1、作品の概要
2019年6月に公開された日本のアニメ映画。
中学生の少女・「琉花」が不思議な少年・「海」と「空」に出会い、海を通じて生命の神秘に触れる物語。
琉花の声優を芦田愛菜が努め、音楽を久石譲、主題歌の『海の幽霊』を米津玄師が歌い話題になった。
原作は五十嵐大介の漫画で全5巻。
2006年~2011年に月刊IKKIで連載された。
【6.7公開】 『海獣の子供』 予告2(『Children of the Sea』 Official trailer 2 )
2、あらすじ
江ノ島水族館で働く父を持つ中学生の琉花は、学校、母親との関係が上手くいかず生きづらさを感じていた。
水族館で知り合った不思議な少年・海と出会い、彼と夜の海で「人魂」と呼ばれる鮮やかな流れ星を目撃する。
海の生き物たちは隕石の落下以降ざわめき、鯨たちは何かの誕生を祝した「ソング」を歌い続ける。
琉花は、海の兄・空にも海辺で出会うが、隕石のかけらを追いかけた空はそのまま姿を消してしまう。
水族館の科学者・ジムのかつての相棒・アングラードの元で空との再会を果たす海と琉花だったが、空は琉花に口うつしで隕石のかけらを託し光になって海に消えてしまう。
空がいなくなったショックから言葉をなくした海。
琉花は海と2人で消えた空を追いかけて、海と宇宙、そして生命の神秘に魅せられて海へと旅立つのだった。
3、この作品に対する思い入れ
ツィッターで仲良くさせていただいている方にオススメしてもらって観させていただいたのですが、想像以上の映像美と、神秘的で示唆に満ちたストーリーに引き込まれました。
米津玄師の『海の幽霊』の映像がとても印象的で少し気になっていたのもあったのですが僕的にはど真ん中ストライクないい映画でした!!
宇宙・海・生命の三位一体が織り成す壮大な物語です。
理解しきれなかった部分も多いので、またいつか観てみたいです(^O^)
米津玄師 MV「海の幽霊」Spirits of the Sea
4、感想
①映像美と音楽がとてつもなく素晴らしい
この作品は映像と音楽がたまらなく美しいです!!
原作の漫画は読んだことはないですが、おそらく世界観を壊すことなく映像化されているのではないかと思います。
ザトウクジラが光り輝く場面。
人魂(隕石)が流れる場面。
星空や、海など自然の美しさも随所に描かれています。
カメラワークというか、動きがある場面もすごくダイナミックですね♪
そして、劇中の音楽もピアノの音とかいい感じだなぁとか思ってたらエンディングロールで久石譲さんの名前を見つけて納得しました(笑)
主題歌を書き下ろした米津玄師は、原作のファンで、作者の五十嵐大介先生とも一緒に仕事をしたことがあったようですね!!
MVもまんま映画の映像を使っていますし、歌詞もおそらく映画のストーリーをもとに作ったとしか思えない映画の世界観を反映した歌詞です。
原作を初めて読んだのは10代の頃だと思うのですが、そのすごさに圧倒されたことを憶えています。今読み返してもあの時の衝撃は全く古びず、更に新しい発見をもたらしてくれます。
もし映像化されるのであれば歌を作らせてほしいなあなんていうふうに思ってたことが、今日になって実現するというのはなんとも感慨深いです。
原作が持ってるものに負けないよう、それでいてうまく寄り添えるようなものが、果たして自分に作れるのかと、ここ数ヶ月は問答の日々でした。今は映画館で流れる日を楽しみにしています。米津玄師
映画を観た後に、この歌を聴くとさらに歌詞が沁みますね。
寒い日に入る温泉ぐらいに体に沁みますなぁ。
って、おっさん臭いたとえですな(笑)
②人魂の到来、海の幽霊
人魂(隕石)が到来することを予見する海と一緒に琉花は夜の海で人魂を見て、その美しさに魅せられます。
なぜ人魂の到来がわかったのかを海に聞く琉花に「光るものは見つけて欲しいから光る」と答えます。
この人魂の描写で『君の名は』『ハウルの動く城』を思い出しましたが、流れ星はたまらなく美しいですね☆
この隕石の到来で世界中の海の生物がザワつき、異常行動を見せるようになります。
そして、クジラが歌う「ソング」の意味を断片的に理解して、何かの誕生の祝祭をクジラ達が歌っていることを感じ取ります。
幼い頃の琉花が冒頭の場面で水族館のクジラが光っているのを見ていますが、琉花もまた特別な感覚を持った選ばれた存在だったのでしょうか?
そして、海の幽霊。
海の生き物や、何かの記憶メモリーが水を通じて形を成して浮かび上がる。
劇中でも何度か出てきますが、幽霊というよりは「海の記憶」ともいうべきデータやメモリーのような存在だと思います。
話は逸れますが、僕も幽霊はたぶん存在するだろうと思っています。
そのうち科学で証明できるようになるんじゃないかと思いますが、思念や想いのようなものを空気中に存在する何かが記憶してある種のプログラムやアプリのように再現するのではないかと思っています。
それで、そのプログラミングは水が多くある場所でより鮮明になって、水辺での怪談が多い理由はそこにあるのではないかと。
『海獣の子供』でも「海の幽霊」は水が記憶していて、ある種の精霊のような存在として描かれてます。
この星や海が長い歴史のなかで刻みつけてきた記憶。
それが『海の幽霊』なんだと思います。
『海の幽霊』さんはめっちゃ光ってるんで、海の言葉を信じるなら見つけて欲しいから光っているのでしょう。
③宇宙と海の交わりが生命を産む
人魂(隕石)の落下が何故これほどまでに海の生物たちをざわつかせて、クジラ達に祝祭の歌を歌わせていたのか・・・。
それは、宇宙から落下してきた隕石が海に落下して、海に生命が誕生したという地球という惑星における生命誕生の歴史があったからではないでしょうか?
そして、この部分がこの物語の中心であり海の生き物たち、幽霊たち、3人の不思議な子供たちはその理の内で揺蕩うように生きているのではないかと思います。
他の惑星は知りませんが、実際に地球に生命が誕生したのは太古の海に宇宙からの隕石が降り注ぎ、未知のアミノ酸がもたらされて、母なる海に生命が誕生したと言われています。
そう考えるとクジラと海の生物たちの祝祭の理由が見えてきます。
陸地に生きている動物たちがその喜びを
理解し得ないのは、水の中に伝播している過去の記憶を共有できないからではないでしょうか?
そして、それは大切なことは言葉では伝えられないというこの映画の主題にも繋がっていくのでしょう。
言語化、理論化することを求められる現代において、カウンターのような存在のこの映画のメッセージ。
物語の中でも、アングラードが「宇宙の90%の物質が暗黒物質で未解明。人間が理解していることはこの世界ではほんのひと握り」というように、なにかを理解し論理的に改名していくことも大事ですが「言葉にならない真理」を精神の奥深くで受け入れていくことも重要なのかもしれません。
生命の素となったアミノ酸を運んできた隕石=人魂。
その再来は生命にとっての太古の昔からの祝祭の記憶であり、大きな変化のチャンスなのかもしれません。
デデ(だったかな?)が海を子宮、隕石が精子みたいに喩えていましたが、言い得て妙だと思いました。
④海と空は何者だったのか?
明らかに他とは違う存在の海と空。
彼らはジュゴンの群れと共に生き育てられて、海の中の生活が長かったため皮膚を潤してないと干からびてしまう人としては特異な存在になってしまっています。
ちょっと河童を連想してしまいますね。
彼らは幼いながら生命の真理というべき核心を理解して、言葉や論理を超えて表現しています。
ちょっとスピリチュアルな話になってきますが、この世に稀に生まれてくる星人や、高級霊、天使のような存在だったのではないでしょうか?
物質主義でがんじがらめになっている人間たちや、祝祭を待ち望む海の生き物たちと幽霊たちのために天界から遣わされた2人の天使達。
めっちゃ引かれそうなぶっ飛びな話ですが(笑)
イヤ、僕ヤバい人じゃないんで引かないでくださいね(汗)
そう考えると、キリスト教の三位一体(神、精霊、御子)のように海、空、琉花も何かの象徴のように思えてきます。
海は生命を育んだ海で、空は命を吹き込む隕石をもたらした宇宙(ガンダムでは宇宙の宙をそらとよみますねw)、そして琉花はこの星の生命の象徴・・・。
僕の妄想かもしれませんが、この物語が生命の誕生と、その祝祭の儀式のように思いました。
空(宇宙=隕石)が琉花(生命)に託した隕石を、海が受け止めて育む。
海と空は消えてしまったのでしょうか?
形は見えなくてもこの世界の一なるものとして溶け合い存在し続けているように感じました。
米津の海の幽霊の歌詞にもあるように風薫る砂浜できっとまた会える。
世界は溶け合って存在していてる。
海も空も星の記憶(海の幽霊)も。
エピローグで描かれる母親との和解。
新たな生命の誕生。
部活の先輩との和解。
琉花がひと夏の物語によって得たものだったのだと思います。
5、終わりに
全然、この物語について書ききれてないなぁっていうのが正直なところですね(笑)
とても深くて、神秘的な物語でした。
たぶんしばらく。
この映画の音楽とか映像がフラッシュバックし続けるのでしょう。
漫画も読んでみたいなぁ。
正直、自分が好きな作品の感想を書いた後って書ききれなかった部分とか、自分が読み取れなかった作品の核の部分を思って苦しい気持ちになることも多いです。
それでも、なんでこうやってブログに書いてしまうのか。
アウトプットの精度を高めることでインプットの質を高めたいとか、文章力を向上させたいとか色々ありますが、どうにかして表現の核の中心にたどり着きたいという想いがあります。
それは、子供の頃に海で素潜りをしてましたが、暗い海の底に向かって潜っていく感覚。
息も苦しくなって、水圧も強くて耳がキンキンしていくんだけど、もう少し先まで潜ってみたくなるようなあの感覚に似ているように思います。