ヒロの本棚

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【映画】『さがす』~日常が消えて現出する狂気と罪の記憶~

1、作品の概要

 

『さがす』は2022年1月に公開された日本の映画。

監督・脚本が、日本映画監督協会新人賞を受賞した片山慎三監督。

主演が佐藤二朗で、伊東蒼、清水尋也らが出演している。

突然失踪した父を探す娘と、その裏にある事件を描いた。

 

 

 

 

2、あらすじ

 

スーパーで万引きをしてしまったダメな父親の原田智(佐藤二朗)を迎えに行く娘の楓(伊東蒼)。

妻が亡くなってしまってから精神的に落ち込み、日雇いでの仕事で困窮ししていた智は指名手配犯・山内照巳(清水尋也)のチラシを見て、「電車の中でコイツを見た」といい、懸賞金の300万円を目当てに行方をくらましてしまう。

途方に暮れた楓は駅でチラシを撒いたりして必死に探すが、智からは「探さないでください」とのメールが届く。

落胆する楓だったが、日雇いの現場で「原田智」として働く若い男を見かけてその顔が山内照巳に酷似していることに気付く。

父は山内に近づき監禁されているのではないか?楓はそう思い山内の足取りを追うが・・・。


www.youtube.com

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ

 

佐藤二朗のシリアスな演技が好きで、『はるヲうるひと』も良かったので観てみました。

ツィッターなどでもおすすめしている方も多くかったのですが、「失踪した父親をさがす娘の話」ぐらいの前知識しかなくて観ましたが、意外な展開にめちゃくちゃぶっ飛ばされました。

想像以上の良い映画でしたし、色んな意味で衝撃を受けました。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

 

4、感想(ネタバレなし)*途中からネタバレします。

 

今年の日本映画監督協会新人賞を受賞した片山慎三監督。

2019年の『岬の兄妹』で監督デビューをして高い評価を得ている監督で、『さがす』もオリジナルの脚本で人間の心の深い闇を抉りだすようなすごい映画だったと思います。

助監督歴は長くて、『パラサイト 半地下の家族』で有名なポン・ジュノ監督の助監督を務めたこともあるみたいですね!!

映画や漫画を原作とした映画が多い中、オリジナルの脚本で素晴らしい映画を作る映画監督は貴重ですし、今後の作品にも期待したいです。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

役者陣も素晴らしくて、主演の佐藤二朗は素の感じで面白いこと言ったりするよくいそうな関西のだらしないおっちゃんって感じでしたが、それが変容していくさまをとても繊細に演じていました。

ちょっとして視線や表情などで多くのことを伝えられる素晴らしい役者さんだと思います。

ムクドリ(森田望智)と手を取りあって涙するシーンなどめっちゃいいシーンでした。

 

伊東蒼も、「あれ?空白に出てた子かな?」って思ったらその通りで、まだ17歳なのに色々なドラマや映画に出ているみたいで圧巻の演技でした。

空白では大人しい役柄でしたが、『さがす』の楓役では父親を探すビラを配っている途中にブチ切れてビラを撒き散らしたり、施設のシスターの顔に唾を吐きかけたり、エキセントリックな感じで新鮮でした。

連続殺人犯役の清水尋也も、もうサイコパスとしか思えないようなヤバい目つきが印象的で、街で見かけたら通報してしまいそうな勢いで・・・(^_^;)

めっちゃ存在感ありました。

 

『さがす』はTSUTAYAなどでもレンタル開始しているみたいですし、アマゾンプライムでも配信開始したみたいですね!!

だいぶグロいシーンもありましたが、オススメです。

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*ここからネタバレあり!!

 

はい、ここからネタバレありです。

序盤は父と娘のハートウォーミングな繋がりが描かれていて、母親はどうやら亡くなっていて、貧しいけどだらしない父親としっかりものの娘が仲良く生活している様子が描かれています。

智が失踪したあとから楓は必死に智をさがしますが、その父親から「探すな」とメールが来て半狂乱に。

楓は殺人犯の山内を見つけて、潜伏していた島にまでたどり着きます。

たったひとりの父親。

彼女なりに必死だったのでしょう。

 

序盤から散りばめられていた伏線と謎の数々。

なぜ山内が原田智を名乗り、卓球場で寝泊りしていたのか?

もう一回観たら、色々と気づきそうですね!!

楓の視点からは解けなかった謎は、山内の視点、智の視点から過去を遡りながら明かされることになります。

いや、めっちゃ斬新でしたし、何度も「マジか!!」ってなりました。

 

連続殺人犯の山内照巳は、SNSを通じて自殺願望がある人間を殺す手伝いをしていました。

監督のインタビューでもありましたが、座間の連続殺人事件を参考にしているようですね。

映画の中で山内が言っていた「本当に死のうと考えている人はいなかった」という言葉は座間の事件の犯人の言葉でもあったようです。

ja.wikipedia.org

 

楓の視点の次は山内の視点で過去に戻り、山内の残虐な犯行の数々が明かされていきます。

島に行き着いた経緯も描かれつつ、彼の変態的な性癖も露見します。

殺人に性的な快楽を見出すサイコパス(^_^;)

卓球場でよく楓が殺されなかったですね。。

白い靴下への執着もあり真性のど変態。

 

そして智の視点になりさらに過去に遡り、妻の公子の死の真相と、山内との関係について描かれますが、この内容がめちゃくちゃ衝撃的で序盤の楓の視点からのダメ人間だけどひょうきんで心が温かい父親像がどんどんぶっ飛んでいきます。

妻がALSになってしまい、妻自身も進行していく病気にストレスを抱えていて「殺してほしい」と智に言うようになります。

ALSは進行性の難病で抜本的な治療法もなく、どんどん体の機能が落ちていってしまい、最後は自発的に呼吸すらできなくなり人工呼吸器を付けるようになって最後は命を落としてしまいます。

 

公子はリハビリをしても歩行もままならず、智も明るく振る舞いながらも終わりの見えない介護に心を折られてしまい、そして・・・。

自殺を試みる公子をじっと見ている智。

自殺に失敗した公子を数秒後には我に返ったように助けますが、智の本心が描かれたシーンだったと思います。

でも、誰に智を責められるでしょうか?

 

自殺を願う公子の手伝いをした山内は、他にSNSを通じて自殺を願う人間を殺すことを思いつき智と共謀して次々に自殺願望のある人間を殺していきます。

もうだいぶこのへんから闇が深すぎてキツかったですね(^_^;)

山内と智の繋がり、失踪の理由・・・。

謎が解き明かされていくのは観ていて面白かったですが、島での山内、智の殺し合いのシーンは凄惨すぎて目を背けたかったです(>_<)

 

ラストシーンでは楓が父・智がしてきたことを彼のスマホを手に入れて中身をみたことで全てを知ってしまったことが明かされます。

まぁ、人を殺して山内の懸賞金をゲットしてちゃんちゃん♪ってなふうには終われないですよね。

楓が探し続けて見つけたのは本当のおとうちゃんでした。

物理的な意味だけではなく、精神的な意味で自分から離れてしまったおとうちゃんを楓はずっと探し続けていたのでしょうか?

 

ラストのエア卓球からのパトカーのサイレンの音。

智が自首したことを暗示していたのかなと思いました。

 

 

 

5、終わりに

 

いやー、なんかすごいもん観ちゃった感がありますね。

劇場で観たら激情間違いなしのとこでしたが、家でのDVD鑑賞でも充分激情インザハウスでした。

今思うとこちらのビジュアルも楓は智さがして、智は山内をさがして、山内は殺人のターゲットをさがしてという意味だったのですね。

いや、深いわ~。

かなわんわ~。

 

舞台に大阪の西成が使われていたのがなんか味わい深くて良かったですね。

そして果林島は香川県の男木島、女木島でロケをしたのですね。

うわー、めっちゃ行ってみたいわ~。

あのへんの島は直島とか小豆島とかもあってアートもあって、島大好き中年の僕にとってはとても興味深いのですよ。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

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