ヒロの本棚

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【本】村上春樹『街とその不確かな壁』~そう、心とは捉えがたいものであり、捉えがたいものが心なのだ~

1、作品の概要

 

『街とその不確かな壁』は村上春樹の新作長編小説。

2023年4月13日に新潮社から刊行された。

書き下ろし。

ページ数は655ページ。

電子書籍も同時に発売された。

装画をタダジュンが担当。

1980年に『文學界』に掲載された、単行本収録の中編小説『街と、その不確かな壁』を書き直した作品。

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2、あらすじ

 

17歳のぼくは、16歳のきみに恋をしていた。

文通をして、電車を乗り継いでお互いの街でかけがえのない濃密な時間を過ごしていた2人。

ある時、きみが語った高い壁に囲まれたある「街」の話。

今目の前にいるきみは本当の自分ではなくて、影だと言う話を聞かされるぼく。

ある時、突然きみとの離別が訪れて、ぼくは心に空白を抱えたまま長い時が流れる。

そしてぼくは「街」に辿り着く。

本当のきみに出会うために。

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

いやー、待ちに待った村上春樹の新作長編小説。

刊行発表から首を長くして待っておりました。

書き下ろしということで、内容はベールに包まれておりましたが、3/1に書影とタイトルが発表になり、村上春樹のファンはざわつくことになります。

なんとタイトルが『街とその不確かな壁』だったですから。

 

1980年に『文學界』に掲載され、単行本に未収録だったあの幻の作品『街と、その不確かな壁』と「、」しか相違がないタイトル。

当然『街とその不確かな壁』は同作の書き直しの作品ということになるだろうと予想されました。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

街と、その不確かな壁』は『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のもとになった作品でもありましたが、その作品を42年を超えた今にもう一度書き直す意味とは?

その真意を探るべく、国立国会図書館から資料を取り寄せて『街と、その不確かな壁』を読んでみたりもしました。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

そんなふうに心待ちにしていた6年ぶりの村上春樹の新作長編小説。

あとどれだけ74歳の彼の作品を読めるかはわからないですし、リアルタイムで彼の新作長編小説を読めることはほんとうに幸せなことだと思います。

そんなふうにして4/13の発売日に本屋さんで購入しました。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

 

4、ざっくりした感想(ネタバレないはず)

 

詳しい感想と考察はまた後日に分けて書くとして、今回は読後のザックリした感想を書いてみます。

13日の夜に『街とその不確かな壁』を読み始めて、16日の日曜日の夜に読み終わりました。

先が気になって早く読みたい気持ちと、待ちに待ったこの本をいつまでも読んでいたい気持ちがせめぎ合っていましたが、自分としてはまあちょうどいいペースで読了できたと思います。

中には13日の真夜中に買って、朝には読み終えた方もいるそうですし、ゆっくり1ヶ月かけて読む方もいると思います。

読みペースは様々でいいと僕は思いますし、自分に適したペースで読むのが一番いいと思います。

 

僕は、読後の満足感と、ちょっとした寂しさが綯い交ぜになってとても不思議な感覚です。

魂の半分ぐらいがまだ「街」に留まってしまっているような。

実は中身は影になってしまっているのかもしれませんね(笑)

 

読書のあとは村上春樹に限らずに自分の魂が物語の世界に半分ぐらい持ってかれている気持ちになります。

読んでいる瞬間だけではなくてその読後感、アフター(余韻)も読書の醍醐味ですよね。

村上春樹の作品はどこまでも遠くの世界に連れて行ってくれて、どの作品よりも長いアフターを味わえると僕は感じています。

『街とその不確かな壁』は村上作品の中でも指折りの爽やかな読後感があり、全体的に爽やかな物語でした。

 

僕の予想では、もっとおどろおどろしい物語になると思っていて、表紙が黒っぽい感じなのも相まって暗く重い作品になるのではないかと思っていました。

しかし、かつて失ってしまったきみの幻影を追い求める哀しみと長年の欠落が描かれていたものの、物語の本質は「再生」にあったと僕は思いますし、深い欠落の中に希望の光を感じるような作品だったと思います。

 

街と、その不確かな壁』は『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』のもとになった物語。

奇跡的な名作でヒロ氏も好きな小説10選に上げているこの作品が存在してもなお、村上春樹が『街と、その不確かな壁』で描ききれなかったものとは何だったのでしょうか?

詳しくは詳細な感想&考察版に書こうと思いますが、遠い昔にいなくなってしまった唯一無二の存在の喪失からどうやって再生していくかであったり、本体と影にまつわる人間の心のあり方であったり、時間の同時性についてだったりするのかなと思います。

『街とその不確かな壁』は、色々と謎も残しつつ、取りこぼしなく綺麗に描ききったような印象で、とてつもなく素晴らしい物語だったと思います。

私の意識と私の心との間には深い溝があった。私の心はあるときには春の野原に出た若い兎であり、またあるときには自由に空を飛びゆく鳥になる。でも私にはまだ自分の心を制御することができない。そう、心とは捉えがたいものであり、捉えがたいものが心なのだ。

 

 

 

5、終わりに

 

いやー、素晴らしい物語。

素晴らしい読書体験でした。

もうなんか今は興奮状態にあって、明日には「街」に突入しそうな勢いです。

僕にもなんか役割はありますかね?

靴磨きとか?

門衛の助手とか?

 

今は、ちょっとハイテンションなんで落ち着いてから詳細な感想と考察を書きたいと思います。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

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