1、作品の概要
ドラマ『地震のあとで』は2025年4月に放送されたドラマ。
全4回。
毎週土曜日22:00~22:45にNHKで放送された。
村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』が原作。
第2話は『アイロンのある風景』で、同名の短編小説が原作。
映画『ドライブ・マイ・カー』の大江崇允が脚本を担当している。
鳴海唯、堤真一、黒崎煌代らが出演している。

2、あらすじ
家出をして茨城の海沿いの街に住み着いた順子は、大学生の啓介と同棲していた。
順子が働いているコンビニに客として来ていた初老の男・三宅と懇意になり、海辺で一緒にたき火をするようになった3人。
1人で絵を描きながら生活している三宅は、かつて神戸に住んでいて妻子とともに暮らしていたが・・・。
3、感想
いや~、めっちゃ良かったですわ。
鳴海唯と、堤真一の演技も素晴らしかったですし、海辺の風景の映像もとても綺麗でした。
第1話の『UFOは釧路に降りる』でもそうでしたが、原作を改変したり、オリジナル要素があったりしましたが、とても自然で原作とはまた違った味わいがありました。
ジャック・ロンドンの『たき火』の話がまるっと削られていたのは、ちょっと残念でしたが。
この旅人はほんとうは死を求めている。それが自分にふさわしい結末だと知っている。
ジャック・ロンドンの死に関する話もとても印象深かったのです。
『神の子どもたちはみな踊る』では、すべての短編が1995年2月に起こった出来事で、1月に起こった神戸の震災と、3月に起こった地下鉄サリン事件の間に起こった出来事という時間軸がとても重要な要素でありました。
って、スペースで羊男さんが言ってました(笑)
どこがどう重要な要素のかっていうと、ぼわっとしか僕にはわかりませんが、大きな災害のあとであり、未曽有の暴力の前に起こった出来事というところに生と死の狭間のような、特別で極限状態の中で起こったことというイメージがありました。
ドラマではその時間軸を変更し、『アイロンのある風景』では2011年の1月(だったと思うだぶん)から物語が始まります。
『UFOが釧路に降りる』の最後のドアのルームナンバーが2011だったのは3・11のことを示唆していたのであり、第2話への繋がりでもあったのでしょうか?
AFTER THE QUAKEでもあり、BEFORE THE QUAKEでもある物語。
神戸の震災と地下鉄サリン事件の間だった物語たちは、2つの地震を想起させるような物語に改変されていました。
個人的には興味深い改変だと思います。
原作では、その後どうなったか知らない神戸に住んでいた家族。
生死も不明でしたが、ドラマでは亡くなっていました。(ちょっと飲み過ぎてうろ覚えなのですが、そうでしたよね?)
そのことへの罪悪感が、悪い夢と冷蔵庫の中での死へのイメージへと繋がっていました。
冷蔵庫の中から出てくる手が、おそらく奥さんの手(左手の薬指の指輪)だったことで、亡くなった家族への罪への意識と死のイメージが直結しているように感じました。
予感というのはな、ある場合には一種の身代わりなんや。ある場合にはな、その差し替えは現実をはるかに超えて生々しいものなんや。
冷蔵庫の中で少しずつ苦しみながら死んでいくという死に方を予感する三宅さん。
それは、そのまま冷蔵庫の中で死ぬということにはならないかもしれない。
でも、冷蔵庫の中で死ぬことよりさらに酷薄で残酷な運命を辿る可能性があるし、ある意味ではその差し替えは想像を超えて惨たらしい結末に終わるかもしれない。
夜の海で溺れ死ななかったジャック・ロンドンが、絶望の海でアルコールに溺れながら死んでいったように。
『アイロンのある風景』というなんの変哲もないタイトルの絵。
しかし、アイロンがアイロンではなくて、これも何かの身代わりだという。
アイロンをイメージする時に思い浮かべるのは母親であり、家庭的なものの象徴のように僕には思えます。
そうだとすると、三宅が描いたアイロンのある風景は、家庭、家族の身代わりで失くしてしまったものの象徴ではなかったのでしょうか?
もう2度と戻ってこない家族。
失くしてしまった過去の幸せ。
それがアイロンとして描かれていたのだとしたら・・・。
焚火が消えたら、寒くなっていやでも目は覚める。
自分は空っぽだと三宅に訴え、一緒に死のうとする順子。
ここで一緒に夜の海で入水したら太宰治プレイですが、これぐらいの年代で空虚さから突発的に希死念慮を抱えるのはよくあることでもあり、逆に絶望の奥底まで深く潜ることで生への希望を掴むような、そんな逆説的な希望を感じました。
死と生の狭間。
水辺というのも、三途の川しかり、古来より生と死の境として描かれていました。
海辺で語られる死生観というのも、そういった生死の瀬戸際を感じさせられました。
そして、物語の最後に日付が2011年3月11日に変わるところにも、そういった意味を感じました。
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