1、作品の概要
2020年に公開された日本映画。
村上虹郎主演。
罪を犯して逃げ続ける若い男女を描いたロードムービー。
2、あらすじ
役者になることを夢見ている翔太(村上虹郎)は、オレオレ詐欺の受け子などして、手を汚しながら東京で生きていた。
和歌山の故郷・和歌山の高齢者施設で泊まり込みのボランティアをするうちにタカラ(芋生悠)と出会う。
翔太は、タカラが出所した父親にレイプされる場面に出くわし助けようとするが、タカラが父親をナイフで刺してしまい2人で逃げ出してしまう。
警察から逃げ続ける2人がたどり着いた場所はどこだったのか?
3、この作品に対する思い入れ
なんか仕事で車を運転してて、ラジオで小泉今日子が出てて、映画のプロデュースをしてるとか聞いて、へーとか思ってましたがこの作品だったんですねぇ。
そして、どなたかがツイッターでこの映画を絶賛していて観たくなりました。
どなただったのかは忘れてしまったのですが・・・。
最近、こーゆーのおおいなぁ(^^;;
そして、主演が村上虹郎。
別に演技が物凄く上手とかではないと思うんですけど、存在感とかオーラがハンパないです。
彼が画面上にいるだけで物語が流れ出すような特別な存在だと思います。
ゲイではありませんが。
でも好きな俳優はほとんど男性ですね。
何か憧れるっていうか。
4、感想
ストーリー的にチープかもしれません。
女の子が父親を刺して、男の子が庇いながら2人で逃げ回るとか。
でも、逃げ回ってる2人はこんなことが続くわけがない。
いつか終わるって思いながらも束の間の逃走劇を「味わって」います。
なんだろう。
束の間のモラトリアム期間のような。
いつか終わることがわかっているんだけど、まだ少しだけ味わっていたい。
朝、起きる前にベッドでグダグダしているみたいな時間。
現実と折り合いをつけるまえの狭間のような・・・・。
2人の歳はいくつぐらいでしょうか?
25歳ぐらいなのでしょうか?
僕は、大学時代のモラトリアムともいうべき時期を思い出しました。
現実が押し寄せた来ているのはわかっているけど、もう少しだけ逃げ回って子供でいたい。
自由を享受したい。
もちろんタカラは父親を刺した罪を犯しているので、法の裁きを受けることになりますが、ある意味現実から遊離したファンタジーのような時間を過ごします。
それは、抑圧されて何も選ぶことができなかった彼女にとってキラキラしたかけがえのない時間だったのだと思います。
そして、翔太にとってもうまくいかない現実から逃れる。
しかも、女の子を助けるという大義のもとに行われた逃避だったのでしょう。
20代って、学生時代を終えて社会に出るけど、まだまだ不安定で何か狭間で生きているような時期なのだと思います。
そういった不安定さが、ままごとのような2人の旅路と生活に現れています。
でも、誰が彼らを笑えるのでしょうか?
梅農家のお宅にかけおちと偽って転がり込んで、金を盗もうとした翔太に「逃げられない」と声をかけた男。
彼もかつては妻と駆け落ちをして何かから逃げ出そうとしていた。
厳しい顔をしていた彼も、翔太にかつての自分を重ね合わせたのでしょう。
警察の聞き込みにも、「何も盗られていません」と黙秘を貫きました。
翔太に投げかけた言葉は、責める意味というよりは助言に近いものだったように思いました。
作中では明らかにされてはいませんが、おそらく翔太が盗んだ金のことも見逃したのだと思います。
タカラと翔太はたどり着いた街でぎこちなく2人の生活を始めますが、ままごとのような生活でうまくいきません。
翔太も役者として成功できず、実家ともうまくいってなくて、薄汚い詐欺の片棒を担いだりして不本意な人生を送っていて、タカラも父親からの性的虐待で心に深い傷を負っています。
お互いのコンプレックスとエゴがぶつかって互いをうまく思いやれずに想いはすれ違ってしまいます。
二人が離れ離れになって、タカラが公園で翔太の幻影とお芝居をする場面。
とても物悲しくて、儚い・・・。
幻想的な場面でした。
父親を殺してしまって、警察から2人で逃げ回っていて、翔太は一緒にいないけれどそれでもタカラにとって翔太は心の中の光なのだと強く感じました。
2人は見知らぬ街で弾かれて、導かれるように再び寄り添い合って、世界から逃げ出そうとします。
ラストシーンのタカラの笑顔がとても印象的でした。
もう十分だから。
ありがとう。
って言ってるように見えました。
待ってるからって。
5、終わりに
エピローグもたまらなく切なくて、とても心に残る映画でした。
2人を繋ぐ運命の糸はずっと前から繋がっていて・・・。
もう涙腺崩壊マックスでした。
タカラと逃げ続ける日々は、翔太に約束と覚悟をもたらして真摯に役者と向き合うようになったのでした。
2人の間に流れていた感情はなんだったんでしょうか?
恋愛というと簡単だけれど、何か共感とか、共鳴に近いものだったように思えます。
そして、そのあとの2人の物語が幸せなものであったと強く願うようなそんな良い映画でした。