ヒロの本棚

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【映画】『TAR』~栄光、絶望、狂気~

1、作品の概要

 

『TAR』は2022年10月に公開されたアメリカの映画。

日本では2023年5月に公開された。

監督・脚本・製作は、トッド・フィールド。

主演は、ケイト・ブランシェット

音楽は『ジョーカー』のヒドゥル・グドナドッティル。

第95回アカデミー賞、監督賞、作品賞、主演女優賞など6部門ノミネート。

栄光の頂点を極めた女性指揮者がスキャンダルを機に転落していく。

 

 

 

2、あらすじ

 

ベルリンフィルハーモニーで女性初の常任指揮者となったリディア・ター(ケイトブランシェット)は、世間から指揮者としても作曲家としても高い評価を受けていた。

レズビアンであることを公表していた彼女は、パートナーのシャロンとその娘と暮らしていて、プレイベートも充実していた。

一方で、大学の講義での気に入らない生徒への対応や、副指揮者の選定での秘書で指揮者であるフランチェスカへの冷遇など、歯に布着せぬその言動は多くの者からの恨みを買うことの原因になっていた。

栄光の絶頂を極めていたターだったが、かつて指導していた若い女性指揮者のクリスタが自死したことで、仕事をエサに性的関係を持ったとの疑惑が浮上し、歯車が狂い始める。

そして、絶大な信頼を寄せていた秘書のフランチェスカが彼女の前から消え、ターの精神は徐々に蝕まれていく。


www.youtube.com

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ

 

はてなブログ界のQUEENこと、miyakoさんが紹介されていてめっちゃ好きな感じだったので観てみました!!

なんかポスター画像は観たことあったけど、内容は全然知りませんでした。

音楽と狂気とかめちゃくちゃ大好物なテーマだったので、ちゅ~るをちらつかされた猫のごとく、ヒロまっしぐらでした。

miyakoさん、『バグダッドカフェ』とかアキ・カリウスキ監督の作品も紹介していてそちらも興味津々です。

www.421miyako.com

 

解釈がわかれる難解な映画ですが、あまり説明がない映画好きですね。

『アフターサン』とかも好きですし、エヴァとかもそっち方面のはしりかもですね。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

iBUKIさんの記事もめちゃくちゃ参考になりました!!

すんげー丁寧に紹介されていて、考察もなるほど~って感じでした。

wdfmmovieusic.hatenablog.com

 

 

 

4、感想(ネタバレあり)

 

前半はこれでもかとターの栄光と充実が語られています。

バーンスタインの弟子とかすげー。

実在のレジェンド指揮者・ピアニストです。

退屈かもしれない冒頭の長々としたインタビューシーン、大学の講義シーンはクラシック音楽好きな人ならそれなりに楽しめるかもですね。

 

ターが大学の講義で生徒のマックスにバッハの音楽の素晴らしさを語り、ゴールドベルグ変奏曲だっけかな?グーグルドっぽく弾いたりとかするシーンは興味深かった。

マックスもバッハが嫌いとか、クセ強い感じでしたが、そこに突っかかりまくるターもだいぶ偏執狂的な感じで、生徒たちの前でしつこくマックスの考え方を貶めます。

そしてのちにこの動画がターの失脚のキッカケのひとつになってしまいます・・・。

 

フランチェスカへのつれない態度とか。

後半への破局への大きなキッカケになりますし、キーになったのはフランチェスカでしたね。

彼女が抱いていたターへの敬愛と、信頼を裏切られたあとの大きな憎しみはいかほどだったのでしょうか?

でも、フランチェスカがその想いを吐露するシーンは一切なく、ターの前から音もなく消え去ってしまいます。

 

この辺が僕の考える『TAR』の面白さで、おそらくターに対して「可愛さ余って憎さは百倍」だったフランチェスカ具体的にどのような行為をターに行ったのかについては一切語られていません。

怖いですね~。恐ろしいですね~。

 

クリスタに対してのターの行為はどこまでが真実だったのでしょうか?

それも曖昧で、しっかりと語られていません。

うんうん、いいよ、もっともっとモヤモヤさせて~。

っていう、モヤモヤフェチな

 

どこからどこまでがターのハラスメントだったのか?

大学での講義も相当にイジラれていましたし、真相はやぶの中です。

もちろん性的なハラスメントは許されないし、本当にそうだとしたら責められるべきはターなのですが、本当にそうだったのか?

そこの真相はどちらの側からも語られないままに自体がすすんでいくのが非常に印象的でした。

そこで真実を語るべきはフランチェスカだったように思いますが、彼女も物語の舞台から退場していて・・・。

この映画の特異性、面白いところはここだと思います。

誰も真実を語らないままに物語が進行していく。

 

全部はっきりさせて見たい?

見なくてよくないですか?

すっきりなんかしたくて良い。

モヤモヤしたまま、その作品のことを考え続けたりしたいと思う。

村上春樹の作品で訓練されているからかもしれませんが(笑)

やれやれ。

 

そして、ラストにはわかりやすく転落が描かれますが。

そもそも音楽って何?、っていう問いかけもあったようななかったような。

ターが周囲に断罪されるほどの悪質な行為をしていたかは一切不明ですが、彼女はすべてを失って転落していきます。

これだけ落差が激しい作品も珍しいように思います。

 

 

 

5、終わりに

 

観終わったあとにモヤモヤする上に2時間半越えの上映時間とか敬遠する要素も多いですが、ぜひ観てほしい映画ですね~。

まあ、ぶっちぇけこういうタイプの映画しか僕は観たくない気もしてますが・・・。

とてつもなくいい映画でした。

 

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