1、作品の概要
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』はアメリカの長編小説。
作者は、J.D.サリンジャー。
1951年に刊行された。
J.D.サリンジャーのデビュー作であり、アメリカ国内で大ベストセラーとなった。
日本では、1964年に野崎孝訳版が刊行されて、2003年に村上春樹訳が刊行された。
高校を退学になった17歳の少年・ホールデンのうまくいかない日々と、周囲への不満について一人称で語られた小説。

2、あらすじ
17歳のホールデン・コールフィールドは、これまでに何校か退学になっていたが、ペンシー校でも退学処分になってしまう。
寮に住んでいたホールデンは、同室のストラドレイターに英作文を頼まれるが亡くなった弟アリー野球グローブについての文章を書いたことで彼と喧嘩になり、寮を飛び出してしまう。
家に帰ることができないホールデンは、NYのホテルに泊まることにするが彼が行動するたびにトラブルが起こり、周囲に不満を募らせるようになる。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
映画『ライ麦畑の反逆児』を観て、ひさびさに『ライ麦畑でつかまえて』を再読したいなと思っていました。
読んだのは、25年前とかかな?
どうせ再読するなら村上春樹訳で読んでみたいな、とAmazonでポチリました。
なにげに村上春樹訳の海外文学作品を読んだのは初めてで、新鮮でした。
4、感想(ネタバレ)
不朽不変の青春小説の金字塔。
それが『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の印象でした。
青春小説の定義とは何でしょうか?
主人公がティーン・エイジャーであること、うまくいかないモヤモヤを抱えながら生きていることでしょうか。
だとすると、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』は青春小説の要素を十二分に備えていることになりますね。
しかし、ただの青春の一時のはしかのような物語だと片づけてよいものでしょうか?
でも、ホールデンのこじらせ具合はだいぶ深刻というか。
一過性のもので片付くのかなとか、ちょっと心配になってきます。
とにかく協調性がなくて、他者を受け入れられない性格。
やりたいこともなくて、「ライ麦畑で子供が遊んでいて崖みたいなところに落ちそうになるのを捕まえることをしたい」とか言っちゃう。
たまたま行き違った子供が「ライ麦畑で誰かが誰かを捕まえたら」と歌っていたことから思いついたんだけど、そんなこと仕事とは言えないし、馬鹿げていてまともじゃない。
そんなことを言い出すホールデンに、幼い妹のフィービーすら呆れられてしまいます。
こんなまともじゃなさ、混乱が一時的だとしたら一時の熱病のような青春と言えるのかもしれません。
「ああ、あの時はどうかしてたね」なんて笑って振り返って、成熟した大人になる。
インチキのような大人になって、トンチキな連中とも仲良くやって、家庭を持って誰かのために働く。
でも、ホールデンはそうじゃないように感じます。
ずっと、ティーンエイジャーのように「ブルーにこんがらがって」生きている。
妥協なんてできずに、周囲と摩擦を起こしながら大人になっていくような気がします。
ホールデンはサリンジャーそのもので、戦火の中で恋人の裏切りを知ってどん底に叩き落されていても、自分と共にあった分身のような存在。
自らのコンプレックスや、周囲への怒り、生きずらさを投影したように思います。
僕がホールデンから感じるのは強烈な「生きにくさ」です。
あと数年したらさっぱり消え去ってしまうものではなくて、彼の魂の根底にしっかりと根差した「生きにくさ」なんだと思います。
どこにも居場所がない。
誰ともわかりあえない。
そんな想いを抱えながら大人になってもずっと生きていくホールデン。
彼が心を許せるのは幼くして死んだ弟のアリーと、幼い妹のフィービー。
こんな限定された人間関係は真っ当ではないと思います。
Xで『キャッチャー・イン・ザ・ライ』でやり取りしていて、ホールデンは実は母性に飢えていたのかもとも感じました。
無条件で自分を受け入れて肯定してくれるはずの母親。
彼の母親は神経質で、アリーの死後はさらに難しい性格になってしまっていた。
母親との関係性がもっと良好であたたかなものであったらホールデンの考え方も少しは違ったのでしょうか?
5、終わりに
miyakoさんの感想も参考にさせて頂きました。
サリンジャーのホールデンの同一化っぷり、映画をヘイトする理由。
いやー、サリンジャーも相当なクセモノだったのだなと思います(笑)
そして、ファンとしては残念ですし、首をかしげざるを得なかった訳者の村上春樹のあとがきの掲載を拒んだ理由。
誰かにホールデンを語られたり、演じられたりするのが嫌だということなのでしょうか。
サリンジャー自体もホールデンに負けず劣らず、偏屈で変わり者だったのでしょうね。
ホールデンの迷走ぶりは、生きずらさを抱えていたかつてティーンエイジャーだった自分のことを思い返して共感を覚えましたし、いまだにブルーにこんがらがっている「みかん畑の反逆児」である初老ヒロ氏の心に響きました。
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