1、作品の概要
『ウエハースの椅子』は江國香織の長編小説。
2001年1月に単行本が刊行された。
2004年5月よりハルキ文庫より単行本が刊行され、2009年11月に新潮文庫より単行本が刊行された。
書き下ろし。
ハルキ文庫版で201ページ。
全51章のエピソードからなる。
妻子ある男性と恋に落ちた画家の「私」の行き止まりの日常を描いた。

2、あらすじ
38歳の画家の「私」は、妻子ある恋人との恋愛に溺れている。
情愛と快楽を貪りながら、行き止まりの絶望に慄然とする日々。
父も母も亡くなって、身内は妹だけ。
一人で暮らす「私」の恋の行く末は・・・。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
『ウエハースの椅子』は、15年前とかに読んだ作品でひさびさに再読しました。
装丁がなんかおしゃれでええっすね。
フランス映画っぽい感じ?
フランス映画、そこまで観たことないけど(笑)
4、感想(ネタばれあり)
『ウエハースの椅子』は再読時に正直そこまで印象に残っていた作品ではなくて、よくある江國香織作品のひとつみたいな印象でした。
しかし再読して、甘く濃厚な恋愛の裏にゾッとするような諦観と孤独の存在に気付かされて、初読時よりもより深くこの作品にのめりこみました。
江國香織という作家は恋愛小説家でありながら、狂気や絶望をめくるめく幸福の間に描いている作家だと思いますが、『ウエハースの椅子』では特に行き止まりの袋小路に迷い込んだような閉塞感を感じます。
「どこにも行けない」
って、村上春樹ならそう書くのでしょうか?
それはほとんどゆるやかな自殺のようだ。彼は私を愛している。私はそれを知っている。私は彼を愛している。彼はそれを知っている。私たちはそれ以上なにも望むことがない。終点。そこは荒野だ。
この作品では、固有名詞は語られずに主人公は「私」で、「恋人」「妹」と表記されています。
閉鎖的で匿名的な人間関係はとても閉じている印象が強くありました。
そして200ページほどの短い長編であるのに、51章に細かく分別されて描写される日常が淡々としていて、印象的でした。
劇的ななにかはほとんど起こらないのだけれど、恋愛という甘やかな日常に囚われた感情の粒子のような集積のような。
そんな世界の果てに幽閉されているような物語でした。
私は身体をねじり、恋人の唇に軽くキスをした。
「愛してるわ」
恋人は私の目をじっと見て、
「僕も愛してる」
と言った。まっすぐ、誠実に。
私は毎日すこしずつ壊れていく。
5、終わりに
どこにも辿り着けない完璧に閉じた情愛。
そこはかとなく漂う倦怠と絶望。
終わりを予感しながらも熱を保ったまま発火する官能。
果てが予感されているからこそ、日常の細部が意味を持つ。
みちたりた絶望のなかで、ふたりぼっち。
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