ヒロの本棚

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【映画】『はるヲうるひと』~笑え、殺したいほど憎くとも~

1、作品の概要

 

原作・脚本・監督を佐藤二朗が務めた日本映画。

主演・山田孝之仲里依紗佐藤二朗、坂井真紀、向井理が出演している。

佐藤二朗が主催する演劇ユニット『ちからわざ』で好評を博していたこの作品を映画化した。

第35回ワルシャワ映画祭コンペティション部門に出品、第2回江凌国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞。

架空のある島の売春宿での愛憎劇。

 

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2、あらすじ

 

得太(山田孝之)は、島で売春宿「かげろう」の客引きや世話係の仕事をしながら、病弱な妹・いぶき(仲里依紗)と暮らしていた。

「かげろう」の2代目オーナーの哲雄(佐藤二朗)は、暴力によって遊女達と得太を支配していた。

哲雄と得太・いぶきは腹違いの異母兄弟。

3人のいびつな関係は、30年前に起こったある事件が関係していた。

 


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3、この作品を観たキッカケ

 

山田孝之佐藤二朗の『勇者ハルヒコ』シリーズのコンビと仲里依紗の組み合わせと、売春宿の話。

以前から気になっていて。

ツィッターで絶賛している人も多くて、ロクにストーリーを調べずにフワッと観ちゃいました。

ふわちゃんもビックリなぐらいフワッとした感じでした。

 

佐藤二朗が出てんだから、どうせコメディタッチだろとか思ってた僕は彼の暴力シーンで失禁寸前になりました。

涙腺崩壊ならぬ、膀胱崩壊。

暴行de膀胱崩壊なんてシャレになりません。

 

昔、ドラクエとかのRPGでテキトーにダンジョン進んでたらいきなりボス戦になって、回復しないまま戦ったことを思い出しました。

 

 

 

4、感想・書評

 

いや、濃かった!!

山田孝之仲里依紗佐藤二朗の演技がもうなんかバチバチ来ていてヤバかったですね。

鬼気迫るっていう感じでしょうか?

軽い感じで観始めていたのに目が離せなくなりました。

 

得太役の山田孝之は過去の因縁から逃れられずに、哲雄の言いなりになっています。

けど、母親が遊女をしていていじめられたりとか色々と辛い想いもしていたのでしょう。

1人神社で袖をかみながら声を殺して泣く場面は心が痛かったです。

子供の頃からどれだけ声を殺して1人泣いていたのでしょう?

そういう想像をしてしまうような場面でした。

 

いぶき役の仲里依紗は、病弱で美人なのに不感症のため遊女もできずに兄の得太を頼って生きています。

どことなく存在感が希薄で、浮世離れしている。

発言もずれている感じがして、遊女達からもやっかまれています。

病名は明かされていませんが、精神にも障る病気なのでしょうか?

酒とタバコの依存も酷くて、得太に対しても支離滅裂言動をして困らせてしまいます。

 

哲夫役の佐藤二朗は、暴力によって「かげろう」を支配していて、遊女と2人の異母兄弟を目の敵にしています。

彼・彼女らを「虚ろな存在」「何にもなれない存在」と面罵して、自分は「真っ当な存在」なのだと繰り返し言い放っています。

でも、実のところどこかで彼・彼女らと自分は同類なのかもしれないと恐怖のうちに思っていたのではないでしょうか?

だからこそ殊更に辛くあたり、遠ざけた・・・。

得太といぶきの母親が、哲雄の家庭を「真っ当な幸せ」を壊した。

そう想い続けていたことが、もし真実ではなかったとしたら?

 

ラストシーンの得太の告白で真実が明るみになり、ある種の呪縛が解けていく感じがしました。

島に縛り付けられて、それでも何かに縋りつきながら生きている人達の物語。

辛い日々でも「笑え!!」と叱咤してくれた母の姿。

真っ当じゃなくても、虚ろであってもいいじゃない。

生きてるんだから。

太陽の下で、大きな声で笑えばいいんだよ。

 

 

 

5、終わりに

 

最後は、中村文則ばりに「共に生きましょう」的に締めました(笑)

そんなニュアンスが感じられる映画でした。

真っ当だろうが、真っ当じゃなかろうが。

命がある限り、笑って。

無理にでも大きな声で笑って生きていく。

どれだけ重い罪を背負っても、光が見えなくても、毎日辛くても、重い宿命から逃れられなくても。

笑って生きていく。

そんなことを感じさせられた映画でした。

 

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