1、作品の概要
『辺境・近境』は、村上春樹の旅行エッセイ。
1998年4月23日に新潮社より単行本が刊行され、2000年6月に新潮文庫より文庫版が刊行された。
2008年に新装版が刊行され、写真と、写真撮影を担当した松村映三の書評が追加された。
旧文庫版で301ページ。
1990年~1997年の間に巡った7つの旅を記した。
2、内容
イースト・ハンプトン、無人島の「からす島」、メキシコ、香川県、ノモンハン、アメリカ大陸横断、そして郷里の神戸。
綺麗なホテルでくつろぎながら、優雅な旅を楽しむ・・・、ことは全くなくてリュックを担いで出たとこ勝負のハードボイルドな旅!!
なぜ旅に出るのか?辺境とはなにか?
相次ぐトラブルに右往左往する村上春樹。
抱腹絶倒の珍道中の開幕!!
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
あんまりエッセイとか読まないんすよ。
別に明確な理由はないけど、なんとなく。
ただ、村上春樹のエッセイ、紀行文は面白くて今更ながら最近『雨天炎天』のギリシャ旅行記を読んでとても面白かったので、この『辺境・近境』も読んでみました。
マラソンも好きな村上春樹ですが、旅行もほとんど苦行としか思えないような旅で、この人は苦しいことが好きなドMなのかなと思いました(笑)
4、感想
村上春樹という作家はとにかく読みやすくて面白い文章を書く作家だと思います。
3冊にもなる長い長編小説でも、どこか笑える場面や、印象的な表現や喩えなどがあって飽きることなく読み進めることができます。
物語自体は難解だったりするのですが、文体は平易でリズミカルでその組み合わせが絶妙ですね。
そんな村上春樹が書くエッセイ、紀行文が面白くないはずがありません。
抱腹絶倒、家内安全、連戦連勝の面白さ!!
手前味噌ながら、僕もブログで雑記などは笑える記事を意識して書いているので、文章で笑わせる難しさと、それを為している村上春樹のユーモアセンスと文章の力を『辺境・近境』を読みながら大いに感じました。
カメラマンの松村君もいい味出していますね。
たいてい村上春樹と一緒に酷い目にあってしまうのですが(笑)
瀬戸内海に浮かぶ無人島・からす島。
瀬戸内海は、僕の庭だと思っていましたが、こんな島があったとは知りませんでした。
いや、瀬戸内のほうはやたら島だらけ状態で、島耕作もびっくりなんですよね。
しかし、無人島を私有しているという話は珍しいですね。
意気揚々と出かける村上春樹と松村君ですが、なにもない無人島に男2人で、海水浴もできず、虫たちの襲撃を受けてあえなく途中退散。
いや、何しに行ったんすか(笑)
無人島は、虫や動物の縄張りで人間が行くとこじゃないっすよね。
とか言いつつ、僕は小学生のころに無人島で10泊11日しました。
トイレも穴掘ってするぐらいのハードボイルドさでしたわ。
メキシコ大旅行は、シャレにならないレベルで命の危険を感じるようなヤバい旅行でしたね(;'∀')
ここでもし村上春樹が死んでたら、『1Q84』とか『海辺のカフカ』とか読めなかったんだなとか思うと、もう大人しくヒルトンとか泊まって1週間ぐらいのバカンスで帰ってきてよ!!とか思いながらハラハラしながら読みました。
奥さんからも「もういい年だからこんなリュックを担いで回るような旅行はしたくない」と宣言されてしまいます。
いや、真っ当な意見ですね(笑)
そりゃ、そうだ。
なんのためにこんな無茶な旅行をしているんだろうとか思いますが、なんにせよ自分の目で見てみたいという、村上春樹の好奇心が奇特な冒険へと駆り立てるんでしょうね。
メキシコの歴史や、先住民たちの昔ながらの生活と矜持など、たしかに普通にリゾート地で滞在してビーチでのんびりしていただけでは得られなかったような貴重な経験もできたみたいですね。
村上春樹と、うどん。
うん、そぐわない。
ねじまき鳥でオカダトオルがうどんを茹でてたら、ちょっとアレですよね。
口笛も「泥棒かささぎ」じゃなくて、「炭坑節」とかのほうが似合ってるかもだし。
しかし、香川の讃岐うどんを食べるディープな旅に出かける村上春樹氏。
美人編集者のマツオさんと、安西水丸さんの3人旅。
この香川の旅が、かの名作『海辺のカフカ』のきっかけになった!!なんて話は聞いたことないですが(笑)
愛媛に来てみかんを食べる話も書いて欲しいです。
「愛媛でみかんを食べて蛇口からみかん汁を浴びる」的なタイトルでいかがでしょうか?新潮社さん。
中村うどんはぜひ食べてみたいっすね。
ノモンハンは、ねじまき鳥の3部の話にだいぶ関係しているんだろうなっていうエピソードなんかもあって興味深かったです。
動物園の取材とか。
こちらもメキシコ大冒険と比肩するほどの困難な旅。
いや、なんでこんなとこ来たんすか?
そして、プリンストン大学で数多くの資料を目にして大長編『ねじまき鳥クロニクル』に繋がっていく。
ばらばらに放置されていた見えない歴史の糸が少しずつ繋がり始めるようなそんな独特の気配を感じました。
村上春樹にとって、『ねじまき鳥クロニクル』の3部を書くうえでノモンハンを訪れることは物語を完成させるうえで重要なことだったのでしょう。
アメリカ大陸を横断しようは、タイトル見た瞬間に「ウルトラクイズかよっ!!」ってツッコミが入った昭和世代です。
アメリカ横断ウルトラクイズ、ニューヨークに行きたいかぁ~~~?
過酷で苦行のような旅に3旅、いや3度同行するのは武闘派(?)カメラマンの松村映三。
『雨天炎天』に続き、『辺境・近境』を読んですっかり彼のことが好きになってしまいました(笑)
この2人の旅は過酷すぎて、「オッサンのボーイスカウトかっ!?」ってツッコミを入れそうな僕は元ボーイスカウトで「遠き山に陽は落ちて」です。
メキシコとノモンハンが濃厚すぎて、ややあっさり味に感じますが、車でアメリカ横断もたいがいクレイジーですね。
まさにクレイジージャーニー状態と言えるでしょう。
個人的にラスベガスのエピソードがウケました。
ギャンブルで勝った金でレコードを買うマイペースオタクな春樹と、勝ってしまったプレッシャーでお腹を壊した松村君。
キャラ立ち過ぎやろ(笑)
そして、最後は郷里の神戸。
世界中を旅して、最後は地元っていうのが面白いですね。
日本の歴史に残るような大事件が相次いで起きて、その2つが神戸を中心にして起こったという事実。
三宮から神戸までの15キロを歩く村上春樹の行為は、受け入れがたい事件を飲み込んで、彼なりの解釈に咀嚼するまでのイニシエーションのように感じました。
おそらく彼は、フィジカル的な直接的な行為がないと事実を飲み込むことが難しいタイプなのかなと思います。
だからこそ、旅行に行って現地で自分の目で見て何かを得ようとするのでしょうか?
古典的かもしれませんが、それが村上春樹スタイルであるのだと思いますし、自分なりの方法で1度飲み込んだものを、誰もが驚く形で創作に活かすことができるような気がします。
5、終わりに
いやー、面白かった。
国内の近場から、外国の辺境までバリエーションにとんだ旅行記でした。
近況が辺境だったりのディープ感も興味深かったですし、ノモンハンとか神戸とか、のちの創作に影響を与えたような旅もありましてね。
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