ヒロの本棚

本、映画、音楽、写真などについて書きます!!

【はてなインターネット文学賞】「わたしとインターネット」~中田英寿と村上龍。インターネットに見た個人がメディアになる時代の予感~

はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」

 

 

☆サッカー界のスーパースター・中田英寿VSマスコミ☆

 

時は、1997年。

日本サッカーはジョホールバルにて、なんとかW杯の切符をもぎ取りました。

最終予選の途中での監督解任。

格下の相手に取りこぼしながら、なんとかグループ2位を確保。

ギリギリの状況でのイラン戦で延長までもつれこんでの3-2の勝利。

その歴史的な名勝負でピッチ上で最も輝いた選手は当時20歳だった中田英寿でした。

 

初めてのW杯出場。

突如現れた若きスーパースター。

ピッチ上で年上の選手たちにも物怖じせず指示して時には声を荒げる異端とも言える中田にメディアは食いつきました。

ただ、ワールドクラスに達しようとする若きアスリートに対して、当時のメディアの姿勢はあまりに稚拙でした。

 

当時の野球のインタビューでもよくありましたが「今日どうでしたか?」みたいなザックリした質問・・・。

予定調和とも言うべき選手の受け答え。

スポーツがグローバルなものになっていなかった非常に日本的な現象だったと思います。

世界を相手に戦い、そこを舞台にプロとして戦っていた中田にとって当時のメディアはプロフェッショナルとして物足りなかったのではないでしょう。

www.excite.co.jp

 

1998年に入り、初のW杯に向けてメディアの報道は加熱。

中田は日本の若きエース、ファッションや言動なども取り上げられて若い世代のアイコンとして注目されました。

過度のプレッシャーにさらされた中田はストレスのあまり蕁麻疹が出たり、コンディションを崩したりしました。

また、以前から自分の言動がメディアに都合よく取り上げられて面白おかしく報道されていたことに違和感を感じていた中田は自分のホームページを立ち上げて、自分の言葉で自分のことを語ることに決めたのでした。

「nakata.net」と題されたホームページではメディアには語らない素の中田英寿の姿が綴られていました。

1998年と言えばまだまだインターネットは黎明期で、電話回線を使ってキュルキュルいって使うごとに料金を取られていた時代。

ネットを使うときも、パソコンに向かって「さぁ、これからインターネットを使うぞ!!」みたいにインターネットを使うのは日常的ではない時代であったと思います。

そんな時代にインターネットを使ってメディアを介さずにファンや世間の人々との交流を試みたのが中田英寿という若き天才アスリートでした。

 

 

 

村上龍が示した憂鬱な希望としてのインターネット☆

 

そんな天才的な若きフットボーラーと懇意にしていたのが、『限りなく透明に近いブルー』で群像新人賞芥川賞をダブル受賞して『コインロッカー・ベイビーズ』などセンセーショナルな作品を創作していた村上龍

ちなみに僕が当時一番好きなサッカー選手が中田英寿で、一番好きな作家が村上龍でした!!

いや、この2人の交流にはとても興奮しましたし、なにか新しい時代の幕開けのようにも感じていました。

 

個人的には村上龍の作品は『イン ザ・ミソスープ』が一番好きで、この頃の龍が一番脂がのっていると思っています。

なんというか「時代のアイコン」とも言える存在で時代を象徴するような小説・エッセイと書いていました。

その頃に書いたエッセイのタイトルが『憂鬱な希望としてのインターネット』で未来を予見するようなエッセイでした。

って、未読ですが(笑)

 

インターネットは2000年代に入って、急速に人々の生活に入り込み、大きく変化させていきました。

例えば、物流や販売がその最たるもので、ネット販売が普及し本屋のような店鋪がどんどん潰れていっています。

スマートフォンの普及に伴ってさらにインターネットは生活に欠かせないものとなり、IOT、ICTなどの概念も広まりネットが常に繋がっているのが当たり前の状況にさえなってきました。

 

中田英寿村上龍は、そんなインターネットの黎明期に自らのホームページを通してダイレクトにファン達と繋がろうと試みたのだと思います。

この時期に中田英寿村上龍の対談集と交わしたメールを書籍にした『文体とパスの精度』という本が出版されましたが、昔で言う往復書簡集がEメールになっているという点が新しいですね(笑)

この時期の中田のホームページの日記にもよく村上龍が登場し、2人が一緒に旅行した時のプライベートショットなんかも掲載されていてテンション上がりました!!

 

 

☆個人がメディアになり、レベルの低いメディアは駆逐される?☆

 

中田英寿の登場によって、マスメディアの世界に一石が投じられて、波紋が広がっていきました。

あれから20年以上の時が流れて、スポーツジャーナリストの中にもワールドスタンダードな記事を書ける方が増えてきているように思います。

『Number』などレベルの高い雑誌や、Webコンテンツも増えてきました。

 

TVに関しても民放のスポーツ番組のレベルは相変わらず微妙ですが、スカパーなどのCS、DAZNなどのWebコンテンツのレベルは解説者、実況のレベルが上がったこともあり質が高いものになってきました。

サッカーだけではなく、テニス、野球、ゴルフなどの分野でも世界的なトッププレイヤーが増えてきているので、必然的にマスコミのレベルも少しずつ上がっていくのではないでしょうか?

 

ホームページ→ブログ→SNSYouTubeといった変遷を辿り、今後はますます力を持った個人がメディアとして情報を発信してお金が集まる時代になっていきます。

TVが一人勝ちだった時代も終わりを告げ、ネット広告にお金をかける流れになってきているように思います。

 

中田英寿は20年以上前にマスコミに対して反旗を翻し、時代に先駆けて自らがメディアとなって自分の言葉で情報を発信。

自分の言葉が捻じ曲げて伝えられるメディアに対しての不信感が発端でしたが、時代を先取りした試みで、そのうちインターネットを介して個人がメディアとなると言っていた中田の予言が現代において成就しているように思います。

 芸能人、アスリート、アーティスト、一般人もSNSYouTubeを介してそれぞれがメディアとして情報を発信しています。

 

今後もきっとこういう流れは加速していき、広告料などの経済の流れさえも変えていくのでしょう。

インターネットが急速に普及した20年。

これからの20年でインターネットは社会と人々にどのような変化をもたらすのでしょうか?

願わくば、コロナ禍で加速したように思えるその変化が、人類にとって福音となるように願っています。

 

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【サッカー】目指せ金メダル!!U24日本代表VSU24スペイン代表!!

☆史上最強メンバー!!サッカーで金メダルゲットだぜ!!☆

 

なんだかゴタゴタ続きでモヤモヤしたまま開催されそうな東京オリンピックですが、もう来週開幕ですね!!

早いな~。

できれば高揚感とともに迎えたかった母国開催のビックイベントですが、コロナのゴタゴタで複雑な気持ちですが、選手たちは頑張っているし、ここまで来たら素直に応援したいですね!!

もちろんパブリックビューイングとかはやめて自宅のTV観戦で盛り上がりますよ♪

 

オリンピックで一番楽しみなのは何といってもサッカーですね!!

以前のブログにも書きましたが、今回の五輪代表は間違いなく歴代最強のメンバー。

サッカーは年齢制限があり、基本のメンバーはU23の23歳以下(今年は1年延期したためU24)で構成されますが、オーバーエイジで23歳以上のメンバーも3人まで加えることができます。

 

今回の日本は吉田、酒井、遠藤のA代表の主力を加えて本気のメンバーで来ました。

A代表主力CBの冨安、堂安、久保もいて歴代最強のドリームチームとも言うべきメンバーが揃いました!!

バックラインは普段A代表でやっているメンバーで連携も取れていますし、安定感抜群ですね!!

オーバーエイジは右SBの酒井でなはくて、FWの大迫が入ると思っていましたが、DFラインを固めにきた酒井の選出もありだと思います。

正直1トップの人材は微妙ですが、2列目の堂安、久保も絶好調ですし、それ以外のメンバーも三好、相馬、三苫と多士済々です。

 

サイドバックの菅原が落選したのはちょっと残念でしたが、今回のメンバーはそれだけレベルが高いということでしょう。

期待が高まります。

 

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☆オリンピック直前!!U24日本代表VSU24☆

 

そして昨日は金メダル候補と目されるスペインとの強化試合。

本番直前のガチンコの試合でした。

スペインはEUROを戦っていたこともあり、ようやくベストメンバーが揃ったものの選手のコンディションにはバラつきもあり、調整を兼ねた一戦でしたがそれでも強さの片鱗を見せていました。

 

今回のスペインは、フランスなどが所属クラブの拒否で選手をなかなか集められなかったのと対照的にバリバリのベストメンバーを集めてます。

しかも、先のEUROで主力として戦ったメンバーが多数。

オリンピックのサッカーはヨーロッパの国はそれほど本気で戦わなかったりしますが、今回のスペインはガチ中のガチ。

バルサの至宝18歳のペドリを始め、リーガでバリバリに主力で戦っている選手たちが多いです。

 

前半、 ボールを支配して攻め込むスペインでしたが、日本のバックラインも安定していて、そう簡単にゴールを割らせません。

日本は、押し込まれながらもカウンターでフィニッシュまで持ち込むシーンも少しずつ出初めていました。

この日、精力的に動いて左に流れながら仕掛けることが多かった久保のドリブルからグラウンダーでマイナスの折り返しに堂安が左足でダイレクトシュート!!

ゴール!!

堂安は絶好調ですね♪

 

後半は、調整の意味もあり日本が7人のメンバーを入れ替えてスペインにペースを握り続けられます。

33分にプアドのゴールで1点を返されますが、同点のまま試合終了。

短い時間でしたが、ペドリのスルーパスの精度はヤバかったです(>_<)

 

日本の収穫は攻撃の核である堂安と久保が好調を維持していて、スペイン相手にも結果を残せたこと。

1トップの林がポストプレイなど持ち味をみせたこと。

旗手を1列前で起用したり、ボランチの組み合わせを試したり、前田を右サイドで使ったり、上田がケガから復帰して久々に出場できたなどのことがありました。

 

課題は、ショートカウンターで最後まで攻めきれずに相手に帰陣されてしまったり、バックラインで上手くボールを回せずに危険を招いてしまったりしたことでしょうか?

まぁ、高いレベルの相手でしたかわからないこともあると思うので課題が出て良かったと思います。

 


www.youtube.com

 

 

 

☆22日は初戦南アフリカ戦!!☆

 

日本は、グループAで南アフリカ、メキシコ、フランスと2位通過をかけて戦うことになります。

いや、まぁまぁ死のグループですね(>_<)

ただ、ベストメンバーをほとんど招集できずにOAもポンコツなフランスはそれほど怖くないかも?

また、高温多湿な7月の日本の気候は大会を戦う上で日本に有利に働くと思います。

 

www.goal.com

 

コロナや、EURO、南米選手権との日程の兼ね合いで欧州、南米の準備がなかなか難しかったことも日本に有利なファクターだと思います。

クラブ側も招集拒否することができるので、例えばオーバーエイジでアルゼンチンがメッシを招集することが難しく(南米選手権にも出場していたこともありますが)考えうるベストメンバーで挑める日本の躍進が期待できると思います。

 

オリンピックのサッカーは全16チームが参加で、8チームで決勝トーナメントを戦います。

Aグループはベスト8でグループのチームと当たるので、韓国と当たる可能性もあります。

個人的にはロンドンオリンピックの雪辱を晴らして欲しいですね!!

ベスト4以降は、順調にいけばスペイン、アルゼンチン、ブラジル、ドイツなどの強豪国が・・・。

今度こそベスト4の壁を破って欲しいです!!

 

個人的に今シーズンほとんどリーグ戦で活躍できずに鬱憤がたまっている久保建英の活躍に期待したいです!!

代表チームに合流してから目の色が違いますし、あまり試合に出ていないため元気も有り余ってそうですね(笑)

運動量も豊富ですし、スプリントのスピードも早くコンディションの良さが窺えます。

モチベーションの高さも窺え、昨日のスペイン戦を観ていても気合が入りまくっていました。

先制点のあとの雄叫びもアツかったですね!!

 


www.youtube.com


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【本】村田沙耶香『丸の内魔法少女ミラクリーナ』~静謐な暴力~

1、作品の概要

2020年2月に刊行した短編集。

 『小説 野生時代』に掲載された。

全4編。

 f:id:hiro0706chang:20210713200806j:image

 

 

2、あらすじ

①丸の内魔法少女ラクリーナ

小学3年生の時に魔法少女ごっこラクリーナを始めたリナは、36歳になっても妄想の世界で魔法少女であり続けていた。

一緒に魔法少女をしていたレイコ(マジカルレイミー)は、DV彼氏の正志が悩みの種。

リナは二人を別れさせようとするが、正志が2代目マジカルレイミーとして人助けをすることになる。

 

秘密の花園

千佳は、大学の知人の早川くんを監禁している。

イケメンで女性に対して支配的な早川くんは、監禁されている立場だが逆に千佳に対して支配しているかのように横暴に振舞っていた。

約束の1週間の監禁生活の果てに、千佳の真意が明らかになる。

 

③無性教室

校則で『性別』を禁止されている高校に通うユートは、男女どちらの性別かわからないようにされたクラスメイト達と日々を過ごしていた。

性別と性癖を超えて募っていくセナへの恋慕は、周りの人間を巻き込み、やがて一つの事件を起こす。

 

④変容

 夫にも勧められてファミレスのパートを始めた真琴は、怒りの感情を持たず、「なもむ」という自分の知らない言葉を連発するアルバイトの同僚で大学生の高岡くんと雪崎さんに違和感を感じていた。

親友だった純子も自分の知らない間に変容していてパブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティーなる奇妙なイベントを主催していた。

夫さえも異質で変容した人間に思えて、真琴は以前忌み嫌っていたセクシー五十川を頼るが・・・。

 

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ

久々に村田沙耶香さんの本を読みましたが、相変わらずのぶっ飛び具合で楽しく読めました(笑)

前から珍妙なタイトル『丸の内魔法少女ラクリーナ』に惹かれていましたが表題作ももちろん、他の作品も彼女の「普通」に対して疑問を呈する物語に惹かれました。

ちょっと読んでてしんどい時もあるのだけれと、やっぱり気になる作家の一人ですね。 

 

 

4、感想・書評

 ①丸の内魔法少女ラクリーナ

うん、初っ端からブッ飛んでますね(笑)

クレイジー沙耶香の面目躍如。

魔法少女ごっこを妄想世界で36歳になっても続けているなんてとってもクレイジー

 

でも、主人公のリナなりの処世術というか、より良く生きていく為の工夫なのかなとも思えてきます。

リナは例えば、就業直前に理不尽な残業を持ちかけられても、敵のヴァンパイアグロリアンのせいで操られているんだから頑張って戦わなきゃってある意味ではポジティブに変換して、嫌な顔一つせずに仕事をして、結果的に周りに評価されています。

うんうん、妄想力で前向きに生きられるんならそういうのもイタくないかも!?

 

男性の僕が読んでいて一番強く感じたのは、リナとレイコの女性同士の繋がり方。

単純に友情って言うと簡単なのかもしれないけど、男性目線だと理解し得ないような緩やかさでキラキラと繋がり続けている。

男の子達がヒーローになってその世界で遊ぶように女の子も女の子にしかわからない世界で遊んで。

そんなファンタジーって、実は大人になってもずっと心の中で続いているのかもしれないって思いました。

 

秘密の花園

監禁っていう刺激的なテーマで始まりますが、支配する側と支配される側。

何をもって支配するというのか?

監禁して自分のコントロール下に置くことが支配といえるのか?

監禁された側の早川くんが、監禁した側の内山さんに対して精神的に優位に立っているように見えます。

 

経済的な支配、暴力による支配などたくさんの支配がありますが、恋愛とくに初恋は呪いといっていいほど人の心をがんじがらめに縛ってしまうやっかいな呪縛なのかもしれません。

何しろ、縛られて支配されている本人はことによると呪いにかかっていることに気付きもしないのですから。

 

内山さんは、そういう自分の心を苦しいまでに縛り付ける初恋の呪縛から逃れるために、早川くんに幻滅するために『秘密の花園』に監禁しました。

そうしてまんまと、彼の初恋の呪縛から逃れることができたのでしょう。

 

③無性教室

2013年に発表ということで、2015年に刊行した『消滅世界』の習作とも思える作品です。

本当に「平等で正常」な世界を目指すのなら性別も廃してみんな同じになればいい・・・。

論理的には正しいかもしれませんが、狂気を感じる提案だしもしかしたらそんなふうにこの世界は変容していってしまうかもしれないと感じさせるような狂気を孕んだ作品だと思います。

 

LGBT性同一性障害など、性と性別に関しての理解が進んでいくことはいいことだと思います。

これまでマイノリティとされて苦しんできた人達の想いを社会が受け止めてより寛容で多様性を認める社会になっていくことはとても素晴しく美しいこと。

でもでも。

それが行き過ぎてしまうとどうだろう?

そんなディストピア(あるいは少しだけ違った世界)を感じさせる作品であると思います。

 

そんな歪んだ世界の中でもユートは性別を超越してセナに恋をして、セックスをする。

「あなたがどちらの性でも構わない。あなたのことが好き」

生殖のための恋愛とセックスを超越している。

ある意味の純愛かもしれない。

でもどこか背筋が寒くなるのは、僕が古い人間なのだからでしょうか?

『消滅世界』でも感じたが、論理と正しさが肥大する時に、我々の「本能」が鎌首をもたげる。

 

④変容

大げさにデフォルメしているけど、実際にこの世界で起きていることかもしれない。

世代間での意識の格差は広がり、古い世代の感覚は社会の中で駆逐されていく。

ゆとりだの、さとりだの。

欲望が希薄化していく若者が取り沙汰されている。

 

気付いたら自分がスタンダードだと思っていたことが全て消え去っていて、社会にとって異質な存在になっている。

目まぐるしく変化していく現代社会で、いつの間にか慣れ親しんでいた言葉や、感情でさえも変化して消えていってしまう。

 

真琴は自分を古い側の人間だと思い込み、エクスタシー五十川と共に純子のパーティーをぶっ壊そうと乗り込みますが、そこで新しい言葉に出会って変容します。

世代間のギャップや意識の変革。

そういったものが高速で回り続ける世界から次々に産み落とされて、たくさんのものが過去になっていく。

僕はこの物語を読んで「なもみ」ましたが、それはむしろ「まみまぬんでら」といっていい感情だったのかもしれません。

 

 

5、終わりに

論理対本能。

 理性対暴力。

何かそういった構図も浮かんできましたが、常識とか、普通に対しての問いかけが鋭く刺さる物語でありました。

村田沙耶香の作品は何作か読みましたが、常にそういった問いかけとテーマを内包した物語が描かれていて、少し苦しくなるのだけれど、どこか目を逸らせないような、紛れもない真実が現出するのではないかと彼女の世界観に没頭していってしまいます。

 

短編集の隅々にも村田沙耶香の作家性は、湧き水のようにこんこんと染み出していて個性的な光を放っていました。

描いている世界は、一見珍妙で奇天烈な別世界なのかもしれないけど、村田沙耶香自身は「くもりなき眼」でこの世界を凝視して見定めて物語を創造しているのだと思います。

描き出した世界は、時にあまりに静謐な暴力に満ちているのかもしれないけど、彼女の無垢な問いかけは私たちの心を真っ直ぐに射抜いているように感じています。

 

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【本】平野啓一郎『ある男』~2つの偽りの愛~

1、作品の概要

 

2018年6月の『文學界』に掲載され、同年刊行された長編小説。

事故死した夫が全くの別人だった事件を通して、「愛とは何か?」を問うた作品。

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2、あらすじ

次男の病死を契機に夫と別れて、長男と2人で郷里の宮崎県に戻った里枝は林業に携わる「谷口大祐」という男と知り合い愛し合うようになる。

やがて結婚した2人は新たに2人の間に生まれた長女の花と、前夫との間の子供の長男の悠人と4人で幸せに暮らしていた。

しかし、仕事中での事故で大祐が亡くなり、疎遠だった彼の兄から「この男は弟じゃない」 と告げられてからこれまで育んできた愛情と信頼が揺らぎ始める。

 

里枝は過去に離婚を担当していた弁護士・城戸に相談するが、この「谷口大祐」を騙っていた「X」の足取りを追ううちに城戸はその人生にのめり込んでいることになる。

彼の足取り、人生を辿ることが、やがて城戸自身の人生観、存在の不確かさ、家族への愛への思索に深く絡みついてくることとなる・・・。

絡まった糸を少しずつ解きほぐしていくうちに、物語はそれぞれの人生に深い問いをなげかける。

ある男

ある男

Amazon

 

3、この作品に対する思い入れ

『マチネの終わりに』で久々に平野啓一郎の作品を読んで、深い感銘を受けて『決壊』『空白を満たしなさい』『ドーン』『かたちだけの愛』などを読み、平野啓一郎の文学に深く惹かれました。

そんな折に、新刊として発売されていたのが『ある男』で、読み進めるごとにこの物語に引き込まれました。

今回、再読して最新作の『本心』にも繋がるような愛の本質や、存在の不確かさへの問いかけ、また愛する人が持つ自分が知らない別の顔(愛する人の他者性)をどう受け入れるかの問いかけをより深く感じました。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

4、感想・書評(ネタバレありまくり)

①純文学をアップデートする 

中村文則の書評でも書いたと思いますが、平野啓一郎もまた近作で純文学のアップデートを試みているように思います。

初期作品においてゴリゴリの純文学的な作品を書いて、芥川賞を受賞したという点においても2人の作家には何かしら近しいものも感じます。

まぁ、太宰と三島ぐらいテイストは違うと思いますが(笑)

 

純文学とは何かについての答えは様々だと思いますが、僕は物語そのものの娯楽性より情景描写や心理描写に重きを置いた「芸術としての文学」であり人間の根源に対する深い問いかけを持った作品が、純文学だと思っています。

平野啓一郎は、純文学の持つそれらの長所をそのままにして美しく読みやすい文章で、誰もが興味を持つようなエンターテインメントの高い物語に、難解かつ深遠な愛や人生に対してのテーマを盛り込んだ作品を作り出しているのだと思います。

それはまるで、ポップな見た目と曲とは裏腹に、複雑なコード展開と毒と謎かけを含んだ歌詞の曲を演奏するビートルズのように思えます。

 

そして、平野啓一郎の最大の魅力は、その文体にあると思います。

デビュー当時から三島由紀夫と比肩されるほどの美しく耽美的な文章が、作家として洗練されより多くの人々に物語を届けるためにとても読みやすく無駄のない文章になってきているように思います。

平易かつ、無駄がない、美しい文章。

 

それほどの読書家ではない僕ですが、平野啓一郎のような美しさと機能性わかりやすさを全て兼ね備えた文章を書ける作家はいないように思います。

まるで流れる水のような流麗な文章・・・。

例えば城戸がリビングで音楽を聴く以下の場面ですが、読んでいてため息すら漏れるような耽美的な文章です。

 また少し飲もうかと思ったが、菊池のピアノだけで演奏される破格の「All The Thing You Are」が始まったところで、しばらくその場から動きたくなくなった。

 時間が、ゆっくりと解体されてゆくようなテンポだった。旋律が、一滴ずつ、澄んだしずくとなってしたたり、静まり返った室内に、幾重にも波紋を広げていった。

城戸は、音楽そのものというより、その音の予感と余韻との融け合いの中で息を潜めて、クリスマス・ツリーの電飾が、一定のパターンで変化していく様を眺めた。

 

 

美しく流麗な文章で、先が読めない起伏に富んだ物語を描き、その中に深いテーマも盛り込んでいく。

それが現在の平野啓一郎の作家性だと思いますし、そこにうまく社会的なテーマも入れてきています。

 

今作『ある男』でもそのような平野啓一郎の真価が存分に発揮されていると思います。

 

②「X」の物語にのめり込んでいく城戸

主人公の城戸は、かつて離婚調停で関わった里枝から亡くなった夫が全くの別人だったことを彼の兄から明かされたことについて相談を受けます。

初めは仕事として「谷口大祐」を騙っていた男「X」の身元を辿っていきますが、やがて「X」追うことは城戸にとって仕事を超えた自分自身にとって大きな意味を持つ事件になっていきます。

 

「X」の持つ出生の秘密自体に惹かれたことも一つであったかとは思いますが、卑劣な行為だと理解しつつも全く自分のことを誰も知らない場所で、他人に成り代わって生きるという行為そのものにも興味を惹かれるようになったのではないでしょうか?

抱えている「存在の不安」や過去からも解き放たれて他人の人生を生きる・・・。

他人を、特に愛する人を騙す罪悪感はあったのでしょうが、城戸自らも在日3世であるというルーツから感じるそこはかとない存在の不安や、妻とのすれ違いによる現在の生活と幸福の崩壊の予感を抱えていて、他人の人生を生きることへの魅力を感じたのかもしれません。

 城戸は、横浜に戻ってからも、「X」になりすましたあの数時間の、言い知れぬ悦びが忘れられなかった。彼は緊張し、興奮し、眩暈を感じていた。人はそれを、普通、悲劇の効能として知っているのだったが、映画を見たり、本を読んだりするのではなく、肉声を以て他人の人生と同化し、それを内側から体感するというのは、なるほど、趣味的な何かになり得るのかもしれない。苦い後味の、破廉恥な遊びだったが・・・。

 

 自己・自我というものはある意味では精神の牢獄で、誰しもがそのような軛に魂をつながれて囚われているのかもしれません。

現代社会のように高度に国や社会にその存在を管理されているような世の中ならなおさら・・・。

ナンバーカードや、監視カメラの存在で今後ますます個人の存在は社会に把握され、管理されていくのでしょう。

 

自分がどういったルーツの中で生まれ育って、どう生きてきたか?

その全てが白日の下に曝されているとして。

それが誇れるものでなかった時に私たちは何を願うのでしょうか?

 

ただ、城戸が持つ「在日」というルーツ。

それは、この国が抱える歴史の闇の部分や、民族としての至らなさを象徴していると思いますし、日本がより成熟した国家になるために精算して進んでいくべき問題なのではないでしょうか?

欧米には強いコンプレックスを持っている割には、アジア諸国(特に韓国、中国、北朝鮮)には強い優越感と侮蔑を感じます。

 

そのような日本国民の世論・感情と、有事には関東大震災の時の虐殺のような得体の知れない悪意が自分に対しても解き放たれるのではないかという恐怖が城戸を苦しめ続けているように思います。

実際にヘイトスピーチや、ネットの極右など社会の鬱憤はその矛先をいつ自分に向けるかわからない・・・。

日本で生まれ育って、日本語しか話せないとしても。

 

僕の友人にも韓国にルーツを持つ日系3世のナイスガイがいます。

彼とはサークルで知り合って、4年間密に一緒にいて、サークル活動以外にも飲み会をしたり、サッカーをしたり、うちにも何度も泊まりに来て語り合ったりしました。

とても思慮深く穏やかなのですが、どこか芯の強さを感じさせる男で、この物語を読みながら彼のことを思い出さないわけにはいけませんでした。

彼はクリスチャンでもあり、お互いの心の深い部分にまで踏み込んで生き方や考え方など語り合ったように思います。

 

そんな彼に20年以上前に言われて忘れられない一言があります。

それは、「どうして僕がここにいるのか考えて欲しい」という言葉です。

第2次世界大戦、太平洋戦争の時にこの国がアジア諸国に対して何をしたのか?

東南アジアでは、欧米の支配から独立させてくれた英雄のような扱いもされているかもしれませんが、東アジアに対しては侵略を行い、「日韓併合」を経て韓国の人々は文化的な損失を被りその流れの中で意志に反して日本に連れてこられた韓国人もいた。

その子孫が僕の友人であり、城戸だったのでしょう。

 

僕のざっくりとした歴史観は、詳しい方からしたら笑いの種かもしれませんが(>_<)

とにかく、彼の言葉を受けて僕はあの時代の日本がどういう立ち位置で戦争をしてどのように他の国に干渉していったのかを調べました。

僕は、その当時彼のルーツから目を背けるようにして生きていました。

「君が何者であっても、どんなルーツを持っていても気にしないよ。これまで通り一緒にいよう」

これは、城戸の妻・香織の態度にも通ずるものがあったと思います。 

自分の近しい人間、愛する人のルーツを見ないように蓋をして生きることが果たして真実の愛と呼べるのでしょうか?

彼・彼女はそのような形の愛に喜びを感じるのでしょうか?

 

僕の友人は、きっと僕のことを友達と思ってくれていたからこそ、自分のルーツをしっかりと見て欲しいと願ったのだと思います。

別に日本人と、日本軍の行いを否定しようとしたのではなく、自分のルーツと両国の歴史を理解してそこも飲み込んで一緒にいてほしいと思ったのではないでしょうか?

それは、まさに城戸のためにヘイトスピーチに参加した美鈴の行動を想起されられます。

 

③偽りさえも愛することができるか?それぞれが抱える存在の不確かさ

里枝が愛した「谷口大祐」は本当は「谷口大祐」ではなかった。

その事実を愛した「ある男=X」から告げられなかった里枝の悲しみと戸惑いはいかほどのものだったのでしょうか。

気持ちをぶつけようにも、その相手はすでにこの世を去っていてあとに残ったのは思い出と、2人の子供の花だけ。

 

でも、果たして二人が一緒にいた時間。

家族として皆で過ごした時間まで泡のように消え去ってしまうのでしょうか?

それでは果たして愛とは何なのでしょうか?

 

最終的に里枝は悠人との葛藤や、花の存在に後押しされながら「原誠」という名前と、人に言えない生い立ちと過去を持っていた「ある男」の存在にたどり着きます。

容易には受け入れられなくても、やはり一緒に過ごした思い出や時間は変わらずに存在していて、たとえ死の闇が二人を分かちようとも光輝を放ち続けるではないでしょうか。

里枝と「原誠」の愛の物語は「全てを共有できなくても、たとえ偽りがあったとしてもお互いが深く愛し合っていていれば全て赦される」と語られてます。

全ての愛がそのよのように寛容なものなのであったらどれだけ良かったのでしょうか。

城戸にまつわる愛の物語は、全く逆の展開を辿ります。

 

里枝と「原誠」の愛の物語が最後に真実にたどり着いたものであったとして、その物語を追っていた城戸は彼らの愛の物語と逆の選択をします。

「偽りの愛を生きる」

 それが、城戸の下した選択であったのではないかと思います。

妻・香織が自分の在日というルーツから目を背けて生きていこうとする偽りの愛。

美鈴がヘイトスピーチに参加して、彼のルーツに寄り添って痛みを分かち合いながら生きようとする真実の愛。

 

しかし、ここに真実の愛=美鈴を選べば社会的な倫理を踏み外してしまい、偽りの愛=香織の愛を選べば倫理的には正しいが偽りの愛を生き続けてしまうという選択が突きつけられます。

頭が良くて、穏やかな性格を持つ城戸は香織に自分のルーツを受け入れながら生きていく強さはないと理解したのでしょう。

そして、香織との愛は可愛い一人息子である颯太に繋がっています。

結果的に香織との偽りの愛を選んだのは、颯太の存在と家庭の平穏を彼が選んだからなのではないか?

 

城戸が、香織が不倫しているLINEをたまたま読んでしまうが、見なかったふりをして家族の時間を過ごす場面。

少し前の香織の出張の場面も怪しかったですが、彼は以前から香織の不実に気付いていたのかもしれません。

それでも不問にしたのは。

香織が城戸のルーツ=暗部(少なくとも香織にとっては)を見ないようにしたように、城戸も香織の暗部を見ないようにして彼女を愛することを決めたのでしょう。

これは、ある種のバッドエンドとも言える後味の悪い結末かもしれませんが、それだけ愛するということは相手の虚実をどう向き合っていくのか、余人には理解し得ぬような深い感情的な「ほつれ」と「からまり」が存在するのだと思います。

このような愛する者の自分の知らない部分、偽りという要素は次作『別人』にも引き継がれたテーマであったのだと思います。

 

城戸自身は、この欺瞞のような愛を、家庭を維持し続けることに何の葛藤もなかったのでしょうか?

その答えは冒頭の文章にあると思います。

彼は、常習的に自分の名前と身分を偽りバーで他者と交流するようになっていた・・・。

宮崎のバーで「谷口大祐」の人生を騙っていたように。

 

偽りによって生じた歪みは彼をどこに導いていくのでしょうか?

 

 

5、終わりに

里枝と原誠、城戸と香織の2つの偽りの愛の物語。

本質的に偽りだったのは、どちらの愛だったのでしょうか・・・。

真の愛とは?

そもそも果たしてそのような愛が存在するのでしょうか?

 

再読して、この作品が様々な問題提起をしているように感じました。

そして、平野啓一郎が物語を通して人間の愛や生き方に対して何かを問おうとしているようにも・・・。

おそらく彼の中でも答えが出ていないような疑問を物語として世の中に問いかけているのではないかと感じています。

 

この物語の書評を書くのに少し時間がかかりましたが、その間に僕の日常生活の中に『ある男』の物語が染み出していき、僕の物語と人生観と思考と深く結びついて熟成していくような感覚を覚えました。

小説に限りませんが、優れた芸術かそうでないかの判断の一つはそういった化学反応を起こせるかどうかだと思っています。

もちろんあくまで主観ではありますが。

 

この物語は、僕の中の古くて温かい記憶と結びついて、いくつかの問題に対して考え続けることを求めました。

それは40歳を過ぎたくたびれたオッサンにとっていささかしんどい作業でもありましたが、同時に無上の喜びを伴った時間でもありました。

こうやって自分の考察を発表できる場があって、ともすれば誰かのリアクション頂けたりするのは幸せです。

憂鬱な希望だったとしても、インターネットはある種の光で、文学、音楽、映画、絵画が自分の精神にとってどれだけ大きな悦びをもたらしてくれているか・・・。

そんなことを改めて実感しました。

 

*9/20追記

映画『ある男』の公開日や、キャストも決まって楽しみですね!!

僕も観に行きます!!

城戸章良(妻夫木聡)、谷口大祐(窪田正孝)、谷口里枝(安藤サクラ)他、キャスティングもいい感じですなぁ♪

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【映画】『鬼滅の刃 無限列車編』~心を燃やせ!!今更ですが観ました!!~

☆鬼滅の映画をようやくDVDで観ました!!☆

 

いや、めっちゃ良かったっす!!

映画館で観られたらボロ泣きだっただろな~。

職場の規定で、映画館に行くことは禁じられているので映画館では観られなかった鬼滅の刃 無限列車編ですが、待ちに待ったDVD発売でようやく観られました。

今回はTSUTAYAなどでのレンタル開始前にDVDだけ発売みたいですね。

 

妻と子供は通常版と4DX版で2回も観ていましたが、僕は初見でした。

ちなみに妻はそれまで鬼滅の刃に興味なかったて原作も読んでませんでしたが、この映画でハマって一時期ウチのTVは鬼滅ばかり再生されていました(^^;;

鬼滅のブルーレイも妻が買いました(笑)

どんだけハマってんねん(๑≧౪≦)

f:id:hiro0706chang:20210627195337j:image

 

 

☆どうせ原作を読んでいるし・・・、とか思ってたら☆

 

原作のエピソードを映画化したものですが、とにかく演出や絵の綺麗さ、迫力あるアクションシーンなどが素晴らしくて、ストーリーを知っていても十二分に楽しめて尚且つ原作では読み流していた部分に感動したり、さらに強くひき込まれたりしました。

 

技を出す時の迫力とかも凄かったですね!!

コレ、僕が小学生の時に観てたら剣道部に入るとかいいだすやつですね(๑≧౪≦)

男子の血が騒ぎます。

 

迫力あるバトルシーンの他にも、夢の世界での炭次郎の葛藤と哀しみ、透き通った心象風景の美しさなど心を動かされる場面が多かったですね。

炭次郎の優しさ、心の綺麗さがまるでウユニ塩湖のような心象風景で再認識されましたね。

 

 

 

☆煉獄さんの生き様と死に様☆

 

猗窩座と煉獄さんのバトルシーンは映画のクライマックスに相応しい異次元のド迫力でした!!

技がハデすぎ!!かっこよすぎ!!

 

徐々に劣勢になっていく煉獄さんですが、ボロボロになりながらも戦う姿には感動しました。。

やっぱり、人間は死に様に生き様が現れるというか・・・。

最後に炭次郎達に想いを託すシーンは感動しきりでした。

 

心を燃やせ!!

 

そして、炭次郎はそんな煉獄さんの想いを背負って、戦っていくのだなと思うと胸が熱くなりました!!


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TV版での続編『遊郭編』も楽しみっす!!

派手に行くぜ(^O^)


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☆呪術廻戦0、進撃の巨人ファイナルシーズン、チェンソーマン☆

 

鬼滅以外にも、冬に公開になる呪術廻戦の映画が超楽しみです!!

予想されていた通り、乙骨が主人公の0巻のエピソードが映画化。

原作でも、乙骨が登場してタイミング的にも激アツですね。


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元々ジブリとか、細田守監督、新海誠監督のアニメは好きだったんですが、40歳過ぎてジャンプアニメとかにハマるとは思いませんでしたね(笑)

まぁ、昔と比べて漫画の内容は王道より、ダークなものが多くなってきて大人も楽しめるものが増えてきているとは思いますが・・・。

細田守監督の最新作、『竜とそばかすの姫』も楽しみですね!!


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鬼滅も呪術も僕が漫画を買いだして、子供にすすめて一緒にアニメを観るみたいな流れでした。

僕が子供の頃から考えると自分の親がドラゴンボールやらスラムダンクやら買ってきて、「フリーザめっちゃ強いな!?」とか、「流川超うめぇ!!」とか言ってるとか考えられないっすね(笑)

漫画なんか読まずに勉強しろとか言われるのが普通だったしな~。

 

こう考えると、親子関係も漫画とかアニメとともに変化しているのかもしれないですね。

良くも悪くも「友達のような親子関係」が作りやすくなっている気がします。

 

呪術の映画の他にも、チェンソーマンのアニメ化、進撃の巨人ファイナルシーズンの放映も楽しみです!!

作ってる制作会社が全部MAPPAってのもすごいなぁ。。

 


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【回想録】真夜中に天井から滝のように水が落ちてきて、僕はただ逃げ出したんだ・・・。

☆「持っている男ヒロ」今夜も降臨だyo☆

どどどどーもー!!

持っている男a.k.a.ヒロ、今夜も華麗に登場です!!

ええ、酔ってます!!

もちろん酔ってます!!

 

これまでも数々の「持ってるエピソード」を公開してきましたが、持っていると言っても有り得ない珍現象に出くわして、身体を張ってお笑いのネタを提供するという全然うれしくない何かを持っています。

笑いと言っても、嘲笑や冷笑の類がほとんどかもしれませんが・・・。

それでも僕は進み続けます。

無駄なミラクルを起こして皆様に笑いを提供できるように・・・。

時々、涙で前が見えなくても・・・。

 

 

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同じ持ってるなら、サッカーのワールドカップでロスタイムに決勝ゴール決めたりとか、原宿を歩いていたらバレンシアガの人にスカウトされてうっかりモデルデビューしちゃうとか、オンラインゲームで仲良くなった女性が実はゴマキでそのまま結婚したりとか。

そういうのくださいよ!!

神様!!

 

 

 

☆どうしようもない僕に降りてきた天使☆

大学4年生の時に彼女ができました。

今、「えっ、彼女できんの遅すぎやねwww」「どんだけモテないんだよwww」「ゼッテー、ブサイクだろwww草生えるʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ」とか、思った奴は、全員廊下に立ってなさい!!

先生も、モテなくてモテなくてモテなくて、辛かったんだよぉぉぉぉぉ(>_<)

 

いや、まぁそこそこ楽しくはやってましたが。

それ以前もお付き合いしたことはありましたが、僕がヘタレすぎて自然消滅したりとか。。

高倉健もビックリするぐらい不器用な漢でした。

 

そんな彼女との初めての旅行♡

まぁ、お金はそんなに持ってない時期だったので(いや、今もやんけ?)どっかの山奥のペンションを予約して、旅行デートでした。

超ぉぉっぉぉぉ、楽しみなやつやん!!!!!!!!!!!!!!

青春SOヤング!!


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そんな、旅行おデートの前夜♪

ワクワクしながら早めに眠りに落ちたヒロ氏。

しかし・・・。

悪夢が。

現実世界での悪夢が彼を襲うのであった・・・。

 

 

 

☆こんな夜更けにドリフかよっ☆

幸せな眠りに落ちたヒロ氏。

しかし、その安寧は唐突に破られます。

「ばばばばばっばばばっばばばばっばばっばばばばっばばば」

夜中の3~4時頃だったでしょうか?

突然の爆音で僕は叩き起されました。

そして、眼前に繰り広げられる世界の終わりのような光景を目にしました。

 

当時、住んでいたワンルームの鉄筋のマンション。

そのマンションの天井から、水が滝のように落ちてきている。

ちょろちょろとかそういう次元ではなく・・・。

破裂音を交えながら、天井から、水が、降ってきていました。

 

その瞬間僕は眠りから覚め切っていない脳みそで「ああ、きっと世界は終わったんだ。ノアの方舟クラスの洪水が世界を襲っているのだ」と思いました。

しかし、現実には世界は終わらずに、僕の部屋だけに災厄がもたらされていました。

WHY??????????????????????????????????????????

 

破裂音が響いて、ひとつだけだった水柱が2つ3つとドンドン増えてきました。

僕は、完全な錯乱状態で天井から降り注ぐ水の柱をただ呆然と眺めていました。

眠りに落ちるまでの幸せな気持ち。

彼女との旅行を心待ちにするウキウキ感は吹っ飛んで、B級サスペンス映画の世界に入り込んでいました。

 

部屋の天井が裂けて勢いよく水が降り注ぐ光景は、昔見たドリフのコントを思い起こしました。

「こんな夜更けにドリフかよっ!!」って、今ならツッコミ入れるとこですね。

 

こういった極限状態、危機的状況においてこそ真の人間力が問われます。

僕は、買ったばかりのノートPCを押し入れに隠して、一目散に逃げ出しました。

 

 

「えっ?」

 

 

書きながら、当時の僕のヘタレ具合に辟易します。

いや、管理会社に電話しろやぁぁぁぁぁ!!

なんで逃げるねん(泣)

なんなら上の部屋に怒鳴り込めやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!

(その当時上の住民は不在だったようですが)

 

そんなわけで、「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!!」って言いながら、ノアの方舟状態だったマンションから、うっかり逃げ出したんだよミサトさん!!

初めてのルーブルはなんてことなかったですよ!!

エヴァネタw

 

それからビショビショで震えながら、近所のTさんに電話をかけて泊めてもらいました。

夜中4時に電話で叩き起したのに笑顔で迎えてくれたTさん(>_<)

神対応っす!!

あざす!!

 

 

☆洪水の部屋を放置して、旅行に出発☆

翌朝、洪水の部屋から濡れてない服をピックアップして準備完了。

何の準備かですって?

そりゃ、旅行の準備でしょ!!

行くでしょ彼女との初旅行!!

誰も俺を止められないゼ!!

片付けるのがめんどくさかった

 

急いでいたので、何故かサッカーブラジル代表のユニフォームを着て出かけてしまいました。

カフーとか好きだったんすよ。

彼女との初旅行にブラジル代表のシャツで挑むヒロ氏。

 

 

真っ黄色やで!!

 

 

眠そうな目をこすりながら、真っ黄色なブラジル代表のシャツで現れて僕を彼女はどう思ったのでしょうか?

旅行はとても素晴らしく、ペンションでの食事も良くて、僕も彼女も大満足でした。

ただ、帰る時間が近づくにつれて水浸しの家に帰るのが億劫になってきていました。

 

テンションが下がっている僕に「私も泊まって手伝うから・・・」と、部屋のお片付けを手伝ってくれました(>_<)

神!!

今は、どこにいるかも知らないけれど、彼女の幸せを全力で祈ります。

 

 

☆もしも僕の部屋がバナナワニ園だったのならば☆

季節は夏。

丸一日締切状態で放水されまくった部屋はフィリピンもビックリなバナナワニ園でした。

亜熱帯かよ!!

湿度130%ぐらいあったね。

 

僕は1匹のワニのように部屋を拭き続けました。

ってか、彼女がテキパキやってくれました(^^;;

 

水が出た原因は上の部屋の住民の洗濯機の水漏れだったようで、洗濯機を回したまま出かけていたとのことでした(>_<)

そんなことあるんです~、怖いなぁ。。

皆さんも、もしマンションの上の階から水が出たら、すぐに管理会社に電話してね!!

絶対に逃げちゃダメたよ!!

ヒロやんとの約束だよ!!

 

 

 

 

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【本】川上未映子『夏物語』~生まれてくることのとりかえしのつかなさについて~

1、作品の概要

 2019年に刊行された長編小説。

自身の中編『乳と卵』のリメイクと、その後を描いた。

第73回毎日出版文化賞 文学・芸術部門受賞作。

2020年本屋大賞ノミネート。

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2、あらすじ

第一部

東京で暮らす夏子のもとに、姉の巻子とその娘の緑子がやって来た。

目的は、巻子の豊胸手術

巻子と思春期の緑子はその手術のこともあり、関係がギクシャクしていた・・・。

豊胸と生理。

2人の性についての想いと、愛情が交錯する。

 

第二部

8年後、アルバイトをしていた夏子は小説を出版して、文章を書いて生活することができるようになっていた。

編集者の仙川のはからいで売れっ子小説家・遊佐と出会い、自分の子供をAID(非配偶者間人工授精)にて出産したい とも想いが募っていく。

配偶者も恋人もおらず、セックスに対して強い拒絶感がある夏子。

AIDの当事者である逢沢、善との交流でAIDのデメリット・産まれてくる子供が幸せなのかどうかについてを激しく煩悶しながらも、自らの子供に会いたいという気持ちが強まっていく。

 

夏子が生命を産みだしたいという願いはエゴなのか?

生命とは?

 

 

3、この作品に対する思い入れ

好きな作家の1人である川上未映子さんの最新の長編小説。

ツィッターでも読了ツイートをよく見かけていて、ずっと読みたいと思っていました。

買おうか悩んでいましたが、図書館で見つけて即GET♪

 

『乳と卵』をベースに性と生について深く切り込んだ名作でした。

平野啓一郎『本心』の読後にこの物語を読んで、偶然とは言え強いシンクロニシティを感じました。


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4、感想・書評

①生々しい性、男性目線からの呪いとしての女性の性 

『乳と卵』『夏物語』の第一部を読んでいて、どれだけ女性の「性」が男性目線の呪いによって歪められているのかを強く実感。

僕は、別にフェミニストじゃないし、まぁ普通にエロいオッサンなんですが「豊胸」「生理」などの女性自身による「性」の話にとても生々しさを感じました。

でも、これって今まで女性の「性」を男性的な目線での都合のよい解釈でしか見ていなかったのだなと思いました。

 

思えば、ここ100年ぐらいの日本は男尊女卑の社会で「女性は男性の3歩後ろを~」とか言われて、貞淑という言葉があったり、とにかく夫が一日の家長で強い権力を持ってました。

お金さえあれば、明治、大正頃の男性は今で言う不倫もし放題だったみたいですね。

僕は介護の仕事をしていますが、社長夫人だった大正生まれの女性に「そりゃあなた浮気は10本20本の指ではきかないわよ!!」というお話も聞かされました。

 

当時は、一盗二卑三妾四妓五妻(いっとうにひさんしょうしぎごさい)ということばもありまして・・・。

男性女性との性行為興奮する順番を表したもの。盗は人妻他人彼女、婢は下女家政婦使用人、妓は遊女娼婦売春婦、妾は愛人、妻は正妻を表し、不道徳度合いの高いほど興奮すること示す。

などどいう、だいぶクズい意味であります(^^;;

まぁ、時代もあるかとは思いますが男性の「性」がどれだけ横暴なもので、女性の「性」が男性目線・社会を意識したものであったのかを表していると思います。

 

しかし、近年社会のあり方や結婚、性の考え方に大きな変化があらわれて男性中心から変化が現れてきているのだと思います。

結婚とセックスと出産が幕の内弁当のようにセットになっていた時代が過去のものになろうとしているのではないでしょうか?

 

男女が等しく(というか女性の方が稼いでいることも多くなってきて)仕事をして収入を得ることも多くなってきて、男性が外で仕事をして、女性が家を守って家事と育児をするみたいな構図が崩れつつあります。

家族構成が核家族化していて、昔のように育児・家事を親や親戚に分担することも難しくなってきていて、女性にかかる家事・育児の負担が増えてきていると思います。

そのことが、離婚率の急増に繋がっていると思いますし、女性にとって結婚して出産するといったこれまで当たり前にされていた、いわゆる「女性の幸せ」とされていたことがその価値観自体がぐらつき始めているのかもしれません。

 

 

②生き方の違い。想いが交錯する。

現代の日本社会において、結婚・出産に関しての価値観が揺らぎ始めて転換点を迎えているのかしれません。

従来のような、結婚して、家庭に入って、夫と子供の世話をするといったような、画一化された「女性にとっての幸せ」も変化しているように思います。

 『夏物語』は女性たちの物語ですが、その考え方・生き方はそれぞれに違っていて、夏子はある時には誰かの生き方に共鳴したり、またある時には他の誰かから自分の考え方を否定されたりと揺れ動きながら自分の答えを出そうともがき続けます。

 

編集者の仙川は、結婚をせずにアラフィフになっても一人暮らしで、仕事に情熱を傾けています。

仙川は、AIDによる出産を思いつく夏子に「なぜ自分の作品を生み出すことに集中しないのか?」と厳しい言葉を投げかけます。

もしかしたら、夏子に対して恋愛感情もあったのではないかとも思わせるような描写もあります。

誰よりも夏子の才能をかっていたし、彼女が自分の理解できない生き方を選んでしまうことに対して、寂しく置いていかれるような気持ちもあったのではないでしょうか?

仙川が夏子に寄せる思慕には、作家と編集者を超えたものがあり、ある種のシンパシーを含んでいたように思います。

 

売れっ子作家の遊佐はシングルマザーで、母親に手伝ってもらいながら娘の「くら」と暮らしています。

夏子にとって、大切な友人であり自分と近しい考えを持った存在です。

自分の一歩先を進んでいるような、ある意味でメンターのような存在でもあったのかもしれません。

「子供をつくるのに男の性欲にかかわる必要なんかない」

遊佐は断言した

「もちろん女の性欲も必要ない。抱きあう必要もない。必要なのはわたしらの意志だけ。女の意志だけだ。女が赤ん坊を、子どもを抱きしめたいと思うかどうか、どんなことがあっても一緒に生きていたいと覚悟を決められるか、それだけだ。いい時代になった」

遊佐に背中を押されて夏子はAIDへの関心を強めていきます。

 

善百合子は、夏子の「自分の子供と会ってみたい」という 仄かな希望に対して、真っ向からNOを突きつけます。

善百合子自身、AIDで産み落とされ、しかも父親とその他大勢の男達に幼いころから繰り返しレイプされて、自分が生きることに対しても「生まれてきたことを肯定したら、わたしはもう一日も、生きてはいけないから」と、否定的です。

生命を誕生させることは無謀な賭けで、無責任に産み落とされることでそのこどもは何かを背負わされる。

生命の誕生を暴力的なエゴに満ちた行為と感じている彼女の考え方は、夏子の子どもを産みたいという気持ちを揺さぶります。

「愛とか、意味とか、人は自分が信じたいことを信じるためなら、他人の痛みや苦しみなんていくらでもないことにできる」

善百合子から投げかけられたナイフのような、でも彼女自身の痛みを帯びた言葉。

夏子は様々な出来事を経て、その問いかけへの自分なりの答えにたどり着きます。

善百合子に出会って、その心に触れたからこそ、夏子は自らの考えと想いを深めることができたのだと思います。

 

 元々、自我が強いタイプではなくて確固たる自分の考えがあるようにはみえない夏子ですが、様々な出会いと関わりのなかで自分が求めているもの、進むべき道を感じるようになります。

 

③産まれることは不幸なのか?私があなたに会いたいと願うのはエゴなのでしょうか?

とくべつな誰かに会うために、どうしてひとりではだめなのか。
そもそもなぜ、わたしたちは知りもしない誰かに会いたいと思うのか。
生むこと、生まれてくるとはどういうことなのか。

わたしたちにとって最も身近な、とりかえしのつかないものは「死」であると思うのですが、生まれてくることのとりかえしのつかなさについても考えてみたいと思っていました。そして書き終わったいまでも、その思いはさらに深まり、わたしをノックしつづけています。

 

川上未映子さんのインタビュー記事ですが、「生まれてくることのとりかえしのつかなさ」という考え方にはハッとさせられました。

押し付けがましいサプライズみたいに仰々しく祝われて祝福されている「生」「誕生」ですが、その全てが幸せではなくて、劣悪な環境に産み落とされることもあるし、五体満足で生まれてくるかどうかもわからないし、知的に精神的に生まれながら障害を持っているかもしれない。

 

僕の長男は先天性の心疾患を持っていて、それはとても重度の障害なんですが、幸運にも現在ほとんど通常と変わりない生活をできています。

ただ、「根治」はしていても、「完治」はしていない状況で、治せるとこまで治したけど完全に通常通りの身体には一生戻ることはなくて(少なくなくとも現在の医学では)不安は拭えません。

そして同じ障害の子供達が亡くなったりしていますし、長男も将来的に飲み続けている薬の後遺症が出るかもしれない。

もし長男が自分の境遇に不幸を感じているのなら、僕たち夫婦は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのでしょうか?

 

もちろん、僕はそう思いませんし、身勝手に生まれてくる子供も生まれたくて生まれてきたと思い込んでます。

それは、障害があってもなくても、劣悪な環境で生まれて不幸にも短い命だったとしても、生まれてきたことを後悔したとしても、あるいは不幸にも生まれることができなかった命だったとしても。

その命自体が輪廻の円環の中での学びを求めて、また周囲の人々にたちに自分の命を通しての気づきを与えることで、大事な役割を果たしているのだと思います。

 

仏教的な輪廻転生の考え方は好きですし、そういった意味で取り返しのつかない命を生み出すことはかけがえのないことなのだと思います。

まぁ、綺麗ごとかもしれませんが(^^;;

「わたしがしようとしていることは、とりかしのつかないことなのかもしれません。どうなるのかもわかりません。こんなのは最初から、ぜんぶ間違っていることなのかもしれません。でも、わたしは」

自分の声がかすかに震えているのがわかった。わたしは小さく息をして、善百合子を見た。

「忘れるよりも、間違うことを選ぼうと思います」

魂と心の命ずるままに。

衝動を忘れるより、自らの欲求に従って間違いだったかもしれない未来を選択する・・・。

そうやって生まれてきた命に対して抱く感情を、きっと私たちは愛と呼ぶのだと思います。

その赤ん坊は、わたしが初めて出会う人だった。思い出の中にも想像の中にもどこにもいない、誰にも似ていない。それは、わたしが初めて会う人だった。赤ん坊は全身に声を響かせ、大きな声で泣いていた。どこにいたの、ここにきたのと声にならない声で呼びかけながら、わたしは胸のうえでなきつづけている赤ん坊をみつみていた。

 

5、終わりに

川上未映子さんの作品は、ご本人のスタイリッシュなイメージに反して、とてつもなく泥臭いです。

でも、生きづらさを抱えながら必死に前を向いて進もうとする主人公の姿がいつも胸を打ちます。

 泥濘の中をのたうちまわりながらも、自分の人生の中で核となる何かを掴む。

いつも、そんな物語を描かれているように思います。

 

僕も、決してスマートで平坦な道を歩んできた人生ではなくて。

でも、それなりに地を這い、泥を舐めながらも、この腕につかんできたと感じているモノがあって。

それは蜃気楼みたいに消えていくような不確かな真理なのかもしれないのだけれど、自分が導き出した答えに縋っていきたい。

そう思います。

 

 

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