ヒロの本棚

本、映画、音楽、写真などについて書きます!!

【映画】『パラサイト 半地下の家族』~明るい光の中でまるで白昼夢のように現実は侵食されて、地下から噴出するように湧き上がってきた悪意に蹂躙されていく~

1、作品の概要

 

2019年に公開された韓国映画

監督は、ポン・ジュノで主演はソン・ガンホ

公開当時から世界中で話題を呼び、第72回のカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。

 

第92回アカデミー賞でも作品賞を含む6部門で受賞。

非英語作品の受賞は史上初となり、話題になった。

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2、あらすじ

 

半地下の薄汚れたアパートに住む貧乏なキム一家。

父(ギテク)、母(チュンスク)、息子(ギウ)、娘(ギジョン)の4人家族だが全員仕事をしておらず、内職で細々と食いつないでいた。

友人のツテで大金持ちのパク家の娘(ダヘ)の家庭教師を始めたギウは、母親のヨンギョに信頼されていく。

ダヘの弟ダソンの美術の家庭教師にギジョン、運転手にギテク、家政婦にチュンスクをそれぞれ推薦しお互い家族であることを隠しながら、謀略を巡らせて前任者を追い出しパク一家に寄生することに成功する。

 

ダソンの誕生日にパク一家がキャンプに出かけたのをいいことに、家に上がり込み宴を繰り広げるキム一家。

しかし、深夜の大雨の中訪れた元家政婦のムングァンが一家の浮かれ気分に冷水を浴びせる。

パク家の豪邸の地下には秘密があり、もう一人の寄生者の存在が明らかになる。

前半のお気軽なコメディタッチの内容から一転、ラストのカタストロフィに向かって血なまぐさく凄惨な展開に物語は暗転していく。

 


貧しい一家の“計画”とは…!?『パラサイト 半地下の家族』90秒予告

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

以前からブログやツィッターで話題になっていて、アカデミー賞を非英語圏から歴史上初めて受賞したことでさらに注目されるようになったこの作品。

僕も、以前から観に行きたいなと思いつつ、コロナの影響もありまだ観ることができていませんでした。

待ちに待ったDVDのレンタルが7/3から開始ということだったんで、ソッコー借りてきてみました!!

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: Prime Video
 

 

4、感想(ちょびっとネタバレ?)

 

貧困問題を取り扱った作品だと聞いていましたが、豪邸に住んで優雅に暮らすパク一家と、半地下で貧しい生活をしていて一家4人とも無職のキム一家の対比が鮮明でした。

しかし、貧しいながらもどこかコミカルでチームワーク抜群のキム一家。

 

普通、父親が無職だったらかなり揶揄されるような気がするのですが、一家に大事にされて息子からもリスペクトされているように思います。

日本だったら、絶対離婚されていますよね(笑)

儒教の国、韓国特有の家族愛なのか?

それとも、キム一家が仲良しなのか?

よくわかりませんが、貧しいながらもどこか呑気で笑ってしまうような場面も多いです。

 

ギウが家庭教師としてパク家に雇われてから、次々とキム一家が偽名でパク家に潜り込む様はコミカルで、笑えてきます。

パク家婦人のヨンギョがまた騙されやすい性格で、キム一家にまんまと騙されて運転手、お手伝いさんも追い出してしまいます。

まぁ、キム一家の悪知恵が働くこと(笑)

 

 そしてパク一家がキャンプに出かけたのをいいことに家に家族で集まり宴会を開くキム一家(笑)

まさに寄生虫ですね。

そんなお気楽な雰囲気も、夜中に不吉に響いたインターフォンによって崩壊します。

 

半地下の秘密が暴かれて、もうひと組のパラサイトの存在が明らかになります。

そして血なまぐさい悲劇が・・・。

この暗転の具合が非常にドラスティックで印象的でした。

 

転がるようにパク家から逃げ出すギテク、ギウ、ギジョン。

大雨の中ずぶ濡れになりながら半地下の家に逃げ帰るシーンはとても惨めで、楽しく貧困と向かい合ってたはずの一家の運命は坂道を転げるように悲劇へと向かっていきます。

大雨によって彼らの半地下の住居は悲惨な状況になっていました。

 

一部の富裕層の華麗な生活をパク一家を通して知ってしまったキム一家。

そのことにより、自分たちの惨めさをこの上なく知らしめされてしまったのではないでしょうか?

パク一家を知る前のキム一家は自分達の貧困も楽しんで乗り越えられていましたが、パク一家に入り込むことで様々な場面で自分達の惨めさを痛感させられる場面が増えていったのではないでしょうか?

善良で悪気のないパク一家の振る舞いだったからこそ、余計に惨めさは募ったのでしょう。

 

パク家の地下の秘密、キム一家の半地下の住居に漂っている大きな劣等感とフラストレーションは見えない形で蓄積されラストシーンの凶行へと繋がっていきます。

明るい光の中でまるで白昼夢のように現実は侵食されて、地下から噴出するように湧き上がってきた悪意に蹂躙されていきます。

それまで暗いトーンの映像が多かったのですが、この場面は明るく光が多い映像で好きです。

真っ白いシーツにどす黒いペンキをブチまけるようなカタストロフィ。

 

ギテクが走り去る場面のカメラワークもとても印象的でした。

ギジョンに宿ったのは未来への希望なのか、それとも狂気じみた妄執なのでしょうか?

「あの家」に向けられる執着が、また新たな悲劇の引き金になるような・・・。

そんな不吉さを感じさせるようなラストでした。

 

 

 

5、終わりに

 

階段を昇り降りするシーンなど、どことなく演劇的で、喜劇的な要素を持っている作品だと思いました。

しかし、確実にラストのカタストロフィに向けて狂気と憎悪の種が蒔かれていて、どす黒い何かが噴出していく様が感じられました。

 

太宰治人間失格』で、何かの事柄についてトラジェディー(悲劇)か、コメディ(喜劇)かをゲームのように言い合う場面がありましたが、この作品はどちらだったのでしょうか?

何か生々しく、暴力的なエネルギーと怒りのようなものを感じた作品でした。

 

 

 

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【雑記】ブロガーバトンやってみた!!眠れる獅子が、今目を覚ます!?

☆久々更新!!&赤兎馬さんバトンあざーっす☆

 

めっちゃ久々の更新になりました。。

一回、ブログ書く習慣が途絶えると、イカンですね(^-^;

半年ぐらいは毎日更新していたのですがー。。

 

ブログの閲覧などもあまりできていなかったので、忘れられた存在になってそうですね(笑)

しかし、そんなサボりの僕にバトンを回してくれたのが同期の星・赤兎馬さんでした!!

忘れないでくれて、ありがとう!!

 

https://sekitoba1007.hatenablog.com/entry/2020/07/10/193000

 

赤兎馬さんは、ブログの開始以来ずっと毎日更新していてアクセス数もメキメキ伸ばしていてマジでリスペクトっすね!!

 

 

 

☆ブロガーバトンとは!?☆

 

さてさて、ブロガーバトンとは何ぞや?

最近、SNSで流行りの○○バトンのブログ版で、テンプレートの画像があってそれに自己紹介を書き込み、他の人に指名して回していくものです。

そのテンプレがコチラ↓

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ブロガーバトンのやり方は、画像を保存して書き込んで、「一番古い記事」と「お気に入りの記事」を貼るだけ!!

僕は、ペイントを使って加工してみました。

 

んで、次にまわしたい人にIDコールします♪

今回はアンカーとさせてもらいます。

誰かやってみたい方いたらやってみて下さい(^O^)

 

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☆これがマイバトン!!☆

 

いや、大した内容じゃないんですがこんな感じです!!

記事数、いつのまにか163まで増えてたんですね~。

すげー、よくこんなに書いたなぁ。

アイコンがうまく載せられませんでした。。

IT音痴はイカンですね(^-^;

 

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○一番古い記事

 

ブログデビューは昨年の11月7日。

最初の記事は、小説家・中村文則の紹介でした。

好きな作家の中村文則村上春樹の作品(長編と短編)は全作品書評を書きたいと思っています。

まだ、先は長いですが(笑)

 

記事の内容は、めっちゃ稚拙ですね(^-^;

初期の記事は、そのうちリライトもしてみたいですねー。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

 

○お気に入りの記事

 

雑記でウケが良かったのはコチラ。

血まみれのクリスマスを描いた雑記です(笑)

何故か検索流入もありました。

 

最近あまり面白い雑記が書けてないので、またなんか書いてみたいっすね~。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

書評では、中村文則『逃亡者』の書評がよく書けたと思っています。

なんたら砲が炸裂して、1日だけアクセスが急増しました。

三日天下ならぬ一日天下。。

当然、麒麟は来ませんでした。。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

映画ではコチラの記事がよく書けている気がします。

岩井俊二監督の作品、めっちゃ好きですね~。

映像美と喪失感がたまりません。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

以上です!!

自分が書いた記事を振り返ってみるのも、たまには良いもんですね~。

これを機に週2回ペースぐらいで更新できるように頑張ってみます!!

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【本】村上春樹『回転木馬のデッドヒート』~人生のエアポケットに現れる奇妙な物語の断片たち~

1、作品の概要

 

1985年10月に刊行された村上春樹の全9編からなる短編集。

講談社の文芸PR誌『IN☆POCKET』で隔月で連載された作品と、2編の書き下ろしを加えてた。

 

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2、あらすじ

 

①はじめに・回転木馬のデッド・ヒート

この短編集の前口上的序文。

今作の短編たちは、事実に即した文章であり、それらを小説の容れ物を用いたスケッチである。

ある種の無力感のように春樹の心中にたまっていったおりたち。

回転木馬のデッドヒートのようにどこにも行けない。

 

②レーダーボーゼン

妻の友人とひょんことから2人きりになった筆者は、彼女から父親と母親が離婚したきっかけについて語られる。

とても唐突な離婚で、母は彼女にも理由を言わずに別れて彼女のことも捨てた。

その理由はドイツの半ズボン「レーダーボーゼン」だった。

 

③タクシーに乗った男

 画廊のオーナーである彼女が今まで一番衝撃的だった絵は、チェコ人の凡庸な画家が描いた「タクシーに乗った男」という絵だった。

彼女はその絵の中の男に彼女自身の失った人生の一部を見出していた。

そして、数年後にギリシャアテネで、絵の男にそっくりの男に出会う・・。

 

④プールサイド 

70歳で人生を終わることを想定し、35歳を折り返し地点と定めた男。

彼は卓越した肉体と知性を持ち、社会的に成功して感じのいい奥さんと結婚し、年下の彼女がいた。

 

⑤今は亡き女王のための

 容姿と能力に恵まれて、幼い頃から周囲にスポイルされた女の子。

筆者は、彼女と行きがかりから一度だけ抱き合ったことがあった。

十数年後に彼女の夫だと名乗る男性から彼女の幸福とは言えない現在の話を聞く。

 

⑥嘔吐1979

親友の彼女や、妻と寝るのが好きな男がいた。

彼にある時より奇妙な電話がかかってくるようになり、その後に嘔吐してしまうようになる。

 

⑦雨やどり

筆者が雨宿りに入ったレストランバーで、以前インタビューを受けた女性にバッタリ出会う。

彼女は、ある時期に男性からお金をもらって寝ていたことがあるという。

彼女が言うには、男性が払うことができるギリギリの金額を当てることができるという。 

 

⑧野球場

 大学時代、好きな女の子を覗き見するために彼女のアパートの対岸のアパートに住み始めた男。

彼のアパートの前には野球場があった。

彼女の生活を覗き見し続ける日々、しかしその生活は終わりを告げる。

 

⑨ハンティング・ナイフ

筆者が妻と2人でバカンスに出かけた時の話。

同じコテージに車椅子の男性と、彼を介助している女性の親子と出会った。

筆者は眠れない夜に、車椅子の男性からハンティングナイフを見せられて、その切れ味を試すことになる。

 

回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫)

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

村上春樹の短編集は、どれもテーマがあるものが多く異色のものが多いが、その中でもこの作品は際立っているように思う。

ちょっと『レキシントンの幽霊』と似ているように思うが、実話を基にした短編集である。

 

 

4、感想・書評

 

①はじめに・回転木馬のデッド・ヒート

 村上春樹は、奇妙な出来事に出くわしたり、他人から奇妙な出来事を聞かせられたりすることが多いように思います。

そうやって、春樹自身の中に溜まっていったおりのようなものをマテリアルは事実で、ヴィーグルは小説で表現した「スケッチ」が今作の短編集のようです。

思えば、村上春樹の短編集は事実をそのまま小説にしたような作品も多いし、わりとコンセプティブにまとまられた作品群が多いですね。

 

②レーダーボーゼン

ほとんど、不条理と言って良いほどの意味わからなさで、しかもそのことによって語り手の母は娘と夫を突然理由もなく切り捨ててしまいます。

とても、理不尽な話ですが潜在的に積もり積もっていた憎しみがレーダーボーゼンを通して一気に湧き上がったのかもしれません。

 

③タクシーに乗った男

絵の中のタクシーに乗った男に自らの凡庸さ、失ったものを投影した画商の女。

絵の中の男と分かりあったような不思議な感覚を抱きます。

 

そして、数年後にギリシャで絵の中の男だと思われる人物にばったりと出会う。

人生には往々にして、こういったドラマティックで不可解な瞬間があると思います。

人智を超えた宇宙の法則。

 

人は何かを消し去ることはできないー消え去るのを、待つしかない。

 

④プールサイド 

ちょっと表現するのが難しい短編ですが、どことなく『風の歌を聴け』のような諦観のような乾いた感覚を感じます。

語り手の彼は人生の折り返し地点と自分で定義づけた35歳で、知性も体力もあって社会的に成功していて、感じのいい妻とガールフレンドもいる。

誰もが羨むような人生なのですが、折り返し地点に達した時にどことなく空虚な感じというか、人生の無常のようなものを感じます。

 

なにか大きな出来事がある物語ではないですが、底が見えない薄暗い谷底を不意に覗き込んでしまったような、ゾッとするような感覚があります。

人生の無常さを感じさせられるような作品だと思います。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

⑤今は亡き女王のための

村上春樹自身の体験ですが、その美しさと優秀さゆえに周りからスポイルされ続けた女の子の話です。 

なんとなく『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』のシロを彷彿とさせるような女性だと思いました。

時系列的には逆なんでしょうが。

 

そんな彼女と行きがかりからしっかりと抱き合うことになった春樹。

人生には時折、エアポケットみたいに空白ができ、不可解な出来事が起こります。

 

そして、彼女の夫という男性に偶然会い、彼女の幸せとは言えない近況を聞きます。

学生時代なんかは今あるヒエラルキーの中で一生が続いていくように思いますが、人生は不可解なもので能力に恵まれて輝いていた人間がどん底に落ちたり、パッとしなかった人間が急にスポットライトを浴びたり、色んなことが起きます。

 

彼女のようなタイプを逆境を経験したことがなく、跳ね返す力がなかったのでしょう。

 

⑥嘔吐1979

 一盗二卑三妾四妓五妻という言葉がありますが、他の男の女を寝取るのは至上の快楽なのでしょう。

下衆いですが。

 

村上春樹の短編にまれにある種類の話ですがとても奇妙な話ですし、なにかオチもなく怪異の理由もなく突然終わります。

この靄に包まれなような不可解さがたまらなく良いですね。

 

⑦雨やどり

 編集者をやめた後、ある時期にお金をもらって男と寝ていた女性の話ですが、特にお金が欲しかったわけどもなく何となくフワッとした感じでその行為を続けます。

その女性には男性が自分に対して使うことができるお金を当てる特殊技能があり、男性が払うお金は相手によって違っていました。

 

これもまた人生のエアポケットのような奇妙な時期だったのでしょう。

今は、真っ当に生きている人間でもどことなく混沌としていて空虚な時期があるのだと思います。

 

⑧野球場

好きな女の子の部屋を覗くために部屋を引っ越して、一日中望遠鏡で眺め続ける。

とんでもないストーカー行為ですが、今から30年以上前の話で牧歌的に語られている部分もありますが、れっきとした犯罪行為で、変質者ですね。

 

でも、彼はその行為に囚われ続けてやめることができない。

望遠鏡の向こうには決して綺麗なものだけではなくて、グロテスクとも言えるべきものも写りますが目を離すことができない。

ある種の行為は

 

⑨ハンティング・ナイフ

 村上春樹自身の体験でしょうが、リゾート地の不思議な親子。

母親と車椅子の息子。

金持ちの一族に生まれて、どこで過ごすかを支持されながら漂流するように生きています。

どことなく、『ハナレイベイ』を思い出しました。

 

深夜に彼がガーデンバーにいるのを見つけた春樹は彼と話をしながら、彼のハンティングナイフの話になります。

 ハンティングナイフは彼の精神の中に内包されている柔らかな部分。

隠された狂気を表現したように思いました。

 

 

 

5、終わりに

 

人生って、思いもしないタイミングで奇妙な出来事が起こって、良い方にも悪い方にも転がっていったりします。

「事実は小説より奇なり」と言いますが、ふいに人生のエアポケットのような瞬間に訪れる奇妙で印象深い出来事は、小説より奇妙なリアリティを持って僕たちの人生を侵食し、思ってもなかったような場所に連れて行くのかもしれません。

 

事実を基にしながら、小説の技法で表現したこの短編集もそういった奇妙な出来事=ある種の怪異譚のように感じました。

どこにも行けずに村上春樹のマインドの中に降り積もっていった、それぞれの人生の中でリアリティを伴ったスケッチたち。 

 物語となるには力が足りないけど、単なる事実にしては奇妙で印象的な話。

そんなマテリアルたちを切り取って小説の容れ物に入れたのが今作の短編集だったのでしょう。

 

どこにも行けないけれど、何かを訴えかけてきている物語の断片たちが、激しくデッドヒートを続ける。

そんな一風変わった、正確な意味では小説の短編集とも言えない奇譚集が『回転木馬のデッドヒート』だったのではないかと思います。

 

 

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【映画】ピンポン~この星の一等賞になる!!超絶躍動感!!ぶっ飛びの青春卓球映画!!~

1、作品の概要

 

卓球を題材にした青春コメディ映画。

原作が松本大洋の漫画。

 

2002年に監督・曽利文彦、脚本・宮藤官九郎、キャストが窪塚洋介ARATA井浦新)、中村獅童竹中直人など。 

卓球の試合シーンなどにCGが多用された。

 

主題歌がSUPER CAR『YUMEGIWA LAST BOY』で、その他挿入曲に石野卓球、DUBSQUAD、砂原良徳、BOOM BOOM SATELITESなどの曲が使われた。

 

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2、あらすじ

 

卓球でテッペンを取る夢を持っている片瀬高校1年のペコ(窪塚洋介)は、親友のスマイル(ARATA)と卓球に明け暮れる毎日。楽観的で、練習もサボりがちなのにビッグマウスのペコだったが、子供の頃からタムラ卓球場で磨いたウデは確かで、クールで無愛想なスマイルにとってもヒーローだった。

 

中国から来た孔、インハイ予選で子供の頃からの天敵・アクマに負けて、不貞腐れて卓球をやめてしまうペコ。

一方、アクマを倒し、孔をギリギリのところまで追い詰めるスマイルだったが、敵に情けをかけて負けてしまう。

 

やさぐれてゲーセン通いのペコは、暴力沙汰で退学したアクマに励まされてタムラ卓球場のオババ(夏木マリ)の特訓を受ける。スマイルもまた卓球部顧問の小泉(竹中直人)に叱責を受けて覚醒。インハイ王者・海王学園の風間も一目置くほどの実力を身につけていく。

 

そして、翌年のインハイ予選。

卓球にかけた暑い夏が再び始まる!!

 


ピンポン

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

いや、どえれー激アツで、アオハルで、コミカルで、窪塚洋介ARATA中村獅童の演技が光りまくっていて、音楽もどちゃくそノリノリのダンスミュージックで脚本はクドカンとかもう最高かよっ!!な映画どす!!

 

窪塚、GOでハマって以来大好きな俳優ですが、この頃はオーラでまくって全盛期ですね!!

エネルギーの放出量がハンパないですたい!!

自宅のベランダから「アイ・キャン・フライ!!」してから歯車狂いましたが、近年は『沈黙』でも茂吉役で難しい役どころを演じていましたし、頑張って欲しいっす!!

 

松本大洋の原作も話題で、『ピンポン』『鉄コン筋クリート』とか高い評価を受けてましたね!!

 

どちゃくそ好きな映画ですがな!!

 

 

4、感想

 

もー、なんつーかクドカンの脚本の疾走感とコメディータッチな感じ♪

主演の窪塚始め、一癖も二癖もある俳優陣のアツい演技!!

躍動感ある、CGでの卓球シーン!!

 

スーパーカー始め、日本を代表するロック/ダンスミュージックシーンの雄達がガチアゲの最高の楽曲を提供!!

いや、もう全編ノンストップのアオハル全開!!

とってもグルーヴィーな映画になっておりまする☆

 

映画館では観てないのですが、レンタル開始になって早速観てアツくなった映画です。

原作は未読なのですが、めっちゃいい映画だと思います。

 

なんか、もー。

細かく説明不要な。

疾走感と躍動感あふれる。

アオハル映画です!!

 


【YUMEGIWA LAST BOY】SUPER CAR

 

 

 

5、終わりに

 

長男が、中学校で卓球部に入ったので一緒に観ました!!

暗いイメージもある卓球ですが、ピンポンばりに激アツなアオハルを送って欲しい、ユメギワのラストボーイですよ!!

ちなみにワイも中学時代は卓球部!!

どちらかというと、『稲中卓球部』でした!!

卓球最高!!

イエア!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

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【漫画】藤田和日郎『うしおととら』~破魔の槍で妖怪を滅ぼす!!パートナーは伝説の極悪妖怪!?最強のバディ漫画~

 最近、ブログの更新サボりがちなヒロです(^-^;

まぁ、ボチボチ書いていきますよ~。

 

今回は、僕が中学生の時にめっちゃハマった漫画『うしおととら』の紹介です!!

 

中学生の主人公「潮(うしお)」がひょんなことから妖怪退治の槍「獣(ケモノ)の槍」を手にして、妖怪の「とら」と共に、自らの魂を削りながら悪い妖怪を退治する話です。

 

主人公のうしおは昭和感満載な正義感あふれる真っ直ぐな男子で、少年漫画の王道って感じでいいですね!!

ガサツだけど、めっちゃアツく友達想いのいいヤツ。

妖怪とも仲良くなれる懐の深さも持っています。

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パートナーの妖怪「とら」は獣の槍に封印されていた、伝説の極悪妖怪ですが、獣の槍には頭があがりません。

いつか食ってやろうと潮に取り憑いていたとらですが、うしおと一緒に妖怪と戦っているうちに徐々に人間の心を理解し、絆を深めていきます。

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2人は、最強の妖怪「白面の者」を倒すために、法力を持った光覇名宗の僧侶たち、東と西の妖怪達なども巻き込みながら旅を続け絆を作っていきます。

白面を守るように結界を張り続けているうしおの母親の謎、獣の槍の謎、とらと白面の因縁。

全ての謎が解けて白面と対峙するうしおととらは、日本の運命を双肩に背負い、白面を滅ぼすために戦いを挑みます。

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 単行本カバーのイラストも迫力あって良いですね!!

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白面との戦いの場面のワンシーンですが、すごく好きな絵です!!

俺たちは太陽と一緒に戦っている!!

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好き嫌い分かれるかもですが、迫力ある絵も僕は好きです!!

獣の槍にとらの雷を落とすシーン。

激アツ!!

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白面の者の強さはヤバすぎ。。

この顔も悪すぎですねぇ(^-^;

妖怪というか、ほぼ怪獣レベルですね。。

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お互い、悪態をつきながらもどこか楽しそうに共闘するうしおととら

仲悪そうで、いざという時は息の合った戦いをする2人。

日本の漫画の歴史上、最高のバディ漫画だと思います!!

2人で妖怪たちを蹴散らしていくシーンは爽快です!!

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 アニメ化も2回しています。 


うしおととら第1話フル

 

 

長男に読ませたらハマって、アニメも一緒に観ました~。

子供が観てもハマると思います!!

 

 

 

 

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【映画】羊と鋼の森~音楽と、イメージの森の奥深くへ~

1、作品の概要

 

宮下奈都原作で、2018年に公開された映画。

山崎賢人主演。

池松亮、上白石萌音上白石萌歌三浦友和出演。

ピアノを調律する調律師の物語。

エンディング・テーマ をが、久石譲作曲、辻井伸行演奏「The Dream of the Lambs」

 

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2、あらすじ

 

主人公の 外村は高校生の時に調律師の板鳥に出会い、調律師を目指すことを決意する。

ピアノを弾いたこともなく、音楽に興味があったわけではなかった外村だったが、専門学校を卒業し、板鳥がいる江藤楽器に就職することができた。

今まで、こだわりや、譲れないものなどを持ったことがない外村だったが、調律師の仕事を通して悩みながらも自分にとって大事なものを見つけていく。

先輩の柳、秋野にも影響を受けながら、真摯な姿勢で調律とは何かを考え努力し続ける外村。

ふたご姉妹和音、由仁のピアノにも影響を受けながら、自分が調律師として何を目指すべきなのかに気づいていく。

 


映画『羊と鋼の森』予告

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

宮下奈都の原作がものすごく好きで、映画も観たいと思ってました。

ピアノの調律の話ですが、森に喩えて観念的に音を極めていく物語がとても素敵でした。

 

映画の尺では小説のエピソードを全部網羅することはできませんし、外村の板鳥さんへの憧れとその偉大さ、秋野さんとのエピソードなど原作から拾いきれない部分は多かったかもしれません。

それでも、小説では直接的に表現できない音楽と森の視覚的イメージ。

光に溢れた描写など心に残る良い映画だったと思います。

 

↓小説版の書評です♪

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

4、感想・書評

 

①音のイメージ、光と森の映像

僕は元々、小説・漫画が原作の作品もある程度楽しめる方で、「原作のイメージと違う!!」ってあまり思わないほうです。

それは、小説・漫画と映画の表現のフォーマットが全く違うものでそれぞれの媒体が持つ長所が違うと思っているからだと思います。

まぁ、それでも酷い映画もありますが(^-^;

 

今回、『羊と鋼の森』を観ていて僕がどうしてそういう感じ方をするのかわかったりました。

それは、映画で埋めきれない心理描写などを自分の脳内で知らずうちに補完しながら観ているからで、原作を先に読むことで映画の魅力を更に楽しめているのだなと思いました。

 

そして、映画が単なる原作との「答え合わせ」に終わらないような独自の表現をしている部分に耳目を傾けることが多いです。

映画の強みは、映像と音だと思います。

羊と鋼の森』でも、森の美しい映像が外村の観念的な音への世界とリンクし、文章を超えたイメージの世界を描写しています。

原作の全てを表現できていませんが、映画でしか表現できない美しい映像を現出させています。

 

板鳥さんと、外村が初めて出会うシーンも印象的でとても素敵です。

誰もいない体育館。

響き渡るピアノの音と、森のイメージ。

影絵のように撮される森のイメージの演出がとても素敵でした!!

 

②調律師たち、ふたご達との関わり

外村の直接の上司であり師匠的存在の柳との関わりが映画では特にクローズアップされていて、いい感じです。

池松亮カッコイイですね~。

あんな先輩っていいよなって思います。

 

僕的には山崎賢人の演技も好感が持てました。

一見して、ああ外村だなって思えましたし、段々と自信を持って森を歩んでいく力強さも感じさせられました。

 

個人的に板鳥さんが、三浦友和がやっているのは?でしてが(^-^;

もっとシュッとしていてミステリアスなイメージがあったので。

まぁ、映画では板鳥さんは、何となく影が薄い感じでしたね。。

 

逆により強調されて物語の中心になっていたのが、ふたごとの関係。

上白石姉妹が演じた和音と悠仁

外村の物語に寄り添うように2人の姉妹の物語が奏でられます。

 

③音楽との森イメージ

演奏者の音に寄り添い、イメージを共有する調律師の仕事。

とても繊細で、答えの出ない仕事だと思います。

題名の森は、幾重もの意味を持っていて、時に晴れやかな森と、理解したと思って踏み込んだ森が霧に満ちて一寸先も見えなかったり・・・。

技術的な仕事でありながら、ピアニストの芸術的感性(たとえ素人であっても)を理解することを求められる難しい役柄を求められます。

 

音楽自体、答えも終わりもない旅で、演奏者は1人の表現者として終わりのない夜を彷徨い続けるものなのかもしれません。

そして、その終わりなき放浪に寄り添う光が調律師なのかもしれません。

 

それ故に、森は深く。

美意識と表現の混沌の奥深くに踏み入っていく作業は、深い森の中にわけ行っていくことに似ているのでしょう。

外村は、彼の祖母が言っていたように、森の深くに入っていっても、戻ってこられる稀有な人材。

すなわち、完成と芸術性と、普遍的で日常的な感覚を持ち合わせた存在だったのでしょう。

 

ラストシーンで和音が水の奥深くに潜り、水面の光に手を伸ばしましたが、僕はまた音楽に海の底をイメージしました。

子供の頃に海で素潜りしましたが、深く深く潜っていく感覚。

無音だけど、何かが鳴っている。

生命と色彩と時間が深い青の中で鳴り響いている。

それと似通った感覚を覚えました。

 

羊と鋼の森

羊と鋼の森

  • 発売日: 2018/11/05
  • メディア: Prime Video
 
羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

 

 

5、終わりに

 

原作と同じように、映画も素晴らしい作品だったかと思います。

橋本光二郎監督の映像も素晴らしかったです。

ピアノを調律する場面では光を多く使った美しく幻想的な映像が印象的でした。

 

また、北海道の美しい風景の使い方、森の映像の挿入の演出が僕としてはとても美しく思えました。

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【本】小川洋子『小箱』~死に彩られ囚われた生、傷んで壊れていく愛情~

 

1、作品の概要

 

2019年に刊行された小川洋子の最新の長編小説。

書き下ろし。

 

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2、あらすじ

 

「私」は元幼稚園だった建物に1人で住んでいる。

幼稚園の講堂には、子どもを亡くした親たちが想い出を納めた『小箱』が置いてあり親たちは子供達と触れ合うために幼稚園の講堂にやってくる。

 

この世界では、子供たちは次々と死に絶え、もう生まれてくることはない。

産院は爆弾で爆破された。

 

「私」は喋る声が片っ端から歌になるバリトンさんに、彼の恋人の手紙の翻訳を依頼されていた。

恋人の手紙はある日から極端に小さな文字になってしまい読み取れなくなっていた。

園庭を歩きながら、解読した手紙をバリトンさんに読み聞かせながら「私」は次第にバリトンさんに想いを寄せるようになっていくが・・・。

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

僕が読んだ小川洋子の2作目の作品になります。

ツィッターでおすすめをされて『薬指の標本』を読んでみたのですが、非常に独特な世界観。

耽美的とも言える狂気を湛えためくるめく偏執的な愛の物語に魅せられました。

一見、普通の物語のように思えるのですが、現実より半音だけずれていて不協和音を奏でているような・・・。

 

そんな小川洋子の作品の世界観に魅せられて『小箱』も読んでみましたが、この物語に引き込まれました。

 

 

4、感想・書評

①独特な世界観、現実から半音ズレた世界

『小箱』の世界観もとても独特で現実から少しずれいていて、閉塞して完結しているような世界のように感じられます。

読み勧めていて、村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の世界の終わりの世界観に似たものを感じました。

一つの街で完結されていて、人々は何かしらの深い欠損を抱えながらも、とても平坦な感情を抱えながらある種満ち足りたような表情で生きているというアンビバレンツ。

hiro0706chang.hatenablog.com

 

一人一人の音楽会や、講堂の小箱への執着・・・。

過ぎ去ってしまった何かに、心を砕いて捧げるような祈りと儀式。

とても真剣に厳かに一心に今は亡き存在に自らを捧げ続けるような行為は美しく清らかなようであります。

しかし、薄ら寒い救いようのない狂気も感じさせます。

 

②濃い死の影とゆるやかな狂気を纏う人々

作中にはとても濃い死の影が絶え間なく漂っています。

はっきりとは語られていませんが、おそらくこの世界にいた子供たちはすべて死に絶えてしまい、何らかの理由で新たな命が産まれなくなってしまったのでしょう。

 

子どもを亡くした親達は子供達の体の一部を楽器に変えて自分にしか聴こえない音を演奏したり、幼稚園の小箱に想い出の品を入れて子供達を想います。

それだけでは飽き足らず、子供達が存命なら達したであろう年齢に合わせて箱に入れるものを変えたり、子供達が生き続けられなかった物語の先を創造しようとします。

 

そこで強調されるのは悲哀よりむしろゆるやかで静かな狂気です。

何かを壊してしまうような感情、愛情ではないけど徐々に浸透して人々の精神を蝕んで壊してしまうような遅効性のウィルスのようにゆるやかに毒に侵されていくようなイメージがあります。

 

そして、自分達もこの完結した世界でゆっくりと死に絶えていく・・・。

そんな予感に満ちているように想います。

 

③「私」、バリトンさん、とその恋人の不可思議なトライアングル 

バリトンさんと、病院に入院している恋人との文通。

小さくなりすぎてしまった恋人の文字を解読してバリトンさんに朗読する「私」ですが、恋人のバリトンさんへの愛情が偏執的でとても奇妙です。

 

字がどんどん小さくなって相手に読めないぐらいの大きさになるというのも異常ですが、恋人がバリトンさんに送ってきたセーターが自分の指紋を模したセーターで、自分もバリトンさんの指紋を模したセーターを着ているというのもお互いがお互いの存在を束縛し合うような執拗さを感じさせます。

 

そして、手紙の内容もはっきりとは書かれていませんが、どことなくエロティックな内容で翻訳している「私」も2人の愛の世界に囚われて、バリトンさんに想いを寄せるようになっていきます。

バリトンさんの恋人も「私」の存在を意識して、病んで死にいく自分の代わりにバリトンさんの横に誰かがいてくれるように託したようにも思います。

 

 

5、終わりに

 

美しい文章で淡々と語られる世界が少しずつ歪んでていて狂気を湛えている。

そんな、小川洋子の物語に引き込まれました。

読んでいる間にずっと不協和音がピアノで鳴っているような・・・。

そんな物語のように感じました。

 

死を想いながら、過去と共に生きる世界の人々の物語だと思います。

 

 

 

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