の衣装とか、空と壁の対比とか。
とてもシュールな物語展開をしながらとても美しかったです。
ココが黒い衣装×黒い傘、ツムジが白い衣装×黒い旗、サトルが白い衣装×白い旗という感じで白黒の対比が綺麗でした。
『undo』でもそうでしたが、岩井俊二監督は白と黒のコントラストを好んで使っていますね。
サトルが壁から転落するシーンは、マジでトラウマです(笑)
未だにはっきりと覚えていましたが久々に見直してやっぱりグロテスクながら映像と音楽が美しいあのシーンに新たなトラウマが追加されましたね。。
世界の終わりを見に行くっていうのが何とも好きな感じで良いです。
見当違いの妄想なのですが、それを信じて疑わない彼らの純粋さ。
精神障害というよりは、知的障害な感じがしました。
無知ゆえのイノセントさ?
知性や良識がなんだというんでしょう。
感じるままに捉えた空の青さや、風景の鮮やかさ。
それがきっと「世界」なのですから。
「世界」は感じるままに変わっていきます。
行き止まりの海で、ツムジの罪を背負って洗い清めたココ。
夕焼けをバックに飛び散る彼女の黒い羽は世界の終わりがきたかのような美しさでした。
5、終わりに
何とういうか若い才能が交錯して火花を散らしているような。
そんな印象も持てる映画でした。
この頃の浅野忠信のナイーヴさ、アーティスティックな感じがたまらなく好きです。
CHARAも本当は前作の『FRIED DRAGON FISH』で主演を務める予定が、スケジュールが合わなかったとかの裏話を聞いたことがあります。
主題歌の「BREAK THESE CHAIN」が流れるラストはトリハダものでした。
ここから名作『スワロウテイル』に繋がっていく・・・。
やっぱり岩井俊二監督の作品はどれも好きだなぁ。
映像と音楽。
独特の耽美的な描写。
初期は特に尖っている感じがしていて、とても心を惹かれます。