1、作品の概要
1994年に公開された日本の映画
監督・脚本が岩井俊二。
45分の短編映画。
95年ベルリン国際映画祭フォーラム部門NETPAC賞受賞作品。
雑誌『BRUTUS』で岩井俊二監督が山口智子のフォトショートストーリーを撮ったことがきっかけとなってこの映画が製作された。
目に映るものを縛ってしまう精神の病に侵された萌実と、その恋人の由紀夫の物語。
2、あらすじ
アトリエのようなマンションに2人で暮らす由紀夫(豊川悦司)と萌実(山口智子)。
由紀夫は仕事が忙しく、なかなか2人で出かけることもできずに萌実は1人で寂しい思いをしていた。
やがて家にあるものを何でも縛ってしまうようになった彼女は精神科で「強迫性緊縛症候群」と診断されてしまう。
心が壊れてしまった恋人の回復を願って献身的に振舞う由紀夫だったが、萌実の行動はどんどんエスカレートしていく・・・。
3、この作品に対する思い入れ
大学生の時に友達から教えてもらった岩井俊二監督の映画。
その唯一無二の美しい映像に虜になりました。
『undo(アンドゥ)』は彼の作品の中でも最も耽美的で、映像が美しい作品だと思います。
う~ん、もしかしたら岩井俊二作品の中で一番好きかも♪
4、感想(ネタバレありだけど、ネタばれて観てからも全然大丈夫)
いや、もうストーリーがどうのこうのじゃなくて耽美的な世界観、映像美がヤバ過ぎます。
谷崎潤一郎や川端康成のような耽美を描いている純文学のような世界観。
色彩と光や画面の構図がもう完璧すぎてもう・・・。
ため息が漏れます。
丘の上で2人がキスするシーン。
2人の衣装が白と黒で、電線と空の配置。
二人を避けて走っていく園児たち。
もうとてつもなくグッとくるシーンですね。
幼稚園児の前で路チューしたらあきまへんが、映画だからいいんです。
しかも濃厚なフレンチキス。
2人が住むマンションもなんかどえらいオシャレでまるでアトリエのようで、非現実的な感じがしますね。
由紀夫の職業は物書きでしょうか?
PCの前で仕事しっ放しで萌実をほったらかし。
挙句、矯正が終わった萌実とキスしていて、「(矯正していた時の)前のほうが良かった。なんか違う。」とか言っちゃいます。
いや、そりゃアカンでしょ!!
寂しさと、恋人の由紀夫をつなぎとめておきたいという思いからでしょうか?
萌実は少しずつおかしくなっていきます。
ここからの精神が壊れていく山口智子の演技が真に迫っていて良かったですね。
何度もゾクっとさせられました。
特にあの何も見ていないような目つき。
王様のレストランなどで陽キャのイメージが強い彼女だけにギャップがあって良かったですね。
豊川悦司も恋人の変化に戸惑いながらもどうにか償って元の彼女に戻ってもらおうとしながら、ついにブチ切れてしまうシーンとか良かったですね。
縄だらけになった部屋の中央で、まるで縄で作った繭のオブジェのような中から出てきたのは塗りつぶされた2人の写真。
「2人の愛を縛ったの・・・」
って萌実のセリフにぞわぁ。
もういっぱいいっぱいだった由紀夫は激昂してしまいますが、これも萌実の歪んだ愛情の発露だったんでしょうね。
壊れないように、なくなってしまわないように、どこかに行ってしまわないように 縛りつけておく。
愛という呪い。
呪って縛ると書いて呪縛。
白い服を着て、美しい人形のようになった萌実。
完全に壊れてしまった彼女の目には何も映らずに、「もっと縛って」と熱に浮かされたように言い続けます。
壁に杭を打ちつけてそこに幾重にも縛った人形のような萌実を縛り付けるシーンはとても危うく耽美的。
由紀夫も彼女の狂気に取り込まれてしまっているようにも感じます。
いなくなった萌実。
そしてラストシーンのモノローグが秀逸。
結局僕らは、縛られていたのだろうか、ほどけていたのだろうか?
5、終わりに
『undo』の写真集も出ているみたいでめっちゃ欲しいです。
26年前の映画ですが、全く色あせませんね!!
やっぱ、岩井俊二の映画はいいなぁ。
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