1Q84がオウムを彷彿とさせる宗教団体を登場させたり、3人称で物語を展開させたりと物語を幅広く展開させて個人と世界との対立をある意味で描いた作品だったので、ネットでも新作はテロや東日本大震災などのテーマを扱った壮大な物語になるのではないかという声が多く聞かれました。

 

村上春樹は良くも悪くも「僕」の喪失感を描いたどこまでも個人的な作品を多く描いてきた作家でしたが、地下鉄サリン事件のインタビューを描いたノンフィクション作品「アンダーグラウンド」以降、個人と世界との断絶ではなく、その対立や融和を描くようになってきました。国際的に評価が高い作家でもあり、エルサレムでの「壁と卵」のスピーチもあり今回の作品には少なからずそういった世界的に共感が得られる事件を暗に示した作品になるだろうと僕も考えていました。

 

ですが、ページをめくるにつれその予想は覆されました。

まず1人称。「僕」じゃなくて「私」の物語です。

そして、「私」の名前は明かされません。そして、形こそ違え唐突な妻との別離。井戸も出てくるし、ねじまき鳥との共通点が多いですね。

 

妻との別離後、「僕」は長い旅に出ますが、その後はほとんど移動することなく雨田具彦が住んでいた小田原の山中で数カ月の物語が展開します。その間、一貫してほとんどの視点は「僕」で、半径3kmほどで完結していく物語が展開していきます。壮大な物語は?世界との対立は?しかし、そこは村上春樹、免色さん、まりえちゃんとクセが強く魅力的な人物が登場し、ほどよい緊張感をたたえながら物語は展開します。

 

鈴の音、石室、そしてイデアたる騎士団長の登場。日常は少しずつほころびを見せ始め、非日常が取って代わっていきます。夜空が藍色に染まって徐々に白んでくるように少しずつ何かに侵食されていく感じ。

 

雨田具彦が描いた『騎士団長語殺し』の意味は?免色さんの真意は?最後まで読んでも謎が深まる気がしました(笑)

 

 

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

 
騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

 
騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(上) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(上) (新潮文庫)

 
騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(下) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第1部: 顕れるイデア編(下) (新潮文庫)

 

 

 

☆終わりに・村上春樹の今後☆

ザックリですが、とりあえずこれまでの作品をさらいながら村上春樹の紹介をしてみました。

今後は、書評を作品別にしていきたいと思います。

今のところ、『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』を書きました。

先は長いです(笑)

 

hiro0706chang.hatenablog.com

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次に出る作品は短編集になりそうですね。

今、新潮で何本か書いたみたいなので、来年早々ぐらいに出ると良いなと思ってます。

そのあとに短めの(1冊の)長編が出て、何年か後に長い長編が出ることになると思います。

最近はずっとそのパターンですね。

 

村上春樹も70歳を超えてますからいつまで書けるのか・・・。まぁ、元気そうだから案外90歳ぐらいまで書いてそうな気もしますが(笑)

まだまだ頑張って欲しいです。