ヒロの本棚

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【映画】人間失格 太宰治と3人の女たち

○映画の紹介

 

少し前ですが、映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』を観てきました。

ツィッターのTLでこの作品が公開されることを知って、とても楽しみにしてました♪

監督が蜷川実花監督で、太宰治の『人間失格』の誕生秘話と、妻と2人の愛人との話を映画にしたもです。

 

キャストもめっちゃ豪華で、太宰役に小栗旬、妻の美和子役に宮沢りえ、斜陽の太田静子役に沢尻エリカ、山崎富栄役に二階堂ふみ

三島由紀夫役に高良健吾坂口安吾役に藤原竜也も面白かったです。

正直、陽キャ小栗旬が太宰役ってどうなの!?って思ってましたが、役作りのために減量したこともあっていい感じでした。

 


『人間失格 太宰治と3人の女たち』スポット ストーリー編

 

 

 

○あらすじ

 

物語は、『斜陽』の執筆前に太田静子との交際が始まる前から、『人間失格』を書き上げ、玉川上水にダイブするまでを3人の女性との関わりを中心に描いています。

太田静子からファンレター(恋文?)をもらった太宰は、直接会って静子を口説き落として、彼女の自宅で自らの小説の題材のために日記を見せてもらい『斜陽』を書き上げます。

斜陽が大ヒットして意気揚々の太宰でしたが、静子が太宰との子供を孕み、後のトラブルにつながります。その頃、未亡人の山崎富栄とも出会い、彼女の部屋に入り浸るようになります。

やがて経済的困窮、静子の子供の認知の問題、健康状態の悪化などが重なり太宰の肉体と精神を蝕んでいきます。

ギリギリの状態の中、妻の美和子より叱咤されて『人間失格』を書き上げます。

 

 

 

○感想・考察(ネタバレあり)

 

監督が蜷川実花さんだけあって、色彩の使い方が綺麗でハッとさせられるシーンが多かったです。

冒頭の太宰が子供達と土手を散歩するシーンも彼岸花と空のコントラストがとても綺麗でした。

ラスト付近の雪の中を歩くシーンも、一面雪の中太宰が吐血して雪が赤く染まっていくシーンなんかも美しかったです。

 

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映画のポスターでも、3人の女性の服装と花の色がイメージと合わさってる感じで良かったです。

ただ、ポスターのキャッチコピー「死ぬほどの恋。ヤバすぎる実話。」はアカンですね(^_^;)

2人の愛人を口説くシーンなんかも花が出てくるシーンが多く、花の写真をよく撮られている蜷川実花さんらしいなと思いました。

 

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主演の太宰役の小栗旬ですが、初めにキャストを聞いた時は「それはないわー」って思いました。太宰役は、ちょっと繊細で影のある感じが似合うと思っていたので、小栗旬はキャラ的にどうかなと(^_^;)銀魂のイメージが強すぎて。。

 

ただ、蜷川実花監督は「小栗旬しかいない」って思っていたようで、この作品の太宰は快活で自信家で口がうまい、どこか色気を持った魅力ある人物として描かれていたように思います。

もちろんダメっぽり、クズっぷりも十二分に描かれていて思ったよりハマり役だったのではないでしょうか。

 

 

 

 

○『斜陽』の女、太田静子

 

太宰は手紙でのやり取りから親交を深めて、日記を見るために静子の住む下曽我(小田原辺り?)まで向かいます。

『斜陽』の創作のために自身のファンの太田静子に近づいて、ヤルだけヤって妊娠させておいて、日記を読んだらポイ。。

ク、クズすぎるぜ太宰!!

下曽我からわざわざ会いに来た静子を冷たくあしらう太宰はまさに「人間失格」でしたw

 

ただ、静子も斜陽のモデルになった女性だけあってタフで産まれてくる子供の認知をさせたり、『斜陽』に自分の名前を入れさせようとしたりタダでは転びません。そして、『斜陽日記』なる本まで出版しました。

 

 

 

○最後の女、山崎富栄

 

太宰が山崎富栄を口説くシーンでは、しだれ落ちる花の陰に隠れながら躊躇する富栄に対して「大丈夫。君は僕が好きだよ」などと、口説く小栗・太宰。

夜の闇に、白く浮かび上がる花(何の花やろ?)が妖しく幻想的です。

フツー、「僕は君が好きだよ」で口説くと思うんですが、自信満々の口説き文句ですね☆

才能に溢れてて、自信満々の男は魅力的ですね。

僕も今度このセリフ使ってみようかな。

 

富栄は、静子とのゴタゴタを目にして、ついに鉢合わせまでして傷つき,

ますます太宰との愛の深みにはまっていきます。

戦争で夫を失った未亡人だったこともあり、初めは控えめで慎ましかった富栄は太宰との愛にのめり込み、太宰の子供を欲しがり、ついには共に死にたいと願うようになります。

いや、二階堂ふみが女優としてとても好きなのですが、この辺のクレイジーな感じの演技はゾクゾクきます。

終盤の心中前のシーンなんか、もう目が完全にイっちゃてて怖いです。

 

 

○太宰を支えるヴィヨンの妻、美和子

 

静子とのトラブル、度重なる吐血、度が過ぎる飲酒で太宰の身も心もボロボロになっていきます。

また、富栄と抱き合う場面を子供と妻に見られてしまい罪の意識にも苛まされて家に帰る時もこそこそと帰るようになります。

そんな太宰に妻の美和子は「私たち(家族)を壊しても、あなたにしか書けない作品を書きなさい」と叱咤激励しました。

 

現代の視点からすると、妻子があるのに愛人を作ったりするのはクズかもしれませんが、時代を考えるとよくある話でだったのかもしれません。

余談ですが、以前90過ぎの女性と話す機会がありまして、その方の旦那様がとある企業の社長だったらしいのですが、両手両足の指で足りないくらい愛人がいたとのことでした(^_^;)

 

しかも太宰は作家だったわけで、遊びや恋愛を肥やしにして作品を生み出す原動力にする必要があったのでしょう。美和子もそんな太宰を支えたいといういじらしい想いがあったのではないでしょうか。

美和子が子供たちに、「お父ちゃんが原稿用紙に書いた字がきらきら光って見えた」と語るシーンがありましたが、太宰の才能をリスペクトしている気持ちが表現されていたと思います。

 

 

 

○ラストシーン、まとめ

 

美和子の叱咤激励によって吹っ切れた太宰は傑作『人間失格』を書き上げます。この作品は3人の女性との恋と葛藤を原動力に生み出されたのではないかと、蜷川実花監督は表現したかったのではないかと感じました。

 

そして、美和子あての遺書を残し富栄と玉川上水に入水するわけですが、ちょっと躊躇する太宰と、覚悟を決めている富栄が対照的でした(笑)ビビってる感じが出てましたね。

2人で川に飛び込んだあと、水中で一旦気を失いかけた太宰が、「ハッ!!」とした感じで目を覚ますラストシーンでしたが、僕には「えっ、俺死ぬの!?」って感じのニュアンスに取れました。

この入水にも諸説あるみたいですが、映画ではいまいち覚悟がないまま、富栄に引きづられるようにして入水してしまった太宰が表現されていたように思います。確かに、強く断れず流されるような薄弱さもありますものね(笑)