1、作品の概要
『みみずくは黄昏に飛びたつ』は、川上未映子が村上春樹にインタビューしたものを編集した本。
2017年4月27日に、新潮社より刊行された。
単行本で全345ページ。
文庫版も刊行されている。
全4章からなり、第1章は2015年にされたインタビューが雑誌『MONKEY』に掲載された。
第2~4章は、『騎士団長殺し』刊行後の2017年に3回に分けてインタビューが実施された。
2、あらすじ
第一章 優れたパーカッショニスト、一番大事な音を叩かない
第二章 地下2階で起きていること
第三章 眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい
第四章 たとえ紙がなくなっても、人々は語り継ぐ
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
2度目の再読でしたが、川上未映子さんのXのポストで、秋になってきましたし、わたしが村上春樹さんに数日にわけて20時間ほどインタビューをした『みみずくは黄昏に飛びたつ』を、ぜひ読んで頂きたいなあと思っておりますと、あったので読み返してみました。
ちょうど『1Q84』を読了したばかりだったので、いいタイミングでしたし、『1Q84』の内容にも触れられていていい感じのインタビュー集でした。
単行本で345ページとボリューミーで、内容もだいぶ濃厚でした。
4、感想
対談ではなく、インタビューということで、村上春樹ファンを代表するような感じで川上未映子が村上春樹に創作のアレコレを聞いています。
この本を読むまで知らなかったのですが、彼女も村上春樹の熱烈な読者だったようで、1995年に神戸で行われた村上春樹の朗読会に、当時書店員だった川上未映子も参加していたようですね。
「普段、何食べてますか?」みたいなふわっとした質問はなく、村上春樹の創作に関して、作品についてなど、「ただのインタビューではあらない」濃密なインタビュー集になっていました。
例えば1人称か3人称かの話で、村上春樹の1人称が、一般的な1人称とはちょっと違って3人称っぽいかんじがするという話があり、村上春樹がこう答えてます。
村上 それは私小説的なファクターがあるかないかという問題だと思う。僕の場合、そういうファクターはほぼまったくないから。
なるほど、初期の「僕」とかのちょっとドライな感じは、私小説的なファクターから遠くなれたところの1人称だったからこその味のようなものだったのでしょうか?
同時に『1Q84』での完全な3人称への移行は、大きな物語は1人称では書きずらいみたいなことも言っていました。
『アンダーグラウンド』を書いたことで、多くの人たちの強い感情に触れた経験は、その後の作品にもしっかりと生きていると村上春樹は語っていました。
『1Q84』が刊行されたときに、『アンダーグラウンド』の経験が宗教団体つながりで生きてきたのかと思っていましたが、そんな短絡的なことではなくて、インタビューした人たちの生の感情に直に触れられたことが、作家・村上春樹にとって大きなことだったみたいですね。
直接的には、例えば宗教団体のテロ事件の話を書くとか、そういうアプローチはしないけど、作品の中で2重3重のメタファーを使って表現されているとのことでした。
村上春樹の小説家としての創作のスタイルは、自著『職業としての小説家』でも語られていますが、『みみずくは黄昏に飛びたつ』でも川上未映子のインタビューによって掘り下げられています。
村上春樹の長編小説の創作スタイルは、時期が来るまで待って、1日10枚ずつ必ず書き続けて、何度も書き直しをするというものでした。
ストーリーを練ったり、構成を考えたりすることは一切なく書き進めるというスタイルには驚きで、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』でも書き進めていて、たまたま最後に繋がったみたいな読者からしたら「噓でしょ!?」みたいな話もありました。
村上春樹自身もよくわからないまま書き進めていったら、自然とストーリーが進んでいくみたいな感じの書き方ってにわかには信じがたいですね(;^ω^)
ただ、そんな中で彼が最も重要に考えているが文体。
文章の力がしっかりしていれば同じようなモチーフで書いても別のものになるから大丈夫みたいなことを言っていました。
たしかに『街と、その不確かな壁』と『街とその不確かな壁』は、全く違う作品になったな~とか思いました。
他にも、地下2階、集合的無意識、洞窟スタイル、物語のボイスやら興味深い話のオンパレードでした。
後半のインタビューになるにつれて、作中の女性の性的な扱われ方などについてきわどい質問もされていて、川上未映子のインタビューも良かったですね~。
「本当は「俺上手いわやばいわ」とか思ってません?」とか段々打ち解けてきたのか、イジリっぽい感じのくだけた問いかけも笑えました( *´艸`)
村上春樹好きの方にはおすすめな1冊です!!
5、終わりに
あんまり、インタビューとか、対談集とか読まないのですが、『みみずくは黄昏に飛びたつ』はだいぶ興味深い内容でした。
「えっ、そうだったんだ」みたいな目から鱗の内容が多くて面白かったですね。
これ読んだら『騎士団長殺し』も再読したくなりました。
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