ヒロの本棚

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【映画】『シン・仮面ライダー』~変わるモノ変わらないモノ、昭和から令和への継承~

1、作品の概要

 

『シン・仮面ライダー』は2023年3月17日に公開された日本の映画。

監督・脚本は庵野秀明

シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』に続く、『仮面ライダー』のシン・リブート作品。

初代仮面ライダーの物語をもとに描かれる新たな物語。

主演・池松壮亮浜辺美波

柄本佑竹野内豊斎藤工森山未來西野七瀬長澤まさみなどが出演している。

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2、あらすじ

 

本郷猛(池松壮亮)と緑川ルリ子(浜辺美波)は、SHOCKERの秘密基地からバイクで逃げ出すが、クモ男に追い詰められ、バッタオーグに変身した本郷猛が戦闘員とクモ男を撃退し、辛くもセーフハウスに逃げ込む。

そこには本郷を改造した大学時代の恩師・緑川弘(塚本晋也)が待っていたが、クモ男によって殺害される。

激闘の末クモ男を倒し、仮面ライダーとして名乗りをあげた本郷は、ルリ子と共にもうひとつのセーフハウスに逃げ込み、そこにいた政府の情報機関の男2名(竹野内豊斎藤工)と対SHOCKERに対する協力体制を築くことになる。

コウモリオーグ(手塚とおる)、サソリオーグ(長澤まさみ)、蜂オーグ(西野七瀬)らを次々と撃退する本郷とルリ子・政府の情報機関。

しかし彼らの前に、ルリ子の兄であるイチロー(蝶オーグ)が立ちふさがる。

イチローの力に敗走する2人に第2のバッタオーグ・一文字隼人(柄本佑)が追いすがるが、本郷が負傷を負いながらもルリ子が一文字の洗脳を解くことに成功する。

しかしその時、ルリ子が突如倒れ込んでしまう・・・。


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3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ

 

まぁ、初代仮面ライダーで育った世代としては気になる作品でありまして・・・。

『シン・ウルトラマン』観に行った時の予告映像がカッコよくて観に行ってみました。

仮面ライダーは、放送されてから50年以上の時間がたち、平成、令和を経て形を変えて愛され続けています。

しかし、哀しみを背負いながらそれでも戦い続ける昭和屈指のダークヒーローである初代仮面ライダーのような仮面ライダーは存在しません。

そんなことを改めてこの映画を観て感じました。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

 

4、感想(ネタバレあり)

 

『シン・仮面ライダー』を観て、改めて感じたのは『仮面ライダー』の源流には「哀しみ」が強く存在しているということでした。

自分の意思ではなく、無理矢理に改造手術を受けさせられて、人外の偉業である仮面ライダーに改造されてしまった本郷猛。

望んで手にした力ではなく、見た目も異形となり、自分が自分でなくなるような感覚に戸惑い翻弄される。

オーグの力によって理性のタガは外れて、悪の組織の戦闘員とは言え人を殺めてしまう・・・。

 

冒頭の場面で戦闘員たちを殴殺していく仮面ライダー

舞い散る血しぶき、血しぶき、血しぶき・・・。

ああ、だからPG12なのかと得心がいきましたが、なかなかえげつなく、どんだけ血が出まくるんだよってなぐらいのまさに血祭り状態でした。

ワッショーイ。

この過剰とも言うべき演出は、昭和の仮面ライダーがコミカルなショッカー戦闘員を「倒す」描写を、よりリアルに令和の仮面ライダーが「殺す」ことに重きを置いたものだったのだと思います。

 

倒すというと曖昧なニュアンスになりますが、命を奪う・殺すという描写になるとより重みが増します。

この描写によって、血塗れた両手を呆然と見つめる本郷の苦悩と覚悟がより深く描かれることになったのではないでしょうか?

そのことは昭和の『仮面ライダー』の本郷猛をゴリゴリマッチョで男らしい藤岡弘が演じたのに対して、令和の『シン・仮面ライダー』の本郷猛を優しげな池松壮亮が演じたことからも窺い知れると思います。

『シン・仮面ライダー』の本郷猛は、命を奪う重みと自らの宿命に苦悩しながらも、自らの力を他者のために振るうことを決意します。

 その本郷の信念と覚悟は仮面ライダー2号の一文字隼人にやがて継承され、どこか軽薄で風来坊だった彼を変えていきました。

 

最近、初代『機動戦士ガンダム』を全話観ましたが、子供向けのロボットアニメの枠を超えた戦争とそれによって人生を狂わせられた人々の哀しみが描かれていたことに驚きを禁じ得ませんでした。

容赦なく戦死していく敵味方の人々。

敵側が単純な悪としてだけではなく、戦いを「戦争」として語ったことが斬新だったと思います。

ガンダムだけではなく、『あしたのジョー』『北斗の拳』なども深い哀しみや喪失が描かれていて、それでも戦い続ける男たちの姿が胸を打ちました。

そういった各作品に流れる哀しみは、昭和のヒーローたちが背負うべき宿命であったかもしれません。

その最後が必ずしもハッピーエンドではなかったことも含めて・・・。

 

「変わるモノ。変わらないモノ。そして変えたくないモノ」

というのが、『シン・仮面ライダー』のキャッチコピーです。

昭和の『仮面ライダー』や他のヒーロー作品のような哀しみや悲劇を令和においても同様に語りながらも、50年前とはまた違ったリアリティーで語られている。

時代は変わっても、変わらないものがある。

そんな人々の想いを哀しみを描いた作品だったと思います。

 

作中のロケ地も昭和の『仮面ライダー』のロケ地が使われていて、ファッションもどこかレトロなのですが、テクノロジーなどは令和のものになっているというなんとも不思議な感覚でした。

ニューレトロとも言うべき、新しくもどこか古臭い絶妙な空気感が独特で良かったですね。

オーグたちとの戦闘シーンか、隔離された環境下での屋内シーンが多かったのもこういった独特の空気感に繋がったのかもしれませんね。

 

ルリ子から本郷へ、本郷から一文字へ。

まるでタスキをつなぐように引き継がれていく想い。

肉体は消え去っても、魂と精神は残り続ける。

そんな継承が『シン・仮面ライダー』のテーマであったかと感じました。

この40~50年で世の中は変わり、阪神大震災、地下鉄オウムサリン事件、東日本大震災などの苦難がこの国を襲い、暗い世の中になっていっていると思いますが、そんな暗渠に灯す光のような希望を託した物語だったのではないでしょうか?

 

 

 

5、終わりに

 

SHOCKERが「Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling(持続可能な幸福を目指す愛の秘密結社)」の略称であるということにおったまげました。

いや、なげーし(笑)

S.H.O.C.K.E.Rなんですね。

ショッカーっていうとバカっぽいコミカルな印象ですが、SHOCKERはなんかちゃんとした目的を持った組織っぽくて良かったですね。

これも「変わるモノ」のひとつで、フィクションにもある種のリアリティや現実性が求められるのが令和の世の中なのでしょう。

 

さて、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』の3作を作った庵野秀明監督ですが、今後の展開はいかなるものなのでしょうか?

さすがにヒーローモノはやり尽くしたし、『シン』はひと段落なのか?

庵野秀明監督の次回作に期待したいですね~。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

 

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