ヒロの本棚

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【映画】『劇場』~一番会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことがなんでできなかったんだろう~

1、作品の概要

 

2020年7月17日に公開された映画。

山﨑賢人、松岡茉優主演、行定勲監督作品。

音楽をサニーデイ・サービス曽我部恵一が担当。

原作は又吉直樹の長編小説。

 

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2、あらすじ

 

演劇に魅せられた永田は高校の友人・野原とともに上京して劇団「おろか」を結成。

劇団は上手くいかず、酷評される毎日の永田だったが、偶然路上で出会った沙希と付き合いだし彼女の家に転がり込むようになる。

夢を一心に追い続け演劇の脚本を書き続ける永田だったが、次第に自らの才能のなさを自覚するようになり自堕落な生活をするようになる。

そんな永田を懸命に支えて、愛し続ける沙希。

そんな2人の蜜月の日々に少しずつ亀裂が入り始めていく・・・。

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  • 山﨑賢人
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3、この作品を観たきっかけ、思い入れ

 

以前から原作のあらすじを読んでいつか読もうと思っていたのですが、結局映画のほうを先に観てしまいました(笑)

又吉の作品は未読なのですが、これを機に原作の『劇場』も読んでいたいですね。

 

8月4日にレンタル開始したばかりだったのですが、ゲオで新作100円セールをやっていてソッコーGETしました♪

原作が又吉で、監督が行定勲監督で、主演が山﨑賢人、松岡茉優でおまけに音楽が曽我部恵一とかいうテッパンな映画でしたが、心にしんみり残る良い作品でしたね~。

 

 

4、感想

 

いやー、なんかしんみりとくる良い映画でしたー。

原作読んでないんで、原作ファンがどう感じたかとかはよくわかりませんが僕は好きな映画でした。

 

令和というより、昭和な感じがしましたがそこがまた良かったなぁ。

夢を追う青年とそれを支える彼女みたいな。

住んでるアパートもね、下北でワンルームとか。

部屋の感じもいい感じでしたね。

マンションじゃなくてアパート。

ホールとかなくて、オートロックとかもない感じの。

これが、お台場のタワマン住みのお嬢様だったら違う感じになったんでしょうがね(笑)

 

 永田は、昔の文豪とかみたいな見事なヒモっぷり。

ダメ男っぷりがハンパなかったですねぇ(^_^;)

いやな見方かもしれませんが、ヒモ男って自分を庇護してくれそうな女性を見つける才能に優れているのかなって思うぐらい永田のヒモっぷりはプロレベルでした。

まぁ、もちろんイケメンだからできる芸当なのでしょうが(笑)

 

山﨑賢人は、『羊と鋼の森』の繊細で真面目な青年を演じ、『キングダム』では破天荒で勢いのある少年を演じましたが、『劇場』では崩れた感じがある売れない劇作家の男を演じていてギャップに驚きました。

あんまりこういう悪い感じの役はやってなかったと思いますし、新鮮に感じました。

hiro0706chang.hatenablog.com

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物語もほとんど2人でいる時間を中心に作られていて、細かい心理描写や日常の何気ない風景が描かれていて良かったですね。

何というか描きたいものの対象がはっきりしていて、物語の密度が濃かったように思います。

やはり2人で暮らしていたあの部屋が物語のキーポイントだと思いますし、笑顔も涙も喜びも哀しみも全てがあの部屋で生まれて消えていったのだと思います。

 

初めて出会った時ってお互いに20歳頃でしょうか?

そこから6~7年一緒に暮らして・・・。

とても長い歳月だと思いますし、若い頃の恋愛ってどうしても変化が多くなる中で上手くいかなくなっていくのかな?

ちょっと前に観た『花束みたいな恋をした』を思い出しました。

『劇場』では、永田はずっと変わらずに沙希が関係を変えようとして壊れていった感じはありましたが・・・。

うん、とりあえず永田はクズやで!!

途中から劇作家であって夢を追い続けるポーズを取りながら沙希に依存していくというどことなく太宰治を彷彿とさせるようなクズっぷりを発揮していましたね。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

本当に沙希は美人だし、めっちゃ性格もいいし、なんで永田みたいな男を愛して尽くしちゃったんだろうって思っちゃいますが、ついに2人の家を出ていってしまう永田に対して不満が募って精神のバランスが壊れていきます。

高円寺に執筆用のアパートって。

結局、沙希に寄り添えなかった永田は彼女を失ってしまいます。

 

ラストシーンがとてつもなく好きです。

地元に帰った沙希が荷物を受け取りにアパートを訪ねて、以前永田の演劇に沙希が出演した台本をみつけて2人でお芝居をはじめる。

永田は台本にないセリフ。

もう2度と叶わない沙希との輝かしい未来の日々を語り始める。

この場面は本当に悲しいです。

まるで、壊れてしまった器に2人でずっと水を注ぎ続けるような空虚で寂しい場面だと思います。

 

場面が一変して演劇の舞台に。

2人の未来を話し続ける永田を客席から沙希が見守ります。

目に涙を浮かべて。

どこからが演劇だったのか(もしかしたら最初から?)はわかりませんが、青森に帰った沙希が久しぶりに永田の舞台を観に来たという場面だったのでしょうか?

「一番会いたい人に会いに行く。こんな当たり前のことがなんでできなかったんだろう・・・」

永田のセリフに沙希は流れ落ちる涙を堪えられませんでした。

失ってしまってもう戻らない何か。

ロックバンドのファーストアルバムみたいなまっさらなグルーヴ。

一度失ってしまうともう2度と手に入れられないフィーリングとエモーション。

そんなことを思わせる切ないラストでした。

曽我部のアコギの音が哀切に響きながら劇場の灯りは消えていくのでした。

 

 

5、終わりに

 

ラストが本当に秀逸で、ジンときました。

それでも永田はクソ野郎だけど(笑)

永田と沙希の7年間(勝手に推測)を演じた山﨑賢人と松岡茉優の演技力にも拍手です。

あー、やっぱ原作も読んでみたいなぁ。

 

そして、どさくさに紛れて音楽を担当している曽我部さんのサニーデイ・サービスの名曲を最後に貼ってみます♪


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