1、作品の概要
1998年に新潮社から刊行された。
『夫婦茶碗』『人間の屑』が収録されている。
町田康の第2作目の小説。
『人間の屑』が2000年に村上淳主演で映画化された。
2、あらすじ
①夫婦茶碗
働かずに家でゴロゴロしているばかりのダメ夫「わたし」は、妻と2人暮らし。
食うに困って困窮し、ついには日当8000円のペンキ塗りの仕事を見つけて冷蔵庫も購入するが、嫌になって辞めてしまう。
妻のシャネルのバッグを質に入れて手に入れた金で食いつなぐが生活はジリ貧になり家庭は荒れ始める。
そんな時、「わたし」はメルヘン童話の作家になることを思いつくが・・・。
②人間の屑
清十郎はかつてパンクバンドのボーカルをやっていたが、ドラッグのトラブルでバンドを解散し、祖母が経営する旅館に転がり込み働きもせずに無為の日々を送っていた。
旅館の従業員の岩田は清十郎のバンドのファンで、その友人女性の小松とミオが旅館に遊びに来て楽しい夜を過ごす。
祖母が猫いらずを撒いたことが原因でトラブルになり、再度上京して小松の家に転がり込んだ清十郎。
小松の両親に挨拶し、彼女は清十郎の子を身籠るが、彼は同時期にデキていたミオの元へと逃げ出してしまう。
そして、2人は清十郎の実家に助けを求めるべく大阪へと旅立つが・・・。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
いつも食べたいわけじゃないけど、時々無性に食べたくなったりする。
クセがあって、ああなんで俺はこれを食べようと思ったんだろうとか思っちゃうんですけど、やっぱり時間が経つと食べたくなってしまう・・・。
読んでいてざわつく気分になって、「一体俺は何を読まされているんだろう」とか思いながらもページをめくる手は止まらずにむしろ加速していき、嫌悪感と爽快感が綯交ぜになりながらも町田康の物語とそのうらぶれた世界にどっぷりとハマってしまう。
まだ2作しか読んではないのですが、町田康は僕にとってそんな作家です。
でもやっぱり退廃と何かしらの表現があるのが感じられて、純文学的ななにかの欠片があちこちに散らばっているような気がするのです。
4、感想・書評
①夫婦茶碗
どこか薄気味の悪い作品、である。
どこからが現実の出来事でどこからが夢想なのか。
ずっとその境界が曖昧なままに物語が進行していくような。
白昼夢のような物語だと思います。
『夫婦茶碗』というだけにこれは夫婦の物語でもありますが、妻の存在も何か不気味で。
得体の知れない存在のように思えます。
しかし世界はあくまで「わたし」のフィルターを通して語られており、歪んでいるのが世界なのかそれとも「わたし」なのか読み進めているうちにどんどんわからなくなってきました。
そもそも一体これは何について語られている物語なのか?
独特の文体で語られる退廃と倦怠。
狂気とユーモア。
町田康ワールド全開な中編小説でした。
②人間の屑
町田康の小説ってまだそんなに読んでないけど、主人公がまともに働いていないパターンが多いですね。
太宰治の小説を彷彿とさせるような場面も散見されていて、いよいよ困窮しても誰かに縋ったりしてなんとかその場を取り繕ったりします。
しかし、あまり悲壮感はなくどこか貧しい生活の中にも独特のユーモアが富裕層へのアンチテーゼが篭められているような印象すらあります。
『人間の屑』ではどこか現実から遊離したような雰囲気の『夫婦茶碗』に対して、写実的に清十郎の行き当たりばったりの転落人生を描いています。
働かずに祖母の温泉宿で居候しながら、猫の家系図など作成しながら、一日1000円のおこずかいをもらって悠々自適な生活を送る。
いや、もうダメすぎる(笑)
なんだよ猫の家系図って、20代後半の男子の生活として終わっています。
あげくに祖母の小銭を盗もうとしてバレてしまうとか、どうしようもなくかっこ悪すぎます。
こういうカッコ悪さ、惨めさを書かせたら町田康の右に出るものは、ヒロ氏こと辛酸舐め太郎ぐらいのものですね。
行き当たりばったりでヒモになってみたり、実家に泣きついてみたり、子供を作ってみたり・・・。
いや、もうなんなんでしょうこの人は。
ラストの意味不明な展開もシュールで良かったでした。
5、終わりに
独特の文体とか、世界観に引きずり込まれてなんだかあっという間に読んでしまいました。
なんかクセになる感じですね。
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