ヒロの本棚

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【映画】『HANA-BI』~再生と死、愛と暴力~

1、作品の概要

 

1998年に公開された日本の映画。

北野武監督が監督、脚本、編集、主演を務めた。

劇中で描かれている絵も、北野武が描いた。

大杉漣、岸本加世子が出演。

音楽を久石譲が担当。

第54回ヴェネチア国際映画祭でグランプリとなる金獅子賞を受賞。

妻を愛する元刑事の男にまつわる愛と暴力、死と再生を描く。

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2、あらすじ

 

余命宣告された病気の妻(岸田加世子)を持つ刑事・西(北野武)は、追っていた殺人犯に仲間の堀部(大杉漣)が重傷を負わされて、1人は殺されてしまう。

逆上した西は殺人犯を射殺してしまう。

車椅子生活になって刑事を辞めて、妻子にも逃げられた堀部に絵を描くように励ます西。

彼も余命幾ばくもない妻と最後の時間を過ごすべく刑事を辞めるが、ヤクザに金を借りて、銀行強盗の罪を犯してしまう。

東京を離れて雪深い温泉宿へと、西は妻を連れて逃避行へと出かける。


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3、この作品に対する思い入れ

 

『キッズリターン』『DOLLS』をはじめ、北野武監督の映画はとても好きです。

役者としても存在感がありますね。

バトル・ロワイヤル』で安藤政信北野武だけ異彩を放っていたのが忘れられませんし、『戦場のメリークリスマス』のラストシーンはめちゃくちゃ印象的でした。

 

HANA-BI』は、大学生の頃に友人に勧められて観た映画で北野武監督の映画の中で一番好きな作品です。

と言っても、全部は観てないんですが(笑)

ソナチネ』『あの夏、いちばん静かな海』とか観たいですね。

 

映像、演出、音楽、そしてあの美しく印象的なラスト。

20年ぶりに観直しましたが、全く色褪せることなくむしろその輝きが増していくようでした。

日本映画史上指折りの傑作だと思います。

 

 

 

4、感想・書評(ネタバレありだバカ野郎!!)

 

もうオープニングから叙情的な久石譲の音楽にヤラレます。

ピアノの静かな出だしから、ストリングスがもうグイグイ来て思わず「おふぅっ」って声が出そうになるぐらいダイレクトに感情を揺さぶられます。

この映画全編通して言えることかもしれませんが、ストーリーと音楽と、登場人物の隠された感情がほとんど暴力的に観る人間の心に届くような映画だと感じました。


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西の妻への穏やかな愛情と、ヤクザや犯罪者への無慈悲で衝動的な暴力。

障害を負ってしまった堀部の再生と、死と破滅へとひた走っていく西。

西と妻とのシーンの静寂と、暴力的なシーンの喧騒と怒号。

この映画ではたくさんの相反するものが対比されて描かれていて、明確なコントラストを描き出されているように思います。

 

暴力を描いた作品はあまり好きではないのですが、北野監督が描く暴力シーンは予備動作とか予感がなく突然訪れるのでなんだか魅力を感じてしまいます。

そして、そんな暴力シーンの次に西と妻との心温まるシーンが描かれていて、そんな対極にある愛と暴力を同じ映画で描いて成立させてしまう北野映画の魅力に改めてヤラレました。

 

妻とのシーンは、ほとんどセリフがなくお互いの仕草や表情なんかで感情が表現されていて、もうなんだかめちゃくちゃ好きです(語彙力。。)

車の中でトランプをするシーンとか、妻が雪にハマってしまって慌てて西が助けるシーンとかほっこり。

でも、このほっこりの裏に描かれているのが子供を亡くした夫婦2人の喪失感、余命幾ばくもない妻を想う哀しみが描かれていて、稚気とも言うべき無邪気な振る舞いをする妻(服装も心なしか幼い)は精神を病んでしまっているのかなとも思えてきます。

こんな穏やかな逃避行の行き先は西の頭の中では最初から決まっていて、阿吽の呼吸で妻も西の考えを悟っていたのでしょう。

2人は、その到達すべき場所に向かって笑顔で手をつなぎながらゆっくり歩いて行きます。

 

妻のために罪を犯し、手を血に染めて破滅へとひた走る西。

その暴力と愛のせめぎ合い。

西の2つの顔の描き方がとても好きです。

ほとんどセリフがなくてもうまく西の心の動きを描いているところがまたこの映画の魅力だと思います。

 

重傷を負って車椅子生活になり、妻と子供にも逃げられてどん底の堀部。

西に絵を描けばと励まされますが、絵の具代も馬鹿にならないとぼやいていた堀部のもとに西から届くベレー帽と絵の道具。

殺人犯に射殺された刑事・田中の奥さんにも金を渡しますが、それは銀行を襲って手に入れた汚れた金だったのでしょう。

しかし、堀部は絵を書く事を決意し、劇中に何度も彼が絵を描くシーンが挿入されます。

以前観た時は、なんでオッサンが絵を描くシーンが繰り返し挿入されるのか疑問でしたが、自殺も企てた堀部が死と絶望の淵から再生して光を見出していく姿を描きたかったのではないかと今は思います。

そして、その堀部の姿と対照的に死と破滅へと向かっていく西の姿が描かれていて、堀部(再生と光)と西(死と破滅の闇)が表現されているのではないかと感じました。

 

「自決」と書かれて赤い絵の具がぶちまけられる堀部が描く不穏な絵。

ラストシーンが近づくにつれて逃れようのない運命が西と妻の2人を捉えようとします。

繰り返し空と海の青の美しい映像が映し出されていましたが、ラストの砂浜での海と空は格別の美しさでした。

全てを悟った表情で「ありがとう、ごめんね」と西に微笑む妻。

これから2人を待ち受ける運命を、これまでに西が影で手を汚し続けてくれていたことも。

全て理解した上での「ありがとう、ごめんね」だったのでしょう。

 

打ち寄せる波と、青い空と白い砂浜、凧を翔ばして走り回る少女。

青空をバックに響いた2発分の乾いた銃声。

それは逃避行の果てに2人がたどり着いた終わりでした。

あえて弾丸が発射されるシーンを描かずに、画面が2人から遠ざかっていって海と空の境界線を映し出して音楽が最高潮に盛り上がっているところで銃声。

音楽が止んで静寂の中、もう1発の銃声。

最高に好きなラストシーンです。


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5、終わりに

 

ブログ書くためにラストシーン観直してたら、また泣いちゃったじゃないかバカ野郎。

ラストシーンの少女は北野監督の実子みたいですね。

キタノブルーの美しさに敬意を表して、ブログの題字を全てブルーにしてみました。

ヒロブルーです(笑)

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