ヒロの本棚

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【本】西加奈子『くもをさがす』~カナダでがんになった経験を書いた自身初のノンフィクション~

1、作品の概要

 

「くもをさがす」は西加奈子初のノンフィクション作品。

2023年4月に河出書房新社より刊行された。

書き下ろし。256ページ。

自身がカナダでがんになった経験を書いた。

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2、あらすじ

 

作家・西加奈子がカナダでがんになった話を自身初めてのノンフィクションで描いた。

外国で医療を受けることの難しさ。

家族、友人との深い絆。

医療従事たちとの出会い。

家族と自身のコロナ罹患。

自身の闘病体験を語りながら、様々な社会問題、カナダと日本について語った。

www.kawade.co.jp

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ

 

西加奈子初のノンフィクションということで、発売前から話題になっていた『くもをさがす』

アメトーークの本屋芸人でもヒコロヒーが取り上げていたみたいですね。

買おうかどうか悩んだのですが、ちょうど次男が映画を観ている間に時間があったので、本屋に併設しているスタバで読みました。

想像していたより162倍ぐらい濃い内容で、魂を直接文章でぶん殴られるような衝撃を受けました。

涙腺の崩壊を辛うじて堪えるイン・ザ・スタバでした。

 

 

 

4、感想・書評

 

カナダのバンクーバー在住の西加奈子さん。

旦那さんと、息子(S)さんと、猫と暮らしています。

幸せな日常に変化があったのが、西さんのがんが検査で見つかったことでした。

このへんの医療機関とのやり取りも日本の常識とは全く違っていて、驚きの連続でした。

 

当たり前のように健康保険制度を使って、1~3割の負担で医療を受けられて、多くの医療機関を自分で選択して受診できる。

救急も充実していて、119すれば救急車がすぐに来てくれる。

それが当たり前だと思っていましたが、バンクーバーでは(実は日本以外の多くの国でも?)そうではありません。

 

医療機関で診てもらうまでに長く待たされますし、信じられないような手違いも多く、受付の対応もあまり真摯とは言えないものでした。

コロナ禍もあり、より状況は悪く、救急でも何時間も待たされる始末。

救急病院が閉鎖するみたいな、医療崩壊も起きているみたいですね。

日本がどれだけ恵まれているか。

反面、どれだけ医療従事者の人たちがストレスを感じているのかがよくわかった気がしました。

 

西さんは、がんと診断されるまで、それから治療を開始するまでも日本とカナダの医療システムの違いや、言語の壁に翻弄されます。

異国で病気になることの心細さや不安がヒシヒシと伝わってきました。

 

そんな時に西さんの支えになってくれていたのが、現地で出会った友人たち。

親兄弟などの身寄りが近くにおらず、友人同士で助け合うことがとても自然にあって、meal trainなるボランティアで、体調が悪くてゴハンが作れないお宅にゴハンを届けるというものがありました。

日本でももちろん友人同士の助け合いはありますが、ここまで密なものではなく、まず兄弟や親や子どもに頼るイメージがありますね。

 

カナダの医療機関とのやり取りでも友人たちが動いてくれて、道が開けていきます。

ナースもドクターも日本と違ってとてもオープンで、素敵な人たちばかりでした。

 

様々な人たちに支えられますが、抗がん剤の投与から手術後のキャンサー・フリーまでの道のりは険しく、何度も西さんは涙を流します。

そして、キャンサー・フリーになったあとの漠然とした恐怖感のようなもの。

そこにまで言及されていたのが、さすが西さんだなと思いました。

 

日本とバンクーバーの違い。

自身の闘病。

世界でおこる諸問題。

自らの身体とジェンダーに関わる私見

どちらかとういと、エッセイやノンフィクションはそれほど読まない僕ですが、『くもをさがす』での西さんの魂を刀に込めて全身で切りつけてくるような、そんなむき出しの文章に心が震えました。

 

 

 

5、終わりに

 

『くもをさがす』を読みながら異国の地で頑張っている友人のことを思い、彼女の苦労や頑張りを思いました。

西さんもお子さんが何度も熱痙攣を起こしたり、コロナに家族で感染したりと自分のことだけじゃなくて、お子さんの病気のケアのことも慣れない異国の医療システムの中で考えなければなりませんでしたが、改めて子どもと一緒に異国で暮らす困難さを感じました。

 

スタバで2回に分けて読みましたが、思ったより濃密な内容で買ってゆっくり読みたくなりましたね。

素晴らしいノンフィクションだと思いますし、西さん自身のルーツや考え方が闘病生活を通して伝わってきました。

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