1、作品の概要
2020年に配信されたアメリカの伝記映画。
映画館で上映予定だったが、新型コロナウィルスの蔓延により配信で公開された。
シカゴマフィアのドン「アル・カポネ」の最晩年を描いた作品。
日本では、2021年2月より公開された。
2、あらすじ
悪逆の限りを働いたシカゴマフィアのボス、アル・カポネ=フォンス(トムハーディー)は刑務所を出所後梅毒が悪化し、心身共にボロボロになっていた。
フロリダの自宅で家族と静かに暮らすが、FBIの監視の目が常に光っていた。
やがて認知症状が進行し、妄想と現実の区別もつかなくなっていくフォンス。
神経症的な彼の言動に、同居する家族は疲弊していく。
3、この作品に対する思い入れ
なんか伝記映画って好きで、ついつい観てしまいます。
『ジュディ』『ボヘミアン・ラプソディ』『ゴッホ永遠の門』『LAST DAYS』『太宰治と3人の女たち』とかあまりハズレがなくて、その人物に親しみと思い入れが強まるので好きですね。
この映画はとても陰鬱で、狂気に満ちていて、そしてどこか孤独なフォンスの晩年を描いています。
諸手を挙げて「おすすめです!!」とは言えない感じの映画ですが、個人的には好きな映画です。
4、感想・書評
この映画を観ていて、2つの映画を思い出しました。
1つはNIRVANAのカート・コバーンの晩年を描いた『LAST DAYS』、もう1つは『JOKER』です。
周りに家族がいるのにどことなく孤独で、自分の家の周りで物語が進行していくのは『LAST DAYS』に似ているように思えました。
物語の終着点が、「自らの死」だということも共通点ですね。
そして、物語が後半に差し掛かってだんだん現実と妄想の境界が曖昧になっていく、主人公の狂気が現実を侵蝕していくような描写が『JOKER』を彷彿とさせました。
トム・ハーディーとホアキン・フェニックス、2人とも素晴らしい役者ですね。
JOKERが徐々に悪と狂気に染まっていくように、映画の冒頭では威厳を漂わせているフォンスは徐々に言動が怪しくなり、認知症状を呈すようになりどこか神経症的な妄想がみられるようになります。
排尿・排便の失敗が多くなり、「おしめ」を付けるようになります。
健康に悪いからと主治医に注意されて、葉巻の代わりに人参を咥える・・・。
かつてのギャングの帝王がガウンにオムツを履いて、人参を咥えている姿は滑稽ですが、眼光だけは鋭くギャップがすごいです。
ラストもフォンスの妄想の世界の出来事が描写されますが、まるで白昼夢のような雰囲気の中惨劇が描かれています。
FBIは彼の病気は、世間を欺くためのフォンスの演技ではないかと疑い監視の目を光らせます。
フォンスは本当に狂っていたのかでしょうか?
彼はどのような景色を見ていたのか?
世界一有名なギャングの晩年の謎を描いたのが本作であったかと思います。
5、終わりに
あまり万人受けするタイプの映画ではないですが、僕的にはわりと好きな映画でした。
虚実が入り交じって、現実が崩壊していくようなそんな雰囲気の作品でした。
トム・ハーディーの演技がとても印象的で、徐々にフォンスが壊れていく様子がとても自然に演じられていたと思います。
特に終盤のやたらと鋭い眼光は狂気を感じさせるものでした。