1、作品の概要
『岬の兄妹』は、『さがす』『ガンニバル』の片山慎三監督のデビュー作。
2019年に公開された日本映画。
上映時間は89分。
監督・脚本・制作・プロデューサー、編集が片山慎三。
主演、松村祐也、和田光沙。
「第41回ヨコハマ映画祭」で新人監督賞を受賞。
自閉症の妹と同居する足の悪い兄は、困窮の末にある決断をするが・・・。
2、あらすじ
自閉症の妹・真理子と2人で暮らす兄の良夫は足が悪いこともあり、勤め先の造船所を解雇されてしまう。
困窮した2人はゴミを漁ったり、ティッシュを食べたりして凌いでいたが、電気も止められてしまい、生活が行き詰まってしまう。
追い詰められた良夫は、真理子に売春をさせて金を稼ぐことを思いつくが・・・。
3、この作品に対する思い入れ、観たキッカケ
『さがす』『ガンニバル』の片山慎三監督のデビュー作ということで観てみました。
アマゾンプライムビデオで、2023年2月現在視聴可能ですね。
『さがす』も大概えげつない映画だったので、覚悟をしていましたが、想像以上のエグさに目を背けたくなりました・・・。
万人にお勧めしたい映画では決してありませんが、刺さる人には刺さるというか。
邦画がもつ特有の湿度を十二分に表現した映画だったと思います。
片山慎三監督の作品からは今後も目が離せません。
4、感想
この映画を語る上でまず「障害」が脳裏に浮かびます。
自閉症の妹と、何らかの理由で足を悪くした兄。
兄の良夫がいつどの時点でどのようにして足を悪くしたのかは語られていなかったかと思いますが、そのせいで造船所の職を失ってしまい、やさぐれて働くことを諦めてしまいます。
真理子は自閉症で日中は拘束して、外に出ないように閉じ込めている状態。
いや、そんなことしなくても作業所とか、施設とか色々な方法があるのですが・・・。
敢えてなのか、生活保護とか、障害年金とか手当などの福祉をまったく無視した設定で描かれています。
確かにあれだけ社会から孤立していたらそういう制度があることも知らないことも有り得るのかもしれませんが・・・。
そういう福祉の恩恵を受けることなく二人だけで生きていこうとすると、生活は瞬く間に行き詰ってしまい食べることもままならず。
ティッシュを食べたり、ゴミを漁って食べたり、とことん底辺の生活に堕ちていきます。
しかし、電気も止められていよいよ困窮し、良夫が下した決断は・・・。
妹の体を売ってお金を稼ぐことでした。
いや、もうえげつないっすよ!!片山眞三監督!!
自閉症の妹に売春させるとか、もう鬼畜の所業なのですが、それだけ追い込まれていたんだなとも・・・。
このへんでちょっと観たことを公開し始めるような映画でした(笑)
でも、目を離すことはできなかった。
真理子役の和田光沙さんの自閉症の役がめちゃくちゃリアルでしたね。
過去に障害者の方の作業所とグループホームで働いたことがありますが、全く違和感なくてもしかしたらリアルに自閉症の方なのかと思いました。
自閉症の妹が売春する話とか、当事者ご家族から批判も浴びせられそうな気もしますが、そこまで切り込んで描いた片山慎三監督の勇気を僕は称えたいです。
でも、逆に実は障害者が性的なトラブルに巻き込まれることが多く、事件として上がってきているのが氷山の一角であるようにも思えるので、むしろ意義ある取り組みであったようにも思います。
良夫は生きていくために段々と人間らしさを捨て去って、なりふり構わないようになっていっているように感じました。
家の窓に貼っていたダンボールを全部剥がして外の光を取り入れるシーン。
何かあのシーンがとても印象的なのですが、閉ざされていた内的な世界の障壁を取り払って外界と向き合う、なんていうポジティブな意味ではなくて、ある意味では外界への宣戦布告のように感じました。
生きていくことの惨めさ、やるせなさ、カッコ悪さ。
そんな生々しい現実を、生々しく描きだしたのが『岬の兄妹』という映画だったのだと思います。
ラストで真理子が振り返った時の表情は何を意味しているのでしょうか?
良夫にかかってきた電話は?
とても印象的で示唆的なラストシーンでした。
5、終わりに
いやー、とても印象的な映画でした。
生きることのままならなさが、描かれた89分。
だいぶ重たく、生々しい映画でしたが、脳みそに突き刺さるようでした。
片山慎三監督の作品は今後も追い続けていと思います。
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