1、作品の概要
『誰も知らない』は、2004年に公開された日本の映画。
監督・脚本・製作を是枝裕和が務めた。
上映時間は141分。
「生きているのは、おとなだけですか。」が、映画のキャッチコピー。
主演は柳楽優弥、YOUらが出演している。
音楽はゴンチチが担当、タテタカコ『宝石』が挿入歌に使われ同作でも俳優として出演している。
第57回カンヌ国際映画祭、最優秀主演男優賞を主演の柳楽優弥が最年少で受賞。
1988年に実際に起こった巣鴨子供置き去り事件を題材にした作品。
母子家庭で育てられた4人のの子供たちが、母親に捨てられて子供だけで生きていく物語。
2、あらすじ
子供4人の母子家庭で育った12歳の明(柳楽優弥)は、昼間働いている母のけい子(YOU)に頼られて長男として京子、茂、ゆきの3人の面倒をみていた。
明と京子は学校に通いたいと訴えていたが、けい子に許されず、兄妹たちの生活の面倒をみる日々。
そして奔放な母親のけい子は、好きな男性のもとへ行くために家を出て、子供たちだけの生活が始まった。
連絡も取れず、送金も途絶えがちになって、家賃はおろか水道や電気まで払えずに止められてしまう始末。
ひょんなことで、明と知り合った不登校の女子中学生の紗季は4人の凄惨な生活を目の当たりにする。
そして困窮し、荒んでいく生活の中で悲劇が起きてしまう・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
前から気になった映画でしたが、映画『怪物』を劇場で観た衝撃の余波から是か非でも観たいと思っていました。
好きな俳優の柳楽優弥のデビュー作というのも観たいポイントのひとつでしたが、彼の幼少期の演技や垣間見せる大人と子供の狭間で揺れ動く複雑な表情は僕の心を捉えて離しませんでした。
本当に素晴らしい映画。
是枝監督の作品が本当に好きですし、過去の作品もすべて観てみたいと思っています。
4、感想
是枝監督の作品は、『海街diary』『怪物』『ベイビーブローカー』を観ましたが、家族や疑似家族を好んで描いている監督だなと思っていました。
『怪物』の湊と依里のピュアネスにヤラレまくった僕は、これだけ子役を上手に起用した是枝監督が僕の好きな俳優である柳楽優弥を『誰も知らない』でどういうふうに撮ったのか興味津々でした。
でも、TSUTAYA、ゲオでレンタルされていることが多く、ああみんな考えることは同じやなって思っていました(笑)
そしてようやく観た『誰も知らない』は僕の想像を超える作品で、とにかく印象的なシーンの連続でただ単に捨てられた子供たちの悲哀を描くのではなくて、子供たちで生きていくしかなかったリアリティが描かれているように思いました。
ここでいうリアリティは生活のリアリティ。
食べて、服を着替えて、お風呂に入って。
そんな僕たちが当たり前にしている行為の重み。
普通は映画などで抑えられていることが多い生活音がことさらに強調されていて、映画の半分は日常と生活の連続だったのではないかと思います。
そんな生活の場面が淡々と描かれることによって子供たち4人で暮らしていく現実の凄惨さが浮き彫りになっていくと思いますし、あえて日常を悲劇として描いていないところがとても好感を持てました。
他人から悲惨と思われる生活の中にも当人たちにしかわからない光がある。
血は繋がってなくても家族として一緒に生きている喜びがある。
そんなふうな想いを持って、日常が描かれているようにも思いました。
それでも段々と母親の仕送りや連絡も途絶えて困窮してくる。
生活が荒んでいく。
どれだけ普通と比して逸脱していっているのかを測る物差しが紗季だったようにも思います。
彼女も、凄惨ないじめを受けて社会からつまはじきにされているように感じている。
寄る辺なく身を寄せ合うようにして、明たちと関わっていったのではないでしょうか。
ただの同情というよりはむしろ共感。
それが明と飛行場に行った重要なシーンにも繋がっていくように思います。
明は妹を埋めましたが、紗季はメタファーとして別の何かを埋めたのかもしれないと思いました。
柳楽優弥の演技はとてもよかった。
想像以上に。
あえて12歳というあの年齢にしたのも、是枝監督が子供と大人との狭間で漂うアンバランスさを表現したかったのかなと思いましたが、柳楽優弥の演技はそれを超えて独特の色気や不安定さを表現していたように思います。
その後も役者として成長し続け、日本を代表する素晴らしい役者になった柳楽優弥。
『最後の命』『ディストラクション・ベイビーズ』など様々な顔を見せる大好きな役者です。
最後に是枝監督がこの映画を通じて何を描きたかったのかについて書きたいと思います。
『誰も知らない』は実際にあった1988年の巣鴨子供置き去り事件をもとに、是枝監督が15年の月日をかけて構想を練った作品だそうです。
中村文則の作品で、ある事件にのめり込んで、その事件の虜になって運命を狂わされながら飲み込まれてく様を想起させられます。
是枝監督もそのようにして深くその事件に惹きつけられたのでしょうか?
生後間もなく死亡した次男も含めて、三女の死亡と死体遺棄も行われた凄惨な事件。
そこにあった生活とはどんなものだったのか?
何の楽しみも、夢も、笑いも、希望もなかったのか?
そんな想いからこの『誰も知らない』が生まれたように僕は感じましたし、蝕まれてしまった5つの魂への慰撫のようにも感じました。
どこか非日常の連続のような、危うげな生活。
悲しみ、痛みはあってもきっと喜びや救いだってあってのでは?
いや、あったと信じたい。
そうじゃなきゃ悲しくてやるせないから・・・。
是枝監督の目線はどこか優しい。
虐げられて、社会から弾かれている存在に対していつでも手を差し伸べているように思います。
『誰も知らない』は社会の片隅で虐げられいてる人たちに対しての救済の祈りのような作品。
そしてその痛みの中でも淡く生まれていく喜びと、分かちがたく繋がっていく絆に対しての賛歌のような映画だったのではないかと思いました。
5、終わりに
なんとなく是枝監督のことをバタ臭いヒューマンドラマ監督って断じていましたが、『怪物』を観て以降、他の作品を観て評価が180度変わりました。
いや、もう好きぃ!!
良いと思ったら手のひら返しも早いです。
朝令暮改、君子豹変す。
全然、君子ではございませんが(笑)
これからも是枝監督の作品は過去作を含めて観たいですね!!
あと、柳楽優弥は全力で応援していきたいっす!!
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