1、作品の概要
『マイ・ブロークン・マリコ』は、2022年9月に公開された日本の映画。
主題歌はThe ピーズ『生きのばし』
原作は平庫ワカの漫画『マイ・ブロークン・マリコ』で、2020年1月に単行本が刊行された。
自殺した親友・マリコの遺骨を、虐待していた親から盗み、東北の海へと旅立つ26歳の女性・シイノの葛藤を描いた。
2、あらすじ
ブラック企業で勤務する26歳のOL・シイノ(永野芽郁)は、TVで親友のマリコ(奈緒)の自死を知ってパニックになる。
シイノは、父親に虐待されていたマリコの遺骨を無理やり盗み出し、かつて一緒に行きたいと行っていた海「まりがおか岬」へと旅立つ。
旅の中でシイノはマリコの遺骨を抱きながら、彼女が父親(尾美としのり)から虐待されて、母親が「お前のせいだ」と捨て台詞を残し出ていったこと、彼氏からも暴力を振るわれていたことを思い出す。
なぜ自分に何も告げずに逝ってしまったのか・・・、葛藤するシイノだったが、ひったくりにあって窮地に陥ってしまう。
地元の親切な男性・マキオ(窪田正孝)にお金を借りて、なんとか「まりがおか岬」に辿りついたシイノだったが・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
ツィッター、ブログなどで映画を観に行って好意的な感想を見かけることが多く、以前から気になっていた作品でした。
ちょうど、アマゾンプライムビデオでも配信が開始したので観てみましたが、期待以上の良作で、永野芽郁の渾身の演技が心に突き刺さりました。
今まで爽やかないい子ちゃんの役が多かった永野芽郁ですが、今作は彼女にとってもターニングポイントになったのではないでしょうか?
重い内容を取り扱った作品ではありますが、とても心に響く良い映画だったと思います。
4、感想(ネタバレあり)
ヘビースモーカーで、気が強くて、酒飲みで、口が悪くて男勝りなシイノ。
マリコの父親のもとに乗り込んで、包丁を突き付けて、遺骨を強奪してそのまま2階から飛び降りて、裸足で逃走。
こんなファンキーな女性の役を永野芽郁が演じるなんて、誰が想像したでしょうか?
役作りのために作中で履いていたドクターマーチンのブーツを実際に履いてクタクタにしたり、タバコを吸う役のため美容タバコを3~4ヶ月前から吸い続けたり。
主演の永野芽郁も気合を入れてこの役に臨んでいることがよくわかりますね。
これまでとは全く違った役柄で、彼女も気合が入っていたのではないでしょうか?
小学生からずっと親友だったシイノとマリコ。
ただ仲がいいというだけではなく、もっと強い結びつきがあって、ガサツで気が強いシイノに気弱で流されやすいマリコが依存して憧れていたような描写もあったように思います。
回想のシーンで、「シイちゃんに男ができたら私死ぬから・・・」と言って、目の前で手首を切るマリコ。
何度も切られた跡がある手首が痛々しいし、シイノへの強い依存心をうかがわせられます。
その割には自分だけ男と付き合いだして、時にはシイノをないがしろにするマリコ。
いや、勝手やな!!
でも、そんなマリコに対してシイノもどこか姉のような包容力を見せて、時にはマリコにつきまとうDV彼氏に対してフライパン片手に奮闘したりしたのは、どのような感情からだったのでしょうか?
マリコがシイノに依存して頼っていたように、シイノも頼ってくるマリコを必要としていたのかもしれませんね。
シイノは強くてどこか孤独な女性のように見えますし、無防備に頼ってくるマリコのことが愛おしかったのでしょう。
そのように普通の友人とは違う特別な関係。
それがマリコとシイノの関係性だったのだと思いますし、だからこそシイノはマリコのために体を張って、彼女の自死に大きな衝撃を受けたのでしょう。
映画のポスターに「勝手に逝ったあんたに」とあったように、自分に何も言わずに逝ったマリコに対してわだかまりもあり、救えなかった自分にも葛藤があったのでしょうか?
酒場のシーンや、岬で遺骨を前に泣き叫ぶシーンで、シイノのやるせない気持ちが切々と伝わってくるようでした。
暴漢に襲われている少女をシイノが助けた場面では、暴漢が父親やマリコに危害をもたらしていた男たちで、少女がマリコのようなイメージで、少女を助けることがシイノにとって少しは救いになりえたのでしょうか?
骨箱でぶん殴るという前代未聞の攻撃にはたまげましたが、風に流されていくマリコの遺骨はキラキラと輝いて美しく、マリコの人生そのものように「風に流されて重力に逆らえない」ものでした。
シイノが最後に読んだマリコからの手紙、遺書には何が書かれていたのでしょうか?
彼女の笑顔から、そこに救いのようなものが少しでもあったなら良いなと思いました。
5、終わりに
ちょっとスナフキンっぽいマキオ(窪田正孝)もいい味出していました。
めちゃくちゃシイノを助けてくれているのに、わりと邪険に扱われているのがまた何とも言えない感じでした。
なんでこんなにシイノに優しくしているのか謎でしたが、かつて自分もこの地に自殺をしに来て生きながらえたとのことで、(自殺しに来たわけではないけど危うい感じがしていた)シイノにシンパシーを感じて手を差し伸べたのでしょうか?
彼の「死んだ人に会うには生きていくしかない」という言葉は真理だと思いますし、自分の中のマリコを大事に抱えて生きていくことがマリコと会う唯一の方法だと、シイノも思い至ったのだと思います。
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