ヒロの本棚

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【本】小川洋子『ブラフマンの埋葬』~ブラフマンと「僕」の心温まる交流を描いた話、だったら良かったのにね~

1、作品の概要

 

ブラフマンの埋葬』は、2004年4月に刊行された小川洋子の中編小説。

群像2004年1月号、2月号に掲載された。

単行本で154ページ。

第32回泉鏡花文学賞を受賞。

架空の小動物ブラフマンと「僕」の交流を描いた。

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2、あらすじ

 

芸術家が集まる「創作者の家」の管理人を務める「僕」は夏の始まりのある日に怪我をしていた小動物・ブラフマンに出会う。

こっそりと自室でブラフマンを飼い始めた「僕」だったが、いたずら盛りで奔放なブラフマンに手を焼いていた。

「僕」は雑貨屋の娘に淡い恋心を抱いていたが、娘は元生物教師の男と密会を繰り返していた。

「僕」とブラフマンはいつも一緒に過ごしていたが・・・。

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ、読んだキッカケ

 

大好きな作家の一人である小川洋子の作品で、よく名前を聞いていた『ブラフマンの埋葬』は以前から読んでみたいと思っていました。

なぜか音楽家の話だと勘違いしていましたが、全然違いました(笑)

 

 

 

4、感想・書評(ネタバレあり)

 

架空の小動物と「僕」との交流がメインに描かれていますがそこは小川洋子、『あらいぐまラスカル』みたいな心温まる作品になるはずもなくもう『ブラフマンの埋葬』というタイトルからバッドエンディングの予感に満ち溢れています。

あんまり「埋葬」がタイトルにつく作品ってないですよね(^_^;)

もう死の予感に満ちています。

 

物語の中で繰り返し描写される古代墓地も物語に退廃と死の匂いをもたらしています。

かつて葬られた人達の墓と石棺。

石棺や石碑に文字を刻む、碑文彫刻師が芸術家が集まる「創作者の家」にいて、「僕」と懇意にしているのも何か意味深いですね。

ブラフマン」という名前も彼の碑文の中から選びましたが、サンスクリット語で深い意味を持つ言葉で、可愛いペットにつけるのにはおおよそ相応しくない言葉でした。

宇宙の最高原理」を示すインド哲学術語。「(ぼん)」と訳され、とくにウパニシャッド文献およびベーダーンタ学派において重視される概念である。

うん、高尚すぎる名前ですね(^_^;)

 

物語の世界はいつもながら異世界っぽい感じで、ブラフマンもおそからこの世に存在しない架空の生物のようです。

これが犬や猫みたいにわかりやすい動物だったら物語の妙味が半減しますが、架空の生物だけにブラフマンの生態や修正について興味を持って読めましたし、どこか得体の知れない印象も受けました。

 

物語は夏の始まりから秋までが描かれますが、夏の間に賑わって多くの人が滞在していた「創作者の家」から人がいなくなり、町は季節風に吹かれて少しずつ寒くなっていくのがなんだかとても寂しく描かれているように思います。

古代墓地に散りばめられた、たくさんの古い死。

縁もゆかりもなく名前も知らない、死に絶えた誰かの家族写真を部屋に飾る「僕」の孤独。

「僕」感情はほとんど描かれませんが、そういった様々な描写に「僕」の締め付けられるような孤独が描かれているように思えます。

 

恋心を抱いている雑貨屋の娘は、別の男と逢瀬を繰り返していて、古代墓地のほこらで男に抱かれている。

「僕」はブラフマンを連れてそのほこらにまで行ってみます。

そこにあるはずの絶望や悲しみは描写されずに淡々と描かれます。

ここまで徹底して「僕」の感情が描かれないと、なんか逆にゾワッときます。

娘は「僕」に対して少し冷淡とも取れる態度を取り、車の運転のことなど頼みごとをする時だけ彼のところに来ます。

なんかモテなかった青春時代を思い出して、娘の態度に読みながら僕はイライラしました。

 

ラストシーンはとても皮肉な結果になってしまいます。

娘の身勝手な頼みを聞いたばかりにブラフマンは・・・。

そして、ブラフマンの葬儀に来ずに安定の逢瀬を楽しむ娘。

ここでもイライラ。

ブラフマンの死から、埋葬までも全く「僕」の感情の描写がされていなくて、淡々と物語が終わっていく感じがなんとも不思議で斬新な感じがしました。

感情の描写の欠落がとても不穏で逆にそこにあるざらついた何かを想像させてしまうような、そんな特異な作品であったと思います。

 

 

 

5、終わりに

 

読んでいる間、ブラフマンがなぜか『チェンソーマン』のポチタの姿でイメージされていました(^_^;)

足が短いところとか共通点があるかも?

ちょっと解釈が難しい小説でしたが、小川洋子作品にもれなく漂う異世界感、死の匂い、凍りつくような孤独が3本立てで表現されていて、むしろなんだかその闇の深さにホッとしてしまいました。

 

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