1、作品の概要
1993年に公開された日本映画。
監督・脚本・編集を北野武が務めた。
彼の4作目の映画。
音楽を久石譲が担当。
第46回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門選出。
欧州で高く評価されて、クエンティーノ・タランティーノ監督が絶賛したことrでアメリカでも公開されて、世界中に北野映画のファンが誕生した。
2、あらすじ
暴力団・北島組の傘下の村川組の組長・村川(北野武)は、沖縄の中松組を救援しに行くが、阿南組の襲撃を受けて手下が数人命を落とす。
抗争が深刻化する中、隠れ家に身を隠した村川達は、偶然助けた女性・幸も加えて沖縄の海辺で遊び呆けながら無為な日々を送る。
中松組が何者かによって壊滅させられて、北島組の高橋から真実を告げられ、北島組長の裏切りを知った村川。
自動小銃を手に、阿南組と北島組が会合するホテルに単身乗り込んでいく・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
北野武監督の映画が好きで、『HANABI』がめちゃくちゃ好きだったんですが、最高傑作との呼び声も高い『ソナチネ』は観たことがありませんでした。
ツィッターでフォローさせて頂いている方がめっちゃ推していて気になっていたので観てみましたが、沖縄の美しい自然と喩楽、そして突然訪れる暴力と死が、南国の色彩の鮮やかさで表現されていて引き込まれました。
4、感想
ヤクザの抗争を描いた映画で、ドンパチや暴力的なシーンも多いのですが、久石譲の叙情的な音楽も相まってどこかメランコリックな雰囲気が漂っています。
ただ暴力的なだけのヤクザ映画だったら絶対に観ないと思うのですが、『ソナチネ』にはそれだけではない映像の美しさや、鮮烈な生と死が描かれているように感じました。
冒頭の麻雀屋の店主をさらって、シャベルで釣り上げて海に何度も落として最後には殺してしまうシーン。
村川をはじめ何人かのヤクザたちが見守っていますが、全員つまらなそうなどこか憂鬱な表情をしているのが印象的でした。
怒りも高揚もなく、淡々と1人の命を奪う。
「なんだ生きてるじゃねーか、3分ぐらいやってみっか」って、めっちゃ軽くて投げやりな殺し方。
背筋が凍るような狂気を感じました。
沖縄についてバスで中松組の事務所に向かうシーンなんかも、何でもない移動の場面なんですけど、どこか倦怠を感じさせるような印象的なシーンでした。
その後の隠れ家での大学生の合宿みたいなノリで遊びながらどこか空虚で倦怠感が漂っている場面。
死と隣り合わせの苛烈な生を送る彼らは、生きることそのものにも飽いてしまっているのでしょうか?
エアポケットのような海辺の隠れ家での日々で、男たちは稚気を発揮していて無邪気に遊びますが、どこか投げやりな風にも感じます。
村川がロシアンルーレットで自分の頭に銃を突きつけて笑顔で引き金を引くシーン。
まるでラストシーンの予行演習のようでしたが、とても印象的なシーンでした。
「あんまり死ぬの怖がるとな。死にたくなっちゃうんだよ」
幸から「死ぬの怖くないでしょ?」の問いに村川が答えたこのセリフ。
冗談めかしながらも、村川の内面の繊細さを感じさせる印象的なシーンでした。
これもやはりラストシーンで引かれた銃の引き金に繋がっていく言葉だと思います。
死を忌み恐怖して、死の恐怖から逃れるにはどうすれば良いのか?
それは自らが死に歩み寄って、死と一体化することなのかもしれません。
死を受け入れること。
不可解にも思えるラストシーンの村川の自死の場面もそう考えると少しだけ理解できるような気がします。
エレベーターの中で村川が高橋と鉢合わせて、民間人もいるのに構わずに唐突に殺し合いが始まるシーン。
銃声が鳴り響いて瞬きをする間にいくつかの命が奪われる。
ヒリつくような刺激的な場面でした。
北野武の映画でよく見られる唐突な暴力シーンの典型のような。
ラストシーンで村川が単身北島組と阿南組の会合に自動小銃を携えて殴り込む場面。
どこか人ごとのように無表情で淡々と撃ち殺していく村川の姿に、冷酷さと冷たい怒りを感じました。
久石譲のテーマ曲がドラマティックに物語を盛り上げます。
幸が待つ帰路の途中で引き金を引いた村川は、死を恐れるあまり死と同化することを選んだのでしょうか?
破滅的なラストはとても鮮烈に記憶に刻み込まれました。
5、終わりに
沖縄の青い海と空がとても印象的で、北野武監督らしい印象的な青の使い方が沁みました。
『キッズ・リターン』とか『DOLLS』もまた観てみたくなりました。