1、作品の概要
『関心領域』(The Zone of Interest)はアメリカ、イギリス、ポーランド共同製作の映画。
2023年12月15日にアメリカで、2024年5月24日に日本で公開された。
監督・脚本はジョナサン・グレイザー。
クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー(落下の解剖学で主演)らが出演している。
音楽はミカ・レヴィ。
マーティン・エイスミスの小説『関心領域』が原作。
上映時間は105分。
配給会社はA24。
第76回カンヌ国際映画祭でグランプリとFIPRESCI賞を受賞。
第96回アカデミー賞で作品賞、監督賞などの5部門にノミネートし、国際長編映画賞、音響賞を受賞した。
2、あらすじ
ポーランドのアウシュビッツ強制収容所の所長ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)中佐は、収容所の隣に自宅を構え一家で幸せに暮らしていた。
ルドルフの妻・ヘートヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)は、時間をかけて美しい庭園を作り上げ、子供たちとの贅沢な暮らしに幸せを感じていた。
アウシュビッツ強制収容から聞こえてくる銃声、悲鳴。
真夜中も焼却炉の煙突から噴き出す炎と煙。
その隣で一家は幸せに暮らしていたが、ルドルフにオラニエンブルクに転属の内示が出て・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
わりとモヤモヤ不穏系な映画が好きで、A24の映画はちょいちょい観ています。
なんか良さげと思って観たらA24の映画だったってパターンも多くて、そのうちA24特集の記事も書いてみよかと思っています。
はてなブログの映画クイーンのnonoさんが紹介記事を書いていたので、以前から気になっていました。
想像を超えるモヤモヤ具合でした(;^ω^)
ゲオの新作でも100円レンタルクーポンがあったので、レンタルして観ました。
4、感想(ネタバレあり)
しょっぱなから暗い画面で不気味な音が流れていて、ザワザワ感MAXでした。
冒頭のシーンは、ヘス一家の幸せいっぱいの場面。
ルドルフの誕生日に妻がボートをプレゼントして、子供たちと一緒に祝っている。
素敵な家に幸せそうな家族。
誰もが今の生活に満足していて、幸福そうです。
妻のヘートヴィヒはアウシュビッツの家に強い執着を持っていて、何もなかったところに素敵な庭を作ったことを誇りに思っています。
母親を呼び寄せ家に泊まらせますが、隣のアウシュビッツ強制収容所からの炎や煙、音などに悩まされて、ヘートヴィヒに断りなく置手紙を置いて帰ってしまいます。
幸せそうな家族の情景のバックグラウンドに流れている銃声やうめき声、焼却炉の音。
あえて直接的には映像にされていませんが、そこで起きていることを想像させられるような音による演出がされています。
現代音楽のような音楽といい、映画の音は不穏でいい感じでした。
家族と子供たちを愛する働き者のパパであるルドルフ。
いかに効率的にユダヤ人を焼き殺すかの相談を家のリビングでしていたりします。
2つの焼却炉が交互に1000度の高熱になって・・・、とか吐き気がしそうな大量虐殺を真顔で熱心に相談している。
そんな血塗られた手で妻子を抱く。
怖いのはルドルフがどう見ても家庭的で、優秀な人間で、きさくでいいやつっぽく描かれているところですね。
当時ヨーロッパにいたユダヤ人の実に3分の2である600万人を虐殺したおぞましいまでの大量殺人であるホロコースト。
その実行者、当事者たちは精神異常者で残忍な人間なのだろうと想像するのが普通だと思います。
でも、もしホロコーストの実行者たちが、僕たちと同じように普通の人間だったとしたら?
この映画は、そんな空恐ろしい問いかけをしているように思いました。
以下は、wikiからの転載です。
グレイザーは、ホロコーストを実行した者たちがしばしば「ほぼ神話的なまでに邪悪な」者たちとして描かれていると指摘し、そういった点について神話性を除去して明確にする映画を作ることを志していた。ホロコーストの物語を「過去にあって現在には関係しない何か」としてではなく、「今、ここでの物語」として語ろうとした。自身のアプローチについて、グレイザーは「私たちは、自分ではそんなことはないと思いたがっているかもしれないが、感情的にも政治的にも、ホロコースト実行者のカルチャーに近いのだ、ということを示すことによって、自分たちを『安泰ではない』という気持ちにさせる」
いくつか理解できないシーンもあったのですが、白黒っぽいアニメーションみたいな場面はポーランド人の娘・マルタがユダヤ人がみつけてくれるよう、リンゴやじゃがいもを埋めているシーンだったようですね。
これは、実際にグレイザー監督が取材中にあった女性の実話みたいですね。
ヘス夫妻も、ヘス邸も実在していたようで、グレイザー監督が綿密に取材したそうです。
想像力の欠如。
それと、ヒトラーという圧倒的なカリスマと、巧妙な支配とプロパガンダ。
そういった条件が揃うだけで、ごく当たり前の人間が目を覆うような残虐な行為に手を染め、蛮行に加担してしまう。
隣の壁の向こうでなくても、文明の発達とグローバル化によって狭くなり続ける世界の隣人に対しての無関心さ、想像力の欠如によって、無自覚のうちの侵略や搾取を行ってはいないか?
現代を生きる人々への、グレイザー監督からの警鐘のようにも捉えられる映画だったかと思います。
5、終わりに
難解な映画で、観終わったときには「???」となった部分もあり、得意のwikiで調べました(笑)
ドキュメンタリーっぽい映像も、不穏な音楽も好みでした。
どこかクリストファー・ノーランを彷彿とさせるような雰囲気もありました。
余談ですが、ジョナサン・グレイザー監督ってジャミロクワイの『Virtual Insanity』を撮った監督みたいですね!!
すげー。
あのMVめちゃくちゃ好きなんですよぉ。
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