☆三島由紀夫を彷彿させるような美麗な文章で綴られる現代的純文学の申し子・平野啓一郎☆
なんか長ったらしく仰々しい紹介ですが、平野啓一郎へのリスペクトが伝わってくると思います(笑)
豊富な語彙で紡がれる耽美的で美麗な文章は現代作家随一なのではと思います。
ため息が出るような情景描写は繰り返し2度も3度も読み返してしまい、精神を酩酊させる美酒のよう。
たとえば、『マチネの終わり』にのこの文章。
ただその音楽とだけ一つになって、すべてから解放されたかった。時間と旋律とが、一切の過不足なく結び合って流れてゆく美に融け入りたかった。
はい、声に出して読んでみましょー!!
時間と旋律が、一切の過不足なく結び合って流れてゆく美に融け入りたかったとか、どうやったらこんな表現を思いつくのか・・・。
無駄がなさすぎる。
流麗かつ甘美。
『ある男』で木戸が家で音楽を聴いている。
ただ、それだけの場面。
そこに、悶絶しそうな美しい文章をぶっこんでくるのが、平野パイセン。
時間が、ゆっくりと解体されてゆくようなテンポだった。旋律が、一滴ずつ、澄んだしずくとなってしたたり、静まり返った室内に、幾重にも波紋を広げていった。
時間がゆっくりと解体されてゆくようなテンポって、どんなテンポやねん!!
いや、もう凄まじい。
読点の打ち方もエロすぎますよ。
「時間が、ゆっくりと・・・」とか、芸術性を感じる音楽的な読点の打ち方です。
旋律が、1滴ずつ、澄んだしずくとなってしたたり、静まり返った室内に、幾重にも波紋を広げていった、ってもうただ音楽を聴いている描写がどうしてこれほどまで研ぎ澄まされた美しい表現になり得るのか・・・。
時間を解体したリズムの次は、メロディーがしたたって波紋を広げる。
旋律がしずくになってしたたるとか、詩的すぎる表現。
そのしずくが、静かな部屋に波紋を広げていくとかもう・・・。
この文章でご飯が5杯ぐらいイケます。
はい、次は『空白を満たしなさい』のラストシーンです。
世界が一斉に、目も開けていらないほどに眩しく輝いてゆく。永遠が、一瞬と触れ合って、凄まじい光を迸らせる。
璃玖が駆け寄ってくる。抱きしめるまでは、もうあと少しだった。
今読み返しても、鳥肌がぶわーって立つような美しくも印象的な文章。
永遠が、一瞬と触れ合って、凄まじい光を迸らせる、とか他の誰にこんな文章が書けますか?
抱きしめるまでは、もうあと少しだった、っていう終わり方も秀逸ですね。
文章だけではなく、テーマも秀逸で、特に近作の『マチネの終わりに』『ある男』『本心』などでは、メッセージ性の強い、尚且つ物語を楽しめる作品を生み出しています。
芸術性の高い文章と表現で純文学的な要素を醸しながらも、時代に沿ったテーマを持った作品が、娯楽性の高い物語として成立している。
まさに1粒で3度美味しい。
グリコもビックリな現代的純文学作品ともいうべき、独自の文学作品を生み出しているのが平野啓一郎という作家なのです。
平野啓一郎という作家を思い浮かべるときに、少しイメージが重なる作家が中村文則です。
全然タイプは違うんですが、どこか深いところで共鳴しあっているように思えるのですよね。
平野啓一郎は15の短編集、長編小説を刊行していますが、すでに第1期~第4期まで作品が分類されいています。
生前にこんなことをする作家も珍しいですね(笑)
☆平野啓一郎作品の感想まとめ☆
当時、まだ大学生。
第2期の幕開け。
遠い昔の出来事を描いた初期3部作に比して、現代が描かれて、文体も平易なものへと変化した。
初めての短編集。
ルポタージュのような中編小説。
現代の病理を暴いたような作品。
漫画雑誌「モーニング」に連載された。
死んだ人間が蘇るというSF的な物語でありながら、生きることの意味、分人主義などの要素も詰め込まれ傑作長編小説。
第4期のはじまりを告げる短編小説集。
官能的で、どこか翳のある物語たち。
大人のラブストーリー。
お互いを尊重しあいながら、思考や、哲学、人生観までそっくり愛して肯定しあえるような。
美しくも、奥深い。
ミステリー要素が強い作品ながらも、人間の本質に鋭くせまる。
はたして、愛とはなにか?
少し先の未来を描き、そこで起こり得る問題について語られている。
愛する人の他者性を受け入れることができるか?
☆メディアミックス、新作、評論☆
映画、ドラマなどのメディアミックスで当たり外れがありますが、ここまでの平野啓一郎作品は当たりが多い印象です。
『マチネの終わりに』『ある男』の映画は素晴らしかったですね。
『空白を満たしなさい』のドラマも良かったです。
そして、もうすぐ『本心』も映画化。
こちらも傑作の予感です。
新作の短編小説集『富士山』も今月刊行で楽しみです。
ひさびさの短編小説集楽しみやな~。
評論やら、新書でいろいろ小説以外の本も刊行しています。
三島由紀夫論の評価がめっちゃ高いので読んでみたいッス。
そんなわけで、平野啓一郎についてでした!!
だいたい読んでいるのですが、『葬送』が未読なので、近々読む予定です!!
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