1、作品の概要
『青の時代』は三島由紀夫の5作目の長編小説。
1950年12月25日に刊行された。
『新潮』1950年7月号~12月号に連載された。
209ページ。
1949年に実際に起こった金融詐欺事件「光クラブ事件」をモデルにした作品。
厳格な父に育てられた秀才の青年がやがて闇金融会社を設立する。

2、あらすじ
川崎誠は、千葉県の医者の三男に生まれ、厳格な父のもと厳しく育てられた。
秀才として成長した誠は、父に反発し、彼が羨んでいる東大教授になることを目標にして、名門の一高に合格する。
やがて東大へと進学した誠は、図書館貸し出し係の野上耀子と出会い、彼女に自分を愛させてから捨てることを思い立つ。
「あなたに50万円の自由になるお金ができたら結婚してあげる」との言葉から、投資に手を出すが金融詐欺に遭い、大金を失ってしまう。
この体験から学んだ誠は、高校時代からの友人の愛宕とともに闇金融「太陽カンパニイ」を設立し、会社は成功を収めるが・・・。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
三島由紀夫の初期作品で、尺も短く読みやすそうだったので、図書館で借りて読みました。
大作の『禁色』を読んだあとだったので、わりとサクッと読めそうなのが良かったんす。
失敗作と言われている作品ではありますが、合理主義者で理屈っぽい青年がいかにして金融業を始めて転落することになるか?
その顛末が興味深かったです。
4、感想(ネタバレあり)
文壇からの評判もいまいちで、作者本人からして「失敗作」と断じられる『青の時代』。
青の時代が連載された1950年は、『純白の夜』が1月~10月に『婦人公論』に連載され、『愛の渇き』が書き下ろしで6月に刊行された年で、三島由紀夫は多忙を極めていました。
加えて、1951年1月には、三島の20代の集大成的な作品である『禁色』の連載も開始しているわけですから、仕事しすぎでしょう(笑)
しかも、その間に短編小説、戯曲、エッセイなども書いているんですからどんだけやねん・・・。
事件後半年ですぐに『青の時代』の執筆にかかったのも準備不足と、三島自身が反省していますね。
時間がなくて物語を膨らませる余裕がなかったとのことですが、たしかに戦争が終わっていきなり大学生になっていたりと展開も駆け足で、思い描いて物語の構図に対して費やした原稿の枚数も足りなかったような感もあります。
ただ、三島自身が不思議と愛着の念もあるといったように、主人公の川崎誠の家庭環境、厳父の抑圧から対立までの心の動きなどが序盤でとても丁寧に描かれていて惹きこまれました。
誠の合理主義というか、様々思考の本流と自我の格闘の所作の結果のような、偏執的な行動。
戦争体験が彼をより偽悪的、懐疑的にさせて、耀子への恋慕を歪んだ形で育まれていきました。
それは、根源的に自身の容貌が醜かったという劣等感からくるもの。
ああ、なんか『禁色』の俊輔の劣等感と女たちへの怒りにも繋がっていきそうなファクターですね。
誠の対極にいる、愚鈍だけど善良な「はとこ」の易。
愛宕とか、耀子もクセ強い登場人物で、誠の人生に深く関わってきますが、実は易こそ最大の重要人物だったのではないかと、この感想を書きながら今まさに思いました(笑)
ジャズセッションのようなライブ感と言えばちょっとかっこいいですが、まあこんなふうにいつも行き当たりばったりなんですよ。
マイライフが。
これだけ曲がりくねった主人公が「誠」っていう名前なのは、大概アイロニーなのですが、易って名前は名は体を表す的な感じで面白いですね。
案ずるより産むが易し。
なにかふわっとして、ぼんやりとした言葉です。
英語でいえば「EASY」かもしれませんが、「易」の文字にはなんとなく日本的なぼんやりとした曖昧さが込められているようにも思います。
ラストシーンで、破滅に向かっていく誠に対して、少女と喫茶店で会話する易。
少女は、素朴で目を見張るような美女ではないけれど、2人は幸福そうであった。
どこで間違ったんだろう。
ここで鉛筆が出てきて、冒頭で父親に捨てられた鉛筆の大きな模型が思い起こされる。
誠がなくしてしまったもの。
少女の鉛筆=幼少期の模型の鉛筆。
感情、憧憬、あたたかな感情・・・。
対極にいてそれらをすべて持っている存在がじつは易だったのではないでしょうか?
かつて見下していた存在が、自らの対極にいて、貧しく愚鈍ならも幸福で暖かい陽の中に生きている。
父親の管理、そこからの脱却と復讐、耀子を手に入れるための起業。
誰かのなにかに応えるための誠の人生。
たしかに彼は高い能力を持っていましたが、それがはたして幸せな人生だったのか?
屈託なく笑う易を見て。
彼は青春の終わりと、人生の敗北を早計に見やり、終わらせることを決意したのでしょうか?
5、終わりに
まあ、言うほど悪くなくねぇ?っていうのが僕の感想です。
いろいろな要因があって、準備不足は否めなかったのかもしれませんがね。
三島由紀夫の傑作群と比べれば確かに未完成ですがね(笑)
しかし、この時期の彼の仕事量の多さを調べて本当に驚きました。
まあ、これだけ勤勉に仕事していれば、酒飲んで家庭を壊しながらも自分より書いていない太宰治にイラっとくるでしょうね(笑)
もっと書いてくださいよ!!苦しいのはわかっているけど、僕も同じです!!
って、彼のこと実は好きで同族嫌悪だったんですよね?
まあ、ともかく興味深く奥行深い作家です。
三島由紀夫は。
このブログは、村上春樹と中村文則の書評を全部書くことを目標にしてましたが、近代文学の巨匠たちもコンプリートしてみたいですね。
太宰治、芥川龍之介、三島由紀夫、川端康成、夏目漱石あたりとか。
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