ヒロの本棚

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【映画】『Red』~愛が成就してハッピーエンドで終われるならば、それはもちろん幸せだろう~

1、作品の概要

島本理生『Red』 が原作。

2020年2月に夏帆妻夫木聡主演で公開された映画。

三島有希子監督。

倫理を超えた愛を描いた。

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2、あらすじ

経済的に恵まれている家に嫁ぎ、子供も生まれて幸せに暮らしていた塔子。

しかし、夫の何気ない態度や、義母との関係に違和感を感じていた。

そんな時に偶然10年ぶりにかつて愛した男・鞍田に再会する。

塔子と鞍田はお互いに求め合うようになり・・・。

 

 

3、こ の作品に対する思い入れ

ツィッターやブログでの感想を読んで、以前から気になっていた映画でした。

 映画のポスターの写真の赤はヤバすぎる。

期待通りの出来栄えと内容で、原作も読んでみたいと思いました。

 

 

4、感想・書評

社会的にも倫理的にも許されない恋に墜ちていく瞬間。

それはどういった瞬間なのでしょうか?

 

通常超えることができない「壁」を超えた時に激情は燃え盛り、何もかも焼き尽くしていく。

誰にも祝福されなくても、誰を傷つけても、大切なもの全てを捨てたとしても・・・。

そんな「赤」の現出を感じるような映画でした。

 

何か東京ゲゲゲイの「捧げたい」を思い出しました。

それまでずっと
強く抱えてた宝物さえ
霞むほどの出会い のちに
痛みのない選択
なんて残されてなく
傘すら捨てた二人
雨が包んでくれる

ねぇ 怖くなんかないよね
向かい風に飛び込む今

祝福されなくても
笑い者にされたとしても
捧げたい
たった1人のために
友を失ったとしても
捧げたい

これからずっと
消えない傷跡舐め合いながら
不安と安堵の間 だから
涙流しては再確認したくなる
同じ雪の温度に
ちゃんと触れてるのかを

もしも 空の色違うなら
どうか永遠に伝えないで

白いドレスがなくても
神様に許されなくても
捧げたい
たった一度の恋が
親を泣かせたとしても
捧げたい


www.youtube.com

 

塔子は、もともと心の中に激しい炎を、激情を隠し持った女性だったのでしょう。

見た目の地味さや、一見従順に見える大人しさから夫や周りの人間は彼女のことを都合よく解釈していたのかもしれませんが・・・。

一旦、彼女の中に燃え盛った炎は消えることなく、鞍田以外のものを全て焼き尽くしていったのでした。

 

夏帆演じる塔子が、すごく大人しくて従順そうなのにあれだけの熱量を心に秘めていたなんて。

いやはや、女性の心の奥底は計り知れませんね。

イケイケでハデな女性ではなくてああいった奥ゆかしい感じの女性が道ならぬ恋に落ちていくというところがたまらなく良かったです。

いや、不倫はいけませんがね(^^;;

夏帆の目で訴えかけるような演技が良かったです。

 

妻夫木聡の演技もすごく良かったですね!!

彼の演技がとても好きで、『パラダイス・ネクスト』『怒り』みたいな表面的にはとても快活で、軽薄さを漂わせながら心の中に何か薄暗いものを抱えているみたいな2面性のある演技がたまらなく刺さります。

ああいうタイプのキャラクターを演じたら彼の右にいるものはいないのでは?

今作の鞍田も、大人の色気を感じさせて何か危うい感じをさせながら、抱えている秘密とのアンバランスさがたまらなく魅力的でした。

 

冒頭の場面から2人の恋の行く末を暗示させるような全てを塗りつぶしていくような雪。

闇の中、どこまでも降り続くくすんだ白色。

ラストにも繋がっていく、とても印象的なシーンでした。

 

 

5、終わりに

 不倫、ダメ、ゼッタイ。

ですが、こんなふうに激情に身を任せて自我を開放していく塔子の姿がとても印象的でした。

彼女は、鞍田との恋愛をキッカケに自ら封じ込めていた自分自身の激情を解放して、むしろあるべき本来の姿に戻ったのではないでしょうか?

そうだとすれば、鞍田の存在をある意味では触媒に過ぎなかったのかもしれないですね。

 

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