1、作品の概要
『老人と海』はアーネスト・ヘミングウェイの中編小説。
1952年に出版された。
ヘミングウェイの生前に出版された最後の作品。
1953年にピューリッツァー賞を受賞。
1954年にはノーベル文学賞を受賞。
新潮文庫版で147ページ。
日本語訳も多数出版されており、新潮文庫の旧版は福田恆存訳、新版は高見浩訳のものが刊行されている。
たった1人で漁に出て巨大なカジキマグロと闘う、老漁夫・サンチャゴの姿を描いた。
2、あらすじ
キューバの老漁夫・サンチャゴは84日間もの不漁に見舞われていた。
かつてサンチャゴと一緒に漁に出ていた、少年・マノーリンは何かと、彼を心配し世話を焼いていた。
サンチャゴは、不漁にもめげず岸から遠い海まで漕ぎ出し大魚が餌にかかる。
しかし、想像を超える大きさのカジキマグロは船を引きずり沖に向かって泳ぎだしていた。
サンチャゴと大魚の壮絶な闘いは三日三晩に及び、決着の時が訪れた。
3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ
アーネスト・ヘミングウェイは、『武器よさらば』しか読んだことなかったのですが、Xの読了で『老人と海』もちょいちょい見かけて気になっていました。
そうしましたら、タイミングよくブックオフの110円のコーナーでゲットしました。
物価高騰の折、110円で買えるのはありがたいっすね。
最近読んだ本は、この時買った3冊を太宰治『走れメロス』→井上荒野『あちらにいる鬼』→ヘミングウェイ『老人と海』の順番で読みました。
あんま積読とかストックしないタイプです。
4、感想(ネタバレあり)
新版のほうはわかりませんが、旧版のほうは本の裏に書かれているあらすじで、ペロッとネタバレしています(笑)
僕はうっかり読んでしまい結末まで知ってしまいましたが、最後に大魚がサメに食い散らかされるのは知らずに読みたかったですね(;^ω^)
読んだ後にウィキペディアで『老人と海』にまつわるエピソードをちょいちょい読んでましたが、ヘミングウェイは『老人と海』でノーベル文学賞とピューリッツァー賞を受賞していたのですね~。
勝手に『武器よさらば』でノーベル文学賞獲ったと思い込んでいました。
ガチの読書家の人に呆れられそうですが・・・。
物語はとてもシンプルで老漁夫のサンチャゴが漁に出る話で、物語の大半を魚と鮫との格闘に費やされています。
登場人物も少年・マノーリンと老人・サンチャゴのみで、いちおう2人に名前はありますが、作中ではほとんど老人、少年と記されています。
あえてシンプルにそぎ落とした物語の構造。
老人、少年、大魚、鮫、海で成り立っています。
老人がなぜ1人で暮らしているのか?
かつて家族はいたのか?
それともずっと天涯孤独なのか?
そんな背景にも一切触れられず、いっそ潔いほどで、あえて意図したシンプルな物語の構造であるということが窺えます。
こうしたシンプルな構造の物語にした、ヘミングウェイの意図はどんなものだったのでしょうか?
彼の意図するところかどうかはよくわかりませんが、僕には「孤独と闘争」を強烈に描き出すためだったのではないかと思えました。
1人で漁に出て、海の上で孤独に魚と、鮫と、自然と格闘する。
ヘミングウェイがある面においては、人生が「孤独と闘争」の連続であると語っているように感じます。
老人は不屈の男。
84日も続いた不漁にもめげずに、助手だった少年が(両親の指示で)去ってしまってたった1人になっても再び漁に出かけます。
そして三日三晩大魚と格闘し勝利し、大魚を喰われるも鮫を何匹も屠り、ボロボロになりながらも打ち倒し、陸へと生還します。
命がけで獲った大魚を鮫に食い尽くされて無残な帰還になり、最後は死んで終わるんじゃ・・・とも思いましたが、ライオンの夢で最後に示されていたのも、再起の兆しだったのではないかと思います。
道具を無くして自身も傷を負っても、きっと老人はまた立ち上がって戦う。
この不屈さ頑強さは、アーネスト・ヘミングウェイそのものを象徴していたようにも思えます。
得意のウィキペディアで調べたところ、幼少の頃からボクシング、狩猟など活動的な父親に鍛えられ、頑強な肉体を持っていた彼は、スペインの内戦にも積極的に関わっていました。
そんな頑強さと、1940年~50年までの10年間の沈黙からの再起の足並みが、頑強な肉体を持ち、84日間の不漁というスランプにもめげずに、再起を図ろうとする老漁夫・サンチャゴの姿と重なるように思います。
少年漫画風に言うと「俺たちゃまだ終わってないぜ!!」みたいな感じでしょうか(笑)
だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない。叩きつぶされることはあっても、負けやせん。
老人の戦いぶりはとても激しく、何度も苦境に見舞われますが、不屈の闘志で諦めずに戦い続けます。
大魚との戦いに勝利するも、その獲物を無残に鮫に食い散らかされる老人は、それにもめげずに鮫とも闘い、網も、銛も、ナイフも失い、最後は舵の柄で鮫に立ち向かいます。
オールにナイフを括り付けて鮫と戦うってだけでも、だいぶクレイジーですが、さらに舵の柄まで武器にするとは・・・。
しかも、苦労して釣り上げた大魚は大半食われていて、普通心が折れそうな場面ですが不屈の男・サンチャゴは折れずに戦います。
なんか「あしたのジョー」でジョーがボロボロになりながら戦っているのを見ていた時と同じ気分になり、丹下団平と化して「もうええ、立つな寝てるんだジョー!!」と叫びたい気持ちになりました。
「闘ったらいいじゃないか」とかれははっきりいった、「おれは死ぬまで闘ってやるぞ」
出港してから4日間たった1人で、大魚と、鮫と闘いつづける。
海の上でたった1人というのも、壮絶な孤独です。
「少年がいてくれたらなぁ」と何度もぼやいていましたが、そりゃそうでしょね(;^ω^)
肉体的苦痛と精神的苦痛、そして圧倒的な孤独。
その末に手に入れたものが、何だったのか?
鮫に食い尽くされた大魚の骨と頭は、栄光の残骸というべき代物でした。
しかし、傷が癒えた時、サンチャゴは再び立ち上がるのでしょう。
細かな情景描写や、繊細な心理描写などなく、簡潔な文体で描かれた骨太の荒々しい物語。
その力強さにぐいぐいと引き込まれて、最後は手に汗しながらサンチャゴ爺さんの奮闘を応援しながら見届けました。
5、終わりに
少年・マノーリンはめっちゃいい子ですねぇ。
この子がいい子ちゃんであることで、海の上のサンチャゴの孤独がより引き立っていたように思いました。
あの子がいてくれたらなぁ!!
それと、半分ぐらい読んでいる時点で10キロジョギングしたのですが、土手付近が寒いうえに猛烈な川風が吹いていて風速30メートルとかあんじゃね?って感じで、脳内でサンチャゴ爺さんと同化してました。
1時間強風に吹かれながらジョギングしたぐらいで、サンチャゴ爺さんの苦闘の100分の1にも満たない苦痛ですが(笑)
ジョギングという孤独な行為と、自然の脅威みたいなのが重なって、プチサンチャゴ爺さん化して、「おれは闘ってやるぞ!!」と大声で叫びだしそうになりましたが、変人だと思われるので我慢しました。
読書してて面白いなと思うのは、こういった現実と物語がちょびっとクロスオーバーする瞬間にもあったりします。
ん?
僕だけですかね(;^ω^)
これからも辛い時があっても、サンチャゴ爺さんを見習って孤独に闘い抜いていきたいと思います。
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