1、作品の概要
映画『めくらやなぎと眠る女』は、フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作ののアニメ映画。
2022年に公開された。
2024年7月26日に日本でも字幕版、吹き替え版が公開された。
原作は村上春樹で、『めくらやなぎと眠る女』『かえるくん、東京を救う』『UFOが釧路に降りる』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『かいつぶり』『バースデイ・ガール』の6編の短編小説を編集した。
村上春樹作品では、はじめてのアニメ映画化。
監督はフランス人のピエール・フォルデス。
上映時間は109分。
日本語版の吹き替えを、小村(磯村勇斗)キョウコ(玄理)片桐(塚本晋也)が担当した。
2011年、東日本大震災後の東京で3人の男女の喪失と再生の物語が始まる。
2、あらすじ
東日本大震災後の東京。
小村の妻・キョウコは震災のTVニュースをずっと見続けて、魂を抜かれたように他の事は一切しなくなってしまっていた。
やがて彼女は突然置き手紙をして、小村の元を去ってしまう。
「あなたは空気の塊のようなひとでした」と。
失意の小村は1週間の休暇を取り、友人から釧路の妹にあるものを届ける仕事を依頼される。
銀行の融資課に勤める片桐は、何のとりえもない独身の中年男性。
ある日、帰宅するとそこに「かえるくん」がいて、一緒に大地震から東京を救うために「みみずくん」と戦って欲しいと言われる。
戸惑う片桐だったが、自身のことを高く評価し、信頼してくれる「かえるくん」と心を通わせ、東京を救う決意を固める。
そして小村の元を去ったキョウコは、レストランで20歳の誕生日にあった不思議な出来事を話す。
ー決して自分からは逃れることができないー
震災後の東京を背景に、3人の喪失と再生の物語は進んでいく・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
村上春樹の短編6作品をフランス人の監督がアニメ化っていうので興味を惹かれました。
正直、絵柄はアレだったんですが、まあエキゾチックと言えなくもなくなんとなくアーティスティックな内容な予感もあり、公開を楽しみにしていました。
『かえるくん、東京を救う』がアニメ化とか激アツ過ぎですしね(笑)
これは、実写ではさすがにできないでしょうね。
4、感想(ネタバレあり)
いや、冒頭から音楽いいっすね。
なんかオーケストラがやってるみたいですが、ちょっと現代音楽風味もあって、アート的なアレでいい感じでしたわ。
絵柄はもうちょっと何とかならんかったんかな?って感じもありましたが、そこはかとなくエキゾチックで、まあいい感じでしたね。
僕が1番この映画で好きだったのは夢のシーン。
ここは幻想的でめちゃくちゃ良かったです。
この映像は村上春樹の作品のメタフォリカルなイメージを具現化している感じがして最大の見どころだと思います。
個人的に、作中いくつかあるこの夢のシーンを観られただけでも観に行った甲斐があるように感じました。
やはり、村上春樹の作品は夢や、想像力がモチーフになっていますし、そういう場面を実写で映像化してもどこかチープな感じがするように思いますが、アニメだと幻想的な感じがしていて良かったですね。
ただ性的なシーンはどこか生々しくてグロテスクで×でした。
エロソムリエとして、日本的なエロスのなんたるかをピエール・フォルデス監督に切々と訴えたいように思います。
キョウコと、小村の親友が病院でフレンチ・キスしてるシーンとかはだいぶアカン気はしました。
違う違うそうじゃない。
って、某グラサンのあの人みたいに思いました。
6作品の混ぜ方は、僕としてはめっちゃ上手だったと思いました。
スムーズなHOUSE DJのミックスみたいに、いつのまにか次の曲になってるみたいな印象を受けました。
あくまで個人の感想ですが(;^ω^)
『バースデイ・ガール』のぶっこみ方とか、なるほど~ってなりました、そこから『ねじまき鳥と火曜日の女たち』かよ~って感じで。
『かいつぶり』はどこで触れられているかわからなかったのですが、夢の階段からの廊下なんすかね?
ただ、村上春樹の作品で妻や彼女が突然消えるのは謎の現象で、ねじまき鳥のクミコは最後に語ってくれますが、突然消えて理由がわからないというのがなんともいえずに良いところだと思っていて、キョウコ視点での物語を入れるのはどうだろうなとも思いました。
『バースデイ・ガール』のエピソードの入れ方は面白かったんですけどね。
『UFOが釧路に降りる』も、なぜ妻が去っていったのか、震災の映像が彼女の何をどう刺激したのかがわからないところが魅力だと思うので。
もちろん、個人的にですが。
あっ、なんか批判している感じみたいになりましたが、楽しく観させて頂きましたよ。
特に『かえるくん、東京を救う』のエピソードは個人的には120点でした。
かえるくんのキモカワっぷりが、視覚的に伝わってきましたし、まあまあ激しいリアクションとかもなんかツボでした。
特典のかえるくんステッカーは大事にしようと思いますが、こっそり次男氏のランドセルに貼るイタズラも考えている、いたずらヒロくんです。
『かえるくん、東京を救う』『UFOが釧路に降りる』で描かれていて震災は神戸の震災で、2編が収められている短編小説集『神の子供たちはみな踊る』は、間接的に神戸の震災の影響を受けた人々を描いていましたが、映画『めくらやなぎと眠る女たち』では東日本大震災に置き換えられています。
直接的でなくて、大きな災禍は人の心を不可解に変容させてしまう。
潜在的に人の心の奥底に檻のように溜まっていた闇を鮮明にいぶりだしてしまう。
キョウコが触発されたのはそのような災禍のもつ圧倒的で悪魔的な負の力の集合体で、マスメディア、インターネットにのることでさらに力を増して、津波のように人の心を攫っていくように思います。
小村からキョウコが離れたのはそんなふうに、彼女が敢えて見ないように感じないようにしていた闇を、災禍が活性化させたせいでもあったのかなと思います。
小村にとっては悲劇ですが、彼もまた自分という逃げられない、どこまでも追いかけてくる存在と向き合うことを求められます。
しかし小村の顔が40台ぐらいのころの村上春樹の顔に似ているのは偶然?
ってか、村上春樹ですよね(笑)
最後にこの映画で一番興味深くて、かつよくわからなかった猫のワタナベノボルについて。
えっ、あれって何なんすかね?
何かのメタファーだとは思いますが・・・。
映画のポスターでも、「メタファー的ワタナベノボル青」とか勝手に名付けてしまいそうな青い猫がいますが、夢やイメージではワタナベノボルは青くてなんか意味ありげな猫です。
夫婦の絆の象徴?
ねじまき鳥的に、ワタナベノボルという夫婦平穏の象徴がいなくなったから結果的に夫婦関係が崩壊したのか?
子はかすがいとも言うけど、ある意味で猫のワタナベノボルは子供のメタファーだったのでしょうかね?
少なくともこの映画においては。
いや、知らんけど。
最後にキョウコのスーツケースの中に猫のワタナベノボルが紛れ込んでいたのにはビックリ&なんか興味深いラスト。
ねじまき鳥のメールがキーになって、キョウコの側にワタナベノボルが現れたのは、復縁の予兆?
んー、違うのかな。
猫の描き方がとても気になるので、ピエール・フォルデス監督を「ZIP」に呼んで、福くんにインタビューしてほしいっす。
5、終わりに
珍しく批判っぽいことを言いましたが、なんだかんだ良かったですよ!!
でも、村上春樹ファン以外は楽しみない映画だと思いますね(;^ω^)
「みみずくん」といえば新海誠監督の『すずめの戸締り』で、村上春樹へのオマージュを感じさせる場面がありましたが、いつか新海監督で村上春樹作品をアニメ化してほしいですね~。
『風の歌を聴け』『スプートニクの恋人』とか絶対にめっちゃ合うからさ~。
よろしゃすお願いします。
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