1、作品の概要
2022年5月13日に公開された日本の映画。
往年の名作『ウルトラマン』を現代風にリメイクした。
企画・脚本を庵野秀明、監督を樋口真嗣の『シン・ゴジラ』のスタッフが担当した。
主題歌は、米津玄師『M八七』
2、あらすじ
日本にだけ突如出現し破壊の限りを尽くす「禍威獣」に対抗すべく設立された「禍特対」。
彼等は自衛隊と協力しながら、禍威獣をなんとか撃退していたが甚大な被害が出ていた。
ある時出現した電気を吸収する禍威獣・ネロンガに苦戦する禍特隊だったが、謎の巨人が出現しネロンガをあっという間に葬り去ってしまう。
謎の巨人は敵か味方か?
正体を調べる禍特隊の前にまたしても強力な禍威獣が出現し、窮地に陥るが・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
『シン・ゴジラ』は家でDVDで観ましたが、めっちゃ面白くて、映画館で観なかったことを後悔しました。
『シン・ウルトラマン』は以前から気になっていて、観に行くか悩んでましたが、予告を見て面白そうだったんで観に行ってきました!!
やっぱり僕らの世代にとってゴジラやウルトラマンって特別なんですよね~。
2021年の初夏予定からコロナで1年近く公開が延期になりましたが、やっと観られました♪
4、感想(ネタバレあり)
ちょっと詰め込みすぎな感じもありましたが、後半の展開や駆け引きなど往年のウルトラマンにはなかったリアリティを楽しめました!!
僕は初代ウルトラマン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンセブン、ウルトラマンA、ウルトラマンレオ、ウルトラタロウなどの昭和ウルトラマン世代で平成のウルトラマンは観てないですが、『シン・ウルトラマン』の冒頭のタイトル画面がウルトラQを踏襲していたり、BGMなど懐かしのウルトラマンにオマージュを捧げている要素も多く、昔を思い出しながら懐かしく映画に没頭しました。
過去のウルトラマンとちょっと違ったのは、禍威獣が出現し始めて6体の禍威獣は自衛隊と禍特隊の力で知恵を絞りながら倒していたということですね。
やればできるじゃん!!
過去のウルトラマンではわりとウルトラマン頼みの展開が多かったような印象があるのですが、禍特隊も頑張ってましたね!!
昔のウルトラマンみたいな科学特捜隊の飛行機みたいな独自の兵器はありませんが、禍威獣の特性を調べながら、知恵で倒していっている感じでしたね。
もう一点過去のウルトラマンと違ったのは、ウルトラマンと同化する人間の自我が残っているかどうかだったと思います。
過去のウルトラマンではあくまで意識はハヤタ隊員のもので、ウルトラマンの自我はハヤタ隊員の中で眠っているような状態でした。
しかし、『シン・ウルトラマン』では禍威獣・ネロンガ戦で子供を助けて命を落として以来、神永(斎藤工)の自我は表に出ることはなく、神永として禍特隊で働いている人間の意識はウルトラマンのものでした。
同化する際に神永の意識も取り込んでおり、そのことがウルトラマンの人格や価値観を変化させていることは間違いありませんが、表に出ているのはあくまでウルトラマンの意識で、そのことによってウルトラマン自身が地球とそこに生きる人間たちをどのように思っているのか、何を思って縁もゆかりもない異星人のために闘い続けているのかが伝わってきました。
同郷の「光の星」からやってきたゾフィーから「そんなに人間が好きになったのかウルトラマン」などと言われてしまいますが、ウルトラマンをそこまでさせたのは自らの命を投げ打っても誰かを助けたいという神永の、人間の「愛」に気持ちを動かされたのではないからでしょうか?
過去のウルトラマンでも怪獣の他に異星人が次々に侵略してきますが、『シン・ウルトラマン』でもザラブ星人、メフィラス星人が次々に地球にやってきてよからぬことを企みます。
ザラブ星人との戦いでは、神永と浅見(長澤まさみ)のバディとしての絆が深まり、メフィラス星人との戦いでは禍特隊のチームの皆を頼るウルトラマン。
過去作ではウルトラマンの正体は必死で隠されますが、シンではあっさりバレてますね(笑)
そしてウルトラマンのほうから人間、禍特隊に協力を仰ぐ展開は、圧倒的な力を持ったウルトラマンを神とあがめて全てを託して頼るのではなくて、人間自身の力を使って問題を解決しようとする姿勢の大事さと、その可能性について語られていたように思います。
他者を指導する場面でよく言われるのが「ティーチングとコーチングの違い」です。
頭から何もかも教えてしまうのがティーチングで、ヒントを与えて自分の力で正解へと導くように指導していくのがコーチングで、これを使い分けながら指導するのが良い指導法だと言われています。
この映画でウルトラマンが行おうとしたのはティーチングのほうで、ウルトラマンが数々の敵をその力で退けるのを見た禍特隊のメンバーが自分の力に依存してしまうのを感じて、今後も続くであろう侵略に打ち勝つ力を地球人が身につけるために最後のゼットン戦で戦いの行方を人間たちに委ねたのではないでしょうか?
ってか、ラスボスがゼットンって激アツでしたね(笑)
「天体用制圧用最終兵器・・・ゼットン!!」って場面で、オッサンも厨二病全開になってまいましたよ!!
ゼットンは過去のウルトラマンを最終話で屠った最強の怪獣です。
メカっぽいゼットンもなかなかいい感じでした!!
自分たちの力で立ち向かうことを、どんなに困難でも絶望に抗って戦い続けることの大事さを示すためにウルトラマンは命を賭してゼットンに挑み、敢えて敗れてみせたのでしょう。
まさに「為せば成る。為さねば成らぬ。何事も」ですね!!
絶望から立ち上がって地球を救う策を思いついて実行した禍特隊の滝のその後の奮闘ぶりを見れば、彼のメッセージはUSBのデータと共にしっかりと伝わったのでしょう。
何かを、誰かを守ることの難しさ。
これが『シン・ウルトラマン』で伝えられているメッセージではないかと思います。
地球人を守るために神永と同化したウルトラマンは、逆に巨大化して兵器として利用する価値が人間にあることを証明してしまい、今後も他の星人から地球を狙われるキッカケを作ってしまいます。
圧倒的な力で禍威獣を倒したことも人間たちの依存心を高めて、人間自身の力を過小評価して絶望する状況を作り出してしまいます。
誰かを守りたくて、必死に力を尽くしても逆にその相手を追い詰めたり、ダメにしてしまうこともある。
でも一方的に力を貸すことのではなくて、支えあって困難に立ち向かうことで活路が開けることだってある。
禍威獣の「禍」はコロナのメタファーでもあるように思うのですが、そういった未知の困難にも人類が手を取り合って絶望を乗り越えて進む先に光り輝く未来があるんだっていうメッセージが篭められた映画だったように感じました。
5、終わりに
『シン・ゴジラ』が東日本大震災を想起させてその後の希望を伺う映画だったとしたら、『シン・ウルトラマン』はコロナ禍のそれを描いた映画であったように僕は感じました。
未知なる脅威(禍威獣の威だ)に立ち向かう人間の力と可能性。
そんな絶望の淵で生まれてくる希望。
そんなものを物語の中で垣間見たように思います。
次の『シン・仮面ライダー』も楽しみッスね!!