1、作品の概要
『祝祭と予感』は恩田陸の短編小説集。
全6編。
2019年に単行本が刊行された。
コンクール後の亜夜、塵、マサルのエピソードや、ホフマンと塵の運命的な出会いなどを描いた。
2、あらすじ
①祝祭と掃苔
亜夜、塵、マサルの3人は、亜夜とマサルのピアノの先生だった綿貫先生の墓参りに訪れていた。
コンクール後のコンサートツアーに話を咲かせる3人。
ふと、塵は空を見上げて・・・。
②獅子と芍薬
ミュンヘンのコンクールで、優勝者なしの2位だったナサニエル・シルヴァーバーグ
と三枝子の2人。
2人は優勝を条件にホフマンの弟子にしてもらうはずだったが逃してしまい、大きな失望を味わっていた。
反目しあっていた2人はやがて惹かれあうようになっていく。
③袈裟と鞦韆
芳ヶ江国際ピアノコンクールの課題曲「春と修羅」の作者・菱沼。
2人のケンジに捧げた名曲誕生の物語。
④竪琴と葦笛
ジュリアード音楽院に留学したマサルがナサニエル・シルヴァーバーグに師事するようになるまでの物語。
音楽の自由さについて。
⑤鈴蘭と階段
奏はヴィオラに転向するに当たって楽器選びで悩んでいた。
そこにパリに留学した亜夜から電話があり、不思議な縁で彼女は自らに相応しい楽器を手に入れる。
⑥伝説と予感
ホフマンは友人の城に滞在中に印象深いピアノの音を聴き、1人の少年と出会う。
精霊の名を持つ、カザマ・ジンと天才マエストロとの出会いの物語。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
ピアノのコンクールを通して3人の個性的な天才を描いた『蜜蜂と遠雷』がとても素敵な作品で。
スピンオフで刊行された『祝祭と予感』は以前から読んでみたいと思っていました。
『蜜蜂と遠雷』のその後の話や、登場人物たちの本編では語られなかった背景などが読めて楽しい短編小説集でした♪
4、感想・書評
①祝祭と掃苔
亜夜、塵、マサルの3人が一緒にいる時の不思議な空気が好きです。
全く違う個性を持った3人なのにそれぞれ武器になるような才能があって、すげえなコイツらって思います。
そんな3人のその後のエピソードや、塵の家族の話なんかが窺い知れる短編で良いですね。
最後に空を見上げて笑った塵の目には何が映っていたのでしょうか?
②獅子と芍薬
若き日のナサニエル・シルヴァーバーグと三枝子のエピソード。
いや、この2人だけの話で長編小説1冊書けそうですね。
2人がどれだけ焦がれても師事できなかったホフマンがどれだけ偉大か、風間塵の才能がどれだけ圧倒的だったのかが窺える短編でした。
③袈裟と鞦韆
菱沼がコンクールの課題曲「春と修羅」を作曲するキッカケになったエピソードですが、教え子の小山内健次の死にまつわる悲しみが彼を作曲へと駆り立てました。
2人のケンジに捧げたその曲は高島明石の演奏で異次元の高みへと導かれると思うと、音楽に対する様々な人たちの想いが連綿と受け継がれていくことを思って胸が熱くなります。
④竪琴と葦笛
紆余曲折があって、マサルはナサニエルに師事することになりますが、ジャズや他の楽器のことなど音楽を広く捉えるスケール感など2人の感性に宿る共通要素を垣間見たように思いました。
⑤鈴蘭と階段
亜夜の友達の奏がヴィオラにまつわるエピソードですが、とても不思議な話ですね。
点と線が繋がっていく感じ。
物語の中だけじゃなくて、現実の中でも時々感じるような運命的な邂逅。
⑥伝説と予感
ホフマンと風間塵との出会い。
幼い塵の才能がどれだけホフマンの心を強く捉えたか。
伝説の始まりの物語。
5、終わりに
ひさびさに『蜜蜂と遠雷』の世界観に浸れて楽しかったです♪
また読み返してみたくなりました♪
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