1、作品の概要
『美しい星』は三島由紀夫の長編小説。
1962年に単行本が新潮社より刊行された。
『新潮』1962年1月号~11月号に連載された。
文庫版で294ページ。
異色のSF作品。
テレビドラマ、ラジオドラマ、舞台などにもなり、2017年にはリリー・フランキー主演で映画化された。
自分たちが宇宙人であると認識している一家4人が、核兵器を持ち滅亡へとひた走る人類を救済すべく立ち上がる。

2、あらすじ
自らを宇宙人と認識する父・重一郎、母・伊余子、長男・一雄、長女・暁子の4人家族。
彼らはそれぞれに宇宙船を目撃して、それぞれ別の惑星から飛来したことを確信していた。
核兵器を持って滅亡へとひた走る人類を救済するために、「友朋会」を作り活動を続ける重一郎。
一方で、暁子は文通していた金沢の金星人の男と出会い、一緒に空飛ぶ円盤を見たのちに妊娠してしまう。
一雄は、父とは違う方法で人類を救済すべく、政治家の黒木のもとで働きだす。
そして、仙台の地では助教授の羽黒、羽黒の元教え子の栗田、床屋の曽根の3人がはくちょう座からやってきた宇宙人であることを自覚し、人類全体の安楽死を企てる。
黒木の招きで上京した3人の前に、案内役の一雄が現れるが・・・。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
実家の宇和島の古書店で100円で売られていたのでGETしました。
余談ですが、ここはなかなか掘り出し物が多く、帰省の際はちょいちょい寄っています。
『美しい星』は、最近映画化もされていましたし、一家4人が宇宙人としての意識に目覚めるみたいな異色のSFストーリーだったので、ちょっと気になる作品ではありました。
あらすじから、もっとコメディ調の物語を想像していましたが、なかなかに壮大な話でした。
4、感想(ネタバレあり)
いやー、三島由紀夫作品の中でも、宇宙人やら、空飛ぶ円盤やらが出てくる作品はこの『美しい星』だけですね。
異色中の異色作です。
あらすじ的に、大衆小説的でテンポよく話が進んで、軽妙な文体で現代社会を風刺している感じかなと思っていましたが、『金閣寺』バリの硬質な文体で重々しく描かれていてびっくりでした。
UFOと宇宙人に気を取られがちですが、作中で何度もテーマとして上る人類の滅亡。
『美しい星』が書かれた1962年は、人類が初めて地球を滅ぼす力を手に入れた時期で、1954年にはアメリカによるビキニ環礁での水爆実験が行われました。
この水爆の威力は、広島原爆の約500倍。
とてつもない威力ですね。
しかも、そのあとに旧ソ連も水爆実験を行い、冷戦時代に突入。
世界は核の脅威にさらされることになりました。
この時代は映画でも、キューブリック監督の『博士の異常な愛情』や、『渚にて』など核に脅威と、人類の滅亡をテーマにした映画が作られています。
有志以来、はじめて人間が人類を滅亡させうる力を持ったという衝撃。
そして、その力が一部の独裁者の判断でボタンひとつで行使されうるという危険な現状に、当時のクリエイターたちは警鐘をならしたのでしょう。
終末世界観、冷戦時代突入による核使用への不安。
そういった人類の状況を宇宙的視点で客観視するために、宇宙人という突飛な設定を取り入れたように思えます。
宇宙人といっても、ある日突然空飛ぶ円盤を目撃したことで、宇宙人であるということに目覚めたという話で、外見は普通の人間で、大杉家の4人も物語開始時に半年前に宇宙人であることを自覚した新米の宇宙人だったりします。
そして、滅亡へとひた走る人類を救うべく活動を開始するというぶっ飛んだ話です。
SF風味の話しながら、前述したように硬質な文体で重々しく綴られていて、後半の重一郎VS仙台の3人組の宇宙人による、人類を救うべきか否かの論戦は重厚且つ壮大で、途中で何度か「何言うてるん?」ってなって読み返したりしました。
まあ、両者に人類を滅ぼす力も救う力もないのだから机上の空論なのですが、高い視座からの壮大な大風呂敷に開いた口が塞がりませんでした。
このシーンは、55ページほど続き物語最大の見せ場となっています。
三島由紀夫は、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」の章を意識して書いたらしいですが、カラマーゾフ読んでないのでよくわからないです(;'∀')
宇宙人として生きようとする大杉家の4人ですが、重一郎が末期癌で余命宣告されたことで、宇宙人と人間の感覚の揺れに葛藤するようになります。
結局、本当に宇宙人の魂が憑依したのか、それともただの妄想だったのかは語られませんでしたが、空飛ぶ円盤を見るために力を合わせて進む姿は紛れもない人間の家族の姿であるように思いました。
5、終わりに
竹宮と暁子の間になにがあったのか?
黒木も宇宙人だったのか?
とか、わりと謎も多く残された作品でした。
美しく研ぎ澄まされた三島の文体を存分に味わえた作品でもあり、突飛な設定ながらも、作家性は見失われずに、三島らしい絢爛たる世界観を楽しめました。
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