1、作品の概要
『君の名は』『天気の子』で有名なアニメ映画監督、新海 誠の映画作品。
2013年に公開された5作目の作品。
当初は配信、DVDのみの短編作品として制作されたが、劇場公開された。
46分の短い作品。
主題歌は秦基博の「rain」
『”愛”よりも昔、”孤悲”のものがたり』がキャッチフレーズ。
2、あらすじ
靴職人を目指している高校生のタカオは、ある雨の日に授業をサボって新宿御苑で靴のスケッチをしていた。
雨を避けて屋根付きのに座っていたが、その時に出会ったユキノと会話を交わし、次第に雨の日に同じ場所で会うようになる。ユキノは仕事に行けなくなり、缶ビールを飲み続けていた。
雨の日の午前は2人で同じ場所で顔を合わせるようになっていたが、梅雨が明けしばらく会えない日が続く。
しかし、タカオは学校の廊下でユキノを見かけ、友人から自分が知らなかった事実を告げられるのだった。
3、この作品に対する思い入れ
新海誠監督の作品は、『秒速5センチメートル』で知り、全て観ましたが、『君の名は』の次に好きな作品です。
情景描写の美しさとが印象的な作品です。
ラストでの秦さんの「rain」の使われ方も秀逸です。
雨が似合う映画や音楽が好きなのですが、これほど効果的に雨を用いて、美しく表現した作品を、僕は他に知りません。
4、感想(ネタバレあり)
短い作品ですが、非常にまとまっているし雨の新宿御苑の雨に濡れた緑、降りしきる雨、光と水の表現、情景描写が徹頭徹尾、ただただとても美しいです。
この描写だけで、ゴハン3杯いけます(笑)
新海 誠 監督の作品で最も、いや日本のアニメ史上最も美しい情景のシーンが描写されている映画なのではないでしょうか。
その色彩と光にため息しかでません。
そんな場所で雨宿りの場所でたまたま隣り合わせたタカオとユキノ。
ユキノは朝から飲んだくれていて、奔放なイメージですが、実は傷と葛藤を抱えています。
タカオは夢に向かってまっすぐで、何かを作り出す人間らしく繊細な感性を持っています。
たまたま寄り添った二人がお互いのカケラを少しずつ交換し合ってかけがえのない存在になっていく。
雨を心待ちにするようになる。
そんな物語。
そういう話が好きです。
ツィッター、ブログでもそうですがたまたま隣り合った縁でお互いのかけがえのない存在になっていくという話がとても好きです。
「袖触れ合うも多生の縁」
人との縁はすべて単なる偶然ではなく、深い因縁によって起こるものだから、どんな出会いも大切にしなければならないという仏教的な教えに基づく。 「多生」とは、六道を輪廻して何度も生まれ変わるという意味。 「多生の縁」は、前世で結ばれた因縁のこと。
そういった言葉を思い出しました。
出会いには意味があると思いたいです。
もちろん、好ましいものばかりではないと思いますが。
僕は、特定の宗教を持ちませんが、仏教の輪廻の部分の話はとても好きです。
この言葉、「多少」だと思ってましたが、「多生」だったのですね。
生まれ変わりを経て、生じた因縁の末の出会いという考え方ですね。
脱線しまくりですが、仏教的な因縁、輪廻において今世は過去世の業(カルマ)を解消する為の生みたいです。
生まれ変わりを経て課題をクリアした末に訪れるのが解脱(輪廻から脱する)みたいですね。
魂が、チョーいい感じになったから、輪廻を卒業して解脱しとくぅー?
なんなら、神っぽくなればいいじゃーん?
ってのが解脱なんすかね?
脱線&怪しげな話でしたが、タカオとユキノは会うべくして会ったのかもしれません。
お互いにとってお互いが必要なタイミングで。
タカオは靴職人になるという夢を持っています。
そのために一段階突き抜けるためのインスピレーションをユキノからもらったように思います。
やっぱり恋って特別な感情だし、ものづくりをする人間にとって得がたい経験をしたように思います。
映像的にも、ユキノの靴を作るために素足のユキノの足のサイズを測るシーンなどとても艶やかで、フェティシズムを感じます。
谷崎潤一郎みたいに。
なぜ、足ってフェティシズムをかきたてるのでしょうね。
でも、性的な意味より美的倒錯の意味で雨と素足が艶かしくも美しく感じます。
梅雨が終わって、お互いに会えない日々が続きますが、学校でユキノを見かけるタカオ。
彼女のために上級生とひと悶着ありますが、雨の閉じられた二人だけのあの庭園からいつかは一歩踏み出さなければならなかった。
タカオが受けた傷は、ある意味でひとつのイニシエーションのように感じました。
人生に何度か訪れるモラトリアム期間。
でも、いつかは。
雨が止めば。
歩きださなければならない。
ユキノが歩きだすための靴を作るためにタカオは彼女と出会ったのかもしれないですね。
歩き出すために素足の(メタファーとして)ユキノにとって必要な靴をタカオが作ったのかもしれません。
そして、ラストシーン。
新海 誠 監督のファンなら、このまますれ違いを描くと思ったでしょう。
僕もそう思いました(笑)
でも、2人は絆を確かめ合い、雲は去り太陽が二人を照らしました。
雨はあがったのです。
5、終わりに
新海 誠 監督は、『秒速5センチメートル』など基本バッドエンドやすれ違いを描くクリエイターでした。
でも、『言の葉の庭』『君の名は』『天気の子』は未来に希望を抱かせるような終わり方をしています。
それは、2011年の東日本大震災の影響が大きかったようです。
物語に希望が必要な時代。
そんな時代にこれからなっていくのでしょう。
高齢化が進み。
経済的にも後退していき。
モノ作りとしても韓国など他の国家の後塵を廃す。
これで物語の中に希望がなければ、どこにも光がないのではないでしょうか?
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