ヒロの本棚

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【本】村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』~少なくとも最後まで歩かなかった~

1、作品の概要

 

『走ることについて語るときに僕の語ること』は村上春樹が走ることと自身の小説とのつながりを語ったエッセイ集。(本人はメモワールと呼んでいる)

2007年10月15日に刊行された。

文庫版で262ページ。

1部の引用などを除いて書下ろしで書かれている。

タイトルは、村上春樹自身が敬愛するレイモンド・カーヴァーの短編小説『愛について語るときに我々の語ること』から取られている。(承諾は得ているとのこと)

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2、あらすじ

 

1982年の秋から走り始めて、1983年にアテネマラトンのマラソンオリジナルコースを1人で走破して以来、ほぼ毎年のようにフルマラソンに参加している村上春樹

彼はいかにして走り始め、「走る小説家」となったのか?

そこには創作にはフィジカル的な強さが必要だ、という村上春樹の信念があった。

アテネ、ホノルル、ニューヨーク、ボストン、日本。

世界中のいたるところでマラソンウルトラマラソントライアスロンを走り続けている彼が、走ることを通じて自らの想いを吐露する。

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ

 

僕もランナーのはしくれとして、走る介護士として以前から気になっていたこの作品。

今回は再読でしたが、ちょうどリレーマラソンや、10キロマラソンの大会に出た時期でラン熱が高まっていたので親近感を感じながら読めました。

ただ走ることを語るだけのエッセイではなく、走ることを通じて村上春樹自身の人生観や、小説家としての創作ついて語っている貴重な1冊だと思います。

 

 

 

4、感想

 

1982年にはじめは専業小説家として不健康になっていたため、健康増進のために始めたランニング。

それがフルマラソンを年に1回は走り、果ては100キロマラソンや、トライアスロンにまで出場するようになったのはなぜなのか?

村上春樹自身太りやすい体質らしいので、体形を維持するのもひとつ大きなファクターだったようですが、小説を書く上でフィジカル的な強さを身につけることが彼が考える小説家の在り方であったようです。

 

多くの場合世間の人たちは、芸術家は不健康で自堕落な生活を送っているイメージを持っていて、村上春樹のように早寝早起きをして規則正しく生活をして、ランニングを欠かさずに体を鍛えているのは芸術家や作家らしくないというふうに見ることが多いようです。

確かに僕が想像するステレオタイプの作家といえば、太宰治などの自堕落で退廃的な生活をしているイメージが強く、村上春樹がフルマラソンを4時間切るタイムで走りきるガチのランナーだと知って最初は違和感を覚えました。

 

ただ村上春樹としては芸術行為が「不健全で、反社会的要素を内包したもの」と認めながらも、だからこそフィジカル的にも精神的にも健康でなくてはならないみたいなことを言っていました。

これは別に他の作家もこうあるべきということではなくて、村上春樹自身が考える作家像であり、コツコツと積み上げていきながら長い物語を書いている作家だからこその説得力だと思います。

 

また著書『職業としての小説家』では、走ることを「悪魔祓い」とたとえ、精神的にも魂の暗い奥底まで降りていくことで心の中に溜まった澱のようなものを取り除くこと行為と言っていました。

村上春樹にとって、走ることはフィジカル的な強さ、精神的な強さを身につける行為とともに、どこか心の闇を浄化するイニシエーションのようなものなのでしょう。

 

『走ることについて語るときに僕の語ること』『職業としての小説家』『猫を棄てる』などの近作のエッセイでは自分の内面や、プライベート、創作の手法など昔から考えたらありえない自己開示をしています。

村上春樹も老境に差し掛かり、御年74歳。

世界的な作家として、自己開示をしながらなにがしかのメッセージを伝えようとしているように僕には感じられるのです。

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5、終わりに

 

同じランナーとして(僕はフルは走ったことないへっぽこですが)、興味深い点も多く、うなずける部分も多かったです。

そういえばこの作品の中で村上春樹が、「走っている最中に何をしているのか」という問いに対して「ほとんど何も考えていない。無になっている」みたいなこと答えていて、僕も数日前に職場の同僚から同じ質問をされて同じように「無になっている」と答えたことを思い出しました。

 

あとはやっぱり音楽を聴いているかな。

ストーンズの『ベガーズ・バンケット』を聴きながら僕も走ったことがあったので、共感しました。

僕も、近々フルマラソンを走れるように頑張りたいっす!!

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