ヒロの本棚

本、映画、音楽、写真などについて書きます!!

【本】江國香織『きらきらひかる』~この世界に間違った愛がありますか?ゲイの夫とアル中でメンヘラな妻。どこまでも透明な感情~

1、作品の概要

 

1991年に刊行された江國香織の長編デビュー作。

紫式部文学賞受賞。

1992年に映画化。

文庫版で201ページ。

12章からなる恋愛小説で、笑子と睦月がそれぞれ一人称で語る。

 

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2、あらすじ

 

新婚の睦月と笑子はお互いに脛に傷を持つもの同士。

睦月はゲイで、結婚後も紺くんという恋人を持ち逢瀬を繰り返す・・・。

笑子はアル中気味で情緒不安定で、精神科の受診歴もあった。

 

そんな、「普通」とは程遠い結婚生活。

触れ合うことがなくても、静かで穏やかな愛情が2人の間に流れていた。

 

柿井と樫部さんのゲイカップル、紺くんも笑子の不思議で率直な魅力に惹かれて不思議に親密になっていく。

 

しかし、ままごとのような結婚生活にも徐々に亀裂が入っていく。

睦月の優しさは笑子を傷つけて頑なにしてしまう。

加えて、お互いの秘密を隠していた両親との関係もこじれ始めて・・・。

 

名前のついていない感情。

水の檻。

銀のライオンたち。

 

「普通」の愛情に対して問いを投げかける物語。

 

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

大学一年生の時にサークルの先輩からすすめられて読んでみたのがこの本でした。

あまり女性の作家は読んだことなくて、どうせコテコテの恋愛小説なんじゃないかと思いましたが、ゲイの夫と、アル中でメンヘラの妻の話と聞いて興味が出て読んでみました。

 

いや、もう衝撃で。

透明な文体で繊細に描く心理描写にヤラレてすっかり江國さんの小説の虜になりました。

 

きらきらひかる』『落下する夕方』『神様のボート』なんかもそうですが、人間関係の微妙な距離感とかとても不思議な描き方をしていてとても好きな作家さんです。

 


薬師丸ひろ子 きらきらひかる 予告編 1992年

 

 

 

4、感想・書評

 

①笑子と睦月の結婚生活。水を抱く。 

笑子と睦月一風変わった結婚生活。

今でこそ珍しくないかもしれませんが、家事はほとんど睦月が担当し、笑子がする唯一の家事は睦月のベッドにアイロンを当てること・・・。

奔放な笑子はお酒を飲んだり、歌を歌ったりして自由気ままに暮らしています。

 

医者の睦月はどこまでも優しくて、綺麗好きで文句も言わずに家事をしてくれるし、プレゼントのセンスだっていい。

だけど、ある種の完璧さ、無菌室のような空間っていうのはどこか人を追い詰めてしまうような気がします。

優しく穏やかな睦月の愛情は、繊細な笑子を時に苛立たせてしまいます。

 

睦月に関しては、水のイメージが似合っていて、笑子は義父からも「あいつと暮らすのは、水を抱くようなものだろう」と揶揄されます。

ゲイの夫とは肉体関係がなく、別々のベッドで眠る日々。

愛情ってやっぱり触れ合って確かめたい時があるし、抱き合ってお互いの温もりを確かめることで愛情を確認することだって必要な時がありますよね?

水を抱くとは上手な表現ですね。

 

睦月はゲイの恋人紺くんと逢瀬を重ねていて、笑子もそれを容認しています。

自分では満たしてあげられない睦月の愛欲を紺くんが満たしている。

通常の不倫とは違いますし、初めからお互いに恋人を持つことを容認していたこととは言え、笑子の気持ちをかき乱します。

睦月が紺くんと会うことより、笑子に恋人を作るように勧めたことでより深く傷ついているように思います。

 

優しい睦月は、自分だけ紺くんと会っているのが不平等に感じるのでしょう

 

私は世の中というのはまったくよくできていない、と思った。

都会の空のにこそ星が必要で、睦月のような人にこそ女が必要なのに。私みたいな女じゃなくて、もっとやさしくてちゃんとした女が。

「今朝、羽根木さんの夢をみたの」

と私は言った。

「どんな夢」

「すごく、都合のいい夢」

睦月は笑った。

「でも私のせいじゃないわ」

睦月が悪いのよ。私の恋人がどうの、なんて言ったから。

「笑子にも恋人が必要だよ」

必要じゃない、と即答すると、睦月は悲しそうな顔をした。

「僕は何もしてあげられないんだよ」

 

2人の結婚生活はとても危ういバランスで時に気持ちがすれ違いながら維持されていきます。

コンパスなしで夜の海を航海するみたいな寄る辺なさを感じます。

北極星が見えればいいのだけれど、雲が出れば目印のないお互いの感情の海を手探りで進んでいくことになり、何度も嵐に見舞われることになります。

 

 

②紺くんとの不思議な三角関係。銀のライオンたち。

お酒ばっかり飲んでいて情緒不安定な笑子ですが、とてもオープンな性格で不思議な魅力を持っていて、紺くんを始め樫部さん柿井らの睦月の友人達(全員ゲイだ)も笑子には心を開いて好意を抱くようになります。

睦月の家でのホームパーティの描写がとても心温まる雰囲気で好きな場面です。

 

みんなが帰ったあと、睦月と笑子と紺くんの3人でリビングで雑魚寝をする場面も何だか微笑ましいですね。

恋人と、妻と3人で雑魚寝(笑)

睦月曰く「異常事態」ですが、なんだか不思議としっくりとくる素敵なトライアングルです。

「普通」ってなんでしょうね?

村田沙耶香の『殺人出産』収録の『トリプル』の話を思い出しました。

 

紺くんは、睦月のいない昼間に笑子のところに遊びに来るようになりますが、睦月から見ると妻と恋人が仲良くしているのは何とも複雑な気持ちになる状況であることでしょう(笑)

紺くんも気まぐれでシニカルで時に攻撃的で、野良猫みたいなクセのある人物ですね。

好きなキャラクターです。

 

銀のライオン。

笑子の創作なのか、作中に出てくる魔法のライオン。

群れを離れて、自分たちの共同体たちだけで暮らしている草食で短命。

睦月たちは、銀のライオンみたいだと言いますが、睦月の父は笑子のことも「私には銀のライオンに見えるよ」と言われてしまいます。

 

社会一般の常識や、普通から離れたところでひっそりと暮らす睦月達。

この小説はそんな銀のライオン達への賛歌であり、「普通」や「正常さ」への問いかけだったのかなと思いました。

 

村田沙耶香も「正常さ」とは何かを作品を通して問い続けているように思いますが、江國香織もまた「普通」から少しずれた人たちを描いて幸福とは何かを問うているように思います。

2人の作家のもつ世界観や文体はとてつもなくかけ離れているように思いますが(笑)

 

 

③「普通」との折り合い。睦月の優しさ、水の檻。

 

睦月はとても公正で理性的で、穏やかで優しいのですが、そういった優しさが笑子を時に傷つけて少しずつ追い詰めていきます。

元恋人の羽根木さんと笑子のヨリを戻させようと、ひと芝居を打つ睦月ですが笑子にバレてしまい彼女のことを激しく傷つけてしまいます。

 

睦月なりの優しさで、自分が紺くんと恋人関係にあるのに笑子は恋人がいないから不公平だし、笑子にも恋人を作らせようとするのですが・・・。

そういった公平さで何でも感情が割り切れると思っている睦月は善良なのかもしれませんが、不思議な三角形のままで、このままでいたいと願う笑子の願いを無自覚に踏みにじってしまいます。

そして、笑子もそういった自分の気持ちを言語化してうまく伝えることができずに感情を爆発させてしまいます。

読んでいて苦しい場面です。

お互いに気遣いあって、愛し合うが故にすれ違っていく。

 

そんな、「水の檻」のような睦月の優しさに心地よさを感じながらももどかしさやるせなさを抱く笑子。

 

「ごめん」

私のまぶたにそっと触って、睦月はききとれないほど小さな声で言う。私が目を覚ましていることを知っているのだ、と思った。まるで水の檻だ。やさしいのに動けない。睦月には私の気持ちが、私には睦月の気持ちがこんなにくっきりわかってしまう。羽根木さんのことも、ポケットベルのことも、私はもう睦月を責められない。まぶたに感じる睦月の指。どうしていつもお互いをおいつめてしまうのだろう。

 

そんな、睦月のことを笑子は自分の感情をぶつけて傷つけてしまう・・・。

そんな2人の関係が切ないです。

 

そして2人を取り囲む「普通」の感覚を持ったお互いの両親や笑子の友人の瑞穂が子供を作ることを勧めたりしてますます笑子の気持ちを追い詰めていきます。

笑子が、柿井に「睦月と紺くんの精子を混ぜて人工授精することができたら3人の子供になる」と相談します。

 

とても突飛な発想ですが、彼女なりに真剣に3人でうまくやっていく方法、周囲の人々が納得する方法を考えていたんだと思います。

何だか痛々しくてやるせない気持ちになりました。

まるでおままごとをしているみたいな生活、家庭かもしれませんが、笑子は睦月と紺くんの関係も大事に思っていて、3人の関係を大事にしたいと思っていたのでしょう。

 

紺くんは一時、睦月の前から姿を消しますが、実は笑子も手伝って2人が住む同じマンションに引っ越して来ていたのでした。

サプライズで「3人の1周年」をお祝いする笑子。

不思議な関係ですが、3人の誰が欠けても成り立たない微妙なバランスの上に成り立っている関係ですし、「普通」の関係を押し付ける周囲に対して自分たちが心地よいトライアングルでこれからも生きていくことを予感させるようなラストでした。

 

 

 

 5、終わりに

 

初読したのが、もう23年前で何度も再読している好きな作品ですが全く色褪せませんし、ある意味現代のLGBTや夫婦の在り方なんかを予見しているような作品になっています。

この作品が1991年にデビュー作として書かれたということが本当に驚きだし、夫婦関係や、LGBTなど性的嗜好への社会の不理解が蔓延していた時代にこのテーマをブッ込んできたのは最高にロックだと思います。

しかし、そんなテーマを透明感ある文体で、あくまで綺麗に描いている江國香織はやはり唯一無二の作家だと思います。

 

近作も成熟が感じられて、1人の人生を描いたり、『抱擁あるいはライスには塩を』のように様々な視点からそれぞれの人生を描いたりとスケールが大きな作品も描くようになりますが、初期の風変わりな恋愛小説や、名前のない繊細な関係も好きです。

江國香織は例えば「好き」という感情を描くにしても、単色ではなくてたくさんの色を使ってとても繊細に描きます。

そんな、彼女の心理描写が好きです。

 

余談ですが、彼女の小説の主人公はお酒を飲む人が多く、なんかそこも好きです(笑)

白ワインや、カクテルとか飲んでる女性って素敵だなと思います♪

 

ああ、また読み返したい本がたくさん増えてしまった(^-^;

読書沼ねぇ。。

1週間ほど無人島で読書合宿したいです。

 

 

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【音楽】ゲゲゲイの鬼太郎!!妖怪×ダンスミュージックの融合!!暗闇の中でモノノケがダンス!!音を出しすぎると、ヤクザが怒鳴り込んでくるDJ BARでクラブイベントを開催した話♪

また、香ばしいタイトルでGWもかましていきます!!

いや、介護職だし休みとかフツーだけどね!!

でも、まぁそんな時に愚痴をこぼすより浮かれていくのが、ザッツヒロスタイルですぜ!!

 

実はこのネタ、前から温めていたのですが妖怪×ダンスミュージックの融合です(笑)

昔から、妖怪好きなんすよ。

やっぱ、妖怪はシゲル・ミズキでしょう!!

ヨージ・ヤマモトみたいな言い方ですが、水木先生はマッドリスペクトですよ。

なんせ、生まれた時から妖怪だったんですよ!!

生まれたときから「妖怪」だった (講談社+α文庫)
 

 

 

パネェ!!

シゲル・ミズキパネェ!!

パリピも大喜び!!

 

妖怪ウォッチなんて、可愛すぎっしょ!!

最近のゲゲゲの鬼太郎も、猫娘が萌えキャラとかになってイカン!!

やっぱり、妖怪は不気味で謎の存在じゃないとダメなんですよ!!

 

そういう訳で僕の妖怪愛が伝わったと思います。

 

 

 

☆ゲゲゲイの鬼太郎!!東京ゲゲゲイ♪☆

 

ツィッターでフォローさせて頂いている方がお好きな「東京ゲゲゲイ」に最近ハマりました。

前から、名前と風体はおみかけしてましたが、ちょっとキテレツな感じがしていたのですが、聴いてみたらめちゃくちゃカッコよくて、ベスト盤即ポチリました!!

マイケル・ジャクソンとかレディー・ガガをお好きな方はどんハマりするんじゃないかな~。

歌もダンスも曲も最高だし、MVも良いですね!!

ダンス動画とかズット眺めていられます。

でも、真似はできないかもぉ~~~。

 

今度、ベスト盤のレビューと、東京ゲゲゲイの紹介は別途書こうと思っていますが、今回はこの『ゲゲゲイの鬼太郎』の紹介です!!

笑えて、カッコいいです!!

 


東京ゲゲゲイ 「ゲゲゲイの鬼太郎」

 

いや、改めて観るとダンスめちゃかっけーーーーー!!!

 

 

 

電気グルーヴ×鬼太郎☆

 

2008年にノイタミナ枠でやっていたアニメ『墓場の鬼太郎』

ん???ゲゲゲじゃないの???って言っているそこのアナタ!!

はっきり言って、素人ですね!!

妖怪のことが何もわかってない!!

 

墓場の鬼太郎はゲゲゲになる前に、シゲル・ミズキ先生がやっていた超ウルトラスーパーダークな鬼太郎の話なんですよ!!

何が平成だ!!令和だ!!

昭和の闇を見せてやる!!

おもいしれやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!

 

って言うのが、『墓場の鬼太郎』ですよん♪

初期の鬼太郎は、人間を地獄に送ったりとかフツーにしてるよん♪


墓場鬼太郎 幽霊電車

 

んで、その墓場の鬼太郎の主題歌を電気グルーヴが担当!!

まさかの妖怪とダンスミュージックのコラボ!!

 


Denki Groove - Mononoke dance | 電気グルーヴ - モノノケダンス

 

 

 

☆伝説のイベント『百鬼夜行』妖怪とダンスミュージックの融合♪ヤクザが上から降りてくる・・・☆

 

そして、僕が昔に友達と企画したイベント『百鬼夜行

コンセプトは、『妖怪とダンスミュージックの融合』

 

まぁ、当時のクラブシーンでこんなコンセプトのパーティーを思いついて実行したのは僕だけでしょうね(笑)

しかも、ご丁寧にVJの方までお呼びして妖怪の映像を観ながら踊り続けるお前ら百鬼夜行的なクレイジーなパーリーでした。

当時、他にも月イチでやってたパーティーがあったのですが、こっちも楽しかったです。

多分、2回ぐらいしかやってませんが(笑)

 

んで、立地は渋谷駅徒歩1分ぐらいでめちゃくちゃいい場所でした。

BARの名前は『EDGE END』っていうBARで通常はロックバーでやってる店でDJのパーティーもできるっていう店でした。

 

立地がいい割には、箱代が安かったのは良かったのですがただ一つ大きな問題が・・・。

それは、リアルな日本の妖怪に関する話題で・・・。

音を大きくしすぎると、上の階からヤクザが降りてくるという話でした・・・。。

 

 

リ、リアルジャパニーズモンスター!!!!!!

そうして、音を上げすぎずに静かに踊るパーティーが誕生しました。

うん、でも楽しいパーティーでしたっ!!

子育て落ち着いたら、またガツガツクラブ活動したいな~。

 

 ちなみにMIXIオフ会で、「青山墓地de夜は墓場で運動会」ってイベントをやろうかガチで検討しましたが子供が生まれたのでやめました☆

 

 

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【雑記】帰ってきた!!ストロングヒロ!!おうちに篭って、新型コロナウィルスを撃退セヨ!!

 はははぁ~い!!

最近は真面目な内容が多かったから今日ははっちゃけていくよ~。

 

ってか、すでに酔ってるからぁ~。

9%のなんたらゼロとか2リットルぐらい飲んでるからぁ~。

はいはい、ばっかでぇーーーーっす!!(テンション高め)

*注 昨日書きました。

 

んでも、いいんだよべらんめぇ。

おい、あれだろ?

なんとかコロナウィルスで、家にいろってさ。

小池の百合子も言ってんじゃん?

何?お前は東京都民じゃないだろがって?

何言ってんだこんちくしょう!!

何県とか、何人とか今さちいせぇこといってんじゃねよ!!

人類対コロナ何とかなんだよ!!

ってか、家にいろよ!!

とにかく出るなよ!!

わかったか!!

俺は家から出ねぇ!!

ニート最強だ!! 

わかったか!!

*注 仕事は行っています。

 

そんな感じの毎日ですね。

こんな時、あのヒーローが新型コロナウィルスをやっつけてくれたら!!

みんなで呼んでみましょー!!

スートローングヒーローーーーーーーー!!!!

 

とおっ!!

みんな元気にしてたかな!?

なんだか大変なことになっているけど、ストロングヒロは今日も元気だ!!

下半身も元気だぞ!!

だってストロングなSAKEを飲んでるからね!!

みんなもSAKEを飲んで家にこもろう!!記憶を飛ばして、クソリプとか、クソLINEを飛ばしまくって黒歴史IN THE HOUSEだ!!

間違いねぇ!!

 

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前回のあらすじ

ストロングヒロはSAKEを飲んで戦うヒーローだ!!

女の子とアルコールにはめっぽう弱いクズ野郎だ!!

そんなヒロはアルコール度数が高いSAKEを飲むとストロングヒロに変身できるのだ!!

でも、特に強くならずに泥酔してゲ○を吐くのが必殺技だぞ!!

良い子は真似すんなよ!!

 

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

やってきました。

恥の上塗り。

刻み込んだデジタルタトゥー。

 

酒にまみれて。

欲にまみれて。

溺れ続けるこの愛欲。

 

でも、今日は皆さんに恥的に・・・、いや知的にコロナと戦う方法を伝授したくてやってきましたよ!!

それは!!

家に!!

篭って!!

SAKEを!!

飲みまくって!!

ねること!!

 

以上!!

 

 

ん?

拍手が聞こえませんが?

酒を飲みたくない人はどうするのかって?

・・・・・・・・。

そっ、それではまた会おう!!

とうっ!!

 

 

 ええ、何だかすみません。。

文章グダグダですね。

まぁ、とにかくGWもステイホームですね!!

僕はほぼ仕事ですが(^-^;

 

 ちなみに最近は尿酸値が高めなので、チューハイやウィスキーに方向転換中です!!

 

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↑ドンキで75円で買ったチューハイ。

 

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↑ジムビーム美味しかったです!!

 

お題「#おうち時間

 

 

 

 

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【本】村上 春樹『猫を棄てる』~父親について語るとき~

☆前書き、父親との関係を語る内容☆

 

村上 春樹の新刊が出ました!!

 

「文藝春秋」2019年6月号に掲載されていた『猫を棄てる』ー父親についてかたるときーというエッセイです。

そろそろ短編集が刊行されるかなと思っていたら、エッセイのほうが先でしたね。

薄くて小さい本で100ページぐらいです、

挿絵も多くてさらっと読めますが、内容はなかなか濃くて満足でした。

 

エッセイ『職業としての小説家』でも感じましたが、随分と村上春樹自身の内面、考え方やパーソナルな部分について語っている内容だなと感じました。

元々、そんなにオープンな性格の方(いや、会ったことないけどw)ではないし、海外で暮らす時期も長かったので、なるべくメディアの露出を避けているような印象があったので。

 1987年の『ノルウェイの森』の爆発的なヒットと、狂乱から逃れるようにヨーロッパに渡り、アメリカの大学で講師をするなど社会と距離を取って作品もどことなく浮世離れした「デタッチメント」を描いた作品が多かったと思います。

 

しかし、1994年の『ねじまき鳥クロニクル』で世界的な作家となり、また作中に突然第2次世界大戦末期のノモンハンでの血なまぐさい戦争が描かれ、1997年に地下鉄サリン事件の被害者のインタビューを扱ったノンフィクション『アンダーグラウンド』を執筆することで、次第に村上春樹自身の作家としてのイメージが変化していきました。

 

「デタッチメント(かかわりのなさ)」から「コミットメント(かかわりあうこと)」への変化。

過度に政治的・社会的な内容ではありませんが、彼なりに世界に満ちる「暴力」について考え始め、暗喩として物語に含めるようになってきたのです。

 

そして、『海辺のカフカ』ではこれまでなかった大きな変化の一つとして主人公・田村カフカ少年の「父親」が描かれました。これまでの作品で、不自然な程「家族」について描かれてきませんでしたが、初めて父親が出てきたのでビックリしました。

家族、特に父親との関わりには何か特殊な事情があるのではと思っていましたが、僕の知る限りではほとんど語られてきていませんでした。

 

そんな中、今作『猫を棄てる』のサブタイトルが「父親について語るとき」だったのでかなり興味をそそられました。

村上春樹の父親は僧侶で、そのあたりが喪失感や死生観を感じさせる作風につながっているのではと言っている方もいましたね。

と、長い前書きになりました(笑)

 

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☆幼少期の素朴な思い出☆

 

もっとドラマチックな出来事があった特殊な家庭だったのではと想像していましたが、思ったより普通の少年時代で、ご両親も教師をしていたとのことでした。

ただ、父親が京都の大きな寺の生まれで、僧侶の資格を持っていたこと。

その時代にしては珍しく、一人っ子だっという点は少し変わっていたのかもしれませんね。

 

表題の『猫を棄てる』も、幼少期に父親と一緒に猫を海辺に捨てにいった想い出を描いています。

「(猫を棄てることは)昔は、それが普通だった」と書いてましたが、動物愛護団体に非難されるんじゃないかとヒヤヒヤしています(笑)

でも、捨てた猫が先に家に帰っていて、父親と2人でビックリしたという微笑ましいエピソードだったので良かったですが(^-^;

 

捨てた猫が先に家に帰っていた時の父親の「呆然とした顔が、やがて感心した顔になり、そしてほっとしたような顔になった」という表情が印象に残っているとも語られていますが、それは父親がよそのお寺に小僧として出される=親に捨てられるという体験に重ね合わせていたのかもしれません。

父親が子供の頃に親に捨てられたことはきっと心の傷として残っているのだろう、と村上春樹は想像しています。

 

家にはたくさん猫がいて、「猫と本が友達だった」とあり内向的で猫好きな村上春樹の幼少期が想像できます。

また、父親が映画好きで毎週のように映画館で映画を観ていたのも感受性豊かな作家になる土台を作った一つだったのかもしれませんね。

 

そして、このエッセイでは台湾の新進気鋭のイラストレーター、高妍(ガオ・イェン)さんがイラストを担当しています。

とても素朴で優しい色遣いのイラストで、昭和初期の日本の風景によく合っている感じでとても良かったです♪

幼少期の素朴で温かな思い出に素敵に寄り添うようで絶妙は組み合わせだったように思います。

 

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 ☆父親と、戦争☆

 

 父親の村上千秋さんのことを語るには、戦争については避けては通ることができなかったようで、出来うる限り克明に父親がどのように日中戦争と第2次世界大戦に関わったのかを調べています。

「おそらくは不運としか言いようのない世代だ」と言っているように1917年生まれの父親は、否応なく戦争という大きな時代のうねりに飲み込まれていきます。

それは、暗く死の香りに満ちた重々しいもので、その時代に生きた日本人はすべからく戦争によって運命を変えられて、人生の一部あるいはその全てを徹底時にすり潰していったのでしょう。

 

日中戦争では輜重兵として従軍し、敵の中国兵の首を刎ねて処刑する場面を幼い村上春樹にも語って聞かせていたようで、そういった歴史的事実と個人的な体験、そしてそれによってもたらせる心の傷などがひとかたまりになって息子に継承されていったのでしょう。

また、そういった「継承」が歴史の持つ意味だと書かれています。

このあたりの経験も『ねじまき鳥クロニクル』での血なまぐさい描写に繋がっていたのかと納得しました。

 

当時は、突然戦争の血なまぐさい暴力的な描写が物語に組み込まれたことに戸惑いを感じ何だか唐突に戦争の話が出てきた印象がありましたが、村上春樹の意識の根底には父親から継承された歴史的な体験、暴力が彼の中に深く根付いていたのだと思いました。

 

第2次世界大戦では再び軍隊に召集されるも、上司の意向で唐突に招集免除になりそのことで一名を取りとめます。

父親が所属していた部隊はマニラでほぼ全滅するという悲惨な結果に終わりました。

仲間たちと運命を共にできず、自分だけ生き残ってしまった後ろめたさからか、父親は毎朝読経を欠かさなかったと、書かれています。

一生、そのわだかまりを抱えて生きていたのでしょう。

 

しかし、そのお陰で自分はこの世に生を受けることができた。

父親が生き延びて、母親と結ばれたから今の自分があると書いています。

 

 戦争は人々の運命を翻弄して、破壊し、どこか遠くまで押しやってしまいました。

バラバラに引き裂かれた絆も、届かなかった想いもありました・・・。

でも、その中で巡り合って繋がれた命があります。

村上春樹の命もまたそのようにして繋がれた命でした。

 

 

 

☆親子の葛藤と一滴の雨水☆

 

勉強家だった父親は子である村上春樹に勉強をして良い成績を取ることを望んでいたようですが、興味があることとないことがはっきり分かれていてお世辞にも良い成績ではなかったとのことでした。

まぁ、よくある親子間の断絶かもしれませんが、なかなか親の期待通りには子供は動いてくれませんね(^-^;

 

おそらく僕らはみんな、それぞれの世代の空気を吸い込み、その固有の重力を背負って生きていくしかないのだろう。そしてその枠組みの傾向の中で成長していくしかないのだろう。

 

世代間での意識のギャップもあるでしょうし、時代の流れが早い近現代においては特に親と子が成長する上で目にする風景が全く違うのでギャップが生まれやすいのだと思います。

 

村上春樹が成長して自我が発達するにつれて親子間の溝は決定的に深いものとなりお互いに思いをまっすぐに語れず、ゆずることができない性格だったため最後には絶縁に近い状態となってしまったと書かれていました。

それでも、父親が死ぬ前に会うことで和解し、お互いを繋ぐ線のようなものが作用して親子の、血縁の持つ繋がりを感じました。

 

親子でも考え方や生き方は全然違っても、同じ家で暮らし、何かしらエピソードを共有体験する(例えば猫を棄てに行ったり)することでゆるやかで、しかしそれでいて決して切れることのない絆のようなものを感じることができるのではないかと思います。

それが親子であり、家族なのかもしれません。

 

この作品のコアの部分だとおもいますが、自分たちは1滴の雨粒で、集合的な何かに置き換えられていくとしても、だからこそ想いを受け継いでいく必要があると、村上春樹は言います。

僕たち1人1人の意識は矮小で、集合的で大きな意識の奔流に飲まれて消えてしまうのだとしても。

 そのための継承であり、誰かの物語を覚えていて、語り継いでいくことで大河は流れていき、やがては母なる海に還っていくのでしょう。

 

村上春樹はきっとこの本を書くことで、父親の物語を共有し継承していくことをイニシエーションのように通過していこうとしたのではないでしょうか?

血縁があるからといって、父親の思い通りに子供が(特に男子)が育つわけがなく、エディプスコンプレックス(ギリシャ神話で父親を殺して母親を手に入れていという欲求)なんていうのもあって父親の支配からの脱却というのは、自我の形成にとって必要なことなのだと思います。

 

僕も、父親とは全く違うパーソナリティーですが、話し方とか、背格好とか、ふとした瞬間に気持ち悪いぐらい似ているところがあるらしく、そういった血縁が持つ力というか連綿と繋がっていく継承と遺伝について思いを馳せます。

 

肉体が滅んで、この世から消えてなくなっても、語り継いでいく存在がいる限り物語は続いていくのだと思います。

 

 

 

 

 

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【音楽】尾崎 豊が好きだった・・・。昨日が命日。盗んだバイクで走り出して、夜の校舎窓ガラスを壊して回って、今だけは悲しい歌聴きたくなかった42歳の夜!!

ええ、昨日4月25日が尾崎豊の命日でした。

もう28年前なんですね。

なんだか信じられない。

そりゃ、息子が歌ってるわけだ。

 

高校生の頃、尾崎豊が好きでめちゃくちゃ影響を受けました。

彼が死んだ後に好きになったのですが、すごいカッコよかった!!

 

やっぱり、代表曲の『15の夜』、『I LOVE YOU』、『卒業』は外せませんね~。

デビューは17歳の時に発売したデビューアルバム『17歳の地図』でした。

高校在学中のデビューとかすごいですよね!!

 


【尾崎 豊】15の夜

 


尾崎豊 I LOVE YOU

 


尾崎豊『卒業』 - 「LIVE CORE 完全版〜YUTAKA OZAKI IN TOKYO DOME 1988・9・12」

 

その後、アルバム『回帰線』『壊れた扉から』を10代のうちにリリースして、10代のうちにアルバムを3枚リリースするという快挙を成し遂げました。

この頃が絶頂期で、同じ10代のファンを多く獲得し、若者世代に人気が爆発。

若者のカリスマとして祭り上げられました。

 

しかし、その後は単身渡米しますが、ヤク中になって帰ってきてパクられてしまいます・・・(>_<)

この時期は、スランプに苦しみますが、『太陽の破片』や『街路樹』など名曲も多いです。

救いをもとめるような歌詞、静かで透き通るようなメロディーが印象的です。

 


【トーク有り】 夜のヒットスタジオ 太陽の破片 / 尾崎豊

 


尾崎豊 街路樹 東京ドーム

 

結婚、長男の誕生という人生の節目を迎えて起死回生の2枚組のアルバム『誕生』をリリース。

このアルバムが好きなファンの方も多いと思います。

贖罪や祈りを感じる歌詞と、スケールの大きい曲が多く、尾崎の成熟が感じられる1枚でした。

でも、この時まだ24歳とかですけどね(^-^;

『クッキー』がすごく好きな曲ですね。


尾崎豊『COOKIE』

 

そして、26歳でこの世を去りました。

泥酔状態で、全裸で民家の軒先に倒れてたという最後までロックな死に様・・・。

アルバム『放熱の証』が遺作となりました。

 

若くして成功することで注目を浴びて、精神の均衡を保つことができなくなり孤立して破滅していく・・・。

典型的なロックスターの生き方になってしまいましたが、彼の音楽に影響を受けたアラフォー世代も多いのでは?

 

 

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【本】中村 文則『逃亡者』~信仰、戦争、愛。この小説には、その全てが書かれている~

1、作品の概要

 

 2020年4月刊行。

新聞で連載されていた作品を単行本化した。

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2、あらすじ

 

第2次世界大戦時に、敵味方問わずに多大な影響を与えた「熱狂」と呼ばれる伝説のトランペット・・・。

偶然その楽器を手に入れてしまったジャーナリストの山峰は、謎の組織のBに追われることになる。

彼は、山峰に「一週間後君が生きている確率は4%だ」と告げる。

 

山峰は、事故で死んだヴェトナム人の恋人・アインとの間にかわした約束を守るために彼女と自分のルーツ・歴史を調べて小説にしようと奮闘する。

それは、彼のルーツである長崎の地、日本においてのキリスト教とその弾圧、第2次世界大戦の凄惨な記憶と核爆弾、そしてトランペットの奏者「鈴木」の悲しい戦争の記憶を辿っていくものになった。

 

Bに鈴木のトランペットの楽譜を、日本のカルト教集団「Qの光輪」から1ヶ月以内に手に入れるように言われた山峰。

 様々な人間の思惑が混じり合い、それぞれの物語が交錯する。

山峰は生き延びることができるのか?

 

 

逃亡者

逃亡者

  • 作者:中村 文則
  • 発売日: 2020/04/16
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

3、この作品に対する思い入れ

 

『教団X』の時のように、自分の中にある物語を構成する要素を全てぶつけてきた。

集大成的な作品だと思いました。

 

初期作品のような主人公の心の闇や生きにくさ、存在の危うさ。

『掏摸』や、『悪と仮面のルール』のように、Bという得体の知れない「悪」との対峙と、スリリングな駆け引きや逃亡。

『教団X』のように幾人もの登場人物の人生が混じり合って関係していく様。

アインとのラブストーリー。

在日外国人の問題や、政治的な要素。

そして、初めて描かれた歴史と信仰、長崎という土地、音楽について。

 

これらが渾然一体となってオーケストラのように奏でられる壮大な物語、現時点での中村文則の集大成になっていたと思います。

複雑に絡まりあった物語で、1度読み終えてからようやく全体像が見えた気がしています。

間を置かずに、もう一度読み返してもっとこの物語が持つ世界観に深く浸っていたい。

そう思わせるような素晴らしい作品だったと思います。

 

 

 

4、感想・書評(致命的、徹底的なネタバレあります)

 

①山峰の内面

『逃亡者』は山峰の一人称もしくは、長崎のキリシタンを語った3人称、トランペット奏者・鈴木の一人称で描かれています。

近作では、様々な人間の視点で描かれる作品が多かったですが、今作では歴史の回顧以外は山峰の一人称で描かれています。

あっ、最後にNが出てきますが(笑)

 

今回の主人公・山峰も今までの作品と違わず何かしら心の闇、生きにくさを抱えています。

うまく、溶け込んでやり過ごすように生きていても、観察眼の鋭い人間が見るとその異常さに気付きます。

ーあなたには緊張感がない。自分が置かれてる状況のわりに、奇妙にも明るい部分がある。・・・これは危ないです。わかりますが?人は何かの領域に入って、フワフワとした明るさの果てに破滅することがある。

自分では自覚なく薄笑いを浮かべたりして、置かれている状況に対して自らを省みる力、生きる力に欠けているように思います。

 

 中村文則の小説の主人公によく出てくるタイプで、幼い頃に父親との別離、母親に捨てられて一時施設で暮らすという体験をしています。

この体験が後に女性への過剰とも思えるリスペクトや、性の発達の速さに影響を与えていたのではないかと自らを振り返っています。

また、『何もかも憂鬱な夜に』の主人公のように子供の頃から自分の中に大人の女性を殺害している情景や、海辺で動かなくなった女性を抱えている情景が浮かんできています。

 

 

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

10歳の子供が体験できるはずがないこのようなイメージは彼の脳裏にくり返し浮かびます。

もしかしたら、歪んでいる自分の未来への不安。

起こりうるかもしれない悲劇を先取りして自分のイメージの中に投影していたのかもしれません。

 

しかし、「あの人」=母の亡くなった妹の夫に預けられて、自分のルーツ、歴史、土地との繋がりの話を聞いて山峰は少しずつ落ち着いて行きます。

父、母という存在から見捨てられても、繋がりは血縁だけではなくて歴史や土地そのものとも繋がっている・・・。

そのことを「あの人」から教えられて、自分の歪んだリビドーもろとも肯定された。

この経験が山峰を大きく変えて、薄暗い闇から救い出したのだと思います。

 

しかし、アインを失ったあとは深い悲しみから自暴自棄になってしまっているようにも見えます。 

 

②Bという「悪」、スリリングな逃亡劇

今作でも「悪」の存在が描かれていて、冒頭でBが登場し、山峰の逃亡劇が始まります。

『掏摸』や『悪と仮面のルール』でも描かれている「悪」の存在。

今作のBも不可解で大きな歪みを持ち圧倒的な力を持った存在として描かれています。

 

ただ、暴力を振るったり、殺したりするのに飽いて、他人の人生をおもちゃのように扱う歪な存在。

彼は、五十嵐にもそうしたように山峰にも3つの選択肢を提示します。

①(死ぬこと)拷問をされて生まれてきたことを拒否したくなるほどの苦痛を与えられて殺されるか、②(呪い)自由にされるが、幸福になった瞬間に殺されるか、③(生まれ変わり)自分が最も忌むべき存在に強制的に生まれ変わらせられるか。

 

人の運命を弄びそれでいてそのことにも飽いているような限りない闇を湛えた災害や、不運そのもののような人間。

生殺与奪さえも理不尽で、B自身にすら自分の行動原理が分かっていないように思えます。

まさに「不条理」そのもののような存在。

 

それは、彼が語るグリム童話(彼自身の創作)にも現れています。

「あるところに2人の兄弟が住んでいて、2人とも嵐に巻き込まれて死んだ」みたいななんのオチもない不条理な話です。

 

これは、Bが山峰に語った公正世界仮説(人々が世界が公正で安全であって欲しいと願う心理、習性)」から、Bの存在の定義が窺えるような気がします。

人々は世界は公正で幸福にも不幸にも何らかの理由や因果があって欲しいと願う。

 

グリム童話や昔話にはいいことをすると良い結果が生まれて、悪いことをすると悪い結果が生まれます。

心が綺麗で努力する人間は必ず成功して、性根が悪いずるい人間は破滅します。

しかし、本当に世界はそのように公正にできているのでしょうか?

残念ながらそうではなくて、世界は本質的に不平等で不条理で理不尽さに満ちています。

 

ちなみに僕は子供にもそうやって教育しています。

世界は不平等で、不条理だと。

酷い父親ですね(笑)

でも、そこで諦めたら人生終了(タイムアップ)だから諦めるなと言っています。

安西先生ばりに。

 

Bは、そういった公正世界を願い、時には理不尽な物語にバイアスをかけて自分たちの都合のいい物語に改変していく人々に対してのカウンターのような存在のような気がします。

だから、Bがもたらす死や暴力にはなんの理由もなく不条理な存在であり続けています。

確かに「かかわらない方がいい存在」で全く得体がしれません。

 

このBに山峰は翻弄され続けますが、冒頭から状況もわからず逃げ続ける山峰の逃亡劇はとてもスリリングです。

時系列を変えて、突如逃亡劇が始まる演出が臨場感あって良かったですね。

 

③アインという光、『遮光』のように繰り返さされる喪失

山峰が出会ったかけがえのない存在。

アインという女性は、山峰にとっての光であり、彼女と彼女の物語を通して「世界との和解」を果たすはずでしたが・・・。

彼女は永遠に失われてしまいます。

 

『遮光』を 彷彿とさせますね。

ソーニャをなくしたラスコリーニコフ。

彼を赦し、受け入れるはずだった存在は失われてしまいます。

 

hiro0706chang.hatenablog.com

 

 

しかし、『遮光』と違ったのはアインが残した物語を完成させるという希望が残っていたことでした。

山峰とアインの歴史的繋がり・ルーツ、鈴木のトランペットの物語を完成させることで山峰の心に再び光が灯り、世界との和解を果たせたのではないでしょうか?

『遮光』のように狂気の結実(いや、その展開も好きなんですが)ではなく、歴史を背景とした繋がりを再確認することで山峰は立ち直ることができたように思います。

 

それにしても、アインはとても可愛らしいですね。

いじらしいというか、生きて結ばれていて欲しかったですね。

アインの日記の記述とかもう泣けるし・・・。

可愛すぎてもう。

 

中村文則の願望なのかな(笑)

だとしたら、わかるわ~!!って伝えたいですね。

同い年だし、シンパシー感じる部分は多いですね。

僕もあんなふうな恋愛がしてみたいですね☆←オイ!!

 

彼女の死は、在日外国人の問題とも重なり社会に大きな反響を生み、山峰の心にも大きな傷を残しました。

『GO』とか思い出しましたが、日本は未だ在日外国人に対して根強い差別意識を持っているように思いますし、それがアジアの人間なら尚更でしょう。

 

以前、金子達仁のサッカーのエッセイで「弱小国だった日本があっという間にアジアナンバーワンに上り詰めたのは、大東亜共栄圏などに見られる自分たちがアジアのナンバーワンだというある種の他国への蔑視が影響している」みたいな内容がありましたが、いまだに日本人の意識の中にはそういった考えが根強くあると思います。

テレビ朝日のワールドカップ予選で使われる「絶対に負けられない戦い」というフレーズは、アジアごときでは負けてられない、自分たちはアジアの盟主だというような傲慢が見え隠れするように思います。

ただ、スポーツでは時にそういった傲慢と言うべき勝者のメンタリティーがプラスに作用することも多く、日本の急成長に繋がったのだと思います。

 

アインとの恋は、悲しい結末とともに在日外国人の問題、ネトウヨ、パヨク、政治的なアイデンティティを絡めて書かれています。

正直、中村文則の最近の政治的発言には辟易していて、むしろもうちょっとデタッチメントな物語が読みたいのですが、この作品に関しては、政治的要素をうまく物語に絡めてきたなという印象もありました。

『R帝国』も最近の村上龍みたいだと思いました(笑)

いや、村上龍好きだし、自分の旬のテーマを盛り込むのは良いのですがね。

 

話が逸れましたが、アインとのラブストーリー。

そして、喪失。

それは、山峰の魂を損なうほど大きな衝撃でした。

 

④長崎とキリスト教。神の沈黙、あるいはよそ見

 今までになかった中村文則の作品での要素。

信仰と、長崎という固有の場所が持つテーマ。

 

今までも、宗教はテーマとして出てきていましたが、これほど神についてくり返し考察され遠藤周作『沈黙』も作中にあげられて神の沈黙、あるいはよそ見について真摯に考えられた作品はなかったと思います。

 

そして、長崎という場所。

これほどまでにどこかの土地に固執した作品はありませんでしたが、今作では長崎という場所にとことんこだわっています。

それは、中村文則が長崎をルーツにもつということもあったのでしょうが、人が家族、血縁という繋がり以外にも、歴史やその土地で育ったというより大きな繋がりをルーツとして生きていくことができるということを表現したかったのではないかと思いました。

 

天草四郎の反乱や、キリシタンの弾圧まで長崎という場所で起こったキリスト教にまつわる歴史、そして物語。

それらは、山峰と、全く血縁のない母親の妹の夫である「あの人」との間を繋ぐ強い絆になります。

山峰が一時預けられていた施設と、あの人が生まれ育った施設は同じ施設で、その施設を作ったのは長崎の隠れキリシタンだった岩永マキが作った施設だった・・・。

 

歴史は連綿と繋がり、人と人とを結びつけていく。

寄ったあの人はそう言い、大浦天主堂が見える坂にしゃがみ込み、両手で地面を叩いた。

「いいか?お前の命は今、そういう大地の上にある。あらゆる者たちの苦難や優しさ、悲劇や美しさが堆積したこの大地の上にある。人間の歴史はそういった地層の堆積だ。何も長崎だけじゃない。世界中、どんな大地にもあらゆる歴史が堆積している。すべての物語はお前と無関係じゃない。極論すれば今のお前はその全てと繋がっている。だからいいか」

あの人の声が大きくなる。

「その命は引っさに使え。お前もその命でお前の物語を行け」

この場面が、この小説の核だと思います。

歴史が堆積した大地の上で繋がり続ける物語。

その上で生きる全ての人は、その歴史、大地の記憶に含まれている。

そういった連綿とした大きな流れの中で、また各々の物語を紡ぎ土地に帰り堆積していく・・・。

 

そういった無限とも思える繋がり。

そういった大きな流れの中にいて、血縁だけに囚われて小さなコンプレックスを抱きながら生きていくことへの矮小さ。

あの人もまたそうやって自らの孤独を乗り越えてきたのでしょう。

あの人は、山峰にとってメンターであったし、同士のような存在だったのだと思います。

 

⑤鈴木のトランペットと音楽

この小説は今までになく音楽について 言及している作品で、多くの人々が狂わされて奪い合っているのも「熱狂」と呼ばれるトランペットでした。

天才トランペット奏者鈴木の物語も音楽に溢れていて、最愛の女性「あなた」との出会いも音楽が、トランペットがきっかけのロマンチックなものでした。

 

音楽が好きなある男に見初められて、特別なトランペットを譲り受け、軍楽学校に入学し、天才的なピアニストのTと巡り合い、戦争が終わったら一緒にバンドを組むことを約束する。

あなたとも想いが通じて結婚を約束する・・・。

 

音楽と成功に満ちた鈴木の物語。

光が明るければ、闇は濃くなります。

そこから戦争体験を通じた物語の暗転はどこまでも暗いものでした。

 

漫画の『ベルセルク』の「蝕」を思い出しました。

それまで明るい青春時代を描きながら一気に暗転していく。

理性も愛も夢も、そして最後には人間としての尊厳も全て破壊していく圧倒的な「何か」

中村文則が、過去の戦争体験をこれほど克明に描き、物語のコアに持ってきたのは驚きでしたし、なんとなく村上春樹が『ねじまき鳥クロニクル』を書いて、ノモンハンの描写を長々と描いたのに驚きを感じたことを思い出しました。

 

村上春樹中村文則は全く違う作家ですが、デタッチメント(関わりのなさ)から、コミットメント(かかわりあること)へ移行しているという点では共通しているのかもしれませんね。

中村文則の場合、政治色が強い発言も多いですが(^-^;

初期の内省的な作品世界から、純文学とミステリーの融合を試みた「掏摸」以降の作品、「教団X」のようにもっと幅広いテーマを扱った総合小説のような作品の延長線上にあったのがこの『逃亡者』であったのだと思います。

 

戦地で鈴木が吹き鳴らしたトランペットは日本軍の兵士のみならず現地の人間、ひいては敵軍のアメリカ人の心をも熱狂させていきます。

生と死の狭間で鳴り響き多くの人間を虜にする音楽。

その旋律と楽器には悪魔的な何かが宿っていきます。

戦地の極限の状況。

生と死の狭間のギリギリの状況で、鈴木の完成は冴え渡り、その音楽は周りの人間を魅了していきます。

 

しかし、その果てに待っていたのは狂気と無残な死でした。

狂気を湛えた悪魔の楽器と思っていたトランペットが実は鈴木自身の狂気に従わせられていた。

本当に狂っていたのは自分だった?

鈴木はジャングルの奥地で狂いながら死んでいきます。

 

⑥すべての物語は繋がっている

大きな風呂敷を何枚も広げ続けたような物語でしたが、コアとなっているのは人の人生=物語が繋がり合って、共鳴しながら続いていくことにあるのではないかと思いました。

 

長崎というキリシタンの歴史が生んだ施設で繋がりあった山峰とあの人。

その土地のキリシタンが追放されてたどり着いた土地で繋がり生まれたのがアイン。

 

僕は山峰とアインのラブストーリーが好きです。

歴史的背景が距離も時間も超えて2人を繋げたのです。

運命の恋だと思っても仕方がないようなドラマチックで壮大な邂逅です。

 

この作品では、「物語」という言葉がたくさん使われています。

人生を物語と解釈する、その真意とはどんなものでしょうか?

 

僕も常日頃、人生は物語だと思っています。

介護の仕事をしていて、ご利用者の人生にかかわる時に僕はその方の物語の最終章の登場人物の一人になっているのかもしれません。

 

何故、人生は物語になるのでしょうか?

それは、人間があくまで自我から逃れられず、自身を客観的にではなく主観的にしか見られないからだと思います。

 

自己を客観的に見る。

その言葉自体が既に矛盾を孕んでおり、人はあくまで自分のことを主観でしかみられないし、主観はどこまでも現実を侵食し、自己の人生を物語化していくのです。

 

でも、それが悪いことでしょうか?

自分が見てきたものを主観のフィルターを通して現実を改変して、物語化した現実を生きていく。

何も悪くないし、僕はそんな物語に寄り添っていくのが好きで介護の仕事をしているのかもしれません。

 

そして、あくまで個人的だった物語が繋がり合っていく。

歴史、信仰、土地を通して距離も時空も超えて無限に広がっていく・・・。

この世界で起こりうる、そんな奇跡のような邂逅。

『逃亡者』はきっとそんな光の粒子がきらめき合うような命の発光を捉えた、たくさんの物語なのだと思いました。

 

どれだけ世界が変わっても物語は生まれ続けて、繋がり合いながら堆積していくのでしょう。

 

 

 

5、終わりに

 

んん。

とりあえず、自分が感じたことはある程度吐き出せたような気がします。

 

『逃亡者』を読んだ時に、中村文則が現時点でできることを全てぶつけてきたと感じたこともあって、僕も自分ができることを全てぶつけるようなに書評を書いてみました。

何か決定的な思い違いや、拾えてない部分はありそうな気がしますが、ちょっとやりきった感じもあります。

 

中村文則は、僕にとって特別な作家の一人です。

同い年で、ユニークでフランクに見えて実はナイーブで薄暗い部分を抱えているとことか。

あと、エロいとことか。

シンパシーを感じます。

 

自分のことをエロいって言える男は信用できるんですよ(笑)

すかしてる奴は嫌いです。

友達になれません。

だから、中村文則とは友達になれるかもしれません。

って、何の話でしたっけ?

 

相変わらず、世界は欺瞞に満ちて。

政治は乱れて、人身も乱れています。

公正世界はおとぎ話で、世界は徹底的に不条理で、不平等です。

でも。

そんな世界でも生きていたいと思います。

 

別に高い意識を持って毎日充実していなくても。

日々の生活の中で仄かな光を見出して。

前に進まなくてもいい。

世界を呪ってもいいし、誰かを憎んでもいい。

生きていたいと思う。

 

もしも闇の中で迷って、混乱して、心が沈んでもこの物語は寄り添ってくれるし、中村文則は同じように寄る辺ないどこかの無明をさまよっているだと思う。

そういった意味において彼がいつも最後に記す一言は重く。

いつもいつも僕の心に響くのです。

とてもありきたりな言葉だけど。

それだけにかけがえのないメッセージです。

 

新型コロナウィルスの影響で世界はますます黄昏に向かっていっていますが、心には光を灯して生きていきたいです。

 

世界は時に残酷ですが、共に生きていきましょう。

どんなに小さくても世界に希望を。そう思っている。

 

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【回想録】予備校ウォーズ!!エピソード2「予備校の席替えとポール・スミス」

 

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 前回のあらすじ。

大学受験に落ちたぁぁぁぁあ。

んで、予備校に通うことになったっぺよ!!

んでもなぁ、愛媛にはいい予備校がながったがらぁ。

高知の寮に入ることになっだっぺ~~~。

 

 

 

奴(予備校の校長)は言った・・・。

「皆さん、浪人おめでとうございます!!」

おぃ。

オッサン、わかってんのかい?

そりゃ、イチバンいっちゃいけないやつだぜ?

この空気、どうすんだよぉ?

 

まぁ、大体予備校の入学式って何って感じですよね?

 

負け犬集めてコングッチュレーション?

そりゃ、どんなシチュエーション?

欺瞞だらけのイニシエーション?

それは、形だけのイミテーション?

これから始まる浪人生活!!たまり続けるフラストレーション!!

よろしくチェケラ!!

ドーン!!

 

おっと、思わず紡いじゃったyo!!

リリックが脳内に溢れて止まんないyo!!

才能って怖いze!!

 

凍りついた空気のまま、予備校の入学式はつつがなく進行した。

桜は咲いてるのに、メタファーとしてはもう散っている僕たちの物語はここらからスタートしました。

 

それから、予備校に移動してそれぞれのクラスに別れてホームルームが始まった。

そうなんですよ。

予備校にもクラスがあって、席替えとかもありました(笑)

なんだよ、その学校感!?

 

みんな、適当に座っていたが、僕の隣の席は空いていた。

コツコツ・・・。

靴音がが響いて彼が教室に入ってきた。

長髪に色白イケメンで、なんか高そうなシャツを着てる。

まるでフランスの貴族みたいなオーラを漂わせながら彼(A)は歩いてきて、僕の隣に座った。

 

な、何者だぁ~。

田舎のダサメンだった僕はなんだかビビリまくり。。

まぁ、みんな浪人生なんですね(笑)

 

ホームルームが終わり、席替えのくじ引きがありなんと僕はまた彼(A)の隣の席に。

なんたるディスティニー。

いや、可愛い女の子とのほうが良かったんだけどぉ~。

 

ここで舐められてはイカンと僕も平静を装ってAと会話しました。

僕「おおおおお、お洒落なシャツだねぇええええええ」

A「ありがとう。ポール・スミスだよ」

僕「おおおおおおお。知ってる知ってる。ビートルズの人だよねぇぇぇぇ」

A「それはポール・マッカートニー

とまぁ、そんな感じで僕はスマートにAと親睦を深めていきました。

 

このAくんからは文学、音楽など色々と大きな影響を受けました。

 彼がいなかったら、今の僕はなかったと思います。

いや、たいした「今」ではないんですが(笑)

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Aは女子にもモテるし、自分の確固たるファッションとか、カルチャーがあって眩しかったですね。

何故か彼も僕のことを気に入ってくれて2人でカフェでずっと音楽と文学について語り合ったりして得難い時間を過ごしました。

あの頃、純文学に出会い、ロックもさらに深くすきになり、表現だったり芸術がもたらす素晴らしい何かを享受していました。

 

僕は、本当にダサくて、モテなくて、不器用な人間でしたがあの時代にAと過ごして感性的な刺激を受けた経験は僕にとって大きなものでした。

 

今回は割と、しんみりした内容になりましたが、次回はお下劣で笑えるやつを書きたいですw

 

 

 

 

 

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