藤原新也は写真とエッセイを組み合わせた独特の作品を出されている写真家、小説家です。
インドを中心に、死生観をテーマに撮った写真集『メメントモリ』が有名です。
この作品の中で、「人間は、犬に食われるくらい自由だ」という文章と、人間の死体が犬に食わている写真を見て衝撃を受けました。
余談ですが、大学時代に付き合ってた彼女の誕生日に『メメントモリ』を プレゼントしたらドン引きされた苦い思い出があります(笑)
今回紹介するのは、『何も願わない手を合わせる』です。
2003年の作品ですが、お遍路で四国を旅したことを中心に書かれています。
藤原新也は、肉親を亡くすたびにお遍路を回ってて、両親、兄と計3回回っているようです。
人の生き死にや、旅の途中での出会いを中心に文章とともに写真が撮られています。
藤原新也の写真はなんというか美しいだけではなく、無骨で力強くて、魂に訴えかけるような何かがあるように思います。
表題の「なにも願わない手を合わせる」では、お遍路の旅の道中で親子連れがいて。
幼い女の子が、両親に促されて、ただ一心に手を合わせる姿に藤原新也が心を動かされて書いた文章です。
今日、人が手を合わせて祈る時は、何かの願いの成就や、見返りを求めることがほとんどだと思います。
しかし、元来祈りとは神や、自然など人類を超越した何か偉大な存在に対しての畏敬の念や、感謝の想いを表す行為だったのではないでしょうか?
少女が懸命に手を合わせる姿は、そのような祈りをあるべき姿を思い起こさせたのかもしれません。