1、作品の概要
ドラマ『地震のあとで』は2025年4月に放送されたドラマ。
全4回。
毎週土曜日22:00~22:45にNHKで放送された。
村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』が原作。
第1話は『UFOが釧路に降りる』で、同名の短編小説が原作。
映画『ドライブ・マイ・カー』の大江崇允が脚本を担当している。
2、あらすじ
オーディオ機器の会社に勤めていてハンサムな小村(岡田将生)は、妻・未名(橋本愛)と結婚し、子供はいないものの幸せな毎日を送っていた。
しかしある日、阪神淡路大震災のニュースを食い入るように見ていた妻が置き手紙を残し彼の前から去ってしまう。
傷心の小村は長期休暇を取得し、同僚の佐々木(泉澤祐希)から北海道の釧路まで荷物を届けるよう頼まれて快諾する。
釧路空港で同僚の妹・ケイコ(北香那)と、シマオ(唐田えりか)の2人の若い女性に出迎えられた小村はUFOを見て突然いなくなってしまった知り合いの話を聞く・・・。
3、感想(ネタバレあり)
『UFOが釧路に降りる』は、オリジナル要素も多かったですが、全体的に良かったと思います。
不穏な感じの音楽とか、夢のイメージの映像なんかは、小説ではできない表現で楽しめました。
ただ、原作の意味深い言葉や独特の間などはドラマで表現するには難しく、幾分かミステリー寄りの仕上がりになっていたのは致し方ない部分かなと思います。
あなたとの生活は空気のかたまりと一緒に暮らしているみたいでした。
という書置きを残して、ある日いなくなってしまった妻・未名。
原作では、「妻」としか書かれていませんでしたが、「未だ名前がない」という意味の意味深な名前をつけられています。
神戸の震災のニュースを5日間寝食を忘れて見続けて、忽然と姿を消してしまった妻。
彼女の心の中でどういった動きがあって、小村との別れを決意したのか?
真相は(もちろん)明かされないまま物語は終わります。
原作では、どちかというと普通の容姿で、性格的にも良くないと描写されている妻ですが、橋本愛だとちょっとキャラクターが違うかもですね(笑)
釧路の平原で小村が見た幻覚(?)
妻がUFOを追いかけていく場面は、僕はわりと好きです。
対向車のライトが眩しく、どこか現実が融解していくような場面も良かったです。
叔父の神栖は、オリジナルキャラクターですが、物腰は丁寧なのにソッコー離婚届を出してきて、酷いなぁって小村に同情しました(;^ω^)
「でもどれだけ遠くまで行っても、自分自身からは逃げられない」
改めて『UFOが釧路に降りる』をドラマで見て、原作も再読して、シマオさんてカギになるキャラクターだし、意味深な言葉を小村に投げかけます。
村上春樹の物語でたびたび登場する導き手となる役目の女性。
唐田えりかさんの演技はキュートで良かったですが、この役どころは映像では表現が難しかったように思いますね。
だって、可愛らしい田舎に住む20代の女性が突然こんなふうに示唆的なことを言うとか、現実では全くありえませんしね。
文字にするのと、言葉にするのとの表現の差のようにも感じました。
「もう小村さんの中身は戻ってこない」
あの箱の中には何が入っていたのでしょうか?
佐々木はなぜ、小村に箱を運ばせたのでしょうか?
本当に小村の中身が入っていたのか?
ドラマでは、一旦ケイコが小村に箱を返しますが、いつの間にか鞄の中から箱がなくなっているというオリジナルの展開になっていました。
あの箱の中に小村の中身が入っていて、それを渡してしまったから、もう中身は戻ってこない、というシマオの冗談(?)がドラマではシマオという女性を得体のしれない存在として描くことで、よりミステリータッチの作品に仕上げていたように思いました。
スペースで話題になっていたのは原作の「小村は自分が圧倒的な暴力の瀬戸際に立っていることに思い当たった」の文章が取り上げられていましたが、考えれば考えるほど深い意味を湛えていそうな一文ですね。
加害者としてなのか?被害者としてなのか?
それとも、もっと広義の意味での暴力のことを言っているのか?
例えば、地下鉄サリン事件のような・・・
「でも、まだ始まったばかりなのよ」
意味深にもほどがある最後の言葉(笑)
ドラマ版では悪夢の中を彷徨うような小村の姿が映し出されて、部屋の「2011」のルームプレートが・・・。
ドラマ版のこの演出だと、災厄がまだ始まったばかりという意味にも捉えられますが、ちょっとどうなんでしょうかね。
閉じないままに、終わっていく物語。
Xのスペースでも話題になっていましたが、なにが始まったばかりなのかは、僕としては小村の物語が・・・みたいな解釈です。
どちらかというと、ネガティブなイメージで背中に冷水を浴びせられたような感じで。
『一人称単数』の「恥を知りなさい」的な冷っとする感じを受けました。
ただネガティブなだけではなくて、『ねじまき鳥と火曜日の女たち』のあとに壮大な『ねじまき鳥クロニクル』が始まったように、これから壮大な物語が始まっていくっていう啓示のようにも感じました。
4、おまけ
油断していました。
いや、みなさまのエネーチケーだしね、あのホテルのシーンもソフトにやるだろうってね。
そもそも、うまく致せなかったわけだしね・・・
そんなわけで小6の次男氏もいるリビングで、外部出力でつないだスピーカーの音源も上げて爆音で『UFOが釧路に降りる』を見ていたのですよ。
そしたら、唐田えりかさんの演技が艶戯で・・・。
まあまあ、アンアン言っててananもビックリで・・・。
ヒロ家の土曜日の夜のリビングに緊張が走りました。
「何が起こるか、そんなの誰にもわからないのよ」
僕の耳元でシマオさん=唐田えりかが、そう囁いた気がしました。
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