1、作品の概要
『ちょっと思い出しただけ』は、2022年2月に公開された日本の映画。
監督・脚本は松居大吾。
音楽をクリープハイプが担当している。
主題歌はクリープハイプ『ナイトオンザプラネット』
第34回東京国際映画祭で観客賞を受賞。
2023年4月現在、アマゾンプライムビデオで配信中。
照生と葉の6年の日々を、照生の誕生日の7月26日の1日を通して描く。
2、あらすじ
2021年7月26日。
照生は怪我によりダンサーになる夢を諦めて、ホールのステージ照明の仕事をしていた。
タクシードライバーの葉は、偶然照生の働いているホールのステージで1人で足をひきづりながら踊り続ける彼の姿を見かける。
葉の脳裏に照生と過ごした6年の日々、彼の誕生日である7月26日の記憶が甦る・・・。
時は1年ごとに遡っていく。
別れの記憶、楽しかった日々、忘れられない出会い。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
ちょっと気になっていた作品で、わりと軽い気持ちで観てみましたがめっちゃ好きな感じの映画でした。
同じ1日を1年ずつ遡りながら振り返っていくという演出がとても素敵でした。
監督は自嘲気味に『花束みたいな恋をした』みたいとか言われるんだろうな、とか言っていましたが、テーマが男女の別れという点で共通点はありますが、全く違った魅力を持った映画であったと思います。
4、感想
東京オリンピックや、コロナ禍が2021年~2016年という時代の流れを感じさせますね。
葉の職業はタクシードライバー。
コロナ禍の自粛の影響をもろに受けた職業でした。
にしても、ヒロインがタクシードライバーっていうのも独特で面白いなと思いますが、クリープハイプの尾崎世界観が好きな映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』の影響もあるのかと思います。
この映画の主人公も女性のタクシードライバーみたいですね。
劇中でもこの映画を照生と葉が観ていて、「あなた女優を目指してみない?」は映画のセリフみたいですね。
照生の誕生日である7月26日。
その1日を1年ずつ遡っていくのですが、序盤は何が照生と葉の間であったのかわからないままに話が進んでいきます。
2人が離れ離れになってからの1日、照生が足を怪我してから険悪になって別れに向かっていく1日。
7月26日の1日間しか描写していないので、その他の空白の364日に一体何があったのか想像させられてしまうのですが、その余白がまたなんとも言えない魅力だったりしています。
そして、遡っているうちに2人がキラキラと輝いていて、一緒に楽しく過ごした7月26日の1日が描写されていきます。
かつては結婚も考えていて、めっちゃラブラブで幸せだった2人。
遡って2人が笑い合っていた時間を目にすることで、徐々に序盤のシーンのひとつひとつが意味を持つようになっていきます。
やがて、2016年7月26日の2人が初めて出会った日に。
最悪だった出会いと、真夜中での商店街でのダンス。
告白の場面の「すぐに踊りだすし」ってのはこの場面だったのかと納得。
時間を遡りながら、前の場面の答え合わせをしていくような展開が興味深かったです。
2人が踊っているところで弾き語りをしていたのは、照生が「どこかで会ったことあります?」と聞いたバンドのボーカルで、ラスト付近で逆にバンドのボーカルから「どこかであったことあります?」と聞かれて「ええ、何度か」と答える場面に繋がっていたのだと思います。
こういう仕掛けめっちゃ好きやし、ぞわぞわきます。
ステージで独りきりで踊っている照生。
偶然、その姿を見かけて涙ながらに見続ける葉。
6年の日々を遡ることで冒頭のシーンの意味がラストへと繋がっていきます。
別々の場所で朝焼けを眺めながら過ぎ去った過去に思いを馳せる2人。
でも、葉はもう結婚して子供もいて、昔に戻ることはできません。
7月26日。
買ってきたケーキ。
「ちょっと思い出しただけ」
戻らない過去のその甘苦い愛しさと痛み。
ラストに流れる『ナイトオンザプラネット』を聴きながら、そんな日々と余白に思いを馳せました。
切ないけど、キラキラした思い出の結晶のような綺麗な映画でした。
5、終わりに
いやー、めちゃくちゃいい映画でした!!
演出も斬新ですし、色んな細かいところで、「あっ、ここの場面ってもしかしたらあの場面と繋がっている?」みたいな発見もあって面白かったですね。
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