1、作品の概要
『遠い太鼓』は、村上春樹のエッセイ。
1990年6月19日に講談社より単行本が刊行された。
1993年4月5日に講談社文庫より文庫版が刊行された。
1986年秋から1989年秋までの3年間、イタリア、ギリシャなどヨーロッパに滞在した日々を描いた。
文庫版で569ページ。
本書が書かれた間に『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』が執筆された。
タイトルの『遠い太鼓』は、トルコの古い民謡から取られた。

2、内容
どこからともなく聞こえてきた太鼓の音に誘われて、日本からヨーロッパの地に移り住んだ村上夫妻。
ギリシャ、イタリアと様々な土地で、日本では出会えないような人々と遭遇し、珍妙で得難い経験をする。
次々に襲い掛かるトラブルに「やれやれ」と嘆息しながらも、楽観的に日々を送る小説家・村上春樹のヨーロッパ滞在記。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
あんまエッセイ読まないし、なんか分厚いし、っていう理由で未読だった『遠い太鼓』ですが、実家の近くの古本屋で100円で売っていたのでGETして読みました。
村上主義者を名乗るには甚だ不真面目で、ガチ勢にお叱りを受けてしまいそうなので、「村上主義者見習い」と名乗らせていただこうと思います。
以後お見知りおきを。
なんか三島とか近代文学のカチコチの文体の作品を続けて読んだりするとさー。
ユルイ文章を読みたくなっちゃうんだよね~。
辛いものを食べたあとの甘いデザートみたいな感じ?
そういう意味では『遠い太鼓』はフレンチトーストにハチミツをかけてその上に生クリームとあんこを乗っけたぐらいの甘々の読みやすいエッセイでした。
4、感想
常日頃から、文章と文体についてのこだわりを語っている村上春樹氏。
文章と文体の違いって、実はよくわかっていない違いがわからない男のヒロ氏。
宮本亜門は知っているかもしれませんが、ヒロ氏は知らない。
ヨージ・ヤマモトとヨージ・ヤマダの違いもわからない。
TWICEとNiziUの違いもわからない。
違いのわからない男は、ネスカフェのCMに出ることは叶わないでしょう。
あれ?
なんで、宮本亜門の話をしてるんだっけ?
『遠い太鼓』を読んでいて、実は村上春樹の純粋な文章の力を感じられるのは、実はエッセイなんじゃないかなと思いました。
小説だと、当たり前ですけど物語や登場人物が気になって文章・文体は読者にとっては2の次になるような気がします。
もちろん長くタフな物語を描く上での絶対的な基盤になっているのが文体なのだとは思いますが、どうしても読者は物語と登場人物へ注目しますからね。
しかし、エッセイを読んでいて、たしかに興味深いエピソードなんだけどよくこれだけ膨らませて、いきいきと描写できるなと感心してしまいました。
自分でも雑記ブログで自分の身に起こったエピソードを面白おかしく書いたりもしますが、村上春樹の文章で描かれるエピソードは生き生きしていて、ゲラゲラと笑ってしまうほど面白いものでした。
起こった出来事をそんなふうに読者に対して興味深く面白いものとして提供できるのってまさに文章の力だと思いますし、村上春樹の文章力を深く感じました。
なんでもない日常のエピソードも黄金に変わってしまう。
さすが俺たちの村上春樹やでっ!!
まあ、ヨーロッパの体験談っていうプラスαはあるんですけどね。
村上春樹と比べるのもおこがましいですが、僕もブログで雑記を書く時に感じていること、気を付けていることが彼のエッセイからも感じられて、なにか共感できることもありましたし、そこうまいなぁ~って思いました。
そして、この3年間で『ダンス・ダンス・ダンス』『ノルウェイの森』を執筆して、翻訳作品も複数こなした村上春樹はやはり偉大だなと改めてリスペクト。
彼の仕事量は凄まじいですね!!
『ダンス・ダンス・ダンス』『ノルウェイの森』がどういう環境で執筆されたのかを知れたのもこのエッセイの注目ポイントでした。
村上春樹本人も「この二つの小説には異国の影がしみついているように僕には感じられる」と書いていて、ヨーロッパでの生活環境が作品に大きな影響を与えたようでした。
『ダンス・ダンス・ダンス』はハワイに行ったりすることもあって、なんとなく異国情緒が感じられる作品になっていると思いますが、『ノルウェイの森』は個人的には日本的な印象が強いですね。
阿美寮のイメージはなんとなく北欧とかそのへんのイメージがありますが。
エッセイは全部は読んでいないのですが、ちょっと前に読んだ『雨天炎天』のハードで男臭い旅と違って、ヨーロッパでの日常生活が描かれていて、奥様とのやり取りなんかも多くて新鮮でした。
これほど、奥様のことを書いている作品はこのエッセイだけのように思いますね~。
村上春樹は、わりと楽天的で日常のことに関してはズボラと言っていいほどのテキトーぶり。
キッチリしているのかと思いきや以外でしたね。
ヨーロッパで悠々自適に暮らしているのかと思いきや、経済的な不安も抱えつつ、ギリシャでは悪天候に悩まされて、イタリアでは劣悪な住居に悩まされる。
住んでいる人々も、日本では考えられないようなクセ者ばかり。
まあ、次から次へとトラブルだらけで、よくこんな環境で集中してあれだけの仕事ができたなと驚きました。
5、終わりに
文庫版で569ページとだいぶ分厚いですが、面白くてあっという間に読めました。
エッセイはそんなに読んだことないので比較できませんが、文章の力、面白さに大きな差が出るような気がします。
村上春樹のエッセイは読ませる魅力を持ったものでした。
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