1、作品の概要
2019年に公開された韓国映画。
公開当時から世界中で話題を呼び、第72回のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。
第92回アカデミー賞でも作品賞を含む6部門で受賞。
非英語作品の受賞は史上初となり、話題になった。
2、あらすじ
半地下の薄汚れたアパートに住む貧乏なキム一家。
父(ギテク)、母(チュンスク)、息子(ギウ)、娘(ギジョン)の4人家族だが全員仕事をしておらず、内職で細々と食いつないでいた。
友人のツテで大金持ちのパク家の娘(ダヘ)の家庭教師を始めたギウは、母親のヨンギョに信頼されていく。
ダヘの弟ダソンの美術の家庭教師にギジョン、運転手にギテク、家政婦にチュンスクをそれぞれ推薦しお互い家族であることを隠しながら、謀略を巡らせて前任者を追い出しパク一家に寄生することに成功する。
ダソンの誕生日にパク一家がキャンプに出かけたのをいいことに、家に上がり込み宴を繰り広げるキム一家。
しかし、深夜の大雨の中訪れた元家政婦のムングァンが一家の浮かれ気分に冷水を浴びせる。
パク家の豪邸の地下には秘密があり、もう一人の寄生者の存在が明らかになる。
前半のお気軽なコメディタッチの内容から一転、ラストのカタストロフィに向かって血なまぐさく凄惨な展開に物語は暗転していく。
貧しい一家の“計画”とは…!?『パラサイト 半地下の家族』90秒予告
3、この作品に対する思い入れ
以前からブログやツィッターで話題になっていて、アカデミー賞を非英語圏から歴史上初めて受賞したことでさらに注目されるようになったこの作品。
僕も、以前から観に行きたいなと思いつつ、コロナの影響もありまだ観ることができていませんでした。
待ちに待ったDVDのレンタルが7/3から開始ということだったんで、ソッコー借りてきてみました!!
4、感想(ちょびっとネタバレ?)
貧困問題を取り扱った作品だと聞いていましたが、豪邸に住んで優雅に暮らすパク一家と、半地下で貧しい生活をしていて一家4人とも無職のキム一家の対比が鮮明でした。
しかし、貧しいながらもどこかコミカルでチームワーク抜群のキム一家。
普通、父親が無職だったらかなり揶揄されるような気がするのですが、一家に大事にされて息子からもリスペクトされているように思います。
日本だったら、絶対離婚されていますよね(笑)
儒教の国、韓国特有の家族愛なのか?
それとも、キム一家が仲良しなのか?
よくわかりませんが、貧しいながらもどこか呑気で笑ってしまうような場面も多いです。
ギウが家庭教師としてパク家に雇われてから、次々とキム一家が偽名でパク家に潜り込む様はコミカルで、笑えてきます。
パク家婦人のヨンギョがまた騙されやすい性格で、キム一家にまんまと騙されて運転手、お手伝いさんも追い出してしまいます。
まぁ、キム一家の悪知恵が働くこと(笑)
そしてパク一家がキャンプに出かけたのをいいことに家に家族で集まり宴会を開くキム一家(笑)
まさに寄生虫ですね。
そんなお気楽な雰囲気も、夜中に不吉に響いたインターフォンによって崩壊します。
半地下の秘密が暴かれて、もうひと組のパラサイトの存在が明らかになります。
そして血なまぐさい悲劇が・・・。
この暗転の具合が非常にドラスティックで印象的でした。
転がるようにパク家から逃げ出すギテク、ギウ、ギジョン。
大雨の中ずぶ濡れになりながら半地下の家に逃げ帰るシーンはとても惨めで、楽しく貧困と向かい合ってたはずの一家の運命は坂道を転げるように悲劇へと向かっていきます。
大雨によって彼らの半地下の住居は悲惨な状況になっていました。
一部の富裕層の華麗な生活をパク一家を通して知ってしまったキム一家。
そのことにより、自分たちの惨めさをこの上なく知らしめされてしまったのではないでしょうか?
パク一家を知る前のキム一家は自分達の貧困も楽しんで乗り越えられていましたが、パク一家に入り込むことで様々な場面で自分達の惨めさを痛感させられる場面が増えていったのではないでしょうか?
善良で悪気のないパク一家の振る舞いだったからこそ、余計に惨めさは募ったのでしょう。
パク家の地下の秘密、キム一家の半地下の住居に漂っている大きな劣等感とフラストレーションは見えない形で蓄積されラストシーンの凶行へと繋がっていきます。
明るい光の中でまるで白昼夢のように現実は侵食されて、地下から噴出するように湧き上がってきた悪意に蹂躙されていきます。
それまで暗いトーンの映像が多かったのですが、この場面は明るく光が多い映像で好きです。
真っ白いシーツにどす黒いペンキをブチまけるようなカタストロフィ。
ギテクが走り去る場面のカメラワークもとても印象的でした。
ギジョンに宿ったのは未来への希望なのか、それとも狂気じみた妄執なのでしょうか?
「あの家」に向けられる執着が、また新たな悲劇の引き金になるような・・・。
そんな不吉さを感じさせるようなラストでした。
5、終わりに
階段を昇り降りするシーンなど、どことなく演劇的で、喜劇的な要素を持っている作品だと思いました。
しかし、確実にラストのカタストロフィに向けて狂気と憎悪の種が蒔かれていて、どす黒い何かが噴出していく様が感じられました。
太宰治『人間失格』で、何かの事柄についてトラジェディー(悲劇)か、コメディ(喜劇)かをゲームのように言い合う場面がありましたが、この作品はどちらだったのでしょうか?
何か生々しく、暴力的なエネルギーと怒りのようなものを感じた作品でした。