ヒロの本棚

本、映画、音楽、写真などについて書きます!!

【映画】『トニー滝谷』~深い孤独と、死者の影~

1、作品の概要

 

『トニー滝谷』は日本の映画。

2005年1月29日に公開された。

監督は、脚本は市川準。

主演は、イッセー尾形、宮沢りえ。

語りは、西島秀俊。

音楽は、坂本龍一。

上映時間は75分。

原作は、村上春樹の短編小説『トニー滝谷』で、短編小説集『レキシントンの幽霊』に収録されている。

2026年10月現在、ネットフリックスで4Kリマスター版が見放題無料配信中。

 

 

 

2、あらすじ

 

トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった。

ジャズトロンボーン奏者の滝谷省三郎(イッセー尾形)の息子として産まれたトニー(イッセー尾形)。

母親は亡くなってしまい、父は演奏旅行でほとんど家に帰らなかったため、彼は孤独に成長した。

やがてイラストレーターとしての才能を発揮し、その道で成功を収める。

ある日、仕事で知り合った洋服を美しく着こなす女性(宮沢りえ)に初めて恋に落ちたトニー滝谷は、熱烈に彼女を口説き、結婚した。

穏やかで幸せな日々だったが、ただひとつ妻が服を買いすぎてしまうことが問題になって・・・。


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3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ

 

10年以上前に観た映画でしたが、そろそろもう1回観たいなと思っていました。

小説や漫画を映画化することは多いですが、元のイメージがあるのでなかなか難しいですよね。

あまり改変しすぎると批判されたりとかもあるし。

『トニー滝谷』は、原作に忠実でありながら独特の演出で映画としての独自性もあるすばらしい作品でした。

Xでフォローさせて頂いている方が、Netflixで4Kリマスター版が配信されるとポストされていて、配信を心待ちにしていました、

hiro0706chang.hatenablog.co

 

 

4、感想(ネタバレあり)

 

妻の元カレが最後のほうに出てくるオリジナル要素はありましたが、おおむね原作に忠実な映画でした。

語り手の西島秀俊もいい感じでね、文章を読み上げるのって、小説を映画化するのにひとつ有効な手段だなと思いました。

映像だけでは、なかなか伝わらない心理描写や、情景も文章で伝えることができますしね。

途中まで語り手が読み上げた文章を引き継ぐように、登場人物が話す演出がとても良かったですね。

なんか、村上春樹っぽい!!って思いました。

 

それから演劇の舞台みたいなイメージの引いた一定のアングルから撮り続ける画も、なんか味があって良かったです。

画面が横に流れていく感じの演出もすごく好きでした。

ちょっと語彙が足りなくてどう表現したらいいかわからないんですけどね(笑)

 

主要な登場人物は4人で、トニー滝谷と、妻、バイトに来た女の子、父・省三郎で、それぞれ1人2役でイッセー尾形と宮沢りえが演じているっていうのもなにか意図があるのか面白い配役でした。

そして、宮沢りえの演技力。

全然違う2人の女性を演じ分けていて、素晴らしかったです。

映画『月』でも素晴らしい演技をみせていましたが、いい女優さんになりましたね。

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余計な登場人物を極力出さずに、場面の転換もそれほど多くなく、ほとんどの場面がトニー滝谷の家というミニマルな感じがする映画でしたが、その削ぎ落したシンプルさみんたいなのが心地よかったですね。

トニー滝谷の部屋も窓が大きくて外の景色が見える感じも絵的に綺麗でした。

そこに、坂本龍一のピアノが乗っかってくる・・・。

破壊力抜群ですよ!!

いやー、サントラ欲しくなるな~。(買いました)


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『トニー滝谷』は、映画も小説も「孤独」がテーマであったと思います。

孤独でなくなって、かけがえのない存在を得たあとにその存在を失うことで、より深い孤独に沈み込んでいく・・・。

深い絶望を感じるような思いテーマですが、村上春樹の小説ではよく扱わているテーマのように思います。

 

トニー滝谷は、幼い頃から孤独で、しかもその孤独を辛いと思ったことはありませんでした。

しかし、妻と出会ったことではじめて誰かに強く惹かれることを経験して、35年の孤独に終止符を打ちます。

100年や、100億光年の孤独じゃなくて良かったですね(笑)

 

しかし、孤独でなくなってしまったことで彼は、彼女を失ってしまって再び孤独になることを恐れるようになります。

以前は孤独であることを、特に辛いと思ったこともなかったのに。

不可思議なことであるように思えるかもしれませんが、一度誰か愛する人と巡り合い暖かい陽だまりの中で共に時を過ごすことを経験してしまうと、元々いたはずの冷たい孤独へと戻っていくことがとても身を切られるように辛いことになってしまうのでしょう。

 

映画を観ていて気になったシーン。

トニーと、妻が父・省三郎のジャズライブを聴きに行きますが、トニーは父の演奏がどこか微妙に変わってしまっていて、今すぐにどこが変わってしまったのか父親に聞きたいと感じたと述懐しています。

映画を観終わったあとで思ったのですが、変わったのは省三郎の演奏ではなくて、トニー自身だったのではないでしょうか?

~その音楽の何かが彼を息苦しくさせ、居心地悪くさせた。その音楽はトニー滝谷が記憶しているかつての父親の音楽とは少し違っているように感じられたのだ。

そして、トニーを息苦しくさせたのは、かつては彼も同じように纏っていた省三郎の音楽に籠められた「孤独」だったのではないでしょうか?

かつては、空気のように馴染んでいた省三郎の演奏の中にひそむ「孤独」が、今はトニーにとって苦しいものに変わったという表現だったのかなと思いました。

 

そして妻亡き後に、衣裳部屋いっぱいに残された洋服たち。

死者の影ような忘れ形見。

『騎士団長殺し』では、免色さんがおそらくかつてのパートナーの物である服を保有していましたが、そんなかつて愛した人の影のような衣服を共に暮らすというのはあまり健全なことではないように思いますね。

バイトの女の子が衣裳部屋で自分でもわからずに泣いてしまったのも、その場面がトニーの脳裏に焼き付いていたのも、その衣服らが象徴しているかつて存在していたかけがえのないものと、それを失ってしまう取り返しのつかない哀しみを十全に理解していたからではなかったのでしょうか?

 

何もなくなった衣裳部屋に佇むトニー。

コンクリートの無機質な感じがなんとも言えず彼の喪失にマッチしているように思いました。

救いようのない結末ではあるけど、孤独であることについて深く考えさせられる映画でした。

 

 

 

5、終わりに

 

いやー、やっぱり村上春樹の短編小説は味わい深いですね。

この映画も、原作の良さを活かしつつ、映画ならではの魅力を付与していてすばらしい映画でした。

印象的なシーンも多かったですし、音楽も良かったなぁ~。

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【サッカー】久保建英と福原遥が電撃結婚!!マジビックリした!!

☆久保建英ゴール!!サプライズ結婚!!☆

 

えー、番組の予定を変更してお送りしております。

昨日の夜にヤフーニュースのトップを飾った衝撃ニュース。

サッカー日本代表の久保建英が、俳優の福原遥と結婚!!

 

マジかっ!!

久保は女っ気なさそうだなとか思っていたら、いきなり結婚とか理解が追いつかんわっ!!

しかも、相手が売れっ子若手俳優の福原遥とかビックリするわっ!!

いやー、ちょっと事前に教えといてよ~。

うん、まあ許すけどさ。(何様?)

フライデーもビックリです。

f:id:hiro0706chang:20261003201648j:image

 

昨日の夜、2人のインスタに写真とこの文面が投稿されたみたいです。

いやー、先日の板倉晃と川口春奈の結婚もビックリしましたけど、まあなんかわかるかなって気もしたんですが、久保と福原遥は超意外でしたね!!

久保、まだ25歳やしな~。
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☆10歳ぐらいから応援してた久保タケの結婚に親戚のおじさんみたいな感情になっているヒロ氏☆

 

僕が久保建英のことを知ったのは、彼が10歳ぐらいの時。

なんと、スペインの強豪FCバルセロナの下部組織に入団した日本人がいるとニュースで知った時でした。

当時は、スカパーでバルサTVという番組があって、バルサの各カテゴリーの試合のダイジェストも観られるという狂気すら感じるマニアックな番組でしたが、ちょいちょいタケの姿も映っていました。

一番目立っていたのは、アンス・ファティでしたけどね。

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順調に昇格していっていた久保建英が壁にぶつかったのが15歳の時。

実力不足ではなくて、FIFAの裁定によりバルサ下部組織での公式戦出場ができなくなってしまい、やむなく帰国。

FC東京に入団するも、普通ならモチベーションが低下してそのまま消えてしまいそうな状況の中、なんやかんやありつつ17歳で完全に主力に定着。

からのレアルマドリード移籍して、マドリーでは出られないものの、マジョルカ、ソシエダで活躍して、ラリーガでも有力な選手の1人として活躍を続けています。

 

ただ、ここ1年はケガもあったりして本領発揮できず。

かつては、中心選手であったソシエダでもスタメン落ちが目立つようになっています。

1~2年前は、ビッグクラブへの移籍も取り沙汰されていたのに、ちょっとまずい状況になっています。

しかし、何度も苦境を持ち前のインテリジェンスと鋼メンタルで乗り越えてきた久保建英。

今度も、乗り越えてゴールをゴールを!!

って、思っていたら、そっち(人生)のゴールを決めたんか~い!!

 

いや、結婚することで私生活が落ち着いて、より安定したアスリートも多いのでこれからのタケに期待!!

しかも、結婚相手は元クッキングアイドルのまいんちゃん。

フィジカルが増強するようなスペシャルな料理を作ってくれるはず!!

って、しばらくは福原遥も仕事を続けるって言っているし、当面は別居生活なのかな?

 

なんか子供の頃から知っている選手が結婚って、親戚のオッサンみたいな気分になりますね。

ワンチャン結婚式に呼ばれた時のためにスピーチも考えておこうと思います。

「女性のスカートとスピーチは短いほうがいいといいますが・・・」とか、「結婚生活において大事な3つの袋がありました・・・」とかで、昭和感溢れるスピーチをしたいと思います。

最後は、万歳三唱で〆

 

おめでとうタケ!!

これからも応援してます!!

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【フィットネス】10月の久万高原マラソン2026に向けてギアをあげていくぜ!!11月のエントリーに失敗して、まさかの結果に・・・。9月のランニング報告!!

☆マラソンシーズン本番!!9月のヒロランは?☆

 

さてさて、マラソンシーズンもこれからが本番。

だいぶ、涼しくなってきたこともあって外を走るランナーの数がだいぶ増えてきましたね。

10月~12月の走りやすい季節にハーフマラソン、10キロマラソンの大会が多く、1~3月にフルマラソンの大会が集中しているように思いますね。

んで、3~4月にまたハーフマラソン、10キロマラソンの大会があって、5月ごろにはシーズン終了みたいなイメージ。

 

9月はだいぶ朝晩は涼しくなってきているので、ランナーたちがぼちぼち本腰を入れて走り始める季節です。

8月は暑いんであんまり長く走れないですしね。

個人的に9月は月間走行距離70キロを目標にしていましたが、わずかに届かずでした。

ガッデム!!

まあ、雨降ったりとか、膝が痛くなったりとかありましてね・・・。

ジムのスタジオレッスンもプログラムを調整して、これからは走ることを中心に行きたいと思います。

逆にジムのスタジオレッスンは8、9月共に11回行っていて、めっちゃノリノリで頑張ってましたわ。

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10月は大会もあるし、100キロは走るで~。

9月の終わりごろは10キロランもやったので、週3回走って、休日の2回は10キロ、仕事のあとに走る1回は5キロを目標にしたいです。

ちょいちょい膝の痛みなんか出てるんで、また鍛え直さなきゃですわ。

2月の愛媛マラソンに向けてコンデションをあげていきたいっす。

 

 

 

☆11月のエントリーで大失敗!!そして、久万高原マラソン2026へ☆

 

11月は三豊のうらしまマラソンを走る予定だったんですよ。

でも、佐田岬マラソン、今治里山マラソンもあるし、どうしようかな~ってナヤンデルタール人になっていたんですよ。

そしてたら・・・。

定員に達したということで、全部エントリー終了になってました・・・。

嘘やろっ!?

 

えっ、こんなに人気あったっけ?

例年、ギリギリまでエントリー受け付けてた気がしてたんだけど・・・。

やっぱ、マラソンブームなのでしょうか?

大失敗でした。

 

気を取り直して、12月の新居浜あかがねマラソンにエントリー。

記念すべき第10回ということで、盛り上がりそうです。

あとは、12月の愛媛30Kに出ようかどうか?

1月にはやまじっこマラソンあるし、愛媛マラソンに万全の状態で臨めるようしっかり準備したいですね。

 

久万高原マラソンは、2年前にも走りましたが、後半の激坂に心を折られました。

タイムも2時間23分とか、グダグダでした。

しかし、あの頃の俺とは違うはず!!

タイムは2時間5分目標で走りたいっすね。

坂あるしな~。

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2年前のスタートの様子。

なんか商店街みたいなところからスタートしましたわ。
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走ったあとは、おにぎりとか食べられて嬉しかったな~。

今年は、何が出るんだろ?

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やっぱり、大会とかあると気合が入りますね!!

涼しくなってきたし、10月は走るの頑張りますっ!!

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【本】三島由紀夫『永すぎた春』

1、作品の概要

 

『永すぎた春』は、三島由紀夫の長編小説。

1956年12月25日に刊行された。

『婦人俱楽部』1956年1月号~12月号に連載された。

1957年に映画化された。

新潮文庫版で233ページ。

長い婚約期間中に2人の男女に訪れる様々な危機を描いた。

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2、あらすじ

 

T大学に通う真面目な学生の宝部郁雄と、T大学の目の前にある古書店の娘の木田百子。

恋仲になった2人はめでたく婚約し、両親公認の仲になったが、郁雄が大学を卒業する1年3カ月後までは結婚を認められていなかった。

永すぎる婚約期間に、2人の恋に様々な危機を迎える。

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ

 

なんとなく次に読むのが思いつかなかった時に、三島読みたいって思って、25年ぶりぐらいに再読しました。

当時は、なんとなくお堅い小説のように思いましたが、ひさびさに読むととても読みやすくて2日ぐらいでするっと読了しました。

三島の大衆小説的な作品ですが、鋭い観察眼や、人生観からただの娯楽小説の域を超えた含蓄の深い物語が語られていました。

 

 

 

4、感想(ネタバレあり)

 

『永すぎた春』は、信じがたいことにあの名作『金閣寺』と同時期に連載されていた作品です。

『金閣寺』が刊行された2か月後に『永すぎた春』の単行本が刊行されたりしているわけですが、なんかすごいっすね。

三島由紀夫は、『金閣寺』のような芸術的価値が高い純文学小説と、『永すぎた春』のような大衆向けの娯楽小説を書き分ける作家でした。

この二つの作品が同時に書かれていたということは、三島由紀夫という作家を知るうえで象徴的な出来事だったと思います。

 

三島由紀夫といえば、『金閣寺』『仮面の告白』が代表作で、硬質な文体と芸術的な表現が印象的で、どことなく取っつきにくい印象を持っている方も多いと思います。

ただ一方で『永すぎた春』や、『夏子の冒険』『潮騒』『美徳のよろめき』『愛の渇き』などの娯楽小説を平易な文体で書いたりもしていて、多くの顔を持つ作家だと言えるでしょう。

 

ただ大衆娯楽小説といえ、そこは三島由紀夫。

ふとした折に美麗な文章をぶっこんできたり、なにがしかのテーマを用いたり、登場人物の微に入り細を穿つような心理描写があったりと、油断がなりませぬ。

市井の娯楽小説を越えた奥深さが具わっていると思います。

 

『永すぎた春』は、若い2人の健全な恋愛小説という大きな流れの中に複雑な様々な要素が付与されています。

あとがきでもありましたが、『潮騒』で描かれたのが至上の若者たちの恋愛小説だと思います。

しかし、『永すぎた春』は『潮騒』で描かれたようなハッピーエンドのあとの若い男女の話。

めでたく結ばれたあとに襲い掛かってくる危機を描いています。

この視点と、『永すぎた春』という絶妙なタイトルからも、三島由紀夫の作家としてのセンスがそこはかとなく感じられますね。

思えば、三島由紀夫の小説のタイトルって簡潔かつオリジナリティがあり、イマジネーションを喚起させられるようなものが多いような気がします。

 

のんびり屋の秀才お坊ちゃんタイプの郁雄と、行動的な古書店の娘の百子。

恋愛小説では、出会いから恋の成就までを描くのが常道だと思うのですが、『永すぎた春』ではタイトルの通りに結ばれたハッピーエンドのあとの物語が描かれています。

逆説的に何かを描く三島由紀夫ですが、ここでは結ばれた後に危機感がなくなってしまった男女の危うさをまず描いているように感じました。

 

ロミオとジュリエットじゃないけど、恋は障害があるほど燃え上がるっていうじゃないですか。

それが、燃え上がって燃え上がって、やがて誰からも認められて障害がなくなってしまったらどうなるのか?

三島由紀夫さすがの着眼点です。

永すぎる婚約期間も相まって、若い2人の間にも検体の影が忍び寄ります。

 

結ばれている2人に波乱を起こすためには、トリックスターが必要かと思いますが、その役割を担う人物が幾人も登場してトリックスター祭り状態になっています。

クセが強い!!って、ノブも言いたくなるクセ強な登場人物たち。

だいぶかき回しまくってくれます。

 

全員、触れていきたいところですが、1名最重要人物をあげろと言われたらここは宝部夫人でしょう。

郁雄の母親ですが、とてつもない存在感とバイタリティーで、2人の運命に大きな影響を与えます。

解説では、若者たちの理解者っぽく振る舞いながらも、実は若者たちの最大の敵みたいな言及をされていましたが、うんよくわかるわ(笑)

個人的には、ギリシャ神話の気まぐれな神々のようにも思えました。

感情的で気まぐれで、善にも悪にもなるようなコントロールできないようなプリミティブな存在。

彼女の介入によって、物語の展開が大きく動いている様はとても面白かったです。

 

様々な危機が訪れましたが、結局ハッピーエンドで2人は嵐の中でお互いへの愛を確かめ合えたみたいな結末でした。

いいんじゃね?

百子のキャラクターはどこか、『夏子の冒険』の夏子を彷彿とさせられるようで、活発なお嬢様を書くのが実は上手だったりするんじゃね?って感じの三島由紀夫です。

まあ、引き出しが多い作家ですね。

 

 

 

5、終わりに

 

物語の勢いみたいなものが、最後まで衰えずに一気に最後まで突っ走ったみたいな印象の作品でした。

短めな長編小説ですが、登場人物たちが皆クセありなのも印象的でしたね。

よくここまでのエピソードを詰め込んで自然な形で長編小説にしたな、と改めて作家・三島由紀夫の力量を感じました。

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【本】ポール・オースター『ガラスの街』~NYの街を舞台に物語は奇妙に捻じれて破滅へと向かっていく~

1、作品の概要

 

『ガラスの街』は、ポール・オースターの長編小説。

ポール・オースター名義での小説家としてのデビュー作となった。

1985年に刊行された。

日本では、2009年10月に柴田元幸の新訳で新潮文庫より刊行された。

239ページ。

『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』と続くNYを舞台にした、「ニューヨーク3部作」として話題になった。

1本の間違い電話をきっかけに、探偵の真似事をするようになった小説家を描いた。

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2、あらすじ

 

ミステリー作家のクインは、ある夜にかかってきたポール・オースター宛の1本の間違い電話がきっかけで、ピーター・スティルマンと出会う。

父親から実験のために、幼少期に9年間閉じ込められていたピーター・スティルマンは、精神を病み上手く話すことができなくなってしまっていた。

そして、彼をこんな目に遭わせた父親のスティルマンが釈放され、ピーターを殺しに来ると怯える妻のヴァージニア・スティルマン。

彼女からスティルマンの写真を受け取り、その行動を見張ることになったクイン。

ほんのお遊びのつもりだった探偵ごっこが、彼を深みへと引きずり込んでいく・・・。

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ

 

県外でも話題になっている愛媛県松山市のオシャレな本屋さん「本の轍」さんで買いました。

サリンジャーの初期短編集とかもあって悩んだんですが、ポール・オースターの「ニューヨーク3部作」は読んでみたいと思っていましたし、装幀がなんかいい感じだったので買いました。

装幀とか、帯とかに触発されてちょいちょい買っているのは、雰囲気読書家のヒロ氏ならではですね(笑)

www.honnowadachi.com

 

 

 

4、感想(ネタバレあり)

 

とても奇妙な物語です。

ちょっとした偶然から、ポール・オースターという探偵になりかわってピーター・スティルマンと、ヴァージニア・スティルマンからの依頼を受けて、父親のスティルマンの脅威からピーターを守るべく奮闘する作家のクインみたいな展開だったはずなのですが・・・。

途中で物語は奇妙に捻じれていきます。

探偵ものと思っていた読者を混乱させて、置き去りにしてしまうようなストレンジな展開。

ドアーズもビックリなStrange Daysのはじまりはじまり。


www.youtube.com

 

『ガラスの街』を出版社に持ち込んだオースターですが、なんと17社に断られたみたいっすね。

アメリカの文壇とかよくわからんですが、わかりやすいハードボイルド探偵小説とかのほうが、容易に受け入れられたんでしょうね。

事件に関わった人間が消失していき、いくつかの謎が残って真相は解明されないままに破滅的なラストが・・・。

うん、好きなやつです(笑)

ポール・オースターの著作を読むのはまだ4作目なんですが、自ら深みにはまり込んでいき、破滅的な結末へと収束していく様が、『偶然の音楽』と似通っているように思いました。

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『幻影の書』でも、妻と子供を亡くした男が描かれていますが、『ガラスの街』のクイン妻と子供を亡くして、孤独な生活に埋没していくように日々を送っています。

思えば、クインが辿った唐突とも思える自己破壊とも思えるような破滅の種は、家族を失った空虚さと絶望という形で彼の中に根付いていたように思います。

柴田元幸さんのあとがきによれば、オースターはこの物語の主人公のクインを妻のシリと出会わなかった自分を投影して描いたと言っていました。

シリに出会う前のオースター自身も、破滅に向かいかねない危うさを内包していたのでしょうか。

 

ダニエル・クインは、元々ミステリー作家としてのウィリアム・ウィルソンという別の顔を持っていました。

そして、間違い電話がきっかけで探偵ポール・オースターというもうひとつの顔と名前を手にすることになります。

自分の名前は何であって、自分はいったい誰なのか?

これも、この物語の重要なファクターになっていたように思います。

 

ピーターと、ヴァージニアのスティルマン夫妻が恐れていたスティルマンは結局正気を保っていたのか?

本当にピーターを恨んで、殺そうとしていたのか?

真相は藪の中です。

 

クインが出会ったスティルマンは、認知症のような症状だったように思えますが、もしかしたらそのように演じていた可能性もありますし、「THE BABEL」のアルファベットの形になるように毎日散策していたことが判明する場面ではゾクッとしました。

こいつ絶対になんかやらかす気やろっ!!

って、思ったら自死するんか~い、な展開でもう何が何だか・・・。

オースターの思惑通りにぶん回されて、メンタル焼け野原でした。

 

スティルマンはそもそもだいぶ奇人というか、天才というか・・・。

著書もだいぶぶっ飛んだ奇書の類だったのでしょうね。

ヘンリー・ダークが架空の人物でハンプティ・ダンプティをモデルにしてるとか。

バベルの塔、ミルトンの『失楽園』、新大陸、コロンブスの卵。

そこから神の言葉を話させるべく、実子のピーターを使った実験で幼い頃から文明と隔離して育てるわけですが、スティルマンはイカれてますね。

デビュー作で、いきなりこんな濃い話を書くオースターもクレイジー。

 

スティルマンを見失うしくじりを契機にクインは、より奇妙な場所へと送り込まれ、逃れようもなくこの一連の事件(?)にのめり込み、破滅へと突き進んでいきます。(と、僕には思えました)

彼の中にある空洞がこのような何かを、自分の全てを投げ打って消失させてくれる何かをずっと待っていたかのようにも感じました。

バニシング・ポイント。

 

スティルマン夫妻はどこに行ってしまったのか?

オースター宛の小切手は偽物で、金持ちというのも嘘だったのか?

クインに食べ物を届けたのはヴァージニアだったのか?

そして、クインはどこに行ってしまったのか?

 

ミステリーだと思って読んだミステリーファンが激怒しそうなぐらいに、なんにも解決せずに物語は閉じていきます。

僕は、村上春樹に鍛えられているのでこういうモヤっとした終わり方には慣れていて、むしろ大好きな感じでした。

『City of Glass』というタイトルから詩的でしたし、NYの街を舞台に繰り広げられる物語はどこか情緒的でした。

 

 

 

5、終わりに

 

この記事を書いていて、脳内にJAZZが流れ出して無性にJAZZが聴きたくなりました。

書きながら、コルトレーンのブルースのやつと、エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエット・アルバムを聴いてて、なんだか物語の世界観にしっくり溶け合っていく感じでした。

いやー、ポール・オースター1作読むごとに好きが増していく感じがします。

とりあえず、ニューヨーク3部作読破したいですね。

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【雑記・お題】好きなフルーツについて!!愛媛県民なのにみかん嫌いな俺が来たぜ?

☆今週のお題「フルーツ」で、EHMといえば、オレンジ色のアイツだよね?☆

 

はいはいは~い。

久しぶりにはてなブログさんのお題記事書いちゃいますよ?

思いっきりふざけちゃいますよ?

なんか最近、真面目な記事が多かったような気もするんでね。

たまには、息抜きっていうかユルい感じで書いとかないともたんがな!!

肩も凝るしさ。

 

愛媛の非公式観光大使のヒロ氏として、地元のフルーツをアピールしておかなきゃあんめぇ。

愛媛のフルーツといえばぁ~~~。

それはぁ~~~~~~。

みかんです!!

みかんみかんみかん!!

みかんみかんみかん!!

いや、知っとるわって声が聴こえてきそうですね。

 

まあ、実際に実家の目の前は東京ドーム1個分ぐらいのみかん畑が広がっていましたしね。

子供の頃は、みかん畑に入って、腐ったみかんを投げ合ったり、鬼ごっこしたりしてたなぁ~。

まさに「みかん畑で捕まえて」で、サリンジャーもびっくりでした。

 

うちの実家も専業ではないですが、副業で山にみかん畑があって、オヤジが頑張って作っていました。

普段は一人でもまあまあイケるんですが、人手がいるのが年末あたりの寒い時期の収穫作業。

雪が降ったらみかんがダメになってしまうらしく、家族総出でみかん収穫をしていました。

 

キャリーいっぱいにみかんを獲って、軽トラまで坂道を駆け上がるのがだいぶキツかったっすね。

寒いし。

そっから、倉庫にしばらくねかして出荷していましたが、そんなに儲かってはなかったみたいです。

 

ちなみに父親はみかんのジュースとか、みかんのゼリーとかを作る会社で働いていたので、実家は完全にみかんのお蔭で生活が成り立っていました。

みかん様様です。

いや、食うんだけどさ?

 

 

 

☆好きなフルーツの話とかさ。みかんはあんまり・・・☆

 

好きなフルーツの話をしよか?

ここは、みかんでしょ?って。

そう思う?

毎日毎日、みかんばっかり食べてて?

部屋のベランダから見える景色は、一面のみかん畑で?

 

嫌いっていうのはアレですが、ぶっちゃけ飽きましたわ。

愛媛県民失格でしょうか。

人間失格ばりに?

みかんが好きじゃない愛媛県民なんて、サッカーとサンバが嫌いなブラジル人みたいな感じか?

あれ?サッカーとサンバが嫌いで、新潟の旅館で働いていた陰気なブラジル人の話とかしたっけ?(実話)

 

関係ないけど、10年前ぐらいに朝食に出されたみかんが腐っていたことがあったっけなぁ・・・。

剥かれたみかんが皿に盛られていて、「ごげべろふぉいえじょえいじょいじぇおうぃfjw」ってなって、ごふぁってみかんを吐き出したことがありました。

アレは、奥様からの「お前は腐ったみかんだ」っていうメッセージであり隠喩だったのでしょうか?

だとすると、やはり海辺のカフカで大島さんが言ったように世界はメタファーなのかもしれません。

 

あっ、好きなフルーツの話でしたね。

まあ、そんなにフルーツとか好きでもないんですが、あえて言うならシャインマスカットとか、ナシですかね。

買ったり、剥いたりしてまでは食べようとは思いませんが。

美女が剝いてくれて、アーンしてくれるなら食べてもいいかなと思います。

幼少のみぎりには、ばあやがみかんも皮を剥いて食べさせてくれていましたが。

ええ、ヒロ氏はお坊ちゃん育ちだったのでせうよ。

 

まあ、ちょっとみかんをディスったりもしましたが、愛媛県民らしく最後はみかんを讃えるこの歌を聴きながらお別れしたいと思います。

それでは聴いてSEX MACHINEGUNSで「みかんのうた」

みかんみかんみかん!!


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【本】太宰治『お伽草紙』~DJ太宰がおとぎ話や、古典文学をリミックスしたyo!!~

1、作品の概要

 

『お伽草紙』は太宰治の短編小説集。

1945年10月25日に筑摩書房より単行本が刊行され、1972年に新潮文庫版が刊行された。

新潮文庫版『お伽草紙』には、『盲人独笑』『清貧譚』『新釈諸国噺』『竹青』『お伽草紙』が収録されている。

新潮文庫版で399ページ。

誰もが知っている昔話を近代風にアレンジした『お伽草紙』をはじめ、過去の伝承や民話をもとにした短編小説群。

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2、あらすじ

①盲人独笑

『葛原匂当日記』をもとに、盲人の一流芸術家の心情を語る。

 

②清貧譚

貧乏な1人暮らしをしながら、菊の花に目がない才之助。

道中で出会った陶本姉弟と同居することになり、弟の三郎の菊を育てる技術に舌を巻くのだった。

 

③新釈諸国噺

井原西鶴の作品を基に、再構築した12編の作品群。

 

④竹青

古代中国、魚容という貧書生は、両親とは死別し叔父から醜い妻をあてがわれて日々苦しい生活をしていた。

30歳になった折に、出世を志して受けた試験に落第し、失意の魚容は呉王廟で自らがカラスになり、美しい雌のカラス竹青と一緒に飛び回る体験をする。

 

⑤お伽草紙

『瘤取り』『浦島さん』『カチカチ山』『舌切雀』の4編の日本に伝わる昔話をアレンジした短編小説群。

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ

 

『お伽草紙』は、近所の古本屋に売っていたので買ったのですが、正直古典的作品とかはちょっと苦手で読み切れるかちょっと心配でした。

400ページぐらいあって分厚いし、時間かかるかもって思っていましたが、意外とするするっと読めました。

太宰治の新潮文庫作品はコンプリート目指しているんで、避けては通れぬとおっかなびっくり読んでみましたが、面白かったです。

 

 

 

4、感想(ネタバレあり)

 

『お伽草紙』『新釈諸国噺』を中心に古典作品や、民話などを近代風、太宰治風に再解釈した物語群。

軸となるこの2作品は1944~1945年に書かれたもので、戦争末期の闇と破滅に包まれた日本の状況の中で生み出されました。

この時期、『津軽』『パンドラの匣』などの名作も相次いで書かれていて、解説などでも他の作家がほとんど創作活動ができなかった中で、太宰は旺盛な創作意欲を発揮し、ほとんど一人で気を吐き孤軍奮闘します。

 

初期の「死にたがりの太宰」はどこへやら。

ただ、戦争と国家の存亡の危機という圧倒的な暴力と破滅の前では、個人の絶望や懊悩はほとんど児戯に等しく、矮小なものであったように思えます。

空襲に怯えながら防空壕の中で物語を練り、郷里に疎開しながらも書き続けた太宰の心中はいかなるものだったのでしょうか?

古き善き物語の力を信じ、暗い時代に物語の光を解き放とうとしていたようにも感じました。

 

なにかこの時の気持ちのまま作品を書き続けていたら、もっとたくさんの優れた作品を生み出していたんじゃないかとも思いますが、戦後に「家庭破壊者」となり、心中という悲惨な末路を辿ったのが残念でなりません。

でも、精神の荒廃が『人間失格』『斜陽』のような傑作を生みだした原動力になったことも否めず、なにが彼の創作にとって良かったのかは容易には断定できないとは思いますがね。

 

『お伽草紙』は既存の物語を再構築したり、インスピレーションを得た作品群を収めています。

音楽の世界では、サンプリングや、リミックス、カバーなど自らのオリジナルではなくても先人たちの音楽をリスペクトしながら、再構築していくような試みがずっとなされていて、その中で進化を続けているように感じています。

小説の世界でも、もっとそういう試みがあってもいいのではないかなと思うのですが、未読ですが太宰治『女生徒』を本歌取りした九段理江『Schoolgirl』や、芥川龍之介へのオマージュと思われる金原ひとみ『ヤブノナカ』など、少しずつそのような取り組みも増えてきているように思います。

この2人の作家が音楽好きで、作品にも音楽の話題が出てくることが多いというのも興味深い点ですね。

『吾輩はパグである』『銀閣寺』とか、名作へのオマージュ作品なんか書いたらワンチャン話題を呼ぶかもしれないので、誰か書いてみてください(笑)

 

『盲人独笑』は正直よくわかりませんでした。

『葛原匂当日記』を一部抜き出したとのことですが、太宰が作家としてのエゴが出て手を加えてしまった、とあとがきで述懐しているのが印象深かったです。

『葛原匂当日記』の太宰mixとういうことですね。

 

『清貧譚』は、中国の怪奇小説集『聊斎志異』の一説に影響を受けて書いた短編小説です。

短いですが起承転結がはっきりとしていて、不思議なお話。

『新釈諸国噺』でもそうでしたが、やたら清貧を説いたり、貧しい境遇にいる人物が多く出てくるようですが、戦時中の困窮した生活が物語にも投影されているのでしょうか?

そういった貧しさを嘆いたりせず受け入れている登場人物も多いように感じますが、執筆当時の困難な状況を乗り越えていく太宰なりのメッセージだったようにも思います。

陶本姉弟が実は菊の精だったという展開もなんとも驚きの展開。

 

『新釈諸国噺』は12編の短編小説からなり、井原西鶴の作品をなるべく全国津々浦々にわたるようにして拾った作品群です。

太宰自身が前書きのような文章で、「古典の現代訳なんて、およそ、意味の無いものである。作家の為すべき業ではない」とか言って、原文2~3枚の作品を10倍以上の長さに太宰流にイマジネーションを駆使して膨らませたものだそうですね。

漫画で言うと、手塚治虫『鉄腕アトム』の「地上最大のロボット」を浦沢直樹がリメイクして『PLUTO』にしたら全8巻でめちゃくちゃ長くなったみたいな感じ?

 

太宰と言えば、芥川龍之介大好きなイメージがありますが、「わたしのさいかく」などとおちゃらけて言っているぐらいだからやはり古典文学にも通じていたのでしょうね。

まあ、芥川も『鼻』『芋粥』『地獄変』『杜子春』ら古典文学や中国の伝承っぽい話とかをたくさん書いていたので、その影響も多分にあうのでしょうが。

そういえば、『猿蟹合戦』も書いていましたね。

やっぱり、この辺りは芥川の影響が透けて見えるように思います。

 

12の物語をひとつひとつを拾うことは(めんどくさいから)致しませんが、物語の根底に共通して流れる通奏低音のような「もののあわれ」を感じました。

って、感覚的にもののあわれって言葉を使っていたので意味を調べてみました。

得意のWikipediaでなっ!!

もののあはれ(もののあわれ、物の哀れ)は、平安時代の王朝文学を知る上で重要な文学的・美的理念の一つ。折に触れ、目に見、耳に聞くものごとに触発されて生ずる、しみじみとした情趣や、無常観的な哀愁である。苦悩にみちた王朝女性の心から生まれた生活理想であり、美的理念であるとされている。日本文化においての美意識、価値観に影響を与えた思想である

驚くような奇妙な話や、数奇な運命、悲しき結末など、様々な形で情緒に訴えかけてくる物語群でしたが、しみじみとした情緒や、無常観的な哀愁がそこかしかに漂っていて、人間の感情により直接的に訴えかけてくるような形で描写されていました。

やたら出家したり、やたら自死したりとかするのは古典文学あるあるなのかなと思いましたが、武士道だったり情け深さは古くからの日本人の美徳で、現代ではなくしかけている日本人の精神の美だと思います。

 

『竹青』は、『清貧譚』と同様『聊斎志異』の一編を再構築した作品です。

『清貧譚』は江戸を舞台にしているのに対して、『竹青』は古代の中国の湖南が舞台となっています。

呉王廟(三国志の呉の甘寧じゃん!!)での神秘体験は仙人やら神様の領域の話で、やはり芥川龍之介の杜子春を彷彿とさせられますね。

最後に教訓があるのも同様。

 

主人公の魚容がカラスになって竹青と洞庭湖を飛び回る場面は、とても幻想的で爽快でした。

ラストで竹青と漢に行きますが、妻のことが忘れられなかったことで、神の試験を辛うじてパスした魚容。

いや、でもだいぶギリギリっつーか、竹青が無理くり助けた感じにもみえましたが。

彼女が魚容に放った言葉は印象的でした。

人間は一生、人間の愛憎の中で苦しまなければならぬものです。

逃げんじゃねーよ、って感じっすか。

家に帰ったら、妻の顔がなんやかんやあって、美人の竹青になっていたっていう展開はご都合良すぎちゃうん?って感じでしたが、魚容が凡庸にその後も生きたというラストは、何者かになろうとする誰かに、そうなれなかったとしても日々を大事に凡庸に生きることの尊さを説いているようにも感じました。

 

『お伽草紙』は、『瘤取り』『浦島さん』『カチカチ山』『舌切雀』の4編の日本に伝わる昔話をDJ太宰が大胆にリミックスしてます。

文庫版の解説でもありましたが、『新釈諸国噺』では井原西鶴への遠慮、支持者からの攻撃を恐れてかわりとおとなしめだったDJ太宰。

『お伽草紙』では、だいぶ太宰節が炸裂しています。

 

まず前口上から面白い。

戦争で防空壕に逃げ込むという悲惨な体験の中に、物語を以って外に出たがる5歳の娘を引き付けることを試みるパパ太宰。

物語を語るという特異な能力を持っているという自負を語る。

そういえば、村上春樹も原初の物語が洞穴の中で語られていたとして、自分はその技術にも卓越していてうまく語っていたと思うみたいなことを言っていたことを思い出しました。

作家というのはそういうものかもしれませんが、『お伽草紙』において特に太宰は物語の力を信じ、何かを託しているように思いました。

 

『瘤取り』は、まさに芸は身を助く的な展開。

主人公の爺さんが酒好きっていうところに吞兵衛の太宰の好みが反映されているように思います。

家庭にイマイチ居場所がなく、妻はドライで、息子は聖人。

ちょっ、息子が聖人って(笑)

なかなか独創的な設定してますな~。

 

『瘤取りremix太宰』で描かれているのは、一種の不条理だと思います。

主人公の爺さんも、鬼も、瘤をつけられてしまう爺さんも何も悪いことをしていないのに何だか困ったことになってします。

そんなのってないよな、っていう不条理が描かれていました。

鬼が怖ろしいものとして描かれていないのも印象的でした。

 

『浦島さん』は、一番好きな作品です。

まず亀のキャラクターが毒舌キャラでアニメか漫画かっていうぐらいのキャッチーっぷり。

浦島を助けた亀が毒舌で、浦島をディスりながら竜宮城に連れて行くなんて誰が考えるんだyo!!

浦島太郎の兄弟構成とか、冒険心に乏しい長男とかディスられている感じもリアルでいいですね。

 

竜宮城の様子も何か既存のイメージとかけ離れていて、殺伐としているというか簡素というか・・・。

タイやヒラメが舞い踊って、御馳走が並んでいる感じではなくてビックリでした。

しかも、乙姫が超不思議ちゃん。

だいぶ想像の翼を広げてるねオサム・ダザイ!!

 

そして、誰もが思ったであろう玉手箱の謎。

これも不条理すぎてカミュもビックリですが、太宰がガチに考察して、パンドラの匣やら持ち出して大騒ぎ。

このあとに『パンドラの匣』ってタイトルで小説を書いたのも示唆的ですね。

中村文則の書評で28回ぐらい書いてますが、最後に残った一握の希望っていうの好きですよ、ワタシ。

年月は人間の救いである。

忘却は人間の救いである。

少々苦し紛れの感は否めませんが、太宰がひねり出した答え。

そもそも浦島が不幸になったのかどうかということを考察して、もしかしたら玉手箱は救済だったのではという解釈でした。

いや、そんな時間の流れが違う空間に説明なしに連れて行くのがそもそも不条理なんちゃうんってツッコミはありますが。

 

『カチカチ山』は、ちょっと現代でも実写化できるレベルのキャッチーさ。

ウサギが16歳のJKで、タヌキが37歳のデブのキモオタ。

タヌキがウサギに一方的に惚れて追い回すけど、ウサギは冷徹にタヌキを殺そうとしているっていう話に大胆リミックス。

換骨奪胎どころの騒ぎじゃねぇ。

 

しかし、この着眼点も太宰の娘の「タヌキさん、かわいそう」の言葉がヒントになったっていうのも面白い。

子供の感想って忖度なく、曇りなき眼で見定め決めていて純真ですね。

ここにも不条理があって、タヌキがそこまで悪いことをしたのかっていう話ですが、童話ではマイルドにしていますが、本当の話では婆さんを殺して味噌汁にして爺さんに食べさせるっていう残虐な行為をしているのがこのタヌキ。

まあまあ、サイコパスです。

 

しかし太宰版の『カチカチ山』ではちょっとかわいそうなタヌキ。

若く美しい女性の、ブ男への冷酷さがこれでもかと描かれています。

こわぁ~。

現代のマチアプなんかでも繰り広げられてそうな光景ですね。

惚れたが悪いか。

 

『舌切り雀』は、とても幻想的な要素もあってロマンチックな話でした。

『瘤取り』でもあったような夫婦関係と、実際の家庭生活が描かれていて、婆さんが嫉妬のあまり雀の舌をむしりとってしまう描写はいかにも残酷でした。

しかし、『瘤取り』『カチカチ山』といい、太宰はよっぽと女性の恐ろしさを感じるような場面に出くわしていたのでしょうか?

女性の人権団体とかに抗議文を送られそうな内容です。

 

強欲で嫉妬深い婆さんが、強欲ゆえに死んでしまい、欲のない爺さんが亡くなった婆さんの金で出世する。

ちょっと、アイロニーが効きすぎて辛辣な気もしますが、足るを知って欲張らない人間が福を招くという説話でした。

 

 

 

5、終わりに

 

古典とか、昔話的な話は苦手意識がありましたが、とても良かったです。

古き善き物語を再解釈、再構築する意味。

解説でもありましたが、現代の作家にももっとしてほしい試みですし、そういう物語を読んでみたい気がします。

僕も『吾輩はサンショウウオである』で、文学賞を虎視眈々と狙いたいと思います。

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